古村治彦です。
私は常々、子供の頃に見たアニメ「トムとジェリー」の言葉で、「仲よく喧嘩しな」ということが米中関係のみならず、外交関係においての基本だと考えている。人間関係でもそうだが、この「仲よく喧嘩する」はなかなか難しい。自分の方が優位に立とうとして、結局、言わなくても良いことを言ってしまい相手を深く傷つけ、関係を壊してしまうということが起きる。これは友人や知人関係だけでなく、家族関係も起きることだ。
個人間の関係ならば、連絡をしないとか訴訟をするとかその程度で済むが、国同士の関係となると、国交断絶や戦争ということになれば、犠牲となる人間の数は格段に多くなる。従って喧嘩はしても良いが、決定的な断裂を招くようなことはしない、ということが重要になる。中国の歴史書やヨーロッパ近代の外交関係史はそのことを教えてくれている。
ヘンリー・キッシンジャーが現在の米中関係について、お互いの非難合戦がエスカレートして取り返しがつかないようにするために「制限を設ける」ことを提唱したということだ。キッシンジャーは国際関係史、特にヨーロッパの歴史の専門家であり、第一次世界大戦のような人類史上初の長期にわたる総力戦が勃発した経緯については熟知している。
そのキッシンジャーが米中関係の悪化に懸念を持っている。米中間の新しい冷戦(new
cold war)という言葉も出て来ている。冷戦は米ソ間の共存という方向に進み、一面では「長い平和(long
peace)」ということになった。もちろん、朝鮮半島やインドシナ半島の人々は長期にわたり戦争の厄災に苦しんだ。しかし、米ソ間の直接の戦争は起きなかった。
米中間での新冷戦も米ソ間の冷戦と同様に直接戦争にならなければよいが、代理で戦争をさせられる国はたまったものではない。アメリカはインド、オーストラリア、日本を使って中国を封じ込めようとしている。アメリカは中国と直接対決するのではなく、これらの国々を使って、キャンキャンと吠え掛からせようとしている。
アメリカが世界で唯一の超大国であり、警察官であるという構造は終わりを告げた。世界に自国のデモクラシーと資本主義を輸出するというおせっかいな正義感も終わりを告げることになる。今回の大統領選挙一つを取ってみても、デモクラシーの総本山、本家家元の国があの体たらくである。そんな国がデモクラシーの自由のと威張ってみても、「欠陥商品を押し売りするんじゃねぇ」と馬鹿にされるのが関の山だ。
話が散らばってしまって恐縮だが、米中間は「仲よく喧嘩する」ことが重要である。
(貼り付けはじめ)
ヘンリー・キッシンジャーはアメリカと中国に対して世界大戦に向かう脅威やリスクに「制限」をつけるように求める(Henry Kissinger Calls on U.S., China to Set ‘Limits’ on Threats or
Risk World War)
ザカリー・エヴァンス筆
2020年10月8日
『ナショナル・レヴュー』誌
https://www.nationalreview.com/news/henry-kissinger-calls-on-u-s-china-to-set-limits-on-threats-or-risk-world-war/
ヘンリー・キッシンジャー元国務長官はアメリカと中国に対して、お互いに対しての脅威、もしくは世界大戦に向かうリスクに制限をつけるように求めた。
リチャード・ニクソン大統領の国務長官として、共産主義中国とアメリカとの間の関係構築を行ったことでキッシンジャーは高い評価を受けている。キッシンジャーは、米中両国の関係樹立の理由は中国の北方と西方で国境を接していたソヴィエト連邦に対する戦略的優位性を得るためとしている。
それから中国は世界第2位の経済大国となり、アメリカにとって最大のライヴァル国となった。両国の敵対関係はそもそも新型コロナウイルス感染拡大の初期から厳しくなっていった。現在97歳のキッシンジャーは水曜日、ニューヨークでの経済倶楽部においてヴァーチャルで講義を行い、その中で米中両国は両国間の争いに制限を設ける必要があるという警告を発した。
キッシンジャーは次のように発言している。「我が国の指導者たちと(中国の)指導者たちは脅威にまで進めないように制限について、そして制限をどのような内容にするかについて議論しなければならない。そんなことは全く不可能なことだという人もいるだろうが、もし不可能なままで推移すれば、第一次世界大戦に似た状況に陥ってしまうことになるだろう」。
キッシンジャーは、アメリカの政策立案者たちが「私たちに脅威を与える国が出てこないような経済世界を考えるべきだが、その目的の達成のために、他国が技術的な可能性を拡大することに対峙しその可能性を減らすような様式を採用するようにすべきではない」と説明した。
キッシンジャー元国務長官は過去にアメリカと中国との間の闘争の可能性について警告を発した。2019年11月、新型コロナウイルス感染拡大が起きる前に、キッシンジャーは北京でのある会合で両国は「冷戦の間際にいる」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)



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