来年の事を言えば鬼が笑う、という言葉があるが2021年も残り10日ほどとなっているので、そろそろ来年の話をしても鬼も笑わずに聞いてくれることと思う。
来年、アメリカでは中間選挙(Mid-term elections)が実施される。連邦上院の一部議席と連邦下院全議席、州知事選挙の一部などが実施される。大統領選挙と大統領選挙の中間に実施され、現職大統領の「中間試験」という意味合いがある。バイデン大統領の就任後約1年の成績は芳しくない。期待が大きいところもあっただけに、今のところ期待外れ、中間試験では赤点になるのではないかというところだ。
問題は、バイデン大統領の不人気が自分の選挙の結果に反映されるのではなく、民主党の連邦議員たちの結果に反映されてしまうということだ。簡単に言えば、「自分(バイデン)のせいで落選する議員が多く出てくる」ということだ。これが問題だ。
バイデン大統領にとっての頭の痛い問題は、新型コロナウイルス感染拡大対策とインフレーション対策だ。アフガニスタンからの撤退は既に行ってしまったことで、これを今更挽回することはできない。それよりも今は国内対策、特に新型コロナウイルス感染拡大とインフレーション対策が重要だ。これは一般国民の生活に直接かかわるために、投票行動に結びつく。しかし、現在のところ、それらはうまくいっていないという評価が多くなっている。
下の記事にあるように、共和党対民主党で、支持率の差が広がっている。共和党43%対民主党33%と二桁の差がついてしまっている。これがそのまま続く訳ではない。しかし、挽回することは極めて困難だ。
民主党の支持率が不振を極めている理由として、民主党の支持基盤であるマイノリティで大きな勢力を占めるヒスパニック系からの支持が減っていることが挙げられる。ヒスパニックはマイノリティの中でも特に人数が多く、また増加率も高く、重要な有権者集団となっている。アメリカの政治家たちでスペイン語を話す人が多くいるがそれはヒスパニック系の人々にアピールするためだ。
下の記事によると、ヒスパニック系有権者の民主、共和両党に対する支持率は拮抗しているということだ。ヒスパニック系は非熟練労働者が多く、カソリック教徒が多く宗教上の理由から子沢山ということがある。これは現在の状況では生活が厳しいということを意味する。非熟練労働者の雇用は不安定であるし、新型コロナウイルス感染拡大で経済が停滞していた時期には真っ先に首を切られる対象となった。これでは生活が安定しない。また、現在、経済が回復の方向に進む場合でも、非熟練労働の賃金は低い。それに対して、インフレーション率が高くなれば、生活に直撃して、どちらにしても生活が苦しいままということになる。
バイデン政権の対策が不十分と感じ、支持をしないヒスパニック系が増えれば、共和党を利することになる。バイデン政権とすれば、来年早い段階で、新型コロナウイルス感染拡大を収束させ、インフレーションを抑えなければならないが、なかなか困難な道筋ということになる。
(貼り付けはじめ)
世論調査:包括的な中間選挙に関する世論調査の結果で共和党が10ポイントリード(Republicans
hold 10-point advantage on generic midterm ballot: poll)
タル・アクセルロッド筆
2021年12月10日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/585337-republicans-hold-10-point-advantage-on-generic-midterm-ballot-poll
来年の中間選挙に向けた包括的な世論調査の結果、共和党が10ポイントリードをしている。CNBC・オールアメリカン・エコノミックの共同世論調査の結果で明らかになった。
世論調査に答えたアメリカ国民の間で、共和党は民主党に支持率で、44%対34%で10ポイントの差をつけている。10月の調査に比べて差が2ポイント広がっている。
本誌の調べでは、CNBCもしくはNBCの世論調査で共和党が二桁のリードを記録したのは今回が初めてだ。その他の中間選挙に関する包括的な世論調査の結果で民主党が支持を失っているという流れに、今回の世論調査の結果も沿っている。しかし、共和党のリードがこれほど大きい結果となったのはほとんどない。
今回の世論調査は、共和党が圧倒的に有利だと予想されている中間選挙に直面している民主党にとって、最新の警鐘である。共和党は、民主党が僅差で過半数を握っている連邦下院をひっくり返し、連邦上院でも過半数を獲得する可能性が高まっていると主張している。
民主党に対する向かい風はバイデン大統領の低支持率によって強められている。バイデンは、新型コロナウイルスの感染拡大、インフレーション、アフガニスタンからの撤退に対する批判が続いている。
今回の世論調査では、バイデンの支持率は41%、不支持率は50%だった。バイデンの新型コロナウイルス感染拡大対策については、支持率46%、不支持率48%となった。今回のCNBCの世論調査で、不支持率が上回ったが、これは初めてのことだった。
民主党系の世論調査専門家ジェイ・キャンベルは今回の世論調査の結果について、CNBCに対して、「もし選挙が明日だったら、民主党にとって深刻な大惨事となるだろう」と述べている。
CNBC・オールアメリカン・エコノミックの世論調査は2021年12月1日から4日にかけて800名を対象に実施された。誤差は3.5ポイントだ。
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民主党はヒスパニック系有権者からの支持を失いつつあることに懸念を持っている(Democrats
worry their grip on Hispanic vote is loosening)
ラファエル・バーナル、アレックス・ガンギターノ筆
2021年12月13日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/latino/585381-democrats-worry-their-grip-on-hispanic-vote-is-loosening
民主党はヒスパニックからの支持を失いつつあることに懸念を持っている。ヒスパニックは民族で分けると、アメリカで2番目に大きい有権者集団だ。
『ウォールストリート・ジャーナル』紙が先週発表した世論調査の結果によると、ヒスパニック系有権者の支持は民主党と共和党で半々となっている。この世論調査の結果は、調査対象者数の少なさについては疑問の声が上がっているが、この結果は民主党にとっては警告の鐘の音となった。
民主党全国委員会ヒスパニック・リーダーシップ会議で上級部長を務め、現在は民主党系のロビイストを務めるアイヴァン・ザピエンは、「民主、共和両党ともに常にヒスパニック系、ラティーノ系と意思疎通を図ろうという切迫感を持つべきだと考える」と述べた。
「私がこの問題について民主党はもっと真剣に知恵を絞るべきだと考えるかと問われれば、その答えは、その通りだとなる。世論調査の結果がどうであろうと、民主党はこの問題について毎日真剣に頭を悩ますべきだ」。
今回の世論調査は、ヒスパニック系有権者の間で共和党のメッセージに対する共感が高まっていることを示す最新のデータということになる。民主党は2020年の大統領選でフロリダ州とテキサス州を失い、ヒスパニック系有権者からの支持を減らしている結果に失望している。
バイデン大統領は2020年の大統領選挙でラティーノ系有権者の投票の63%を獲得し、トランプ前大統領を30ポイント近く上回った。
しかし、今回の世論調査では、2024年の大統領選挙が今日行われると仮定しての質問に対して、バイデンに投票すると答えたヒスパニック系有権者はわずか44%、トランプに投票すると答えたのは43%だった。この結果はバイデンと民主党にとって厄介な兆候を示している。
ここ最近の大統領選挙では、民主党の候補者たちは2020年のバイデンと同様の好成績を収めてきた。しかし、2004年の大統領選挙ではジョージ・W・ブッシュ元大統領はヒスパニック系有権者からの支持で比較的良い成績を収めた。
ピュー・ヒスパニック・センターによると、2004年の大統領選挙では、ヒスパニック系有権者の40%がブッシュに投票し、民主党候補者ジョン・ケリーに投票したのは58%だった。
各種世論調査の数字の結果から見ると、民主党はヒスパニック系有権者からの支持で共和党に大きな差をつけていることは当然なのだと考えるべきではない。ザピエンは、ヒスパニック系有権者と可能な限り意思疎通を図り、「彼らの心の中を理解できる」政党は、今後ヒスパニック系有権者からの支持を伸ばす可能性が高いと述べている。
民主党は、国内のほとんどのヒスパニック系共同体との意思疎通において、文化的能力でリードしていると主張している。もっとも、フロリダ州南部のキューバ系、ベネズエラ系、コロンビア系は例外になるかもしれない。民主党はヒスパニック系との協力の規模に関する問題に直面している。
ヒスパニック系連邦議員連盟の選挙対策部門である「ボールドPAC」の院長を務めているルーベン・ガレコ連邦下院議員(アリゾナ州選出、民主党)は、「共和党は我々よりずっと簡単な仕事をするだけのことだ。彼らは、民主党から5から7%のヒスパニック票を奪うだけで、選挙に勝利することができる」と語っている。
ガレコ議員は、この目標を達成するために、有権者の投票抑圧策と選挙に関するメッセージの発信策を合わせて、共和党は1000万ドルから3000万ドルの範囲で支出する必要があると述べている。
ガレコ議員は続けて次のように述べている。「特に人口が増加している現在、非常にコストのかかるヒスパニックとの協力関係を維持するためには、投資を続け、65から70%の範囲でヒットするようにしなければならない」。
共和党は、ヒスパニック系有権者(特にテキサス州とフロリダ州の有権者)が保守的な経済メッセージにますます反応するようになっていると主張している。共和党は、各種世論調査の数字と2020年の大統領選挙と連邦議員選挙の結果に注目している。
ジョン・コーニン連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)は、「先週のウォールストリート・ジャーナルの世論調査の結果は民主党にとって厄介なものだ」と語った。
コーニン議員は水曜日、次のように述べた。「ヒスパニック系有権者の支持は、両党間でより均等に分かれていることが、ウォールストリート・ジャーナルの最新の世論調査で明らかになった。これは民主党にとって不吉な兆候だ」。
ホワイトハウスはヒスパニック系有権者たちに対して「ビルド・バック・ベター」社会支出法案を売り込もうと努力している。この法案については先月、アリゾナ州ツーソンのレジーナ・ロメロ市長、ロサンゼルス市のエリック・ガーセッティ市長、リロイ・ガルシアコロラド州上院議員議長らが声高に引用している。
さらに、バイデンがすでに署名した2つの主要法案、春に署名され、景気刺激策とその他のコロナウイルス救済を提供したアメリカン・レスキュー・プランと、最近承認されたインフラ対策について、ヒスパニック系有権者に売り込んでいる。
バイデンのメッセージを売り込むための政治的非営利団体「ビルディング・バック・ベター」 の最高戦略責任者マイラ・マシアスは
次のように述べている。「失業率は低下し、過去50年間で最も低い水準にある。約600万人分の雇用を創出した。私たちの経済は、世界のどの先進国よりも速く回復している」。
彼女は続けて次のように述べている。「進歩があったと言える。しかし一方で、日常生活において進歩のプラスのインパクトを完全に実感できていない人々がいるのも事実だ。これはむしろ、ビルド・バック・ベター法案を成立させる原動力になっている。それは、この法案が医療、処方薬、住宅、児童教育などのコストを引き下げることになるからだ」。
ホワイトハウスは、9月のヒスパニック・レガシー月間に、「build・バック・ベター」法案がヒスパニック系共同体にもたらす利点を強調するために、ヴァーチャル会議を行い、ラティーノ系の人々の人気を獲得するためのもう一つの努力を行った。
会議には、中小企業庁長官イサベル・グズマン、保健福祉長官ザビエル・ベセラ、教育長官ミゲル・カルドナ、国土安全保障長官アレハンドロ・マヨルカスなど、政権内のラティーノ系の人々が登場した。
民主党全国委員会連携担当部長兼上級報道担当を務めるルーカス・アコスタは、バイデン政権発足以来、ラティーノ系の家族のために尽力してきたと主張し、その例として、子供税額控除の拡大やラテン系中小企業の支援などを挙げた。
アコスタは次のように述べている。「来たるべき年、民主党は、バイデン大統領が彼らの生活向上に力を注ぐ一方で、共和党は一貫してその邪魔をしようとしてきたことを、ラティーノ系住民に訴え続けるだろう」。
多くのラテン系住民に人気のある社会保障制度の延長の他に、現在、法案にはヒスパニック系住民に一般的に人気のある移民に関する文言も含まれている。
ガレゴ議員のような民主党の政治家たちは、移民規定が法制化されれば、最大650万人の移民を救済できる可能性があり、好材料となる。しかし、ラティーノ系住民を投票に向かわせるために必要な特効薬ではないとも言われている。
ザピエンは次のように述べている。「“ヒスパニック系有権者からの投票”を長期的に保証するような魔法の杖や特定の問題があるとは思わない。ヒスパニック系有権者からの投票の一部でさえもそうだ。多くの時間、エネルギー、資源を費やし、彼らがいる場所で彼らと意思疎通を図る政党が、勢いを持つことになるだろう」。
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(終わり)
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