古村治彦です。
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 ロシアのウラジミール・プーティン大統領がウクライナ東部のドンバス地方にあるドネツク人民共和国とルハンスク人民共和国の独立を承認し、ロシア軍を派遣する命令を下したという報道が出た。ロシアは両国(両地域)と友好・相互援助条約を締結し、早速ロシア側が動いたということになる。両国(両地域)をウクライナから「保護」する名目のようだ。プーティン大統領が演説の中で、ウクライナは歴史的に見てロシアの一部だという主張を行ったのは気になるところだが、今のところ、ウクライナの首都キエフに向けて侵攻することを示す証拠は出ていない。

 アメリカのジョー・バイデン大統領はこの両国(両地域)におけるアメリカ国民の投資、貿易、融資を禁止するという措置を取った。これはロシア向けの措置ではないが、今後、ロシアに対して経済制裁が実施される可能性もある。EUNATO、英仏独といった国々は、今回のロシアの行動を非難している。しかし、具体的な制裁方法は決めていない。

 アメリカによる今回の経済制裁はロシア本国向けではないし、ヨーロッパもロシアに対して腰が引けている。国際連合(The United Nations)の安全保障理事会(Security Council)の常任理事国(permanent members)5カ国のうち、米英仏と中露の2つに分かれているが、米英仏は完全に腰が引けている。口では勇ましいことを言っているが、軍隊を送ってまでロシア軍の侵攻をけん制、もしくは阻止するという決意は持っていない。ロシアのプーティン大統領はそのことを見切っている。また、ロシア政府内やロシア軍内のアメリカや西側とつながっている人物や勢力も既に把握して、そういう勢力が不測の事態を起こして、自分が意図しない方向に自体を進めることがないように措置しているだろう。中国は注意深く事態の推移を見守っている。

 ロシア本国に対して経済制裁を加えたところで、ロシアの息の根を止めることはできない。ロシアの周辺には中央アジア諸国や中国がある。それらの国々は面従腹背で対処するだろう。仮に西側諸国が経済制裁を、ロシアを助けるそれらの国々に科すなどとなったら、世界経済に大打撃となってしまうのでそんなことはできない。ヨーロッパ諸国だって表向きは経済制裁をやるだろうが、天然ガスをはじめとするエネルギーを頼っている以上、本気でやったら共倒れということになる。

 アメリカの「世界の警察官」というイメージは完全に過去のものとなった。今回のロシア・ウクライナ危機を概観してそのことは明白に言うことができる。

(貼り付けはじめ)

プーティンがウクライナの分離独立地域の国家としての独立を承認(Putin recognizes independence of Ukraine breakaway regions

ローラ・ケリー筆

2022年2月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/595189-putin-to-recognize-independence-of-ukraine-breakaway-regions

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は月曜日、ウクライナ東部の2つの分離独立した領域を承認し、モスクワと西側諸国の緊張関係を急激に悪化させた。

ドネツク人民共和国とルハンスク人民共和国を承認する法令に署名する際、プーティン大統領は戦闘を停止するための外交努力を拒否し、ウクライナ軍と戦う分離主義勢力へのさらなる援助を約束した。

プーティンはモスクワでの演説の中で「ドネツク人民共和国とルハンスク人民共和国の独立(independence)と主権(sovereignty)を直ちに承認する(recognize)という、ずっと前になされるべき決断をする必要があると考える」(翻訳による)と述べた。

プーティンは更に「私はロシア連
邦議会にこの決定を支持し、両共和国との友好と相互援助の協定を批准する(ratify)よう要請する」とも述べた。

プーティンは演説の締めくくりで、ウクライナは歴史的にロシアの一部であり、現在は西側の支配下にあるという認識を示し、両地域の独立を承認するという発表を行った。プーティンはまた、この機会にウクライナ、アメリカ、西側同盟国に対して繰り返し非難を行い、キエフに「敵対行為を止める(stop hostilities)」ことを強く要求し、ウクライナ政府の権威は2014年の革命後の「クーデター」によって確立されたものであり、それ自体を拒否することも合わせて表明した。

モスクワで行われた署名式には、2つの領域の首長を自称する人物たちも参加し、文書は「友情」と相互援助の合意を批准するものであると述べた。

プーティンは次のように述べた。「キエフで権力を掌握し維持している者たちに対して、敵対行為を直ちに停止するよう要求する。さもなければ、血の海が続くことになる可能性が高まる。その全責任は、キエフを統治している政権の考えに帰するものだ。これらの決定を宣言することで、私はロシアの全愛国的勢力の支持を得られると大きな自信を有している」。

月曜日のロシア大統領プーティンの行動は、バイデン政権の素早い対応を促し、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、アメリカが直ちに制裁を発動する準備を行っているという声明を発表した。

サキ報道官は声明で「私たちはロシアのこのような行動を予測していた。直ちに対応する準備ができている」と述べ、制裁にはアメリカ国民による「ウクライナのいわゆるDNR(ドネツク)およびLNR(ルハンスク)地域」に対しての、あるいはそこからの、あるいはそこでの新規の投資、貿易、融資を禁止することが含まれると付け加えた。

サキ報道官は追加措置も発表される見込みだと語った。

アメリカの同盟諸国もプーティンの動きを否定した。クレムリンはフランスとドイツからの反発に言及した。プーティンはとの両国首脳との電話会談で、分離主義勢力統治地域の独立を認める決定を行ったことを通知した。

クレムリンは「フランス大統領とドイツ連邦首相は、この展開に失望していると表明した。同時に、両者は連絡を続ける用意があることを示した」と声明の中で述べた。

プーティンは月曜日に、ロシア国家安全保障会議を開催した。この演出され予め結果が出ていた会議の様子は公開され、出席者のほぼ全員が一致して両地域の独立を承認することを表明した。プーティンは会議後に発表を行った。

ロシア大統領プーティンは、ドネツクとルハンスク両地域の指導者を自称する人物たちがモスクワに独立を認めるよう要請し、ロシア連邦議会がモスクワの独立承認を支持する決議を採択したことを受けて、会議を招集したと述べた。

バイデン政権においては、これまでにアントニー・ブリンケン国務長官が、クレムリンが独立を認めた場合、アメリカは「迅速かつ断固たる対応(swift and firm response)」を行うと表明し、更にはこれまでに推定1万5000人が死亡しているドンバス地方のウクライナ軍とロシアが支援する分離主義勢力との戦闘終結を目指して2015年に定められた外交枠組である「ミンスク合意」の拒否と見なされると警告した。プーティンンに対してそうした牽制の動きを見せていた。

ホワイトハウスのある高官は月曜日、バイデン大統領がロシアとウクライナに関連する動向について国家安全保障チームと話し合いを行っていると述べ、ホワイトハウスでの会議にはブリンケン、ロイド・オースティン国防長官、マーク・ミリー統合参謀本部議長が参加していると報じられた。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、プーティン大統領の安全保障会議の後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談し、ウクライナ国家安全保障・防衛会議を招集したとツイッター上に投稿した。

ドンバス地方ではここ数日戦闘が激化しており、アメリカ、ウクライナ、その他ヨーロッパ各国の政府当局者たちは、同地域の幼稚園への砲撃など暴力を誘発したロシアに支援された分離主義勢力の責任を追及し、ウクライナ軍の自制を賞賛している。

戦闘の激化は、ロシアがウクライナに侵攻する口実を作るため、「偽旗(false-flag)」作戦を捏造しようとしており、キエフのウクライナ政府の排除を含む、目的の達成のために20万人近い軍隊による大規模な侵攻を開始するだろうというアメリカや同盟諸国、パートナー諸国からの警告の通りとなっている。

エストニアのカジャ・カラス首相は月曜日、分離した地域の独立を認めることは「クレムリンによる深刻な事態悪化ということになる」とツイートしている。

カラス首相は次のように述べた。「今回のプーティン大統領による独立承認宣言は、国際法とウクライナの領土保全に対する明確かつ重大な違反だ。ドネツクとルハンスクはウクライナの一部であり、今後もそうである。この決定は、ミンスク合意も終わらせることになる。ミンスク合意に基づく政治的解決に『ノー』と言うことで、クレムリンは外交の扉を閉ざし、戦争の口実を作ったのだ」。

イギリスのボリス・ジョンション首相は記者会見で、プーティンの行動を「国際法違反」であり、「ウクライナの主権と統一に対する明確な侵害」と呼んだ。

ジョンソンは更に、今回の行動はモスクワがミンスク合意の枠組みでの外交を拒絶していることを示しており、「非常に良くない前兆であり、非常に暗い兆候だ。ウクライナで物事が間違った方向に進んでいることを示す新たな兆候であることは間違いない」と発言した。

ジョンソン首相は「明らかに非常に暗く困難な時期にあるウクライナに対して、私たちが更に何ができるかを検討し続けていく」と述べた。

ヨーロッパ連合(EU)のウルスラ・フォン・ダー・ライエン大統領は、ジョンソン首相の非難に同調し、EUとそのパートナー諸国は「ウクライナと連帯し、結束し、断固たる決意を持って事態に対応する」と述べた。

オバマ政権下でロシア・ウクライナ・ユーラシア担当の国防次官補代理(deputy assistant secretary of Defense for Russia, Ukraine, and Eurasia)を務めたエブリン・ファーカスは、ドンバスの独立を承認すれば何らかの制裁が発動するかもしれないが、ロシアの軍事行動に対しては、より破壊的な結果が予期されると述べた。

ファーカスは「バイデン政権の関係者たちは、サイバー攻撃やリトル・グリーンマン(訳者註:宇宙人が元々の意味だが2014年のウクライナ紛争でロシア軍の兵士が徽章をつけないで戦闘に参加したことを指す)による攻撃を含む軍事行動が起きる可能性を考えていることは明らかだと思う」と発言したが、独立承認は軍事力使用の前触れとなる可能性があると付け加えた。

ファーカスは「現実には、プーティンが両地域の国家独立を承認した場合には、彼は更に軍隊を送り込むだろう。そうなればアメリカによる制裁が発動する可能性が高い」と述べた。彼女の発言は、2008年にロシアがグルジアの北東部と中央部の分離した領域を独立国家として承認した後に軍隊を送り込んだことを受けてのものだ。

オバマ政権時代に駐ロシア米国大使を務めたマイケル・マクフォールは、プーティンのルハンスクとドネツクの独立承認は、ウクライナに対する先制攻撃なのだとツイッター上に投稿した。

「プーティンがドネツクとルハンスクを承認した後、ゼレンスキーはそれに反応せざるを得ないではないか? そうすれば、プーティンはウクライナの『侵略(aggression)』に対する対応として、ロシアの侵略を正当化し、新しい同盟諸国に対して『保護(protection)』を与えることができる」とツイートした。

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プーティンはウクライナから分離した領域への軍の派遣を命令(Putin orders troops to breakaway Ukraine regions

モニク・ビールス筆

2022年2月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/595221-putin-orders-troops-to-breakaway-ukraine-regions

ロシアのプーティン大統領は、ウクライナの分離独立地域を承認する意向を示したことで世界的な非難を浴びた。その数時間後に「平和維持機能(peacekeeping functions)」を実行するために軍を派遣するよう命じたとメディアによって報じられた。

『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、プーティン大統領は月曜日夜に発した命令の中で、ウクライナ東部の分離主義勢力が支配する2つの地域の平和を維持するために軍隊を派遣するよう国防省に命じたということだ。しかし、分離主義勢力が支配する地域以外の場所に軍隊が入るかどうかは、ニューヨーク・タイムズ報道では明らかにされていない。

プーティン大統領は、モスクワがドネツク人民共和国とルハンスク人民共和国と呼ばれる地域の独立を認めると述べた後、軍の派遣命令を出した。今回の行動は、戦闘停止に向けた外交努力の拒否を示唆する動きであった。

AP通信の報道によると、プーティンは「私は長い間待ち望まれていた決定を下す必要があると考える。ドネツク人民共和国とルハンスク人民共和国の独立と主権を直ちに承認する」と述べたということだ。

今回のプーティンの動きに対し、ホワイトハウスは、バイデン大統領がドネツクとルハンスクへのアメリカらの新規の投資、貿易、融資を禁止する大統領令に署名する意向だと述べ、他の西側諸国の指導者たちもロシアの決定を国際法違反と非難した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「私たちはロシアのこのような動きを予期しており、直ちに対応する用意がある」と述べ、この動きは「ロシアの国際公約に対する露骨な違反(blatant violation of Russia’s international commitments」」であると指摘した。

アメリカは、モスクワがウクライナ国境地帯に19万人もの軍隊を集結させた後、ロシアはいつでもウクライナに侵攻できると警告を発してきた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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