古村治彦です。

 先週末にドイツのミュンヘンで開催された安全保障会議に、アメリカからカマラ・ハリス副大統領、アントニー・ブリンケン国務長官、ナンシー・ペロシ連邦下院議長が出席した。バイデン大統領を別にすれば、アメリカ政府の行政府と立法府の最高幹部たちが集結したということになる。安全保障会議とは別で、様々な首脳外交が展開された。

 カマラ・ハリス副大統領はウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領やバルト三国(ラトヴィア、エストニア、リトアニア)の各首脳と会談を行った。それぞれが旧ソヴィエト連邦加盟国(併合国)で、ロシアに対して概して否定的な感情を持っている。

 会談でハリス米副大統領はアメリカがヨーロッパの同盟諸国と協力してウクライナを支援することを改めて強調し、また、ロシアが侵攻した場合には、これまでにない規模の経済制裁を科すと述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカと同盟諸国の支援に感謝を表明し、ウクライナ軍は「全ヨーロッパを守っている」と発言した。

 ハリス副大統領は軍事的な方法ではなく、経済面での厳しい制裁をロシアに科すと述べた。これはアメリカとしては全面戦争にまで自体がエスカレートすることを望んでいないということを示している。ヨーロッパのNATO加盟諸国もウクライナに対して経済支援や医療支援、武器支援(ここまで踏み込めるところは少ないだろう)までは行うが、実際に自国の軍隊を出してウクライナを助けるかどうか(ロシアが全面的な攻勢に出て、ウクライナが軍事支援を求めたとしても)は不透明だ。ほぼ不可能だと言えるだろう。

 NATOはグルジアとウクライナの加盟申請を受け付けながら、正式に加盟させていない。もし正式に加盟させた後で、ロシアが侵攻となれば、NATOはその存立の大義から言って、ロシアと戦わねばならない。ウクライナを守ることの利益とコストを両天秤にかけて見れば、それならばウクライナを軍事的に助ける義務を負うNATO加盟を認めないということになる。これはEU加盟でも同じことが言える。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ヨーロッパ側に対して、ウクライナのEUNATO加盟を認めるのかどうか、その回答を迫っている。

 ウクライナはヨーロッパとロシアの間にあり、どちらか一方に偏ると、もう一方から非難や干渉を受けるということになる。親露派の政権になれば、西側諸国、特にアメリカが支援する反政府運動とカラー革命が起き、親欧・親米政権ができれば、ロシアが圧力をかけてくる。そうなれば、ウクライナ情勢が安定するためには、どちらの肩も持たない、どちらにもつかない、どちらとも仲良くする、それで経済的繁栄を目指すということが必要ではないかと私は考える。ヨーロッパもアメリカも今ところ軍隊を出してまで助ける気はないのだ。

(貼り付けはじめ)

ゼレンスキーがハリスと会談:ウクライナ軍は「全ヨーロッパを守っている」(Zelensky meets with Harris: Ukraine army 'defending all of Europe'

サラクシ・ライ筆

2022年2月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/595034-zelensky-meets-with-harris-ukraine-army-defending-all-of-europe?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

カマラ・ハリス副大統領は土曜日、ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議の機会を利用して、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と会談し、ロシアとの緊張が高まる中、「ウクライナをアメリカは支援する」とハリスは改めて表明した。

ハリスとゼレンスキーはそれぞれに補佐官や側近を伴い、ウクライナ情勢を話し合う非公開の会談の前に、報道陣の前で短い会話を行った。

ハリス副大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に対して、「あなたの懸念の内容」を直接お聞きしたいと述べ、改めてウクライナへのアメリカの支援を表明した。

ホワイトハウスは土曜日、両者はロシアのウクライナ国境沿いの軍事力の大規模な増強についての最新の進展と評価について話し合った。

ホワイトハウスの崎報道官は更に声明で次のように述べた。「副大統領は、ウクライナの主権(sovereignty)と領土(territory)の完全性(integrity)に対するアメリカの関与を強調した。また、ロシアがウクライナに更に侵攻した場合の大西洋の両岸(アメリカとヨーロッパ)での統一的なアプローチについて話し合い、副大統領は同盟諸国やパートナー国とともに準備しつつある、迅速かつ厳しい経済措置について説明した」。

ホワイトハウスは、ハリス副大統領とゼレンスキー大統領は「外交と事態の非深刻化」の重要性で一致したと述べた。

ゼレンスキーは通訳を通じて、ハリスに対して「私たちが望む唯一のものは平和だ」と述べた。

キエフに拠点を置くインタファクス・ウクライナ通信社の報道によると、ゼレンスキー大統領は、「ここは私たちの土地であり、何が起きているのか理解している。私たちが望む唯一のことは、私たちの国に平和を取り戻すことだ。このような状況において、私たちは同盟国でありパートナーである米国に心から感謝し、バイデン大統領にも感謝している」と述べた。

ゼレンスキー大統領はさらに、アメリカ国内におけるウクライナに対する超党派の支援に対して、「私たちはアメリカ合衆国、副大統領、そしてバイデン大統領に心から感謝している」と述べた。

しかし、ゼレンスキー大統領は、「個別具体的なステップ」を必要としているとも述べ、アメリカに対して追加支援を求める可能性を示唆した。また、ウクライナ軍は「全ヨーロッパを守っている」とも述べた。

会談には、ウクライナのドミトロ・クレバ外務大臣、オレクシイ・レズニコフ国防大臣をはじめ、アメリカとクライナ両国の政府関係者が多く出席した。

今回の会談は、ハリス副大統領がアメリカを出発する前に予定されていたもので、副大統領が土曜日の朝にミュンヘン安全保障会議で演説し、アメリカとその同盟諸国の間の完全な結束を伝えた後に会談が行われた。ハリス副大統領は、ロシアがウクライナへの侵攻を選択した場合、米国とその同盟諸国はロシアに厳しいコストを科すことになるだろうと述べた。

ハリス副大統領は、NATOに対するアメリカの支持は「他国から批判や干渉を受けるようなものではない(sacrosanct)」であるとし、ロシアが侵攻した場合、ロシアは「前例のない」経済的罰則に直面することになると公言した。

土曜日、ハリス副大統領は更に、アメリカとヨーロッパの同盟諸国は、外交による危機の解決に前向きである一方、ロシアが侵攻した場合には罰則を科す用意があると発言した。 

アメリカは、ロシアがウクライナ周辺に16万9000名からから19万名のロシア軍を集結させていると推定しており、バイデンは金曜日、プーティンが旧ソ連邦加盟国ウクライナへの侵攻を決めたと「確信(convinced)」していると述べた。

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ゼレンスキー:ウクライナはNATO加盟のための「明確な」時期の明示を望んでいる(Zelensky: Ukraine wants 'clear' time frame for NATO membership

サラクシ・ライ筆

2022年2月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/europe/595040-zelensky-ukraine-wants-clear-timeframe-for-nato-membership?utm_source=thehill&utm_medium=widgets&utm_campaign=es_recommended_content

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は土曜日、ミュンヘン安全保障会議に出席し、NATOとヨーロッパ連合(European UnionEU)に対し、ウクライナの同盟加盟の見通しについて、明確なそして「率直な」回答を出すように要求した。

土曜日午後に行った演説の中で、ウクライナ大統領ゼレンスキーは、EUがどうしてウクライナの加入に関する質問を避けるのか、その理由について疑問を呈した。ゼレンスキーは「ウクライナは直接的で率直な回答を得る価値がないのだろうか?」と発言した。

キエフに拠点を置くインタファクス・ウクライナ通信社は、ゼレンスキー大統領はが「これはNATOにも当てはまることだ。ドアは開いていると言われている。しかし、今のところ、部外者は入れない」と、ミュンヘン安全保障会議で世界各国の指導者たちに向けて演説したと報じた。

NATOの加盟国の一部もしくは全加盟国がウクライナの加入を望まないのならば、「それらの国々は我が国に対して率直に答えるべきだ」とゼレンスキーは述べた。

ロシアはNATOに対してこれ以上東側に加盟国を増やすことはないと保証するように求めている。ロシアは、「NATOがロシア国境に近づくことは、ロシアの安全保障を脅かす」と主張している。ロシアは更にNATOに対して、ウクライナが加入することを認めないように求めている。

ゼレンスキーは続けて「ドアが開かれているというのは良い。しかし、私たちに必要なのは開かれた回答だ。何年も回答されていない質問ではない。真実を知る権利は、私たちの機会拡大に含まれているのではないのか?」と述べた。

ゼレンスキーは土曜日次のように述べた。「8年前、ウクライナ国民は自ら選択し、多くの人がそのために命を捧げた。あれから8年、ウクライナは常にヨーロッパへの仲間入りを認めるよう求めることが本当に可能だろうか? 2014年以降、ロシア連邦は、ウクライナが間違った道を選んだのだ、ヨーロッパでは誰もウクライナなど待っていない、と確信している」。

ゼレンスキーは、当時のヴィクトール・ヤヌコヴィッチ大統領の政権を崩壊させた2014年のユーロマイダン(Euromaidan、訳者註:キエフにある独立広場)での抗議デモに言及したが、その背景には、ヤヌコヴィッチ政権がロシアに近いと認識されていたこともある。ヤヌコヴィッチ政権は、EU・ウクライナ連合協定の調印も中断させた。

ロシアが支援するドンバス地域の分離主義勢力は、その直後にキエフの新政府に反抗し、ウクライナの継続的な紛争の火種となった。

このニュースは、西側諸国がロシアによる同国への侵攻を恐れている中で発表された。ロシア軍は旧ソ連邦加盟国ウクライナとの国境に数十万人の兵力を徐々に増強している。

ロシアはこれまでウクライナへの侵攻計画を否定してきたが、土曜日、プーティン大統領は、専門家が言うところの軍事力の誇示である核兵器演習を実施した。

また、ウクライナ東部では分離主義勢力支配地域の指導部が健康な男性たちに戦闘を呼びかけるなど、情勢が不安定になっていることも現在のウクライナ情勢の背景にある。 

ゼレンスキーは演説の中で、バイデン大統領をはじめ、アメリカがロシアのウクライナ侵攻が差し迫っていることを警告し続けていることを引用した。ゼレンスキーは「ウクライナを本当に助けるためには、西側諸国は常に侵略の可能性がある日付についてだけ話す必要はない」と述べた。

「私たちは、2月16日、3月1日、そして12月31日であっても私たちの土地を守る。それ以外の日程の方がずっと必要だ。そして、どの日にちに実際に侵略が起きるのか、誰もが完全に理解している」と強調した。

ゼレンスキーは、ミュンヘン安全保障会議と同時に予定されていたハリス副大統領との会談を終えた直後、演説を行った。

ハリスとゼレンスキーは補佐官や側近を伴って向かい合わせに座り、報道陣の前で短い対話を行った。ゼレンスキーは通訳を介してハリスに、「我々が望む唯一のことは平和を手に入れることだ」と語った。

先月(2022年1月)、ロシアのセルゲイ・ラヴコフ外務大臣は、NATOがウクライナを軍事同盟に「引き入れ」酔うと画策していると非難し、NATOの組織が持つ目的について疑義を呈した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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