古村治彦です。

 下の記事は2020年10月に発表されたものだ。アメリカ大統領選挙と連邦議会選挙の前、アメリカでは「トランプ大統領が戒厳令(martial law)を布告するのではないか」という声がインターネット上で上がっていたということだ。映画やドラマ、小説で描かれている戒厳令のイメージ、それは軍隊が街中に出てきて、辻々に立って人々を威嚇し、理由なく身柄拘束を行うというものだ。現在の日本で、日本国内での戒厳令を実際に体験した人は、戦前、戦時中を経験した高齢の人々だけであろう(外国に滞在していて遭遇したという人は別)。

下の記事によると、戒厳令は成文法ではない。そして、戒厳令では「理由や根拠のない捜索と身柄拘束からの自由である権利、結社の自由、移動の自由などの一般の人々の自由は停止される。人身保護令状(the writ of habeas corpus[収監される前に裁判を受け、判決を受ける権利]は停止される」ということだ。カール・シュミット(1888-1985年、96歳で没)が「主権者とは、例外状態(State of exceptionAusnahmezustand)に関して決断を下す者である」の「例外状態」の際には戒厳令が布告されるだろう。

 文民・文官(civilians)が行う統治が崩壊してしまった場合に、戒厳令ということになるようだ。また、大規模な自然災害や戦争など大きな事件の際にも戒厳令が布告される。戒厳令の一段前の段階として、反乱法(Insurrection Act)が適用される。これは成文法だ。下の記事では、「アメリカ合衆国の権威に対する反乱によって合衆国の連邦諸法の強制が通常の司法手続きによって行うことが不可能になる場合」には、連邦軍の現役将兵もしくは州兵部隊が連邦法の強制を行うことが許されている」としている。

 反乱法は破壊活動や暴動にも適用できるようだ。連邦最高裁の判決や選挙人団の投票によって、アメリカ国内の状況が不穏なものとなり、ミリシアとアンティファとの衝突という事態になり、暴動や破壊活動、略奪が全米で頻発すればこの法律の適用ということになる。

下の記事では、トランプ政権かでの戒厳令について述べているが、もしバイデン政権が誕生すれば、この反乱法を強圧的に適用することになる可能性がある。新型コロナウイルス感染拡大防止を大義名分にして戒厳令を布告することも考えられる。マスクをしない市民の逮捕拘留、収容ということだって考えられる。そうなればアメリカの分裂はさらに深まるだろう。リベラルを標榜する人間たちによる、一部市民の抑圧のための戒厳令布告という馬鹿げた悲喜劇によって。

(貼り付けはじめ)

大統領はどのようにしたら戒厳令を布告することができるのか(How the president could invoke martial law

サラ・サイカード筆

2020年10月23日

『ミリタリー・タイムズ』誌

https://www.militarytimes.com/news/your-military/2020/10/23/how-the-president-could-invoke-martial-law/

2020年を通じて、アメリカは世界的なウイルス感染拡大、ジョージ・フロイド殺害事件以降の暴動、激しい選挙に直面している。結果として、戒厳令の布告もしくは制限のない軍隊による介入の可能性について、学者や文民が持つ恐怖感がインターネット上で拡散されている。

師ラキュース大学教授で憲法と安全保障関連法を専門にしているビル・バンクスは本誌の取材に対して次のように答えている。「そうした恐怖感は理解できる面があります。それは、戒厳令はアメリカ合衆国憲法もしくは諸法律によって規定も承認も制限も、そして禁止もされていないからです。もし誰かが戒厳令を布告すれば、その布告した人物は自分が法律だと述べることが可能となるのです」。

●「戒厳令」とは何か(What is ‘martial law’

簡潔に述べると、戒厳令は文民支配が崩壊するときに布告可能となる。危機の際に軍事的な権威が一時的に権力を文民に代わって握ることだ。戒厳令が布告された例はこれまで珍しいが、戒厳令が実際に布告されたのはアメリカにおいても複数回存在する。戦時中、自然災害、騒乱などが含まれるが、2020年はそうした戒厳令布告がなされそうな事例に事欠かない。

インターネット上の法律関連の百科事典である「JRANK」には次のように書かれている。戒厳令自体の正確な定義は存在しない。一方で、その先例は存在する。戒厳令では「理由や根拠のない捜索と身柄拘束からの自由である権利、結社の自由、移動の自由などの一般の人々の自由は停止される。人身保護令状(the writ of habeas corpus[収監される前に裁判を受け、判決を受ける権利]は停止される」。

戒厳令を布告できるのは大統領と連邦議会だ。ブレナン・センター・フォ・ジャスティスによると、各州の高官たちも戒厳令を布告できるが、「戒厳令布告下でのこうした人々の行動はアメリカ合衆国憲法に従わねばならず、連邦裁判所による審査を受けねばならない」。

『ジ・アトランティック』誌は次のように報じている。「アメリカにおける戒厳令布告における忌まわしい事例としては、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領による第二次世界大戦中の日本人を先祖に持つアメリカ国民と居住者たちの強制収容と911テロ事件以降のジョージ・W・ブッシュ大統領による法律の裏付けのない盗聴と拷問が挙げられる。エイブラハム・リンカーンは南北戦争期間中の一方的な人身保護令嬢の停止は憲法上疑義があったことは認めたが、アメリが合衆国の統一(the Union)を維持するためには必要な措置だったと弁解した」。

ブレナン・センター・フォ・ジャスティスのジョセフ・ナンは、アメリカ史上、連邦政府と州政府が戒厳令を布告したのは少なくとも68回確認されている、と指摘している。

●戒厳令はどのように機能するのか?(How does it work?

戒厳令にもいくつかの制限が存在する。1878年6月18日に可決された、民警団法(Posse Comitatus Act)では、南部再建(Reconstruction、リコンストラクション、訳者註:1863-1877年)期間中に連邦軍が元連合国(Confederate state)で行われる選挙の監督をしてはならないとされている。この法律は陸軍にのみ適用されたが、後に国防総省全体、そしてその他の政府機関にも拡大適用されるように修正された。民警団法はアメリカ軍が国内法の強制を行うこと、捜査、財産没収、群衆の解散を禁止している。しかし、各州知事からの命令を受ける各州兵部隊は民警団法の適用から除外されている。

民警団法に対する一つの例外は、反乱法(Insurrection Act)である。アメリカ北部軍司令部によると、反乱法では、「アメリカ合衆国の権威に対する反乱によって合衆国の連邦諸法の強制が通常の司法手続きによって行うことが不可能になる場合」には、連邦軍の現役将兵もしくは州兵部隊が連邦法の強制を行うことが許されている。

反乱法の条文は次のようになっている。

「アメリカ合衆国連邦議会の上院と下院に議員たちが集結して反乱法の適用は決定される。アメリカ合衆国、州、統治領のいずれかでの反乱、法の執行への妨害が起きた場合には、アメリカ合衆国大統領はそのような反乱を鎮圧する目的のために、もしくは法の執行を滞りなく行う目的のために、ミリシアに対して呼びかけを行うことは合法となる。大統領が上記の目的のために、アメリカ合衆国の陸軍もしくは海軍の一部を派遣することは合法となる。この法律の適用の前提条件が全て揃うことになれば、必要だと判断されることになる」。

しかし、連邦規則32条の下では、連邦政府が資金的な助成をしているが州知事の管理下に置かれている州兵の出動は、反乱法の下では該当しないということになる。また、通常の状況では反乱法は戒厳令とは同義ではないということになる。

バンクス教授は次のように述べている。「暴風、大規模停電、新型コロナウイルス感染拡大中における医療資源の配達に対応するために、各州知事は州兵を動員します。これは異常な行為ではありません。もし大統領が同様の理由で、州兵を連邦軍として動員することも異常ではありません。次の冬にワクチンを全米に届けるために州兵を連邦軍として動員することは、完全に適切で、合法的な行為であって、これは戒厳令とは異なります」。

●戒厳令について懸念を持つべきなのか?(Should we be worried?

バンクス教授は次のように語っている。「人々が話している中で最悪のシナリオとなるのは、大統領が命令を発し、11月3日の後、決着がつかない中で、合法的ではない選挙、破壊活動、抗議に関わったと大統領が考える諸都市を米軍が掌握するのではないかというものです」。

これらは仮説でしかないが、もしこうしたことが起きるとするならば、それは反乱法を通じてということになるだろうとバンクス教授は指摘している。反乱法を適用するために、大統領は「連邦規則第10条334項の4により、まずは反乱者たちに対して、期限を決めて解散するように命じる布告を出さねばならない」ということである。状況が変わらなければ、大統領は「大統領令を発し、軍隊を派遣する」することができる、と2006年の連邦議会研究部は報告している。

バンクス教授は次のように述べている。「反乱法において銘記しておかねばならない重要な事柄は、これは戒厳令ではないということです。反乱法の機能を利用する目的は、法律を執行することであって、法律に代わることではないのです」。

アフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイドのミネソタ州の警官による殺害をめぐる抗議活動が最高潮に達していた今年6月、抗議活動が全国に拡大する中で、トランプ大統領は、市民による暴動を鎮静化するために米軍の派遣を行う手段として、反乱法の適用を行う可能性を示唆した。

6月1日、ホワイトハウスでの演説の中で、トランプ大統領は次のように述べた。「もし都市や州が住民の生命と財産を守るために必要な行動を取ることを拒絶するならば、私は米軍を派遣し、住民のために、問題をすぐに解決します」。この発言は、ワシントンDCにある聖ヨセフ協会の前で、バイブルを手にして写真を取る直前になされたものだ。この写真撮影の際に、米統合参謀本部議長のマーク・ミリー陸軍大将がトランプ大統領に同行して一緒に写真に収まった。

ミラーは、トランプと一緒にラファイエット通りを渡り、抗議活動中に一部が焼かれた教会の前で写真を一緒に撮ったことについて謝罪した。

ミラーは次のように述べている。「私がその場にいたこと、その環境にいたことは、国内政治に軍が関与しているという印象を与えました。責任ある聖服を着た将官として、それが誤りだったことを私は学びました。私は、米軍全体がこの誤りから学ぶことを真摯に望んでいます」。

反乱法は成文化された法律であるが、戒厳令は成文化された法律ではなく、その使用は法律上グレーゾーンということになる。

バンクスは次のように強調している。「もちろん、問題は大統領もしくは軍の司令官が戒厳令布告を行うことを妨げるものは存在しないということです。彼らにはそれが可能なのです。法律によって禁止されているのではないのです」。

バンクスは、軍隊に対して責任を負っている文官、この場合にはマーク・エスパー国防長官であるが、この人物が2020年の選挙から軍隊を引き離し続けるために重要な存在であると指摘している。

バンクス教授は「エスパー国防長官には非常に重要な役割があります」と指摘している。

エスパーはこれについて米軍に宛てたメモの中で触れている。

エスパーは次のように書いている。「市民として、私たちは統治について投票と参加を行う権利を行使します。しかし、これらの諸原理を守ることを宣誓している公僕として、国防総省は自分たちの責任を遂行する際に、非政治的であり続けるという伝統を維持します」。

ミラーもまた米軍を政治と選挙に関与させない必要性を強く感じている。

ミラーはNPRとのインタヴューの中で次のように述べている。「私たちは個人、王、女王、大統領に忠誠を宣誓しているのではありません。忠誠宣誓について言えば、私たちは国家に忠誠を誓っているのではありません。私たちは、国旗、民族、宗教などに忠誠宣誓をしているのではありません。私たちは、アメリカ合衆国憲法の中に具現化されている、一つの理念、考えと価値観に忠誠を誓っているのです」。

これらの発言を受け、バンクス教授は、今回の議論が激しい選挙の結果に関する最悪のシナリオとしては、結果がごたごたした、いくつかの州での法廷闘争が行われるだけで終わるだろうと楽観的な考えを持っている

前述のバンクス教授は次のように述べている。「今回の件で本当に重要な制限は、文民による統治が機能している時には、戒厳令布告が許される可能性は高くないということです。戒厳令布告には完全な崩壊状態が必要です。戒厳令布告には文民諸機関が政府を運営することができなくなることが必要です。その状況を想像することは困難です」。

(貼り付け終わり)
bakabusubingounawatashitachiwomatsufujimori001

馬鹿ブス貧乏な私たちを待つ ろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。

(終わり)

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