古村治彦です。

 バイデン政権の国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)にアヴリル・ヘインズが就任した。ヘインズについては、このブログでも再三取り上げている。
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アヴリル・ヘインズ

ヘインズはオバマ政権第二期目の2013年から2015年まで、中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)の副長官(Deputy Director、長官はジョン・ブレナン)を務め、2015年から2017年までは国家安全保障問題担当次席大統領補佐官(Deputy National Security Advisor、補佐官はスーザン・ライス)を務めた。私の最新刊『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも取り上げている。

 ヘインズについては批判も多く出ている。オバマ政権のCIA副長官時代の2015年、連邦上院情報・諜報委員会のコンピューターにCIA職員がハッキングを行ったという事件が起きた。委員会ではCIAが行った拷問についての報告書を作成中だった。その内容を知ろうとしての犯行だった。この行為に対して、ヘインズは処分を行わなかった。また、ドローンを使ったテロ容疑者の殺害にもゴーサインを出したが、その法的根拠をめぐって批判を浴びた。ヘインズは違法行為をいとわない、肝の据わった人物だ。

 ヘインズが対中・対露諜報活動を牽引する役割を果たすことになるだろう。バイデン政権の強硬姿勢の前提となる、情報・諜報を提供する。

(貼り付けはじめ)

連邦議事堂襲撃事件がバイデン政権の「スパイの親玉」の公聴会の質疑の大部分を占めた(Capitol Assault Dominates Hearing for Biden’s Spy Chief

-アヴリル・ヘインズは情報・諜報の分野から政治を遠ざけると公約した。

エイミー・マキノン筆

2021年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2021/01/19/avril-haines-spy-chief-cia-hearing-capitol-assault/

アメリカ大統領選挙当選者ジョー・バイデンの大統領就任式の前に、ワシントンでは暴動や襲撃に備えて警備が厳重になっている。そうした中、バイデン政権の国家安全保障ティームの主要メンバーの人事承認のための公聴会が連邦議事堂で火曜日、開催された。

連邦上院情報・諜報特別委員会による公聴会の中で、連邦上院議員たちがアヴリル・ヘインズと質疑応答を行った。ヘインズはバイデンから国家情報長官(director of national intelligence)に指名された。ヘインズに対しては、中国からイランとの核開発をめぐる合意、ソーラーウインズ社が提供したソフトを利用した連邦政府の諸機関に対するハッキング事件などが質問された。ヘインズはまた水責めについて拷問だと主張した。

ヘインズはオバマ政権でCIA副長官を務めた。ヘインズは、「大統領に真実を告げる(speak truth to power)」こと、トランプ政権下で情報・諜報部門が政治の道具にされたがこれを終わらせることを約束した。ヘインズは「我が国の情報・諜報部門の誠実さを守るため、情報・諜報に関する限り、政治が介入する余地はどこにもない、全くないということを強く主張しなければなりません」と述べた。ヘインズの冒頭での発言ではまた、説明責任を果たすために、内部告発者と監察官の存在の重要性を強調した。

国家情報長官はこれまで外国の情報や諜報に集中してきた。しかし、1月6日の連邦議事堂での事件について、今回の公聴会では長い時間が割かれた。ヘインズは、国内で拡大した過激派諸グループの外国とのつながりを調査すること、海外での急進諸グループとの戦いで情報・諜報部門が得た教訓を共有することを約束した。ヘインズはまた、Qアノンの陰謀論による脅威について公的な評価を行うにあたり、FBIと国土安全保障省と協力することも約束した。

民主、共和両党の議員たちは、徐々に対決姿勢を示している中国による脅威、テロリズム、特に中東におけるテロリズムとの数十年の苦闘という脅威に対しての懸念を表明した。

情報・諜報に関しての質疑の中で、ヘインズは「中国は敵(adversary)だ」が、気候変動といった問題については協力する余地があるという発言がなされた。「私の人事が承認されたら、私はこの問題について人材や資源が適正に配分されるようにすることを第一にしていきたいと思います」とヘインズは述べた。

連邦上院議員たちは、ヘインズの「ウエストエグゼクト・アドヴァイザーズ」社の在職時の仕事について質問した。この会社は2017年にアントニー・ブリンケンとミッシェル・フロノイによって創設されたコンサルタント会社だ。ブリンケンはバイデンが国務長官に指名した人物だ。フロノイは国防長官の候補者として名前が挙がった人物だ。ヘインズや同社の役員を務めたが、議員たちの中には、同社が顧客リストの提出を拒絶したために、ヘインズの仕事についての関心が高まった。ヘインズはウエスト社在職中に、外国の企業や組織、政府に対してコンサルタント業務を行ったことはないと確言した。しかし、ウエスト社在職中ではない時期に、あるフランスの民間企業の顧問を務めたことは認めた。

ヘインズはまた、『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストだったジャマル・カショギの殺害事件に関する機密指定を受けていない報告書を公開すると約束した。トランプ政権は、2019年に連邦議会が可決した、殺害事件に関する報告書には国家情報長官の決定が必要とする法律を無視した。

ヘインズは公聴会で元国家情報長官ダン・コーツから紹介を受けた。コーツはドナルド・トランプ大統領と、ロシアと北朝鮮に関する情報・諜報に対する評価をめぐり衝突し、2019年に辞任した。コーツは共和党所属の連邦上院議員だった経歴を持つ。コーツはヘインズについて、「次期国家情報長官に必要な能力、適性、経験、リーダーシップの全てを持っている」と述べた。続いて、彼女が政府に入るまでのユニークな経歴について詳しく述べた。柔道を学ぶために日本で1年間過ごしたこと、シカゴ大学で理論物理学を学んだこと、配偶者とはニュージャージー州での飛行機操縦学校で出会ったとことなどが紹介された。その後、ヘインズは書店を開き、弁護士となり、国務省と連邦上院外交委員会の法務担当アドヴァイザーを務めた。その当時の外交委員長がジョー・バイデンだった。

ヘインズの起用は、トランプ政権での国家情報長官起用と対照的なものである。国家情報長官は2001年の911事件の後に、アメリカの18の情報、諜報機関全体を監督する目的で創設されたポストである。トランプは政界における忠実な人物であるリチャード・グレネルとジョン・ラトクリフを情報・諜報専門のトップの大統領補佐官に起用した。連邦上院が承認すれば、ヘインズは初の女性国家情報長官となる。ヘインズの最初の仕事は情報・諜報の各機関の士気を高めることだ。これらの機関はトランプやトランプの支持者たちによって弱体化され、攻撃された。

しかし、政権移行が円滑に進まなかったために、いくつかの問題で情報が与えられていない。ヘインズは、「ソーラーウインズ」社のハッキング被害事件に関して機密情報が与えられていないと述べた。この事件では多くのアメリカ政府機関が被害を受け、捜査当局はロシアが関与していると発表した。

ヘインズは連邦上院国防委員会委員長に内定している、情報・諜報委員会のメンバーであるジャック・リード連邦上院議員に、「このことについて私はもっと多くのことを知らねばなりません」と述べた。

(貼り付け終わり)
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

(終わり)

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