古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙まであと1週間と迫ってきた。思えば昨年から予備選挙が始まり、多くの紆余曲折(主に民主党側で)があり、いよいよ最後の1週間となった。現在のところ、民主党のジョー・バイデン前副大統領が共和党のドナルド・トランプ大統領をリードしている展開となっている。

 しかし、2020年10月22日の最後の大統領候補者討論会から流れが変わっているように感じられる。トランプ大統領がバイデンを追い上げている。これは世論調査の数字でも出ている。フロリダ州とテキサス州でトランプ大統領が勝利し、最終決戦場は五大湖周辺州という見立ては私の間違っていないと思う。

 そうした中で、「トランプ大統領が再選されれば、次のようなことが勝因として語られるでしょう」ということを紹介する論説があったので紹介する。

 著者のナイオール・スタンジは5つの要素を挙げている。(1)トランプ陣営が積極的な戸別訪問を行っていること(日本風に言えばドブ板選挙)、(2)アフリカ系アメリカ人有権者の中でトランプ支持が増え、バイデンに対しての熱意が盛り上がっていないこと、(3)「社会的望ましさ」に関するバイアス(“social desirability” bias)で、トランプ支持者が世論調査に対して正直に答えていないこと、(4)有権者登録で共和党支持での登録が増えていること、(5)ラティーノ系(ヒスパニック系)有権者の間でのトランプ支持が減っていないこと、この5つの要素だ。

 日本のメディアは、さんざん「バイデン氏が大量リード」と報じてきたのに、ここにきて、いやもしかしたらトランプの大逆転があるかもと本気で心配しているようだ。専門家と呼ばれる人たちも、前回の大統領選挙での手ひどい失敗でよほどの大きなトラウマを抱えているのだろうが「バイデン氏が圧倒的に有利ですが、何が起きるか分かりません」という、素人でも言えるようなことでお茶を濁している。

 神様ではないので誰も未来のことなど分からない。しかし、少なくともバイデン氏圧倒的リードということはないということは言える。

(貼り付けはじめ)

メモ:トランプが逆転できるという5つの理由(The Memo: Five reasons why Trump could upset the odds

ナイオール・スタンジ筆

2020年10月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/the-memo/522549-the-memo-five-reasons-why-trump-could-upset-the-odds

トランプ大統領は大統領選挙に向けて厳しい戦いを続けているが、完全に希望が無くなっている訳ではない。

選挙戦期間を通じて、トランプは民主党候補者ジョー・バイデンに対して世論調査の数字で後れを取っている。そして、選挙戦の様相を変化させるための最後の明らかな機会は、ナッシュヴィルで実施された火曜日の討論会であったが、大きなドラマもなく終わった。

トランプ大統領の支持者たちは、2016年のヒラリー・クリントンに対しての勝利のように、もう一回衝撃的な逆転を引き起こすであろういくつかの要素を主張している。2016年の大統領選挙の結果に深く傷ついている民主党幹部たちはトランプ大統領の動向を無視することはできなくなっている。

今年の選挙で再びトランプ大統領が逆転してのサプライズの勝者となる場合、これから挙げる理由が彼の勝利について説明するために理由として引用されることになるだろう。

(1)トランプの地上戦(Trump’s ground game

トランプ選対は伝統的な丁寧な戸別訪問は大きな利益をもたらすと考えている。選対は250万人以上のヴォランティアが参加していると述べている。『ニューズウィーク』誌が指摘しているが、2008年の大統領選挙で当時のバラク・オバマ候補を支援したヴォランティアの数が220万だったが、トランプ陣営のヴォランティアの数はそれを上回っている。

メディアとの電話を通じての記者会見で、トランプ選対の幹部たちは頻繁に自分たちの優位性を示していると考えているデータを引用している。トランプ選対はヴォランティアの人々が9月のある1週間で激戦州において合計50万戸以上を訪問したと述べている。

月曜日、トランプ選対の責任者ビル・ステピエンは記者団に対して、「私たちは本物の、地に足の着いた選挙戦を展開しています」と述べた。

バイデン選対は、自分たちも強力な地上戦のための構造を構築していると主張して、反撃している。しかし、バイデン陣営が戸別訪問への動きが鈍いという批判もできない。この躊躇は新型コロナウイルス感染拡大に対する懸念から来ている。

バイデンのアプローチは結局のところ、認められることになるだろう。ストラティジストの中には、有権者に対して電話、Eメール、SNSで簡単にかつ安全に連絡が取れる時代に戸別訪問にどれだけの効果があるのかを疑問視する人たちが出てきている。

しかし、トランプが勝利すると、地上戦に対しての評価が多く出るだろうと予測される。

(2)アフリカ系アメリカ人有権者の投票(Black turnout

2016年にヒラリー・クリントンが敗北した主要な理由がアフリカ系アメリカ人有権者の投票の減少であった。アメリカ初のアフリカ系アメリカ人大統領となったオバマが選挙に出られないということになってアフリカ系アメリカ人共同体からの投票は減少するだろうということは予想されていた。しかし、デトロイトやミルウォーキーのような中西部北部の大都市でのヒラリーに対するアフリカ系アメリカ人有権者の熱意の低さはそうした予想をはるかに上回る深刻なものだった。

トランプは、共和党の大統領選挙候補者としては例のないほどにアフリカ系アメリカ人有権者に力を入れてきた。トランプ選対はアフリカ系アメリカ人向けのラジオでの宣伝に力を入れている。そして、共和党全国委員会は、アメリカンフットボールのプロリーグNFLのスター選手だったハーシェル・ウォーカーのような有名人の共和党支持者たちを起用している。

トランプ陣営は2016年にアフリカ系アメリカ人有権者からの投票率8%から、2020年は大きく伸ばすことができると本当に信じているのかということを疑っている人たちもいる。しかし、アフリカ系アメリカ人のバイデンへの支持が盛り上がっていないことは重要であると考えられる。

もう一つのジョーカーとしてのカードは、ラップスターのカニエ・ウエストの無謀な立候補である。ウエストは全米で少なくとも12州で候補者登録されている。

アフリカ系アメリカ人有権者の投票の大きな動向に関して言えば、トランプに対して有利な兆候が見られる。

データサイト「ファイヴサーティーエイト」のデータによると、高齢のアフリカ系アメリカ人は民主党支持で堅いが、若い人々はそうではないということである。UCLAネイションスケイプの世論調査によると、18歳から44歳までのアフリカ系アメリカ人有権者のトランプ大統領への支持率は2016年の10%から21%に上昇している。

(3)「恥ずかしがって表に出ない」トランプ支持の有権者たち(The ‘shy’ Trump voter

トランプ大統領支持者たちの中で人気の高い理論として、トランプ大統領はある特殊な問題に直面している、というものだ。その問題とは、「社会的望ましさ」に関するバイアス(“social desirability” bias)と呼ばれるもので、トランプ大統領を支持する有権者たちが世論調査実施者たちに対して自分の考えを隠すというものだ。

この有権者の姿勢についての仮説に関して、証明することもまた否定することも難しい。この仮説に対して懐疑的な人々は、この姿勢が本当ならば、調査対象者がインタヴューを受ける形で実施される世論調査も、オンラインでの世論調査の方がトランプ大統領の支持率の数字は高くなるはずだ、と主張している。そのようなことは起きていない。

トランプ陣営の責任者ステピエンをはじめとする人々の間で好まれている、関連する理論は、2016年にトランプ大統領が勝利したのは、いくつかの重要州の最も人口の少ない地域で多くの人々が投票に行きトランプ大統領に投票したことが理由である、というものだ。

そうした地域に住む人々は世論調査の対象にならないし、メディアの取材対象にもならないことから、この理論についてはそうかもしれないと言える。

世論調査では、トランプ大統領はいくつかの地域で支持を伸ばしているが、バイデンは全国規模といくつかの激戦州での世論調査のほぼ全ての世論調査の数字でリードを保っている。

(4)有権者登録(Voter registration

激戦諸州の有権者登録数はトランプ陣営の強気な姿勢の根拠になっている。

トランプ選対のある関係者は2016年からの変化を強調している。この人物は、2016年と2020年の大統領選挙のそれぞれの最後の4カ月の違いについて、「2016年の時は、民主党支持で登録する人の数が共和党支持を上回っていましたが、今回は共和党支持が上回っています」と述べている。

選挙に関する数字を見ると、2016年8月から11月までのフロリダ州での有権者登録に関しては、民主党側が共和党側を7万8000名以上上回っていた。今年の8月から現在までで見ると、フロリダ州では、共和党側が10万4000名上上回っている。

同様のパターンがペンシルヴァニア州で見られる。2016年の時には民主党側が僅差で上回っていたが、それが今年は共和党側が約7万2000名以上も上回っている状況に変化している。

特定のいくつかの州について、トランプ陣営や支持者の間では別の理論が提唱されている。ネヴァダ州に関しては、トランプ支持者の中には勝利できる可能性がある州だと見られている。この人々は、ネヴァダ州の各労働組合の選挙に向けられる力が減少している、それは新型コロナウイルス感染拡大の期間に観光とカジノ産業への打撃が大きかったからだ、と主張している。

トランプ選対の発表によると、ネヴァダ州全体での民主党支持としての有権者登録の数は1万近く減少している、ということだ。この数字は大統領選挙においては比較的小さい数字と捉えられがちだが、2016年にヒラリー・クリントンがネヴァダ州で勝利を収めたがその差が2万7000票差だったことを考えると、この小さい数字が重要となる。

(5)ラティーノ系からの投票(The Latino vote

トランプ大統領は全国規模でラティーノ系の投票で負けるだろう。しかし、重要なことは、2016年以来、ラティーノ系の人々からの支持が下がっていることを示す兆候はほとんどない、ということだ。トランプ政権の移民政策については激しい議論が巻き起こっているが、ラティーノ系からの支持にはあまり影響が出ていない。

2016年の大統領選挙の出口調査の結果、トランプ大統領はラティーノ系の投票の28%を獲得したことが分かっている。この数字は、2012年の共和党の候補者ミット・ロムニーの獲得した数字よりも高かったことに人々は驚いた。ロムニーは移民政策についてより中道の姿勢を取っていた。

各種世論調査の結果では、トランプ大統領はヒスパニック系の有権者からの支持率はあまり変わっていない。他の人口学的な集団からの支持率が下がっている中で、ヒスパニック系からの支持率はあまり変わっていない。

フロリダ州のラティーノ系の有権者の状況は興味深い。フロリダ州は最大のしかも最重要の激戦州である。

9月にNBCニュース・マリスト大学、キュニピアック大学がそれぞれ実施した世論調査では、フロリダ州在住のラティーノ系有権者の支持率でトランプが僅差でリードしていた。2016年の大統領選挙では、トランプ大統領はラティーノ系からの投票では、ヒラリー・クリントンに27ポイントの差をつけられて敗れた。

キューバ系アメリカ人はフロリダ州において特に重要である。キューバ系アメリカ人共同体では伝統的に社会主義に対する反感がある。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)といった民主党左派の有力政治家たちがより注目されるようになる中で、キューバ系アメリカ人の民主党への支持が下がっていることを示す逸話がいくつも出ている。

火曜日の討論会で、トランプ大統領はサンダースの名前を出した時、バイデンは、トランプ大統領は「別の人と選挙で戦っていると思っているようです。彼はジョー・バイデンと戦っているんですが。私は彼もそして彼が名前を出した人も全てを倒します、なぜなら彼らの考えに全く合意していないからです」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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