古村治彦です。

 2022年にはアメリカでは中間選挙(Mid-Term Elections)が実施される。連邦下院議員の全議席(435)、と連邦上院議員(100議席)の約3分の1、州知事の一部の選挙が実施される。大統領選挙と大統領選挙の中間に実施される選挙であり、現職大統領に対する「中間テスト」のような意味合いを持つ。任期4年のうちの前半2年の「出来」はどうであったかということで、大統領を出している政党に対する投票で評価が決まる。

 拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』やこのブログでもご紹介してきたが、ジョージ・W・ブッシュ大統領時代の副大統領、実質的には大統領であったディック・チェイニーの娘リズ・チェイニー連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)の選挙に注目が集まっている。拙著でも書いたように、リズは父親ディック・チェイニーの威光を背景にして、連邦下院議長を目指して連邦下院共和党内部の出世の階段を上っている。詳しくは拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』をお読みいただきたい。

 リズは下の記事にある通り、ドナルド・トランプ前大統領に対する対決姿勢で名前を売った。2021年7月に設置された連邦下院1月6日事件委員会の副委員長(共和党側ではトップ)を務めている。こうしたリズの動きに対して、トランプは反対姿勢を鮮明にし、来年の選挙(連邦下院議員選挙)の共和党予備選挙で現職のリズに挑戦するハリエット・ヘイグマンへの支持を表明した。それに対してリズは「かかって来いよ」と挑発した。

 リズの援軍として、父親ディックにお世話になったジョージ・W・ブッシュ元大統領がおっとり刀で駆けつけて、資金集めパーティーを開催することを決めた。ブッシュ元大統領は、トランプを遠回しに批判し、トランプもまた「バカなくせに偉そうなことを言うなよ」と攻撃している。ワイオミング州下院議員選挙は、ブッシュ、トランプの大統領経験者2人の戦いになりつつある。更に言えば、ワシントンのエスタブリッシュメント派対ポピュリズム派の大きな枠組みの戦いの代理戦争(proxy war)状態になっている。この選挙区はこれからますます注目を集めていくだろう。

(貼り付けはじめ)

ブッシュがチェイニーのために資金集めパーティーを開催(Bush to hold fundraiser for Cheney

マイケル・シニール筆

2021年9月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/573331-bush-to-hold-fundraiser-for-cheney

ジョージ・W・ブッシュ元大統領は来月、リズ・チェイニー(Liz Cheney、1966年-、55歳)連邦下院議員(ワイオミング州選出、共和党)のために資金集めパーティーを計画していると報じられた。3期連続当然中のリズ・チェイニーは、トランプ前大統領と彼の協力者たちによるチェイニーの追い落とし運動の中で議席を維持しようと戦っている。

今回のチェイニーのための資金集めパーティーは、ブッシュ元大統領にとって、2022年の中間選挙のための最初のイヴェントとなる。今回のパーティーは2021年10月18日にテキサス州ダラスで開催予定だと『ウォールストリート・ジャーナル』紙と報じた。同紙はパーティーの招待状のコピーを入手した。

今回の資金集めパーティーはカール・ローヴが共同主催者となっている。カール・ローヴは、長年にわたりブッシュ元大統領の政治アドヴァイザーを務め、2020年の大統領選挙ではトランプの再選に向けて相談を受けたこともあった。加えて、ケイ・ベイリー・ハッチンソン元連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)も主催者に名を連ねている。ハッチンソンはトランプ政権下で、NATO担当米国大使を務めた。

リズ・チェイニーの父親はブッシュ大統領の任期8年(2期)の間、ホワイトハウスで副大統領を務めた。

今回の資金集めパーティーによって、二人の大統領経験者を戦わせることになる。チェイニーの選挙は2022年の中間選挙において人々の注目を最も集めているものである。

トランプは今月初め、チェイニーに対する挑戦者ワイオミング州検事ハリエット・ヘイグマン(Harriet Hageman)への支持を明らかにした。トランプは、チェイニーが今年1月のトランプ大統領への段階で賛成票を投じ、大統領選挙の結果は盗まれたものだというトランプの主張を否定したことを受け、チェイニーへの反対姿勢を強めた。

チェイニーは1月6日の連邦議事堂進入事件についてトランプに責任があるとして弾劾に賛成票を投じた。また、この反乱事件について調査する委員会のメンバーにもなった。チェイニーはトランプの反対姿勢と対抗馬への支持表明を受け、ツイッターで次のように書いた。「かかって来いよ(Bring it)」。

ブッシュは、2001年9月11日のテロ攻撃を記念する日に演説を行い、その中でアメリカ国内の過激派による脅威を憂慮し、「海外の暴力的な過激派」と「国内の暴力的な過激派」との間には共通点があると指摘した。ブッシュの演説はメディアの注目を集めた。

トランプはブッシュの演説を批判し、第43代大統領は「誰かにものを教えるなんてできない人物だ」と書いた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める