古村治彦です。
昨日2021年9月29日に、自民党総裁選挙の投開票が実施され、岸田文雄衆議院議員が総裁に選出された。現在、地味党と公明党で連立与党を組んでおり、岸田氏が菅義偉首相の次の首相ということになる。
選挙は9月17日に告示され、立候補者の受付が行われ、河野太郎ワクチン担当大臣、岸田文雄元外相・元総務会長、高市早苗元総務相、野田聖子幹事長代行が立候補した。野田氏は推薦人20名を集めるのに苦労していると報道されていたが
菅首相が9月3日に総裁選不出馬を表明して以来、総裁選挙の状況は一気に流動化した。岸田氏は菅首相府出馬表明前から、いち早く総裁選挙立候補を表明し、高市氏は、安倍晋三前首相の再登板を求めたが断られたことを受け、「私が出たるわ(関西の出身)」と啖呵を切り、安倍氏の支援も受けて、立候補となった。河野氏は、菅政権を支える現職閣僚、ワクチン担当ということもあり、すぐに出馬を決断という訳にはいかなかったが、若手の議員たちや、小泉進次郎環境相や石破茂元幹事長の支援を受け、「小石河連合」と呼ばれる協力体制を確立し、立候補となった。野田氏はこれまでも何度か総裁選挙立候補を模索したが、推薦人集めができずに断念してきた。今回は二階幹事長率いる二階派から推薦人を「借りる」ことができたという報道もあるが、立候補にこぎつけることができた。
今回は各派閥が対応に苦慮し、自主投票、ただし決選投票の際にはまとまって行動を同じ候補者に投票するという対応になったところが多かった。自民党の派閥は、「8個師団」時代から、三角大福中時代、ニューリーダー時代を経て、小選挙区制度導入もあり、構造を変化させつつも残っている。現在は、細田派(96名)、麻生派(55名)、竹下派(51名)、二階派(47名)、岸田派(46名)、石破派(16名)、石原派(10名)、無派閥63名という状況だ。派閥とはトップ(領袖)を総裁にするためのものとして始まったが(中間派と呼ばれた小派閥もあったが)、現在はトップが総裁を目指すということも少なくなった。今回も岸田氏のみが派閥を率いる領袖だった。
河野氏は麻生派のプリンス(次に領袖になると見られている人)だったが、今回の総裁選挙では麻生は全体を率いて戦うということではなく、現在の領袖である麻生氏から立候補の了承は得たが、麻生は全体で河野氏を支えるという雰囲気はなかった。高市氏は、元々は細田派に属していたが既に退会しており、無派閥であり、細田は全体からの支援ということも難しかったが、実質的なオーナーである安倍晋三前首相が高市氏を全面支援した。野田氏は独自の戦いを展開した訳だが、自民党にとっては良い効果もあったと思う。
総裁選挙の結果は次のようなものとなった。簡単にまとめたので見ていただきたい。
(貼り付けはじめ)
■党員算定票(382票、有効投票数:760075票)は
・河野太郎(335046票、44.08%):地元神奈川県を含む37都道府県で1位
・岸田文雄(219338票、28.86%):地元広島県を含む8県で1位
・高市早苗(147764票、19.44%):地元奈良県で1位(2位は河野)
・野田聖子(57927票、7.62%):地元岐阜県で1位(2位は河野)
↓ドント方式で計算して
・河野太郎:169票、岸田文雄:110票、高市早苗:74票、野田聖子:29票
■国会議員票(380票:本来は382票だが病欠などがあった)は
・河野太郎:86票、岸田文雄:146票、高市早苗:114票、野田聖子:34票
■1回目の投票では
・河野太郎:255票、岸田文雄:256票、高市早苗:188票、野田聖子:63票
■岸田文雄、河野太郎の上位2名による決選投票
・河野太郎:131票(議員票)+39票(党員算定票)=170票
・岸田文雄:249票(議員票)+8票(党員算定表)=257票
(貼り付け終わり)
全体の印象としては、メディアで騒がれたほどには、河野氏は党員党友票が取れていなかったこと、高市氏は議員票も党員党友票が取れていなかったことだ。インターネットで調査をすれば、支持率で言えば河野氏が断然トップだったし、高市氏を応援するインターネット世論も大きく、「高市氏が2位になるのではないか」という勢いもあった。しかし、インターネットとは曲者だ。私は2000年の「加藤の乱」を思い出す。加藤紘一氏は、自身に寄せられたEメールの束を手にして、小渕恵三首相に戦いを挑み、一敗地にまみれた。インターネットは実像をより大きく見せる効果があるように思う。
党員党友票の大幅リードで河野氏が1回目の投票で1位になると見られていて、岸田氏、高市氏が2位と3位になると見られ、決選投票になったら「2・3位連合」という話も出ていたが、接戦で岸田氏が1位、河野氏が2位となった。河野氏の敗北が決定的となった。
河野氏の敗因は、国会議員票の獲得数の少なさに尽きる。また、党員党友票がもっと獲得できるのではないかとも陣営は考えていたのではないか。空中戦の失敗だ。小泉純一郎出現の時のような熱狂がなければ、河野氏の当選は困難だった。そして、人々は、あの時の熱狂を苦々しい記憶として持っている。河野氏のあのドライな、冷たい態度は政治家としては致命的な欠点ということになる。それでこれまで8回も当選してきたのだから、直すことはできないだろうからそのままで進むしかない。
今回の総裁選挙で私が考えるキーワードは「通産省」と「産業政策」だ。この2つの言葉が並ぶと、チャルマーズ・ジョンソン著『通産省と日本の奇跡: 産業政策の発展1925-1975 (ポリティカル・サイエンス・クラシックス)』(1982年)を思い出す方も多くおられると思う。私がどうしてそのように考えるに至ったかについて書いていきたい。まず以下の記事をお読みいただきたい。
(貼り付けはじめ)
●「「ガッカリ河野を見切って高市に乗り換え」議員たちの驚きの打算」
9/28(火) 10:32配信 FRIDAY
https://news.yahoo.co.jp/articles/e5b643d655ed9193bb1c197206c5f7131bf26261
予想外の大混戦となった自民党総裁選は、いよいよ9月29日に「決戦」を迎える。一挙手一投足を追うメディアの世論調査では、発信力の高さに定評がある河野太郎ワクチン担当相のトップは不動だが、「決選投票になれば河野氏ピンチ」というのもコンセンサスである。熾烈さを増す権力闘争の中で、勝敗を分けるとされる態度未定の議員たちの心理は複雑なようで―。
【画像】今井絵理子議員が「期待の美人秘書」と国会でツーショット!
◆着信に「安倍前総理」
「本人からの電話に驚いた。ここまで力を入れているなんて…」
携帯電話の着信履歴を見返しながら自民党の若手議員が首をひねるのも無理はない。「本人」とは、総裁選の立候補者ではない。河野氏を猛追する高市早苗前総務相を全面支援する安倍晋三前首相からの応援依頼だったからだ。議員間ではしきりに情報交換がされ、態度を決めかねているとされる約2割の議員の元には各方面からの電話が続いている。
情報戦もヒートアップする一方だ。
「もしも裏切り行為があれば、安倍さんが許すことはない」
「岸田文雄前政調会長が決戦投票で勝つのは明白。いま力を貸しておけば、新政権で活用してくれるはず」
前首相から直で電話が来る時代。この時ばかりは若手議員たちは通信手段の発達を恨んだことだろう。
いまも態度を決めかねている議員らの頭の中にあるのは、11月に予定される総選挙だ。安倍前首相からの揺さぶりも効果はあるが、その一方で、
「河野さんが首相になるのを後押しすれば、石破茂元幹事長や小泉進次郎環境相が選挙の時に必ず応援にくる」
「逆に保守色の強い高市氏では、公明党がついていけなくなるから、選挙では不利ではないか」
との算段が頭の中をメリーゴーランドのように駆け巡っているのだ。国民の人気が高い「小石河連合」に加えて、河野氏を支持する菅義偉首相からのにらみは、選挙に弱い態度未定の議員心理を揺さぶる。
だが、当選ムードを漂わせる河野陣営を横目に「ガッカリした」と距離を置き始めたのは自民党中堅議員の1人だ。その理由は、河野氏が総裁選への出馬表明を2日後に控えた9月8日に経団連を訪れていたことにある。「脱原発」を唱えていた河野氏は、十倉雅和会長と会談し「安全と認められた必要な原発は再稼働させていく」などと、自らの主張を“修正”した…と受け止められたからだ。10日の記者会見でも「安全が確認された原発を当面は再稼働させるのが現実的だ」と明言した。
◆河野包囲網
歯に衣着せぬ発言や突破力が最大のアピールポイントだったはずの河野氏は牙を抜かれつつあるようにも映る。「一部の政治家からは『すべてを電気自動車にすれば良いんだ』とか、『製造業は時代遅れだ』という声を聞くこともあるが、それは違うと思う」。日本自動車工業会の豊田章男会長は9日、踏み込んだ発言で周囲を驚かせたが、河野氏やその周辺が念頭にあるというのがもっぱらの見方だ。
さらに日本貿易会の小林健会長(三菱商事会長)も15日、原発に関して「検討もしないで『イエス・オア・ノー』ということはありえない」として、新増設の検討が必要との見解を示した。対立陣営からは「河野氏が新しい首相になれば、企業とうまくいかないのではないか」との声が伝わる。
河野氏の周辺は、財界をはじめ企業に「河野包囲網」のメッセージを送っているのは、安倍政権時代に首相秘書官を務めた今井尚哉氏であると見ている。岸田氏の勝利に向け指南しているとも報じられる今井氏は、経済産業省時代のネットワークに加えて、安倍氏が勝利してきた過去の総裁選で原動力となった支持団体の重要性を最も知る人物だ。「『職域』がどんどん剥がされているようだ」と河野氏のブレーンに不安はつきない。
今回の総裁選は、議員票382と党員票382の計764票で争われる。約110万人に上る党員が「国民感覚」に近いのは間違いないが、その内訳を考えれば、総裁選での投票行動は必ずしも「国民感覚に近い」とは言い切れない。
その理由は、業界団体に属している「職域党員」が党員票全体の4割近くに上るためだ。「職域」は全国単位で動くことが可能で、安倍氏の総裁選で党員票の積み増しに大きく貢献したとされる。さらに、この支持団体からの支援を受ける議員たちも、その動向を気にしないわけにはいかなくなる。
世論調査の数字からは「最も総理大臣に近い男」であることは間違いない河野氏だが、総裁選終盤では焦りも見え始めている。26日のフジテレビ番組で「河野氏の陣営が1回目の投票で一部の票を高市氏に回す動きもある」との解説に対して、「ひどいフェイクニュースですよ」「するわけないですよ!冗談はよしてください」と激高する一幕も。
加えて、ジャーナリストの田原総一朗氏からは「河野太郎が出馬会見で『脱原発』も、『女系天皇』も外して、どうしようもなかった。河野に言ったのよ、ガッカリしたと。なんであんなことを言ったのかといえば、そういわなければ麻生さんが出馬を認めなかったんだと」などと、ウッカリ“暴露”されてしまう始末である。
権力闘争よりも新型コロナウイルス対策の方をシッカリしてほしいというのが国民の願いであるが、自民党の若手議員からは、総選挙での応援だけは「シッカリきてくださいよ」との声が漏れる。なんとも空しいものである。
取材・文:小倉健一
イトモス研究所所長
(貼り付け終わり)
私はこの記事を読みながら、次の文章に目が留まった。引用する。「河野氏の周辺は、財界をはじめ企業に「河野包囲網」のメッセージを送っているのは、安倍政権時代に首相秘書官を務めた今井尚哉氏であると見ている。岸田氏の勝利に向け指南しているとも報じられる今井氏は、経済産業省時代のネットワークに加えて、安倍氏が勝利してきた過去の総裁選で原動力となった支持団体の重要性を最も知る人物だ」。今回の総裁選挙で岸田氏の陣営の指南役として入り、経済界における「河野包囲網」を作り上げたのが、「今井尚哉(いまいたかや、1958年-、63歳)」氏だったというのだ。今井氏は第二次安倍政権時代に政策担当秘書官・内閣総理大臣補佐官(秘書官と兼任)を務めた人物だ。その今井氏が今回、岸田陣営の指南役となったということは違和感があった。これまでの関係で言えば、安倍氏の許で、高市氏の応援に回るのが自然ではないかと私は考えた。それなのに、今井氏が岸田氏支援に回ったのはどうしてか、ということを私は不思議に思った。そこで出てくるキーワードが「通産省(通商産業省、現在の経済産業省、戦前は商工省)」だ。岸田氏と今井氏の周辺は通産省だらけなのだ。
まず、岸田氏の父親である岸田文武氏(きしだふみたけ、1926-1992年、65歳で没)は1978年(1949年入省)に退官するまで、通産官僚だった。貿易局長、中小企業庁長官を務めた。1963年からはニューヨークに在勤し、息子である文雄は小学校時代の3年間をニューヨークで過ごした。
今井尚哉氏の叔父には、通産事務次官(1937年商工省入省)を務め、城山三郎の小説『官僚たちの夏(新潮文庫)』(1980年刊行、数年前に渡辺謙主演でドラマ化された)の主人公今井善衛(いまいぜんえい、1913-1996年、83歳で没)、新日鉄社長・経団連会長を務めた今井敬(いまいたかし、1929年-、92歳)がいる。安倍晋三前首相の祖父・岸信介(1896-1987年、90歳で没)元首相は1920年に農商務省に入省し、1925年の分割の際に商工省に所属した。1939年に商工省次官となった。その間には満州国に赴任した。
上記のように、岸田氏は通産官僚の息子であり、今井氏は叔父が通産官僚で最高位の事務次官を務め、自身も通産省に入省したという経歴を持つ。岸田氏は、東京大学の入学試験で不合格となり、2年の浪人を経て、早稲田大学法学部に入学し、卒業後は日本長期信用銀行に入行した。その頃には父親が既に政治家であったが、政治家を目指してはいなかったそうだ。確かに、これまで歴代の早稲田大学出身の総理大臣は雄弁会出身者が殆どだ。雄弁会は政治家を目指す学生の登竜門であるが(最近はそうでもないようだが)、岸田氏は参加しなかったようだ。早稲田大学にはどうしても早稲田に行きたいという学生ばかりではなく、東大や京大などに不合格になって仕方なく入学してきた学生も多く、雰囲気が違う。愛校心(周囲の迷惑を考えずに早稲田の校歌を歌いまくるのはそうとは言い難いが、これが愛校心溢れる行動とされる)は早稲田大学には薄いようだ。岸田氏のよりどころは、東京の名門・開成高校にある。以下の記事を貼り付ける。
(貼り付けはじめ)
●「岸田新総裁は開成高、早稲田大卒 総裁選を争った4人の出身校と華麗なる同窓生たち
〈dot.〉」
9/29(水) 15:05配信 AERA dot.
https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6
https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6?page=2
https://news.yahoo.co.jp/articles/65b9672b1bce0cb0f2b91906bd3cfc06ba9043f6?page=3
9月29日、第27代自民党総裁に岸田文雄議員が決定した。
これで事実上、岸田首相が誕生することになる。9月上旬、菅義偉首相が不出馬を表明してから自民党総裁選挙がはじまり、岸田文雄、河野太郎、野田聖子、高市早苗の4人が立候補。自民党国会議員と党員・党友によって投票が行われ、新しい日本のリーダーが誕生したわけだ。総裁選を争った4人について、出身校とその特徴、同窓生をみてみよう。
【ランキング】国会議員の出身大学ランキング<政党別/女性議員/2世3世…計8ページ>
■岸田文雄氏
岸田文雄は1957年生まれ。開成高校を卒業して東京大を目指したがかなわず、早稲田大に進んだ。
開成には永田町・霞が関開成会(永霞会)という同窓会組織がある。同校OBの国会議員、省庁職員が集まる親睦会だ。現在、議員は9人、国家公務員は1府12省庁で約600人にのぼり、事務次官クラスが10人近くいるといわれている。
開成OBの国会議員には東京大、官僚経由が多い(カッコ内は出身省庁)。
上野宏史(経済産業省)
小林鷹之(財務省)
鈴木馨祐(財務省)
城内実(外務省)
鈴木憲和(農林水産省)
永霞会事務局長の井上信治議員に「永霞会が開成OBを総理に、と盛り上がることはありますか」とたずねたところ、こう答えてくれた。
「開成から総理が生まれるのはうれしいけど、そのために永霞会を発足させたわけではありません。OBの政治家と官僚が国のために折に触れて協力し合えばいいと考えています」(「週刊朝日」2021年4月2日号)
昨年の総裁選では菅義偉と岸田が争ったが、永霞会の開成OB議員は菅に投票しているという。これは同校OB議員が所属する派閥の事情によるものだった。
■河野太郎氏
河野太郎は1963年生まれ。慶應義塾中等部、慶應高校から慶應義塾大経済学部に進む。総裁選でタッグを組んだ石破茂は高校から慶應に進み、慶應義塾大法学部というコースをたどった。
慶應高校出身の国会議員はおよそ30人いるが、2世、3世が多い。父や祖父が大臣経験のある大物議員が並ぶ。(*は首相経験者)
竹下亘 異母兄は竹下登*(17日に死去)
福田達夫 祖父は福田赳夫*、父は福田康夫*
岸信夫 父は安倍晋太郎、祖父は岸信介*で、岸家と養子縁組。兄は安倍晋三*
石原伸晃、石原宏高 父は石原慎太郎
奥野信亮 父は奥野誠亮
高村正大 父は高村正彦
中曽根康隆 父は中曽根弘文、祖父は中曽根康弘*
慶應高校出身の国会議員は「華麗なる一族」を持つ。このうち中曽根康隆の祖父、福田達夫の父と祖父、岸信夫の祖父と兄、竹下の異母兄は首相となった。逆に言えば、首相は親族を慶應高校に入れたがる傾向にあるということか。河野太郎の父、河野洋平、そして祖父・河野一郎も派閥、小グループの領袖であり、首相候補だった。
だが、不思議なことに慶應高校出身の首相は生まれていない。慶應義塾大からは橋本龍太郎、小泉純一郎などの宰相が輩出したのだが、塾高出身は縁がない。
■野田聖子氏
野田聖子は1960年生まれ。田園調布雙葉高校を中退してアメリカのハイスクールで学ぶ。田園調布雙葉の3学年下には雅子皇后がいた。同校には各界著名人の子女が通っていることでも知られる。長嶋茂雄の次女でスポーツキャスターの長島三奈、佐田啓二の長女で俳優の中井貴惠などだ。
野田は帰国して上智大学外国語学部比較文化学科に入学する。現在の国際教養学部である。もともと上智大国際部と称していた。同学科は芸能人を多く送り出している。范文雀、ジュディ・オング、南沙織、アグネス・チャン、早見優、西田ひかる、リサ・ステッグマイヤー、クリスタル・ケイ、青山テルマ、はな、川平慈英、デーブ・スペクターなど。キャスターには安藤優子、山口美江、小牧ユカなどもいた。
なお上智大出身の国会議員には平井卓也、西銘恒三郎、小林史明(以上、自民)、玄葉光一郎、山崎誠、松平浩一、今井雅人(以上、立憲民主)などがいる。同大学からは細川護熙元首相が輩出した。
野田は1993年に初当選し、1998年には当時、戦後最年少の37歳10カ月で郵政大臣に就任する。このとき近い将来、初の女性首相誕生かと注目された。それから20年以上経ったが、今回も国のトップにはなれなかった。
■高市早苗氏
高市早苗は1961年生まれ。野田と学年は一緒である。奈良県立畝傍高校の出身。うねびと読む。その由来について、学校史にこう記載されている。
「『畝傍』(うねび)という校名については、創立以来今日にまで続き、幾多の卒業生にとって無限の郷愁もたらす名称であるが、その由来を示す確かな記録は見当たらない」(畝高七十年史、1967年)
そっけない。近くに畝傍山、畝傍御陵という古くからの地名があり、ここからとられたのではないかといわれている。
同校卒業生はなかなかおもしろい。日本郵政初代社長で、三井住友フィナンシャルグループ社長をつとめた西川善文、舞踏家で大森南朋の父である麿赤兒、『試験にでる英単語』で受験界を一世風靡した元日比谷高校教諭の森一郎、中央公論社の社長だった嶋中雄作、元文部科学事務次官の前川喜平の祖父で和敬塾創始者の前川喜作など。多士済々だ。
高市は大学入試で早稲田大、慶應義塾大に合格したが、親のすすめで神戸大経営学部に入学した。同大学出身の国会議員には山田賢司、繁本護(以上、自民)、吉川元(立憲民主)がいる。
なお、神戸大経営学部の前身である神戸商業大出身には、宇野宗佑元首相がいた。
1989年6月3日の宇野内閣発足後まもなく参議院選挙が行われるが、リクルート事件、消費税導入、宇野の女性問題報道で支持が得られず、自民党は大敗し、投票日翌日の7月24日に退陣を表明した。宇野の首相在任期間は69日、日本政治史上4番目の短さだった。
このころ、高市は松下政経塾を卒塾したばかりで、国政選挙に出る準備をしていた1992年、参議院選挙で落選、1993年、衆議院選挙で初当選した。
出身高校、大学のカラーと政治家は直接関係ない。だが、高校、大学をどのように過ごしたか、そこで、どのようなことを考え、何を目指したかは、その政治家の国家観を知るうえでヒントになる。そこで受けた教育、出会った恩師や先輩、築き上げた友人の力は大きいからだ。高校や大学で社会と向き合うようになったときのこと、やがて政治家になろうと思ったときのことなど、自身を振り返って語ってもらいたい。
<文中敬称略>(教育ジャーナリスト・小林哲夫)
(貼り付け終わり)
上記の記事にあるように、開成高校出身者たちで、政治家や官僚になっている人たちは、「永田町・霞が関開成会(永霞会)」を結成しているそうだ。岸田氏は東大出身でもなく、官僚出身でもないが、霞が関には強力な人脈を持っていると言えるだろうし、経歴は「党人派」であるが、「官僚派」に近い肌合いを持っているようだ。こうして見ると、今回、今井氏が指南役となって、岸田氏当選に尽力したということもうなずける。
岸田氏の考えているであろう日本の姿とは、戦後高度経済成長期の「日本型」資本主義での成功例であろう。1960年代から70年代にかけて、日本は毎年10パーセント程度の経済成長率を維持した。このような経済成長が続くと、国内での経済格差が生じ、社会不安が起きるが、それを起こさず、「一億総中流社会」を実現した。英語では、「economic miracle without inequality」ということになる。以下の記事を読んでいただきたい。
(貼り付けはじめ)
●「ポストコロナ政策で岸田氏が議連、安倍・麻生・甘利氏ら参加」
ワールド
2021年6月11日 ロイター編集
https://jp.reuters.com/article/japan-kishida-idJPKCN2DN0GM
6月11日、自民党の岸田文雄前政調会長が中心となり、ポストコロナ時代の政策を議論する「新たな資本主義を創る議員連盟」が、設立された。写真は東京都で2020年9月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)
[東京 11日 ロイター] - 自民党の岸田文雄前政調会長が中心となり、ポストコロナ時代の政策を議論する「新たな資本主義を創る議員連盟」が11日、設立された。安倍晋三前首相と麻生太郎財務相、甘利明党税調会長らも参加した。
安倍前政権発足時に政権の中枢を担った「3A」と称される安倍・麻生・甘利氏は、半導体議連など多数の議連を立ち上げている。
あいさつした麻生氏は、会場を見渡し、「政策を勉強している経済記者でなく、政局記者の顔が見える」と述べた上で、3Aによる議連設立が政局的に受け止められていることに触れ、「そういった話があるから人が集まるんだろうが、いま資本主義について議論するのは良いこと」と指摘した。
岸田氏は「コロナで格差が拡大しており、格差、分配の議論が重要になると確信している」と強調した。安倍氏は「ウォール街の強欲な資本主義でない、資本主義を考えていきたい」と語った。
初回の今回は、渋沢栄一氏の玄孫にあたる渋沢健氏(コモンズ投信会長)が講演した。
(貼り付け終わり)
安倍晋三や麻生太郎、甘利明の三悪人の「3A」が岸田氏の議連に参加したという内容だが、岸田氏は2021年6月に立ちあげたこの議連の名前は、「新たな資本主義を創る議員連盟」だ。そして、岸田氏は「コロナで格差が拡大しており、格差、分配の議論が重要になると確信している」と発言している。しかし、分配するにも何をするにも必要なのはお金だ。その「お金の稼ぎ方」として、出てくるのが、「産業政策」だ。
2021年6月4日、岸田氏が議連を立ち上げる1週間前、経産省は、「経済産業政策の新機軸~新たな産業政策への挑戦~」という資料を発表した。資料の内容は、いかのPDFを参照していただきたい。新時代の産業政策を打ち上げたものだ。
※資料は以下のアドレスからどうぞ↓
●「コロナ禍の今、経済産業省が「大きな政府」に大転換した“切実な理由”」
室伏謙一:室伏政策研究室代表・政策コンサルタント
2021.6.19 4:05 ダイアモンド誌
https://diamond.jp/articles/-/274042
https://diamond.jp/articles/-/274042?page=2
https://diamond.jp/articles/-/274042?page=3
経済産業省の産業構造審議会が、「経済産業政策の新機軸」という画期的な方針を打ち出した。新型コロナウィルスの感染拡大による社会経済の世界的な変化を受け、日本が採用すべき「経済産業政策の新規軸」をまとめたものだ。主要国がすでに転換し始めたように、「小さな政府」から「大きな政府」に転換する必要性を訴えている。特に注目されるのが、産業政策における「大規模・長期・計画的」な財政出動を求めていることだ。この「新規軸」が実現しなければ、日本の貧国化は免れないだろう。(室伏政策研究室代表・政策コンサルタント 室伏謙一)
●ウィズコロナ時代において、「政府の役割」は根本的に変わった
6月4日、第28回産業構造審議会総会が開催された。
産業構造審議会は、経済産業省設置法第6条第1項に基づき設置され、第7条第1項各号に掲げる事務をつかさどり、とりわけ「経済産業大臣の諮問に応じて産業構造の改善に関する重要事項その他の民間の経済活力の向上及び対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展に関する重要事項」を調査審議する、経済産業省の重要な審議会の一つである。
同審議会の総会は、これまでの実績ベースで、概ね年に1~2回開催され、各年度の経済産業政策の重点事項や今後の経済産業政策の新たな方向性について議論・検討が行われてきており、いわば我が国の経済産業政策の重要な方向性や方向転換がここで決まっていると言ってもいい。
さて、その重要審議会で今回の議論の対象となったのは、新型コロナウィルスの感染拡大による社会経済の世界的な変化を受けた、今後の経済産業政策の在り方、「経済産業政策の新機軸」である。
まず、基本的な問題意識として、新型コロナウィルスの感染が世界的に拡大したこの1年間を「ウィズコロナ」と位置付け、ワクチンが行き渡り始めたが、変異株の発生などにより、ウィルスへの対応は継続中であること等から、その後の十数年間をその延長線上とし、昨年1年間の変化も踏まえた、いわゆる「アフターコロナ」ではない目指したい「日常」と、それに向けた経済産業政策の望ましい在り方について議論することとしている。
同審議会提出資料においては、「ウィズコロナ」の1年の変化や、それ以前からの構造的変化についての多角的な視点からの分析が行われているが、とりわけ重要なのが、政府の役割の変化であろう。その役割とは、経済産業政策と財政政策という二つの点における役割である。
新型コロナへの対応の中で、世界中で政府の役割が増大し、これまでで最大規模の財政支出をするにまで至っており、米国を筆頭に各国は大規模な財政支出を続けているし、EU諸国も債務残高の対GDPという財政規律を一時停止しているが、そもそもこの十数年における国家と企業の関係を見ていくと、補完関係が強まっているのではないかとしている。
「重要産業」や「戦略産業」を国が守り育てる時代へ
しかも、持続可能な社会を志向し、安全保障、環境、健康、雇用、人権等の社会的課題の解決を重視した投資(財政支出)へ変化するとともに、重要産業や戦略産業を国が守り育てる方向にシフトしてきているとしている。
具体的には、再エネや充電インフラ等のグリーンインフラや関連研究開発への大規模投資であるが、それのみならず、特に米中の技術覇権対立を背景として、半導体については国産化や輸出管理等の強化へとシフトしている。
また、そうした覇権対立と呼応するかのように、企業の事業活動に関し、人権・奴隷労働の有無、環境への影響等について明らかにすることを法的に義務付ける、人権デュー・デリジェンスの導入が進んできていることにも言及している。
その趣旨は、一義的には人権侵害や奴隷労働等を行っている事業者と取引をしないようにし、そうしたものを根絶させることであるが、グローバル企業は人権侵害、奴隷同然の労働、環境破壊を公然と行う事業によってコストを大幅に圧縮して莫大な利益を上げているところ、そうしたビジネスモデルを改めさせよう、それによって社会的公正を取り戻し、格差問題の解決にも繋げていこうということであろう。
つまり、規制の強化によって公正な社会を実現しようということであり、市場重視、民間の自由な経済活動尊重の政策的思考とは隔世の感がある。
また、同趣旨の事項として、G7蔵相・中央銀行総裁会議の共同声明にも盛り込まれ、議長国のイギリスのスナク蔵相が誇らしげに語っていた、「グローバル企業に対する国際課税の公正性の確保」についても触れられている。
加えて、「自由貿易のアップグレード」として、これまでのグローバル企業のための、放埒な自由貿易の是正により、公正性や持続可能性、格差是正の確保を目指すことについても言及されている。
●市場原理を克服する「政策の新規軸」が不可欠である
そして、今後に向けて、政策は何がどう変わるべきかについて次のように提言している。
「既存の市場原理だけでは社会課題解決を実現する産業はなかなか成立しない中で、『価値』を巡る国家間の競争や正統性の再定義があることも鑑み、野心的で共感を呼ぶ『目標』を設定したうえで、緩和だけでなく強化も視野に入れた規制改革や、国内外の情勢変化を踏まえた、大規模・長期・計画的な財政政策を実行し、デジタルを前提に、全く新しい行政手法のあり方を模索しながら取り組み、有志国と連携しつつ、内外一体での産業政策の展開を図る」
そのうえで、今後に向けた大きな方向性の三本柱として、
(1)「経済」×「環境」の好循環~グリーン成長戦略~
(2)「経済」×「安保」の同時実現~経済安全保障/レジリエンス~重要技術・産業・インフラを「知る」・「守る」・「育てる」政策
(3)「経済」×「分配」=包摂的成長~「人」への投資・「地域」の持続発展~
を掲げている。
少々総花的であり、大風呂敷を広げた感は否めないが、こうしたことを踏まえて、「『経済産業政策の新機軸』~新たな産業政策への挑戦」と題する資料が提示された。
その中では、まず、中国や欧米において「大規模な財政支出を伴う強力な産業政策」が展開されていることや、かつては政府が主導的な役割を果たす産業政策が強く批判されていた米国においても、産業政策を支持する「産業政策論」が台頭してきていることを挙げている。
そして、そうした産業政策を次のように総括した。
「伝統的な産業振興・保護とも、相対的に政府の関与を狭める構造改革アプローチとも異なり、気候変動対策、経済安保、格差是正など、将来の社会・経済課題解決に向けて鍵となる技術分野、戦略的な重要物資、規制・制度などに着目し(ミッション志向)、ガバメントリーチを拡張するというもの」
そのうえで、日本においても、これまでの産業政策を検証したうえで、「産業政策の新機軸」を確立・実行していくことが求められているのではないか、経産省のみならず、政府全体として、政府の人的資源・政策資源を質と量の両面から精査した上で、速やかに実行に移していくべきなのではないか、としている。
●ようやく日の目を見たスティグリッツの提言
こうした変化のあり方が、同資料に体系的に一覧表でまとめられている(図1参照)。
ここで特に注目したいのは、「新機軸」における政策のフレームワークとして、「ミクロ経済政策とマクロ経済政策の一体化(需要と供給の両サイド)」が記載され、これまでの「構造改革アプローチ」においては、供給サイド、サプライサイド向けの政策が中心だったが、その転換を図るべしとしていることだ。
実はこうした指摘は、平成28年に、伊勢サミットを前に官邸で開かれた国際金融経済分析会合において、経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏が具体的かつ簡潔に行っていた。
それは、およそ次のような内容だった。
「有効需要が欠如している状況でのサプライサイドの改革は失業を増大させる等、有害であるのみならず成長にはつながらないし、供給はそれ自身の需要を創出するわけではないのであるし、実際、需要を弱め、GDPを減らすことになる。サプララサイドの政策は需要と一体で機能するのであり、例えば、技術開発投資、人材育成投資、働きやすい環境の整備(公共交通の充実、育児休暇や傷病休暇等)」
といった政策が有効といったものである。
その際には、安倍官邸にはまともに受け入れられなかったようであるが(そもそも理解出来なかったのではないかとの疑いもあるが)、やっとそうした主張・考え方が日の目をみるようになったということであろう。
「大規模・長期・計画的」な財政出動が不可欠
そして、ここが最も重要であるが、「新機軸」における財政出動を、「大規模・長期・計画的」としている。
その背景・根拠として、同資料の「マクロ経済政策の新たな見方」において、次の3点を指摘している。
(1)低インフレ、低金利においては、財政政策の役割も重要
(2)コロナ禍による総需要の急減は、低成長を恒久化する恐れがある(履歴効果)。財政政策によって総需要不足を解消し、マイルドなインフレ(高圧経済)を実現することは、民間投資を促し、長期の成長を実現するためにも必要
(3)コロナ対策やマイルドなインフレを実現するための財政支出の拡大は、財政収支を悪化させるが、超低金利下では、そのコストは小さい
実際、10年ものの日本国債の利回りはずっと低下してきており、近年ではほぼ横ばい状態であり、緊縮財政派がさんざん脅かしてきた「金利の急騰」などは起きていないし、起こる兆しもない。
つまり、「民間任せ」「市場任せ」ではなく、政府が主体的かつ大きな役割を果たすべく、長期的な視点に立って、大規模な財政支出によって経済産業政策を運営していくべきであるということであり、これまでの「小さな政府」的な発想に基づく政策の否定であり、そこからの大転換である。
もちろん、この経産省の打ち出した「新規軸」には、強い抵抗も予想される。例えば、直近で閣議決定されることが予定されている「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太の方針」では、昨年は記載されなかったプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化目標が、年限は示されないものの、記載される方向であり、「経済産業政策の新機軸」において示された方向性とは相反することになりそうである。
●日本が「成長するか、貧国化するか」の瀬戸際
しかし、世界的な潮流を見ても、また新型コロナショックという危機への対応という観点に立っても、大規模な財政出動と国の役割の増大・強化への転換は当然のことである。そもそもプライマリーバランスの黒字化などという財政規律や目標を掲げている主要国は日本だけである。
主要各国が大規模な財政支出と、国が前面に出た経済産業政策を着々と進めていく中で、日本だけがそうしたものに背を向けていれば、日本は成長しないどころか、貧国化への道を着実に進むことになるだけである。
先にも示したとおり、財政拡大を続けても我が国は何ら問題がないのであるから、日本が先進国だったという話が遠い昔の話として語られることがないよう、政治家を筆頭に、官僚、地方公務員、専門家、事業者、そして国民全体が、財政政策と経済産業政策の両面における国の役割の重要性と拡大について、それを是とし、それを当然とする方向へ早急に転換していくことが求められよう。
今後の議論のさらなる進展に期待するとともに、「緊縮財政」や「小さな政府」といった、ある種時代遅れな考え方に囚われて、それを狂信的に固守する勢力に足を引っ張られたりすることがないよう、関係各位の尽力を強く希望したい。
(貼り付け終わり)
日本は政治改革と経済改革で大きく傷ついた。日本国民は、市場原理主義を持ち込めばななんでも解決という単純な議論に熱狂させられ、馬鹿を見た。小泉・竹中路線は誤りだったということだ。「アメリカみたいな国になればよい」で実際になってみたが、悲惨な状況になっている。
経産省の資料の中に、重要な名前が掲載されている。それは、アメリカのジョー・バイデン大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンの名前だ。ジェイク・サリヴァンについては、拙著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で詳しく取り上げてきた。サリヴァンは補佐官就任前に、産業政策の重要性を主張する論文を書いている。アメリカにおいても、産業政策の重要性が増している。
加えて、現在、世界で最も経済的に成功している中国が採用しているのが産業政策なのである。その源流をたどれば、日本に行きつく訳だが、世界で産業政策の重要性が増している。本家の日本でもそこに戻ろうという動きが出ている。1990年代には、産業政策なんて効果はない、そもそもなかったのだ、という議論があった。日本にそうしたことを紹介し、日本国内で主導したのは竹中平蔵だ。例えば、1993年に出版された、ローラ・タイソン著『誰が誰を叩いているのか―戦略的管理貿易は、アメリカの正しい選択?』の監訳者は竹中平蔵だ。
「アメリカは中国を模倣して産業政策をやるべきだ」という主張もアメリカも区内で出ているような中で、「日本型」資本主義に戻ろうという岸田氏の当選はその流れに沿ったものであると言える。
ここまで長々と書いてきたが、岸田氏当選のキーワードは「通産省」と「産業政策」であり、「日本型」資本主義へ返るという動きなのだろうということが私の結論だ。
(終わり)
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