古村治彦です。

 ロイター通信がドナルド・トランプ大統領と民主党の大統領選挙候補者に内定しているジョー・バイデン前副大統領に関する世論調査を実施した。五大湖周辺の「ラスト・ベルト(Rust Belt)」に属するミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州での世論調査を実施した。2016年の米大統領選挙ではこの3つの州で、トランプ大統領が予想外の勝利を収め、大統領に当選した。ラスト・ベルトは伝統的に工業地帯で、労働組合が強く、民主党の金城湯池であった。今回の大統領選挙でもこの3つの州は激戦州であり、民主党は奪還を目論んでいる。

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ラスト・ベルトの地図

 今回の世論調査の結果は、3つの州ともバイデンがトランプをリードしているというものだった。しかし、その差は小さいものであり、接戦となっている。しかし、問題は、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いの最高司令官、「戦時大統領」であり、二期目を目指す現職なので、バイデンをリードしていなければならない立場にある。トランプ大統領は大美厳しい立場にある。

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 大統領選挙は選挙人の総取りであり、ペンシルヴァニア州には20名、ミシガン州には16名、ウィスコンシン州には10名が配分されている。合計すると46名だ。前回の大統領選挙ではトランプ大統領は306名、ヒラリー・クリントンが232名という結果だった。トランプ大統領がこの3つの州を失うということになれば選挙人の過半数270名に到達できないということになる。

 有権者の最大の関心事は新型コロナウイルス対策であり、次に経済問題、更には医療制度と続く。トランプ大統領としては、新型コロナウイルス感染拡大を止め、経済活動を再開させて、支持を取り戻さねばならない。しかし、その道筋はまだついていない。そもそもトランプ大統領はマイク・ペンス副大統領を責任者にしたはずだが、毎日の記者会見に臨むことになって、ペンスに責任転嫁したのに、それがうまくいっていない。

 ペンスもマイク・ポンぺオ国務長官もトランプ大統領の陰に隠れ目立たないようにしているが、時にメディアで話題になるのは対中強硬姿勢だ。トランプを隠れ蓑、盾(たて)として使いながらやりたい放題という感じだ。そもそもこの2人はジョージ・W・ブッシュ政権の副大統領だったディック・チェイニーに連なる人物たちで、一部では「まるでチェイニー政権ではないか」とまで言われている。

 バイデンは誰にでも良い顔をするし、何よりも民主党のグローバリスト系だ。連邦上院議員だった2003年にイラク戦争開戦に賛成票を投じたように、「アメリカの世界支配」は正当だと考える人物だ。トランプ政権内に、イラク戦争を副大統領として主導したチェイニー系がおり、民主党にはバイデンがいる。これではトランプ大統領は四面楚歌(しめんそか)の状態で、味方は娘のイヴァンカとイヴァンカの夫ジャレッド・クシャナーくらいということになる。

 トランプ大統領はアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)、「アメリカ・ファースト」を訴えて当選した。だからこの4年間、アメリカは大きな戦争をしなくて済んだ。しかし、それでは困る勢力がいる。それが共和党系ならばネオコン(Neoconservatives)、民主党系ならばヒラリーたちの介入主義派(Interventionism)である。軍産複合体とも呼ばれる人たちだ。民主党系は、昔はリベラル・ホークとも呼ばれていた。

 バラク・オバマ前大統領がいまだにバイデン支持を表明していない、という奇妙な事実も考え合わせると、トランプ大統領の再選を阻もうとしている勢力は民主、共和両党に幅広く存在しているのではないかと考えられる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンは重要な3つのラスト・ベルトの州でリード(Biden leads in three crucial Rust Belt states: Poll

ザック・バドリック筆

2020年4月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign-polls/494241-biden-leads-in-three-crucial-midwestern-states-poll

水曜日に発表されたロイター通信の世論調査によると、3つの「ラスト・ベルト」に属する3つの州でジョー・バイデン前副大統領がトランプ大統領をリードしていることが明らかになった。これらの3つの州は2016年のトランプ大統領の勝利にとって重要な役割を果たした。

ロイター通信・イプソス社の世論調査の結果では、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者の45%がバイデン支持と答え、39%がトランプ支持と答えた。

各州の結果を見ると、バイデンはトランプ大統領に対して、ウィスコンシン州で3ポイント、ペンシルヴァニア州で6ポイント、ミシガン州で8ポイントの差をつけてリードしている。

別のロイター通信・イプソス社の全国規模の世論調査の結果によれば、バイデンはトランプ大統領に対して8ポイントの差をつけてリードしている。

今回の世論調査の結果では、3つ全ての州でトランプ大統領の支持率は不支持率を下回った。それでも支持率と不支持率の差は全国規模での差に比べて小さいものであった。ウィスコンシン州の登録済み有権者の47%がトランプ大統領を支持し、53%が不支持と答えた。一方、ペンシルヴァニア州では支持率は48%、不支持率は52%だった。ミシガン州では、支持率は44%、不支持率は56%だった。

3つの州全ての有権者の最大の懸念としてコロナウイルスの感染拡大を挙げた。3つの州の有権者の48%がコロナウイルスの感染拡大は自分たちの共同体において最重要の問題だと答えた。15%が経済を、12%が医療制度を、2%が移民制度を最重要の問題に挙げた。

トランプ大統領とバイデンは、誰がウイルスの感染拡大と経済後退に大勝するのに最適かという設問では接戦を演じている。有権者の50%がバイデンと答え、47%がこの仕事にはトランプ大統領が最適だと答えた。

3つの州の有権者の約47%はトランプ大統領の感染拡大への対処を支持すると答えた。一方で、67%はそれぞれが住む州の知事たちの対処を支持すると答えた。

イプソス社は、ミシガン州の登録済み有権者612名、ペンシルヴァニア州の登録済み有権者578名、ウィスコンシン州の登録済み有権者645名を対象に、4月15日から20日かけて世論調査を実施した。この世論調査の全体の結果の誤差は3ポイントで、各州の世論調査の結果では誤差は5ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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