古村治彦です。

 ロシアとウクライナの間での停戦交渉は進展が見られない中で4回目の交渉が実施されるという報道がなされている。西側諸国ではフランスのマクロン大統領やドイツのシュルツ首相がロシアのウラジミール・プーティン大統領と会談を行ったが、大きな成果は上がっていない。そうした中で、ロシアのプーティン大統領、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と直接会談を持っているのが、イスラエルのナフタリ・ベネット首相だ、とイスラエル政府高官が述べているということだ。ベネット首相は直接モスクワまで飛んで、プーティン大統領と直接面会して会談を行った、西側諸国の唯一の政治指導者ということになる。
naftalibennettvladimirputin511

ベネット首相とプーティン大統領 
 それぞれの会談内容の詳細は漏れ伝わっていないが、プーティン大統領が西側諸国との間で外交チャンネルを開いて話ができるようにしておきたいと考えていること、プーティン大統領はウクライナ東部の支配権を握りたいと考えていること、ゼレンスキー大統領は、NATO加盟の断念とウクライナ東部について柔軟な姿勢を示していること、が今回の記事で示唆されている。ウクライナ東部の分離主義勢力の支配する地域の独立承認はウクライナ側としては受け入れがたいだろうが、最終的には独立を認めるということもあるのではないかと思う。NATO加盟は現実として不可能という状況ではこれを受け入れるしかない。

返す返すも残念なのは昨年までであれば、ウクライナの中立ということで、ウクライナ側にとって今よりももっと良い条件での合意ができた可能性が高いということだ。そこを見誤ったということで、ゼレンスキー大統領の評価は下げざるを得ない。見た目の華やかさや報道に惑わされるべきではない。戦時大統領としての行動は評価するにしても、政治は結果責任である以上、今回の状況を招いた責任は取らねばならない。ウクライナの歴史や地理的状況を考えれば、大国間政治を一番に理解しておかねばならなかった人物だ。

 ウクライナ軍と国民の抵抗によって、ロシア軍の侵攻が停滞しているうちに、交渉をまとめて少しでも良い条件を引き出す、ということが重要だ。アメリカや西側諸国が大逆転のための施策を実行してくれない以上、ここから大逆転は難しい。焦土作戦(scorched earth)では犠牲が大き過ぎる。どんなに冷酷で残酷でも、置かれている状況で最善の方策を探すことがリアリズムだ。

(貼り付けはじめ)

プーティン、ゼレンスキーは現在も交渉中-イスラエルを通じて(Putin, Zelensky Still Talking—Through Israelis

-現在もロシア軍の攻勢が続く中で、プーティンとイスラエル首相ベネットは月曜日に1時間半にわたって会談を行った。

マイケル・ハーシュ筆

2022年3月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/14/putin-zelensky-still-talking-through-israelis/?tpcc=recirc_latest062921

ロシア大統領ウラジミール・プーティンは月曜日、イスラエルのナフタリ・ベネット首相と、ウクライナでの停戦の可能性について1時間半にわたって話したとイスラエル政府高官が述べた。ロシア指導者プーティンがウクライナ西部で積極的な軍事進出を続ける中、今回の会談は行われた。

このイスラエル政府高官は匿名を条件に本誌の取材に応じ、会話の詳細は明らかにしなかったが、ベネット首相が6日にモスクワ訪問から戻って以来、プーティン大統領と行ったいくつかの会談のうちの1つであったという。ベネット首相は月曜日、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とも会談し、ゼレンスキー大統領は次のようにツイートした。「私たちは、ロシアの侵略を背景とした私たちの共同歩調とパートナーの歩調について情報交換した。さらなる行動で合意した」。

前述のイスラエル政府高官は、「プーティンとベネットは、ロシアとウクライナの間の停戦に向けた努力や人道的な事項について話した」と述べた。ロシアとウクライナの交渉担当者による別の話し合いは、火曜日にも続けられる予定だ。

プーティン大統領とベネット首相、ゼレンスキー大統領とベネット首相の会談の内情を知る上級外交官たちによれば、プーティンとゼレンスキー双方で言葉の軟化が見られるということだ。しかし外交官たちは、ロシア軍がウクライナの激しい抵抗に阻まれている間、約3週間続く戦争で戦場を有利にしようとするプーティン側に、真剣な外交を行う準備ができているとは考えていないようだ。米国防総省高官は月曜日の状況説明において、記者団たちに対して、ロシア軍は首都キエフに向かって前進しているが、国内でのロシアの前進は「ほとんど全て」停滞していると語った。

それでも、プーティンはベネットとの会談に意欲的だ。戦争が始まって以来、プーティンが直接会った唯一の西側の指導者であり、これはプーティンが外交チャンネルを開いておきたいと考えていることを示すものだ。ベネット首相が最後にプーティン氏と話したのは先週の火曜日で、イスラエルの指導者ベネット首相は今週月曜日に閣議を抜け出してプーティン大統領に電話した。この電話は予め決まっていたものだったと外交官たちは述べた。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が参加した交渉に、アメリカ政府関係者は一切参加していない。「フランス、ドイツ、イスラエル、トルコなどのパートナーや同盟諸国が外交的な解決を求める努力を尊重している」とバイデン政権幹部は電子メールを通じて述べた。この人物は「私たちは彼ら全員とオープンで定期的なハイレベルのコミュニケーションチャンネルを維持している。私たちは外交的提案がウクライナの利益と観点を反映するよう、ゼレンスキー大統領とウクライナ政府と緊密に協議し続けるよう促している」とも述べた。

会談に携わった複数の外交官たちによれば、プーティンは近いうちに、ロシアが東部のみを完全に支配することを意味する領土問題の妥協点を交渉する準備が整うかもしれないと述べた。それにもかかわらず、特にロシアのミサイルがポーランド国境近くのヤボリブ訓練基地を攻撃し、少なくとも35人が死亡した後、緊張関係は戦争当初と同様に高いままだ。

ゼレンスキーは、ウクライナをNATOに加盟させないというロシアの要求に対して、妥協する可能性を残している。先週のABCニューズとのインタヴューで、ゼレンスキーは次のように語っている。「NATOがウクライナを受け入れる用意がないことを理解した後、私はずいぶん前にこの問題について冷静になった。NATOは物議を醸すことやロシアとの対立を恐れているのだ」。

ウクライナ東部の分離主義勢力が支配する領土の問題について、ウクライナ大統領ゼレンスキーは、「これらの領土で人々がどのように生きていくかについて話し合い、妥協点を見出すことができる」と述べ、交渉の用意があるように思われる。

(貼り付け終わり)

(終わり)
(終わり)


bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505