古村治彦です。
先ほどの速報で、ウクライナが前提条件なしでロシア側と交渉を行うと発表した。場所はベラルーシで行われるということだ。恐らく停戦交渉ということになるだろう。双方がこれ以上の犠牲者を出さず、かつウクライナ国内でインフラや建物、国民の財産の破壊が行われることなく、避難した人々も何とか自宅で日常に近い形で生活できるようにすることが重要だ。
ロシアがどのような条件を提示するか。それによっては交渉が決裂する可能性もあるが、ウクライナが前提条件をつけずに交渉に臨むということはかなりの譲歩も覚悟の上ということであろう。なんとも残念な結果であり、ウクライナとウクライナ国民には痛ましいことだ。しかし、こうした状況を引き起こしたのは、ロシアと西側諸国双方の勝手気ままな火遊びに原因がある。厳然たる事実はロシアの侵攻に対して、ウクライナに助太刀をする大国は存在しなかったということだ。そこまでの覚悟がなかったとも言えるし、火遊びを本格的な大火事にすることを避けたとも言える。
ロシアに対しては当然のように各種の制裁が科される。それを積極的に行う国もあるし、そうではない国もある。それぞれに事情がある。アメリカやヨーロッパ諸国につき従わねば国が成り立たないというところもあるし、そうではないというところもある。国際社会の対応は一枚岩とはいかなくなった。それだけロシアに対する制裁の効果も薄くなってしまうということになる。
アメリカはロシアからの原油の輸入を停止すると発表した。これまでもアメリカ国内の石油価格の高騰により国民生活は圧迫を受けてきた。それに対する無策ぶりでジョー・バイデン大統領の支持率は低迷してきた。今回の対ロシア制裁によってアメリカ国内の石油価格は更に上昇するだろう。しかし、今回は「対ロシア制裁という意義があるので我慢せよ」とアメリカ国民に堂々と自分の無策ぶりを棚に上げて迫ることができる。「世界大戦が始まるよりはずっと良いでしょ」と脅しをかけるような形で、何でもやり放題ということにもなる。更には、アジアやヨーロッパ諸国に対して、「自分たちの防衛費も更に増額してアメリカ製の武器を買えよ」と迫ることもできる。一種の「ショック・ドクトリン」だ。鈍重に構えている国や指導者が賢く、ワーワーとお勇ましいことを言っている国や指導者はアホということになる。日本は残念ながらアホのカテゴリーに入る。
ウクライナ国内での戦闘が早く集結することを望む。しかし、その終わりが米欧対中露の新たな大きな枠組みでの分裂線と戦いの始まりということになる。
(貼り付けはじめ)
ロシアのウクライナ侵攻について5つの知るべき事柄(5 things to know
as Russia presses into Ukraine)
レベッカ・べイッツ、ロウラ・ケリー筆
2022年2月24日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/595760-5-things-to-know-as-russia-presses-into-ukraine
木曜日(2022年2月24日)、ロシア軍がウクライナ領土に深く進攻したため、西側諸国はロシアの行動を非難し、新たな制裁措置で対応した。
ジョー・バイデン米大統領は、モスクワによるウクライナ侵攻は、ロシアの影響圏を拡大しようとする明らかな努力であり、これに対峙しなければならないと述べた。
「ロシア軍はウクライナの人々に対して残虐な攻撃を開始した。ウクライナからの挑発(provocation)もなく、正当される理由もなく(justification)、必要性(necessity)もないのに攻撃を開始した。これは計画的な攻撃だ(premeditated attack)」と述べた。
バイデンは更に「今回の行動は決してロシアの真の安全保障上の懸念からではない。それは常にむきだしの侵略のため、どんな手段を使っても帝国の復活を渇望するプーティンの欲望を満たすためなのだ」と述べた。
以下に、今回の事態について知るべき5つの事柄を挙げる。
(1)ロシアは対ウクライナ国境のほぼ全面からウクライナへの侵攻を続けている(Russia
continues its invasion of Ukraine from nearly all sides)
ロシアはモスクワ時間の木曜日早朝に侵攻を開始した。ウラジミール・プーチン大統領からの命令を受け、すぐにウクライナ国境の複数の地点からウクライナ軍を攻撃する軍事作戦を開始した。
ロシア軍は陸、空、海から侵入し、ウクライナ国内全土で爆発音が鳴り響いた。
ロシアの戦車は、キエフに最も近い侵入口であるベラルーシ国境から南下し、途中、放射能に汚染されたチェルノブイリ立入禁止区域を通過するのが目撃された。ミサイルは首都キエフにあるウクライナ軍のコントロールセンターを標的とした。
西側の情報諜報機関の複数の関係者は、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、キエフは早ければ木曜日の夜にロシア軍の攻撃のために陥落する可能性があり、ウクライナ空軍はほぼ壊滅状態であると語った。
ロシア軍はウクライナ東部でも攻撃を開始した。プーティン大統領は、ウクライナの「政権(regime)」からウクライナ東部地域を守るために介入(intervention)が必要だと主張した。
ウクライナ南部では、水陸両用部隊が港湾都市オデッサへの攻撃を開始し、複数のメディアはウクライナ兵18名が死亡したと報じた。
ロシアは大規模な偽情報キャンペーンを展開し、大量虐殺に対抗するために入国しているなどと偽っている。ウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーをナチズムだと非難している。ゼレンスキーはユダヤ人であり、第二次世界大戦におけるドイツとの戦いで家族を失った人物だ。
バイデン米大統領は木曜日にホワイトハウスで行った演説の中で、「ロシアのプロパガンダ機関は真実を隠し、でっち上げられた脅威(made-up threat)に対する軍事作戦の成功を主張し続けるだろう」と述べた。
(2)ウクライナは大規模な侵略に対してロシアと対決する決意を固めた(Ukraine
vows resolve in confronting Russia against large-scale invasion)
オクサナ・マルカロワ駐米ウクライナ大使は、ロシアが同国のインフラ、空港、倉庫、施設、市民病院まで爆撃の対象とした13時間にわたる攻撃について説明しながら、ウクライナはロシアと対決する決意を固めたと述べた。
マルカロワ大使は「ウクライナ軍の戦闘精神(combat spirit)は高い。私たちは現在戦っている。勇敢で意欲的な軍隊だけでなく、全ウクライナ人が戦っているのだ」と発言した。
アメリカ軍と情報諜報機関の幹部たちは、ロシアはウクライナへ大規模な侵攻を行い、かなりの領土を制圧するという予測を立てている。
バイデン米大統領は「プーティンはウクライナに対してより大きな野心を抱いている。彼は、事実上、旧ソビエト連邦を再興しようとしている。それが今回の侵攻を引き起こした」と発言した。
報道各社は、ウクライナ、ロシア双方で複数の死傷者が出たと報じている。
キエフに近いウクライナの高速道路の画像では、爆発後に首都を離れる人々が道路にあふれかえっている様子が確認された。キエフ市はその後、夜間外出禁止令を出し、午後10時から午前7時までは自宅にとどまるよう住民に命じた。
複数の報道によると、ウクライナ人たちがATMに殺到し、食料を買い込んだために、食料品店の棚が空っぽになり、ガソリンスタンドには長蛇の列ができているということだ。
また、銀行やウクライナ国防省を含むウクライナの公的や民間の諸機関は複数のサイバー攻撃の対象となった。
バイデン米大統領は、ロシアはウクライナを占領しようとすることで生じる長期的な結果に対する準備ができていないという警告を発した。
バイデン米大統領は、「他国の領土を迅速に獲得したことで、最終的にいかに占領軍を疲弊させ、大規模な市民的不服従が発生し、戦略的行き詰まりに至るか、歴史が何度も示している」と述べた。
(3)次に何が起きるか?(What happens next?)
バイデン政権は木曜日、モスクワに対する制裁措置の第二弾として、より多くの金融機関、ロシアのエリート層、その家族、企業を対象にした制裁措置を発表した。バイデン大統領はまた、ロシアの防衛産業にとって重要な技術の輸出を制限し、他の国々がアメリカ製のソフトウェアや機器を含む製品をロシアに輸出することを禁じた。
バイデン大統領は木曜日に、この制裁を「甚大なもの(profound)」と評したが、その影響はクレムリンに真の痛みを与えるまで少なくとも1か月はかかるだろうと警告した。
一方、ロシアからのサイバー攻撃については、ウクライナで既にロシアから攻撃を受けている。今度はアメリカやヨーロッパを標的にする可能性が高いため、バイデン政権はロシアからの報復攻撃に対して準備をしている。
その他の報復攻撃は深刻な影響を与える可能性がある。
アントニー・ブリンケン米国務長官は2022年2月17日、国連安全保障理事会での演説で、ロシアが特定のウクライナ人を標的にして暴力を振るおうとしていることを警告した。アメリカ国連代表部は、プーティンの戦争犯罪の可能性に対する警告として、ロシアの「殺害リスト(kill list)」を国連加盟諸国に対して書簡として送付した。
国務省の報道官は水曜日に本誌の取材に応じ、「私たちがこれまで述べてきたように、もし私たちの書簡に書かれている内容が実現すれば、それらは恐ろしい犯罪、戦争犯罪にさえなりうる。私たちは、ロシアの計画に関しての私たちの理解と知識に基づいて、標的となり得ると思われる個人や団体に警告を発しており、彼らが自らを守り、より安全な場所に移動できるように努めている」と述べた。
ヨーロッパの指導者たちは、大規模な難民の流出(massive exodus of
refugees)にも備えている。アメリカの情報諜報機関は、ロシア軍が北、南、東から侵入し、100万から500万人のウクライナ人が避難する可能性があると判断している。
ロイター通信が報じるところでは、国連難民高等弁務官事務所(The office of
U.N. High Commissioner of Refugees)の集計によると、数千人のウクライナ人がすでにモルドバやルーマニアなどの国々に渡り、推定10万人が国内で避難生活を送っているということだ。
(4)アメリカの同盟諸国とロシアの同盟諸国との間で分裂した国際的な反応が起きる(A
divided global response between U.S. and Russia allies)
アメリカ、ヨーロッパ、世界を主導する工業国によるG7は木曜日、ウクライナに対する戦争を開始したとしてプーティンに対して強い内容の非難をそれぞれ発表することで共同歩調を取った。
国際連合事務総長(Secretary-General of the United
Nations)のアントニオ・グテーレスはプーティンに対して直接アピールを発表した。その内容は「軍事作戦を停止せよ。群をロシア国内に帰還させよ」というものだった。
しかし、中国はロシアのウクライナに対する攻撃を侵略(invasion)と形容することを拒絶した。これはアメリカの立場から離れた見解だが、これは予測可能なものだった。
複数の中国政府当局者は、モスクワが「特別作戦」を開始したというプーティンの主張を繰り返した。また、「全ての当事者が自制し、状況を緩和するために建設的な措置を取る」ことを求める声明を繰り返した。
イランのホセイン・アミラブドラヒアン外相は木曜日、ウクライナに対するロシアの攻撃について、「今回の危機NATOからの挑発が発端となっている」とロシアの主張を支持するツイートを行った。
同様に、パキスタンのイムラン・カーン首相は、水曜日の夜にプーティンと会談するためにモスクワに飛行機で到着し、2日間の訪問を行った。パキスタンとロシアの当局者はそれぞれ、経済、技術、エネルギー分野の関係を強化するために、より密接な両国間の全般的な関係構築に合意したと述べた。
民主国家であり、アメリカの軍事協力の重要なパートナーであるインドは、木曜日に控えめな反応を示した。それに対して、ウクライナのイゴール・ポリハ駐インド大使は、記者会見でキエフが「インドの支援を求めている、懇願している」と述べ、支援を訴えた。
バイデンは木曜日、ロシアのウクライナに対する侵略への対応について、アメリカはインドと協議中であると述べ、「ワシントンとニューデリーの間では今のところ、対ロシア姿勢について完全な合意に達してはいない」と述べた。
(5)アメリカ国民とヨーロッパの諸国民は経済的な影響を被る(Americans and
Europeans brace for economic impact)
ロシアのエネルギー部門に対する金融制裁は、ロシアにとって経済的にかつ地政学的に最重要の産業に打撃を与える可能性があるが、アメリカやヨーロッパの消費者たちのガスやエネルギー価格の上昇を招く危険性が高い。
ロシアはアメリカにとって重要なエネルギー輸入国であり、ヨーロッパ諸国にとっても重要な供給源である。ヨーロッパ諸国は、ロシアから入手できない燃料を補うために、アメリカへの依存度を高める可能性もある。
米国エネルギー情報局によると、ロシアは2020年において、アメリカにとって3番目に大きな外国石油の供給国であり、アメリカの輸入石油の7パーセントを占めている。
木曜日朝、原油価格は1バレル当たり100ドルを超えた。
バイデン大統領は、火曜日に最新の制裁措置を発表する際、アメリカの消費者が影響を受けると警告した。世界規模の悪童であるプーティンに対峙するためには苦難が必要であると述べた。
バイデンは「これが厳しいことであることは分かっている。アメリカ国民は既に原油高やインフレーションに苦しんでいる。石油価格の高騰でアメリカ国民が感じる痛みを和らげるために、私は与えられた権限においてできることは全て実施する」と述べた。
バイデンは続けて、「しかし、今回の侵略に対して看過することは不可能なのだ。もし見過ごしてしまえば、アメリカにとっての結末はより悪いものとなるだろう」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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