古村治彦です。

 アメリカのジョー・バイデン大統領が「ロシアがウクライナ侵攻を決断したと確信している」と述べた。より正確にはウラジミール・プーティン露大統領がウクライナ侵攻を決断したと確信しているということだ。その根拠はアメリカとウクライナの情報機関の情勢分析と評価ということだ。国際関係は騙し合いだ。アメリカもロシアもウクライナも自分たちに有利な情報しか出さないし、相手がいかに嘘を言っているか、虚偽情報で攪乱しようとしているかを主張し合う。

 今週末はミュンヘン安全保障会議が開催され、アメリカらはカマラ・ハリス副大統領とアントニー・ブリンケン米国務長官が出席し、各国首脳と会談を持っている。そうした中で、各国は緊張緩和を主張しているのに、ウクライナ支援を表明して、勝手にヒートアップしている。私はこの週末が山場だろうと考えていたが、今のところ大きな動きは出ていない。っしかし、油断したところで、ロシアとウクライナが戦闘状態に入った、お互いに相手が先に手を出したと非難し合うということが起きることも十分に考えられる。

 バイデン米大統領はロシアがウクライナの首都キエフを侵攻目標にしていると発言していることが、これは極めて重要だ。それではもう国境紛争程度のことでは済まない。一国の存亡にかかわることになる。ロシアがこの状況でウクライナに侵攻、しかも首都を制圧することにメリットはない。それにもかかわらず、ロシアがウクライナの首都キエフを制圧する意図を持っているとアメリカが発表することは、アメリカがそのような事態が起きること望んでいる、もしくはそれを画策している、そしてそれはアメリカの利益になるということを示している。

 ロシアもウクライナもアメリカの策動に乗ってはいけない。最前線では何が起きるか分からないが、特にロシア側は最初に手を出してはいけない。その威令が浸透しているかどうかがロシア側にとっては重要だが、煽動分子が入り込んでいればそれも厳しい。

 アメリカ国内の厳しい状況から目を逸らさせるためにこのような状況を作り出している、そして、ロシアもそれは分かっていて、事態がエスカレートしないように、プロレス的鳴く役を演じているということならば安心なのだが、現状はそのようなことがないように思われる。

(貼り付けはじめ)

バイデン:「プーティンがウクライナ侵攻を決意した」(Biden: Putin Has Decided to Invade Ukraine

―しかし、アメリカは依然としてロシアに戦争の口実を与えないようにしている。

 

エイミー・マキノン、ジャック・ディッツ、ロビー・グラマー筆

2022年2月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/02/18/biden-russia-invade-ukraine-kyiv-sanctions-war-donbass/

ジョー・バイデン米大統領は、「アメリカは現在、ロシアのウラジミール・プーティン大統領がウクライナへの侵攻を決定したと考えている」と述べた。

バイデン大統領は、ヨーロッパとNATOの同盟諸国の各首脳との電話会談の直後、「我々は、ロシア軍が来週、数日の間にウクライナを攻撃することを計画し、意図していると信じる理由がある」と述べた。バイデンは、ロシアの攻撃はウクライナの首都キエフを標的にしたものであると述べた。

バイデンの警告は、情報機関の非公開の所見に基づくもので、プーティンの計画に対するアメリカの事態に関する評価が急激に深刻化したものである。最近まで、複数のアメリカ政府高官は、ロシアの指導者プーティンがウクライナへの再侵攻を開始するかどうかについて、まだ決断していないとの考えを示していた。今週初め、バイデンは、侵攻の可能性は高く、ロシアは「数日以内」に攻撃することができると述べたが、プーティンが決断したとは明言しなかった。

この警告にもかかわらず、バイデンは最後の一点まで、危機に対する外交的な出口(offramp)に向かえる希望を持ち続けていると述べた。「彼(プーティン)が実際に侵略をするまでは、外交には常に可能性がある」とバイデンは語った。

ロシアは、2022年2月24日にヨーロッパで実施されるアントニー・ブリンケン米国務長官とセルゲイ・ラブロフ露外相の会談へのアメリカ側からの招待に暫定的に同意した。バイデンは、もしロシアがその前に侵攻すれば、プーティンは「外交のドアを手荒く閉めた(slammed the door shut on diplomacy)」ことになり、アメリカ主導の厳しい制裁に直面することになるだろうと述べた。金曜日、アメリカのダリープ・シン国家安全保障問題担当大統領副補佐官は、ロシアの侵攻に対応するアメリカの制裁は「これまで検討されてきた中で最も厳しい金融制裁(financial sanctions)」になると述べたが、ロシアを国際金融メッセージシステムのSWIFTから排除することは、最初の制裁パッケージには含まれない可能性が高いと指摘した。

ロシアは今週末、核兵器部隊による訓練を実施し、ウクライナに関する西側諸国の対決の可能性をさらに高めている。しかしバイデンは、プーティンが侵略計画で核兵器を使用する可能性を否定した。

バイデンは、「プーティンが核兵器の使用を考えているとは全く思わないが、ヨーロッパの力学を変える能力があると世界に信じ込ませようとしているのだろうが、実際にはそんなことはできないのだが」と述べた。

ブリンケン米国務長官は、木曜日に国連で演説し、ロシアはロシア国内でのテロリストによる爆弾攻撃の捏造、大量虐殺の死体置き場の発見の偽装、化学兵器による偽装されたまたは本物の攻撃を計画する可能性があり、これらの話は全てロシアが国家規模で支援するメディアチャンネルを通じて増幅されるだろうと述べた。アメリカは、ロシアがこの行動をウクライナによる民族浄化または大量虐殺と表現し、プーティンが空爆とミサイルによる壊滅的な攻撃、地上侵攻の前にウクライナ国内のロシア人を守るために行動せざるを得なかったと主張する可能性があると予想している。

ウクライナ政府と西側諸国の政府高官たちは、ロシアがドンバス紛争の激化や残虐行為によって危機を演出し、侵攻を正当化する、いわゆる偽旗作戦(false flag operation)を行う可能性があると繰り返し警告している。多くの専門家たちは、そのような口実を作るための努力がすでに進行中である可能性を懸念している。

金曜日、ウクライナ東部のロシアに支援された分離主義勢力は、何の根拠なく、ウクライナ軍がこの地域への攻撃を計画していると主張し、非戦闘員たちを避難させる計画を発表した。メタデータによると、今日公開されたヴィデオは、週の初め、まさにアメリカがロシアの侵攻可能性を示唆した日に録画されたものであることが分かる。また、金曜日には、ロシアはウクライナのドネツクで、地方政府本部の近くで爆発した自動車爆弾をテロの可能性があると信号で知らせた。

ウクライナ当局は、この地域で攻撃的な作戦を開始する意図はないと述べ、正式に反論した。

在ウクライナ・エストニア大使のカイモ・クースクは、「彼らがどのようにしてそんなことをしているのか、とても奇妙で皮肉な話だ」と述べた。

金曜日、ウクライナの国防軍情報機関は、ドネツクの多くの建物がロシアの治安部隊によって爆破されたという警戒情報を発した。「これらの措置は、我が国の一時的な占領地の状況を不安定にし、ウクライナのテロ行為を非難する根拠を作ることを目的としている」と、同機関はツイッターに投稿している。

また金曜日、米国のアン・ニューバーガー国家安全保障問題担当大統領副補佐官は、ウクライナの銀行と国防省のサーヴァーに対する火曜日のサイバー攻撃はロシアに起因するものであると述べた。通常、サイバー攻撃の犯人を特定するには時間がかかるが、ニューバーガーは、アメリカはサイバー攻撃をロシア軍事情報機関に関連付ける技術情報を持っており、モスクワの活動を暴露するために迅速に動いていると述べた。

また、ロシアは、侵略計画を進める場合、逮捕や暗殺の対象となる政治的反体制派やその他の脆弱な少数民族のリストを作成していると、情報関連に詳しいアメリカ政府当局者が本誌に語っており、モスクワがどの程度侵略計画を立案しているかを示す別の指標となっている。

アメリカ政府高官と連邦議員の訪問団が今週ヨーロッパに滞在し、この地域におけるアメリカの同盟諸国への支援を強化し、危機の打開を試みている。ロイド・オースティン米国防長官は今週、ブリュッセルでNATO諸国の国防相と会談し、その後ポーランドとリトアニアを訪問した。一方、ブリンケン米国務長官とカマラ・ハリス米副大統領は金曜日、安全保障会議のためにミュンヘンに向かい、ヨーロッパの最高指導者たちと会談し、NATOのウクライナへの支援を再確認した。ハリスはNATO事務総長やNATOの東側に位置するバルト三国の首脳と会談し、ロシアのウクライナに対する軍備増強に最も懸念を抱いている国の一つであることを明らかにした。

1991年にソ連から独立を宣言したバルト三国の一つであるエストニアなど、ロシアと国境を接するNATOの新規加盟諸国にとって、ウクライナの問題は他人事ではない。

エストニアのカジャ・カラス首相は、ハリス米国副大統領との会談で「私たちは皆、かつてロシアに独立を奪われたことがあり、二度と同じことが起きないようにしたい。私たちは何が問題になっているかを理解している」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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