古村治彦です。
ロシアのウクライナ侵攻が発生してから、これまで複数回にわたり、両者による停戦交渉が行われてきたが、目立った成果は挙がっていない。ロシアのウラジミール・プーティン大統領、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は共に交渉開始には同意しているが、それぞれの条件についてはまだ折り合いがついていない。ゼレンスキー大統領の方がやや柔軟な態度を示しているが、ウクライナからの分離独立を宣言した2つの地域を承認できないとして、ここが焦点になりそうだ。
ロシア側の停戦条件は、「ウクライナも敵対行為を停止し、クリミアをロシア領と認め、ドネツクとルハンスクを独立国家として受け入れ、憲法を改正してNATOや欧州連合への加盟を拒否すること」だとしている。また、以前の報道ではウクライナの非武装化、保有できない武器のリスト化ということも条件になっているようだ。ウクライナ側としては、憲法を改正してEUやNATOへの加盟はしないという形での「中立化」を受け入れる余地があるが、クリミアやドネツク、ルハンスクのウクライナからの分離には難色を示している。
残念なことだが、ウクライナ側がこれらの条件よりももっと良い条件でロシアと折り合いをつけることができたのだ、昨年までだったら。それを西側諸国がバックについているので安心しきったヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が計算間違いと認識間違いを犯してしまったのだ。侵攻の責任はロシアにあるが、ウクライナ側を安心させて勘違いをさせておいて、いざとなったらはしごを外した形の西側諸国にも大きな責任がある。土壇場になって言葉だけで何も有効な手段をウクライナ側に提供できない西側諸国には、ゼレンスキー自身も呆れているだろう。そんな人物を西側諸国の政府とメディアは英雄に祭り上げている、自分たちの犯した十代や過ちを隠すために。政治は結果責任だ。自分の愚かさのために国民の生命と財産、そして国家を守れなかった指導者は退場する、もしくは退場させられるしかない。そして、今回の出来事は私たちに、きれいに着飾った国際政治の裏にある、冷酷な大国間政治の残酷さを見せつけている。世界は変わらず、人間は愚かだ。そして、そのことから目を背けて、楽観主義に陥って大きな間違いを犯す。それが人間の本姓の悲しさだ。
(貼り付けはじめ)
ウクライナ・ロシア合意のいくつかのヒントとは?(Hints of a
Ukraine-Russia Deal?)
-ゼレンスキーは妥協案を持ち出しているように見えるが、アメリカ政府当局はプーティンがさらに強硬な姿勢を取ることを恐れている。
マイケル・ハーシュ筆
2022年3月8日
By Michael Hirsh
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2022/03/08/ukraine-russia-deal/
ロシアによるウクライナへの血なまぐさい侵攻は明らかに行き詰まっており、今週、ロシアのウラジミール・プーティン大統領とウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が、12日間にわたる戦争を停止させるための妥協に一応理解を示しているようだ。
それでも、火曜日に行われた連邦下院情報委員会の証言で、アメリカ国家情報長官アヴリル・ヘインズは、プーティンはウクライナの抵抗と侵略に対する世界の反応に驚いているが、「このような失敗で抑止されることはなく、むしろエスカレートしてより強硬な姿勢を取る可能性がある」と議員たちに語った。
火曜日に放映されたテレビのインタヴューで、ゼレンスキーはABCニュースのデービッド・ミュアーから、月曜日にクレムリンから提案されたことにどう反応したかと質問を受けた。「ウラジミール・プーティンへ与えるメッセージが何かあるか?」
とミュアーは質問した。ミュアーは、モスクワが敵対行為を止める条件として、ウクライナが憲法を改正してNATOへの加盟を拒否し、クリミアをロシアの一部として、ドネツクとルハンスクの2つの分離独立した地域を独立国家として認めるよう要求していることを指摘した。
ゼレンスキーは質問への直接の回答を避けたが、これらの点のほとんどについて妥協する意思があることを示し、「対話の用意はある(ready for a dialogue)」と述べた。NATOについては、「NATOがウクライナを受け入れる用意がないことを理解してから、この質問に関してはずいぶん前に冷静になった」と述べている。NATOは物議を醸すことやロシアとの対立を恐れている」と述べた。
分離主義勢力が支配する地域の領土問題では、ウクライナ大統領ゼレンスキーも、少なくともドネツクとルハンスクの問題では、いくらか融和的な姿勢を見せた。ゼレンスキーは「一時的に占領された領土やロシア以外は認めていない擬似共和国については、これらの領土がどのように生きていくのかについて話し合い、妥協点を見出すことができると思う。私にとって重要なのは、ウクライナの一部でありたいと願うこれらの領土の人々がどのように生きていくかということだ」と述べた。
ウクライナ政府が公式に発表したインタヴュー全文の中で、ゼレンスキー大統領は、「クリミアがロシアの領土であることを認めることはできない。ロシアがクリミア半島をウクライナの領土であることを認めるのは難しいだろう」と発言している。更にはロシアも含めた「集団安全保障協定(collective security agreement)」を求める発言もしている。
プーティン大統領が大演説を行い、その中でウクライナはロシアの「歴史、文化、精神空間」の「譲れない一部」であると宣言してから2週間後の月曜日、ロシア外務省のドミトリー・ペスコフ報道官は、モスクワは「即座に(in a moment)」軍事作戦を停止する準備ができていると記者団に発言した。クレムリンの要求は、ウクライナも敵対行為を停止し、クリミアをロシア領と認め、ドネツクとルハンスクを独立国家として受け入れ、憲法を改正してNATOや欧州連合への加盟を拒否することだとペスコフは述べた。欧米寄りのウクライナ人は以前からEUへの加盟を求めており、2014年にプーティンがクリミア併合に動いたのは、当時のロシア寄りのウクライナ大統領ヴィクトール・ヤヌコヴィッチがEUとの連合協定締結を回避したことを受けて、最終的に彼を失脚させることになった大規模デモが引き金となったものだった。先週、ゼレンスキーはロシアの侵攻を阻止するために、EUへの早期加盟を求めたばかりだ。
プーチティンは以前から妥協する意思があるという虚偽の姿勢を取ってきた。そして、今回のロシア側からの要求も過去と大差はない。それでも、イスラエルの報道によれば、土曜日にモスクワを訪問したイスラエルのナフタリ・ベネット首相(侵攻以来プーティンと会談した唯一の西側指導者)は、取引(deal)の可能性を示唆した。『エルサレム・ポスト』紙は、ベネット首相が具体的な提案を持ってロシアに行った訳ではないが、交渉は「西側が言っているよりもずっと真剣」だったと、「会談の詳細に詳しい」匿名の情報諜報関係者の言葉を引用して報じた。さらに、キエフはプーティンへの圧力を維持するため、詳細を共有していないと付け加えた。ベネットはプーティンとの会談の後、ゼレンスキーに電話をかけたが、ゼレンスキーは自分たちの考えをロシア側には伝えないように要求した。ウクライナのゼレンスキー大統領は「イスラエルのナフタリ・ベネット首相と話した。イスラエルの調停努力に感謝する。私たちは戦争と暴力を終わらせる方法について話し合った」とつぃったー上に投稿した。
もし、モスクワが交渉に応じるとなれば、侵攻の3日前の2月21日にプーティンが行った演説の内容とはトーンが変わることを意味する。侵攻開始以来、クレムリンは、ウクライナの首都キエフを中心とする主要地域への攻撃がウクライナの抵抗によって阻まれたことに唖然としている様子で、アメリカとヨーロッパ連合の対応の激しさと団結に困惑している。アメリカとEUは前例のない制裁措置を発動し、ロシアを国際金融システムから事実上排除している。火曜日には、ジョー・バイデン米大統領もロシアの石油、ガス、石炭のアメリカへの輸入を禁止すると発表した。あるバイデン政権高官は、プーティンから「彼の不必要な選択戦争(is needless war of choice)を続けるために使う経済資源」を更に奪うと述べた。
米国立戦争大学の国家安全保障専門家リチャード・アンドレスは、「プーティンの国は既にロープでつながれている。ロシアは世界の銀行システムからほぼ完全に切り離されている。すでに何百万人ものロシア人が、十分な食事や電気を得ることができなくなりつつある」と述べた。
ジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所の所長でプーティン研究の専門家であるマレーネ・ラリュエルは、プーティンが軍事的優位を取り戻すために時間稼ぎをしているだけの可能性もあるが、ウクライナ側と交渉する用意ができているかもしれないと考えていると述べた。
ラリュエルは「プーティンは世界中で悪者扱いされる一方で、ゼレンスキーは国際的な英雄になっている。プーティンはもはやカリスマ的なゼレンスキーを西側の操り人形と見なすことはできないと気づいているのだろう。彼はおそらく、ゼレンスキーと直接会談しなければならないことを悟っているだろう。彼は傲慢であるが、これまで傲慢のために戦争に負けたという事例が非常に多いことも事実だ」と述べた。
火曜日、ヘインズ国家情報長官とウィリアム・バーンズCIA長官の両名は「プーティンは個人的に余りにも多くの問題を抱えており、今すぐ引き下がるとは考えられない」と語った。ヘインズは更に「しかし、ロシアの街頭、そして政府内でさえも不満が高まっており、プーティンは初めて自分の持続力に関する懸念に直面することになるだろう。プーティンは、西側諸国が自分に適切な敬意を払わないことに憤りを感じ、これを負ける訳にはいかない戦争だと認識していると思われる。しかし、彼が負担している大きなコストを考えると、勝利として受け入れる可能性のあるものは、時間とともに変化するかもしれない」と述べた。
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