古村治彦です。
アメリカ大統領選挙本選挙の情勢について現在までの各種世論調査の結果を軸にして見ていく。その前にアメリカ大統領選挙について簡単に説明する。アメリカ大統領選挙の投票日は「11月の最初の日曜日の次の火曜日」と決まっている。連邦下院全議席(435議席)、連邦上院議席の一部(100議席の約3分の1)で同時に選挙が実施される。
アメリカ大統領選挙は、民主、共和両党がそれぞれ指名する本選挙候補者を決めるための予備選挙から始まる。予備選挙を勝ち上がった候補者が夏の全国大会で党の指名を受け、本選挙候補者となる。そして、11月の本選挙を迎える。
アメリカ大統領選挙の仕組みは有権者の得票総数で決まるのではなく、各州で配分された選挙人を取り合う形になる。一つの州で一票でも多く上回った候補者が選挙人を総取りできる、「勝者総取り方式」を取っている。メイン州とネブラスカ州は勝者にある程度の選挙人を配分し、得票率によって敗者にも選挙人が配分されることもある制度を採用している。全米50州に首都ワシントンDCに人口に比例して合計で538名の選挙人が配分されている。最小の州には3名、最大の州カリフォルニア州には55名が配分されている。
現在のアメリカ政治の特徴は、何と言っても「青い州(Blue States)」と「赤い州(Red States)」に分かれていることだ。青色は民主党のイメージカラーであり、青い州は民主党が強い州、赤色は共和党のイメージカラーであることから、赤い州は共和党が強い州である。これはなかなか動かない。青い州は、アメリカの東西両岸地域に多く、人口が多い都市部を抱えている。赤い州は、アメリカ中西部と南部に多く、農業が産業の中心になっている。
しかし、2016年の大統領選挙で共和党の候補者ドナルド・トランプが大方の予想を覆して民主党の候補者ヒラリー・クリントンを破ったのは、青い州の代表格と見られていた、アメリカ北部五大湖周辺の労働組合が強い工業地帯(ラストベルトと呼ばれる)であるウィスコンシン州、ミシガン州、ペンシルヴァニア州、オハイオ州でトランプが勝利を収めたからだ。
今回、私なりに過去の大統領選挙の結果や現在の世論調査の結果を考慮して、全米50州とワシントンDCを以下のように分類した。以下の分類からは、現状では、ジョー・バイデンがドナルド・トランプ大統領を大きくリードしているということになる。トランプ大統領が優勢なのは21州で選挙人の合計が142名、バイデンが優勢なのは18州で選挙人の合計が208名となっている。世論調査やこれまでの結果を考慮してどちらとも言えない激戦州(赤色と青色を混ぜた紫色、Purple Statesと呼ばれている)は12州で選挙人の合計が188名となっている。
トランプ優勢州とバイデン優勢州はよほどのことがない限り、結果は動かない。そうであるならば、大事なのはどちらとも言えない12州だ。これらの州の情勢を見ていけば大統領選挙の結果は予想しやすい。アメリカ国内でもこれらの州は激戦だ、もしくは重要だということで複数回にわたり、定期的に世論調査が実施されている。トランプ、バイデン両者の優勢州では世論調査が実施されていないか、されていても少ない数だ。
どちらとも言えない州での世論調査の結果から見ていくと次のようになる。バイデン優勢は、・アリゾナ州、コロラド州、フロリダ州(Florida)、ミシガン州、ミネソタ州、ネヴァダ州、オハイオ州、ペンシルヴァニア州、ウィスコンシン州で、選挙人合計は129名、一方、トランプ大統領が優勢なのはアイオワ州、ノースカロライナ州、テキサス州で、選挙人合計は59名だ。そうなると、トランプ大統領の獲得選挙人は201名、バイデンの獲得選挙人337名ということになる。過半数は270名なので、バイデンが圧倒的優勢ということになる。
しかし、これはあくまで現状のしかも世論調査の数字だけを見ての分析である。世論調査は調査対象者の数(サンプル数)や質問方法、質問の言葉選びなどが重要な要素であり、それらは改善が行われているが、まだまだの部分もあり、あくまで大きな動向を掴むための道具であると私は考えている。従って、世論調査にだけ頼ることは危険である。しかし、アメリカにも住んでいない場合には、全米を調査に回るほどの費用もない中では、アメリカの報道や世論調査の結果を見るしかない。
今回の大統領選挙では、民主党が前回失った五大湖周辺4州を再奪取できるか、南部の大票田であるテキサス州とフロリダ州でバイデンがどこまで戦えるか、ということが注目される。現在のところ、テキサス州を除いた5州の各種世論調査でバイデン優勢の結果が出ている。そのために単純に足し上げをするとバイデンが圧倒的優勢という分析になる。
しかし、あと4カ月以上も時間がある。トランプ大統領が不利な状況、現職大統領が敗れるというような状況であれば、連邦議会選挙にも悪影響が出る。トランプ陣営と共和党は巻き返しに躍起となるだろう。トランプ大統領としては新型コロナウイルス感染拡大でダメージを受けた経済の回復を最優先したい。民主党はバイデンの弱いイメージの払しょくと党内分裂の回避に力を注ぐ。両党の全国大会からいよいよラストスパートとなる。
(貼り付けはじめ)
■大統領選挙代議員数:538名(過半数270名)
●トランプ[共和党]優勢州(red states)
・アラバマ州(Alabama):9名
・アラスカ州(Alaska):3名
・アーカンソー州(Arkansas):6名
・ジョージア州(Georgia):16名
・アイダホ州(Idaho):4名
・インディアナ州(Indiana):11名
・カンザス州(Kansas):6名
・ケンタッキー州(Kentucky):8名
・ルイジアナ州(Louisiana):8名
・ミシシッピ州(Mississippi):6名
・ミズーリ州(Missouri):10名
・モンタナ州(Montana):3名
・ネブラスカ州(Nebraska):5名(4名はトランプ、1名はバイデン)
・ノースダコタ州(North Dakota):3名
・オクラホマ州(Oklahoma):7名
・サウスカロライナ州(South Carolina):9名
・サウスダコタ州(South Dakota):3名
・テネシー州(Tennessee):11名
・ユタ州(Utah):6名
・ウエストヴァージニア州(West Virginia):5名
・ワイオミング州(Wyoming):3名
・合計:141名(+1)、21州
●トランプ・バイデン激戦州
・アリゾナ州(Arizona):11名(バイデン優勢)
・コロラド州(Colorado):9名(バイデン優勢)
・フロリダ州(Florida):29名(バイデン優勢)
・アイオワ州(Iowa):6名(トランプ優勢)
・ミシガン州(Michigan):16名(バイデン優勢)
・ミネソタ州(Minnesota):10名(バイデン優勢)
・ネヴァダ州(Nevada):6名(バイデン優勢)
・ノースカロライナ州(North Carolina):15名(トランプ優勢)
・オハイオ州(Ohio):18名(バイデン優勢)
・ペンシルヴァニア州(Pennsylvania):20名(バイデン優勢)
・テキサス州(Texas):38名(トランプ優勢)
・ウィスコンシン州(Wisconsin):10名(バイデン優勢)
●バイデン[民主党]優勢州(blue states)
・カリフォルニア州(California):55名
・コネティカット州(Connecticut):7名
・デラウェア州(Delaware):3名
・ハワイ州(Hawaii):4名
・イリノイ州(Illinois):20名
・メイン州(Maine):4名(3名はバイデン、1名はトランプ)
・メリーランド州(Maryland):10名
・マサチューセッツ州(Massachusetts):11名
・ニューハンプシャー州(New Hampshire):4名
・ニュージャージー州(New Jersey):14名
・ニューメキシコ州(New Mexico):5名
・ニューヨーク州(New York):29名
・オレゴン州(Oregon):7名
・ロードアイランド州(Rhode Island):4名
・ヴァーモント州(Vermont):3名
・ヴァージニア州(Virginia):13名
・ワシントン州(Washington):12名
・ワシントンDC(Washington,
District of Columbia):3名
・合計:207名(+1)、18州



ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
コメント