古村治彦です。

 アメリカ連邦議会では現在、アメリカ政府の債務上限引き上げと大型支出予算が主要な話題となっている。今年8月に、アメリカ連邦下院(民主党220名、共和党212名、欠員3名)は10年間3兆5000億ドル(約385兆円)の財政支出法案を可決し(賛成220票、反対212票)、連邦上院に送った。党派のライン通りの結果となった。連邦上院(民主党50名[民主党48名;諸派2名]、共和党50名)での可決は不透明な状況だ。

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●「米下院、35000億ドルの予算決議可決」

2021 8 25 08:00 JST ウォールストリート・ジャーナル紙

https://jp.wsj.com/articles/house-passes-3-5-trillion-budget-blueprint-sets-deadline-for-infrastructure-bill-11629846004

 【ワシントン】米議会下院は24日、35000億ドル(約384兆円)の予算決議を僅差で可決した。1兆ドル規模のインフラ投資法案についても、927日までに採決することを決めた。インフラ投資法案を先に採決するよう求めていた民主党内の中道派と指導部との対立が終結した。

 最終的な合意は賛成220票、反対212票で可決されたが、インフラ投資法案と予算案を連続で処理する方針を示していた民主党指導部は戦略転換を余儀なくされた。両法案は数週間隔でそれぞれ下院で採決される可能性がある。インフラ投資法案の採決期限までに予算案をまとめられなければ、今後の協議でリベラル派の影響力は低下しかねない。

 下院が予算決議を可決したことで、民主党は上院議員50人(民主党系無所属議員含む)全員の支持を得られれば、医療・教育支援や気候変動対策を盛り込んだ予算案を共和党の支持なしでも可決することができる。上院は同じ内容の予算決議を可決済みで、議員らが法案の詳細を詰めている。

 ナンシー・ペロシ下院議長(民主、カリフォルニア州)は24日午後、超党派のインフラ投資法案を「927日までに可決する」と約束した。中道派はインフラ投資法案の即時採決こそ実現できなかったが、927日という期限が設定されたことで、35000億ドルの予算案の準備が整う数週間前にはインフラ投資法案の採決が可能になりそうだ。ペロシ氏はこれまで、予算案が上院を通過するまでインフラ投資法案を下院で採決しない意向を示していた。

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●「米下院委、今週3.5兆ドルの予算決議案を審議」

9/8() 5:24配信 ロイター通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/30e57f92f69175e0efc2bbf73d249afb3f46d9bc

[ワシントン 7日 ロイター] - 米下院委員会は今週、子育て支援などの福祉拡充に3兆5000億ドルの財政支出を目指す予算決議案を巡って審議する。

下院歳入委員会は9、10日の作業部会で、メディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険制度)の支払い対象に歯科、眼科、聴覚関連給付を追加する案を検討する予定。決議案には全労働者に対し、最長で12週間の有給の家族・医療休暇を提供する案も盛り込まれる見通しだ。

リチャード・ニール委員長は声明で「一部の労働者だけが有給休暇や育児、老後の蓄えといった『恩恵』にあずかるという考えに終止符を打ち、最終的にこうした支援を全米の職場に定着させるべきだ」と訴えた。

関係筋によると、予算決議案は各委員会で承認される可能性が高いものの、本会議での審議や可決に備え、法案の規模は縮小される公算で、最終的には2兆ドル程度に落ち着くもようだ。

各委員会は数日以内にそれぞれの担当部分に取り組む。民主党は今月遅くに下院の承認が得られると期待している。

その後は上院(定数100)に送られ、民主党は財政調整措置(リコンシリエーション)として知られる特別な手続きを活用する計画。これは大部分の法案通過に必要な60票ではなく、過半数での通過が可能となる。

下院のペロシ議長は、民主党のジョー・マンチン上院議員が法案の審議「中断」を先週求めたことについてCNN記者に問われると、「われわれは良いスケジュールで進んでいる」と述べ、委員会の速い作業に言及した。ただ、法案の規模が3兆5000億ドルを下回ることになる可能性は否定しなかった。

バイデン大統領は7日遅く、記者団に対し、マンチン議員と合意に達することができるとの考えを表明。「ジョー(・マンチン議員)は最後にはいつもその場にいる。彼は常に私とともにいる。私は解決できると考えているし、彼と話すのが楽しみだ」と語った。

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連邦上院での可決の場合には、フィリバスター(議事妨害:長時間にわたり演説を行うなど)が認められており、それを阻止し、審議を終えて採決を行うためには、60名以上の議員の賛成が必要となる。現在50対50であるからフィリバスター阻止はできない。ところがここからまた複雑な話になるが、予算措置の場合にはこの制度は適用されないので、すぐに採決に持ち込める。だったら、下院で可決された法案もそのまま上院で可決するではないか、何も不透明なことはないとなるが、それがまたそうではない。

 民主党50名の中から1人でも反対が出れば、採決で否決される。そうなれば終わりだ。今のところ、連邦上院民主党には、ジョー・マンチン連邦上院(ウエストヴァージニア州選出)という議員がいて、この人は「予算の大盤振る舞いをすべきではない、増税もすべきではない」という考えで、現在の385兆円の財政支出には反対している。それで2兆ドル(約220兆円)くらいまで減額しての可決ということになるのではないかと見られている。

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●「米下院民主党、35,000億ドル投資財源として増税案発表、法人税率26.5%に」

(米国)

ニューヨーク発

20210915日 JETRO

https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/09/0cadf625c2274190.html

米国下院民主党は913日、上下両院で審議中の35,000億ドル規模の投資計画の財源となる増税案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。米メディアによると、増税規模は10年間で企業、個人に対してそれぞれ約1兆ドルで、その他の財源として、税の徴収強化による約1,200億ドル、薬価政策の変更による約7,000億ドル、同計画の経済押し上げ効果による税収増の約6,000億ドルを充てることにより、同計画の財源は賄えるとしている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版913日)。

企業に対する課税について、主な項目としては、法人税率を現行の21%から26.5%に引き上げるほか、グローバル企業の国外収益に対する課税の最低税率を現行の10.5%から約16.6%に引き上げることを盛り込んでいる。バイデン政権が当初提案していた増税後の税率は前者が28%、後者が21%だった。

個人への課税については、主な項目として、個人所得税の最高税率をバイデン政権の当初の提案どおり、現行の37%から39.6%(年収40万ドル超の場合)に引き上げることに加えて、500万ドルを超える所得についてはさらに3%の付加税率を加えることを提案している。また、株式などの譲渡益に対するキャピタルゲイン課税の最高税率を現行の20%から25%に引き上げることも盛り込んでいるが、これについては、バイデン政権の当初の提案では39.6%となっており、市場への影響を考慮したかたちとなっている。

なお、上院で提案された炭素国境調整を目的とする課税措置(2021914日付地域・分析レポート参照)については、現時点では今回の増税案には盛り込まれていない。

増税案について今週にも下院で審議・採決が行われる見込みだが、今後修正なく歳入委員会を通過するかは不透明だ。下院では民主党が220議席、共和党が212議席(欠員3議席)となっており、民主党は党内から反対する議員が4人以上出た場合は過半数を失うこととなる。民主、共和各党の勢力が拮抗(きっこう)する上院では、民主党中道派に属するジョー・マンチン議員(ウェストバージニア州)が今回の投資計画の規模に反対し、「1兆から15,000億ドルの規模であれば、支持できるかもしれない」と述べており(政治専門誌「ポリティコ」912日)、予算決議(2021826日記事参照)の時と同様、下院で上院の中道派の動きに賛同する議員が一定数現れた場合は、同計画の成立は危うくなる。一方で、エリザベス・ウォレン上院議員(マサチューセッツ州)やアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員(ニューヨーク州)など民主党内左派の議員はさらなる支出規模拡大を求めているとされ、今後党内での駆け引きが激しくなりそうだ。

(宮野慶太)

(米国)

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 一方、5年1兆2000億ドル(約132兆円)は今年8月に連邦上院で賭け悦されえた。採決結果は賛成69票、反対30票だった。これは共和党側の一部議員が「これくらいの穏当な内容なら良い」ということで賛成票を投じたためだ。

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●「米上院、110兆円インフラ法案可決 バイデン氏「団結」の成果」

202108110723分 時事通信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021081100043&g=int

 【ワシントン時事】米議会上院は10日、インフラ整備に5年間で総額約1兆ドル(約110兆円)を充てる法案を可決した。インフラ投資はバイデン政権が看板政策に掲げる経済成長戦略の柱で、上院の超党派グループが法案を提出。「与野党の団結」を訴えてきたバイデン氏にとって大きな成果となる。

 採決結果は賛成69、反対30。上院は与野党の勢力が50議席ずつで伯仲しているが、野党共和党の一部議員が支持に回り、インフラ投資は実現に向けて大きく前進した。

 今後、与党民主党が過半数を占める下院で審議される。ただ、下院民主党は子育て・教育支援や気候変動対策などを対象とした大型財政出動との同時実現を目指しており、インフラ法案の審議が順調に進まない可能性もある。

 バイデン大統領はホワイトハウスで演説し、「米国が将来を築き、世界との競争に勝てる歴史的な投資だ」と強調。上院通過によって「国民にとって大事なことを結束して実現できると証明した」と、与野党の団結をたたえた。

 インフラ投資は、予算手当て済みの改修費などを除く新規分が5500億ドル。内訳は、道路や橋が1100億ドル、公共交通機関が過去最大の390億ドルなど。国際競争力を高め、中国に対抗するための基盤強化が狙いだ。新型コロナウイルス経済対策の未利用分などを財源にする。

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 そこで今度は連邦下院で審議され採決ということになる。連邦下院では、民主党が過半数を占めているので、こちらも簡単に可決されるかと思えば、そうではない。拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも書いているが、民主党内部には進歩主義派勢力がおり、民主党内部での争いも激しくなっている。この人々は「連邦下院で可決された10年3兆5000億ドル(約385兆円)の法案について、連邦上院で中身を削るようなことがあったら、連邦下院で審議されている5年1兆2000億ドル(132兆円)規模のインフラ整備法案については反対に回る」という、一種の脅しをかけている状況だ。進歩主義派の領袖であるバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は連邦上院予算委員長を務めているが、彼は6兆ドル(約660兆円)規模の支出を求めている。それはいくら何でも、ということで実現性はないが、少なくとも現在の法案よりも減額することは阻止したいということになる。

 こうした中で、めったにメディアのインタヴューを受けないバラク・オバマ元大統領がバイデン大統領に助け舟を出し、これらの財政支出について全面的な支持を表明した。この動きは、財政支出を削減したいマンチン議員たち(中道派と表現される)、そして、財政支出を法案よりも増やしたい進歩主義派の両方を抑えて、バイデンの計画通りの支出をさせたいということである。

 アメリカの二大政党制は物事が何でもスムーズにかつスピーディーに決まる、と考え、「日本でも“決められる政治”のために、二大政党制を」という主張が今でもあるが、アメリカでもこれほどに苦労するものである。二大政党制になったからと言って、物事がサクサクと進むものではない。また、簡単に何でも嘖々と進むことはとても怖いことだ。

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オバマは重要な法案の採決を前にしてバイデンが進めている法案はアメリカにとって「極めて必要不可欠な内容」と述べた(Obama says US 'desperately needs' Biden legislation ahead of key votes

ブレット・サミュエルズ筆

2021年9月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/574187-obama-says-us-desperately-needs-biden-legislation-ahead-of-key-votes

オバマ元大統領は月曜日、重要な法案を連邦議会で可決させる重要な週が始まるにあたりバイデン大統領の経済政策についての支持を行うように訴えた。彼は経済政策パッケージの総額や財源についての議論を封じ込めた形だ。

オバマは珍しくテレビ番組のインタヴューに応じた。ABCのロビン・ロバーツとのインタヴューの中で、バイデンが推進しているインフラ整備某案と経済回復パッケージについて、「アメリカ国民にとって極めて必要不可欠な法案」だと述べた。

オバマは、どの法案を優先するかをめぐって、進歩主義派と穏健派の間で起きている党内対立や闘争については言及しなかった。しかし、彼はアメリカの家族に対する利益について言及し、アメリカの富裕層に対する増税によって、経済刺激法案への財源を作るということへ支持を表明した。

オバマは次のように述べた。「経済政策パッケージに全部目を通してみれば、どうしても目が行ってしまうのはその総額で3兆5000億ドル規模ということになる。しかし、これは1年間でこれだけを支出するということではない。何年もかけて支出するということだ。そして、より重要なことは、財源は、富裕層の方々にお願いするということだ。この方々は数十年にわたり、大きな恩恵を被ってきた。そして、新型コロナウイルス感染拡大のさなかにあっても、彼らの富や資産は大幅に増え続けている。こうした方々にほんの数ポイントの増税をお願いすることで、全員にとって公正な経済を実現することが可能となる」。

富裕層への増税について、共和党や経済界から反撃が出ているとロバーツが指摘すると、オバマは次のように述べた。「増税にはそれだけの価値があると考えている。有効な手段だと思う。私は自分自身を富裕層だと考えているが、増税は実施する価値があると考えている」。

オバマは次のように述べた。「富裕層に対して今よりももう少しだけ課税をして、シングルマザーが子育て支援を受けたり、山火事や洪水への対策ができていない地域に何らかの対策ができるようになったり、次世代のために気候変動対策をしたりすることが大変なことだと騒ぎ立てる人たちがいる。このような議論はもう成り立たないと私は考えている」。

バイデンの経済政策に対するオバマの全面的な支持は重要な時期に表明された。連邦議会民主党指導者たちは、政府の予算執行維持、債務上限の引き上げ、インフラ関連法案の可決を今週中に完遂することを目指している。

連邦下院議長ナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は木曜日に、超党派による1兆2000億ドル規模のインフラ整備パッケージの採決を行う予定を設定した。リベラル派の一部は、バイデン大統領提案の3兆5000億ドル規模の社会・気候変動対策経済パッケージ法案に何らかの動きや進展がなければ、一反対すると表明している。

ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)は、3兆5000億ドル規模の経済パッケージの減額を求めている中道派の一人だ。マンチンは、連邦上院多数党(民主党)院内総務チャールズ・シューマー連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)の事務所を訪問した。進歩主義派議員連盟会長プラミラ・ジェイパル連邦下院議員(ワシントン州選出、民主党)は穏健派の重要人物たちと電話やEメールなどで話し合いを行った。その中には、クリステン・サイネマ連邦上院議員(アリゾナ州選出、民主党)とヘンリー・クエラー連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)が含まれていた。

バイデンは月曜日に、連邦議事堂内のペロシ連邦下院議長とシューマー連邦上院院内総務という民主党側の上下両院最高幹部2名とテレビ電話会議を行った。月曜日、連邦議会は膠着状態にあるバイデンが推進している法案について何らかの進展を起こそうとしていた。バイデンは月曜日、法案は週末までに可決する可能性ないだろうとしながらも、最終的には可決されるはずだという楽観論を示した。

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(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める