古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領の側近であるジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が、中国側のカンターパートである楊潔篪中国共産党中央政治局委員・中国共産党中央外事工領導弁公室主任とローマで7時間にわたって会談を行った。この会談はロシアによるウクライナ侵攻の前から予定された会談であったが、図らずも今回、米中の外交関係のトップ高官による話し合いでウクライナ情勢が取り上げられることになった。
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楊潔篪とジェイク・サリヴァン

今回アメリカ側の代表者となったジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官については拙著『アメリカ政治の秘密』『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げているので、ここで詳しい人物紹介はしない。中国側の代表者である中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪(ようけっち、Yang Jiechi)は最年少で駐米中国大使を務めて、英語に関して全く問題ない中国にとっての対米人材のトップの人物である。娘はアメリカの名門校からイェール大学を卒業している。反米的な発言を刷ることでも知られているが、冷静な知米派外交官だ。

 両者の会談は7時間も続いたということで、ウクライナ情勢だけが議題ではなかったということになるが、やはり最重要の議題はウクライナ情勢だろう。アメリカ側は、中国がロシアを支援することをけん制し、中国は原則論を述べ、速やかな停戦を求めたということになる。ロシアは中国に対して支援を求めるということはこれまでの関係上、まあ自然なことだ。中国としては軍事物資の支援はさすがに慎重になるだろう。ウクライナへの人道支援を行っていることから、ロシアの一般国民への人道支援という名目で、民生用の食料や医薬品の提供に留めるのではないかと思う。

 重要なことは、ジェイク・サリヴァンがバイデン政権の中で、対中チャンネルのトップの位置にいるという点だ。サリヴァンは対中共存派であり、直接対決をせずに、うまく付き合っていくべきだという考えを持っている。米中間が外交チャンネルをオープンにして、話し合うということが、これからの世界の動きを決めていくということで、新しい形になっていくだろう。ヘンリー・キッシンジャーが敷いた「G2」路線ということになる。中国としてもロシアに対してはある程度のところで矛を収めるようにと諭しているだろう。ロシアとしても後ろに中国がいるのといないのとではこれからの動きが変わってくるので、中国の意向を無視することはできない。世界は米中二極(bilateral)体制の確立へと進んでいる。

(貼り付けはじめ)

●「楊潔篪氏、ウクライナ情勢に対する立場述べる 米大統領補佐官と会談」

2022315 12:34 発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]

新華社

https://www.afpbb.com/articles/-/3395053

315 Xinhua News】楊潔篪(Yang Jiechi)中国共産党中央政治局委員・中央外事工作委員会弁公室主任は14日、イタリアの首都ローマで米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)と会談し、その中でウクライナ情勢について中国の立場を詳しく述べた。

https://www.afpbb.com/articles/-/3395053

 楊潔篪氏は次のように指摘した。ウクライナ情勢の今日の事態は中国が願わないものだ。中国は一貫して各国の主権と領土保全を尊重し、国連憲章の趣旨と原則を順守することを主張している。中国は和平交渉の推進に尽力しており、国際社会はロシアとウクライナの和平交渉が早期に実質的成果を収めることを共同で支持し、情勢の迅速な鎮静化を図るべきだ。各国は最大限の自制を保ち、一般市民を保護し、大規模な人道危機を防がなければならない。中国はすでにウクライナに緊急人道援助を行っており、今後も引き続き努力する。

 楊潔篪氏は次のように表明した。ウクライナ問題の歴史的経緯、原因と結果、根源を整理し、各国の合理的懸念に対応すべきだ。将来を見据え、共同・総合・協力・持続可能な安全保障観を積極的に提唱し、関係各方面の対等な対話を奨励し、安全保障の不可分性の原則に従って、均衡、有効、持続可能な欧州安全保障の枠組み構築を探り、欧州と世界の平和を守ることを呼び掛ける。

 楊潔篪氏は、事実でない情報を流し、中国の立場をねじ曲げ、中傷するいかなる言動にも断固反対すると強調した。(c)Xinhua News/AFPBB News

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報告:ロシアがウクライナとの戦争を戦いながら、中国に軍用食品支援を求めた(Russia requested military food aid from China amid war with Ukraine: report

モニク・ビールズ筆

2022年3月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/598200-russia-requested-military-food-aid-from-china-amid-war-with-ukraine

今回の問題について取材源2名がCNNの取材に対して、「ロシアは、アメリカで“ミールズ、レディ・トゥ・イート”として知られている食料を含む、包装された非生鮮性の軍用食品の提供を中国に要求した」と述べた。

情報筋の1人はCNNに対し、中国がこの要求に応じる可能性があるのは、それが致命的ではない支援であり、西側を刺激するような状況であるためだと語った。

ある西側政府の関係者とアメリカ外交官もCNNに対し、中国がロシアに軍事・財政支援を行う意向を示したという情報を持っていると述べた。

しかし、CNNは、中国が実際にその援助を行うかどうかはまだ不明である、と報じている。

ロシアから中国への要請は、ロシアの侵攻に対する全体的な準備態勢と、専門家が言うロシアの攻撃の進展を妨げている後方ロジスティックス問題をめぐる疑問を提起している。

CNNは、公開されている報告書や報道では、ロシア軍では特定の物資が不足しているため、ロシア軍が食料品店に押し入って食料を調達している様子が示されていると報じた。

一方、ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はローマで、中国がロシアを支援した場合の「潜在的な影響と結果(potential implications and consequences)」について中国側に警告を発した。

バイデン政権のある幹部は、サリヴァンと中国側との会談後のブリーフィングで記者団に対し、「私たちは現時点で中国のロシアとの連携に深い懸念を持っており、サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官はそうした懸念と、ある行動がもたらす潜在的な影響や結果について率直に述べた」と述べた。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はまた、サリヴァンが、中国がロシアに「制裁違反や戦争努力の支援(violates sanctions or supports the war effort)」となる軍事支援やその他の支援を行った場合、「重大な結果(significant consequences)」に直面すると示唆したと述べている。

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報告:ロシアが中国からの軍事装備を求めている(Russia seeking military equipment from China: report

オラフィミハン・オシン筆

2022年313

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/europe/598041-russia-seeking-military-equipment-from-china-report

複数の報道によると、モスクワのウクライナ侵攻が続く中、ロシア政府の複数の高官たちが中国政府の高官たちに対して、軍事装備の入手について接触したということだ。

アメリカ政府関係者は『ワシントン・ポスト』紙と『ニューヨーク・タイムズ』紙に武器取引の可能性を伝えたが、ロシアがどのような兵器を要求したか、詳細は明らかにしなかった。

ニューヨーク・タイムズは、世界の多くがロシアを孤立させようとしている中、ロシアにとって重要な同盟国となっている北京からの追加的な経済支援についても、モスクワが要求していると報じた。

ロイター通信によると、ワシントンの中国大使館の広報担当者は、モスクワからの支援要請について「聞いていない」と述べたということだ。

ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は今週、中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪と会談する予定だが、日曜日、中国はロシアが世界的な制裁に対処するための物質的支援を提供しないよう警告した。

サリヴァンはCNNの取材に対して、「私たちは北京に対し、大規模な制裁逃れやロシアへの裏付け支援には絶対に結果が伴うと、直接そして内々に伝えている」と語った。

サリヴァンは更に「私たちはそのようなことを許さないし、世界のどの国からも、どの場所からも、この経済制裁からロシアへの命綱が投げられることを許さない」とも述べた。

『ワシントン・ポスト』紙によると、ロシアのアントン・シルアノフ財務相は日曜日のテレビインタヴューで、ロシアの金と外貨準備の一部が中国通貨であることを打ち明けたということだ。

シルアノフ財務相はインタヴューの中で「西側諸国が中国に対して、相互の貿易を制限するためにどのような圧力をかけているかを注視しいている」と述べた。

シルアノフは続けて「しかし、中国とのパートナーシップは、西側市場が閉鎖される環境下でも、これまで達成した協力関係を維持するだけでなく、拡大することも可能だと思う」とも述べた。

ウクライナへの侵攻を開始して以来、ロシアは西側諸国から制裁を受けており、制裁の程度がエスカレートしている。アメリカとイギリスの両国政府は最近、ロシアの石油、天然ガス、石炭の輸入を段階的に停止すると述べている。

アメリカ政府関係者の中には、危機的状況が続く中、ロシアは一部の死類の弾薬が不足していると話す関係者もいるとワシントン・ポストは報じている。

元米国インド・太平洋軍顧問のエリック・セイヤーズはワシントン・ポストの取材に対して、「北京がウクライナでのモスクワの戦争を支援するために何らかの軍事的援助を提供しているとすれば、米中政策への波及効果は甚大なものになるだろう」と述べた。

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サリヴァンは中国政府高官たちとの会談の中でロシアに関する懸念を表明(Sullivan raises Russia concerns in meeting with Chinese official

モーガン・チャルファント筆

2022年3月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/598140-sullivan-raises-russia-concerns-in-meeting-with-chinese-official

ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、月曜日に行われた米中当局者の長時間の会談で、中国のロシアとの連携について懸念を示したと、あるバイデン政権幹部が語った。

米中当局者はローマで7時間会談し、ロシアのウクライナ侵攻を一部取り上げたと同高官は述べた。サリヴァンは、中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪に対し、中国がロシアを支持した場合、重大な結果に直面する可能性があると警告したということだ。

バイデン政権関係者によると、この会談は激しく率直なものとなり、ウクライナ侵攻の中でロシアが中国に軍事・経済支援を求めたとの報道を受けたものとなった。この高官は、これらの報道について直接言及することを避けた。 

この政権高官は「私たちは現時点で中国がロシアと連携することに深い懸念を抱いており、サリヴァン大統領補佐官はそうした懸念と、ある行動がもたらす潜在的な影響や結果について率直に語った」と会談後のブリーフィングで記者団に語った。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、サリヴァンが中国側に対して、中国がロシアに「制裁違反や戦争努力の支援」となる軍事的またはその他の支援を提供した場合、「重大な結果(significant consequences)」に直面することになると伝えたと述べた。しかし、崎報道官はそれらの「結果」について具体的な情報を提供することを避け、アメリカの同盟諸国と調整されるだろうと述べた。

サキ報道官は月曜日、サリヴァンと楊潔篪の会談の日程は、ロシアが約3週間前にウクライナに侵攻する前から計画されていたと語った。それにもかかわらず、今回の会談はウクライナを攻撃したロシアに対して、アメリカが国際的な圧力をかけ続けようとしている、タイムリーで差し迫った瞬間に行われた。

ホワイトハウスの発表によると、この会談では「様々な問題」が取り上げられ、ロシアのウクライナ侵攻について「実質的な議論(substantial discussion)」が行われたということだ。

また、サリヴァンと楊潔篪は、「米中間の開かれたコミュニケイション・ラインを維持することの重要性を強調した」という。

複数のバイデン政権関係者は、ロシアとそのウクライナ侵攻に関連する中国の行動を注視していくと述べた。

今回の会談は、バイデン大統領が2021年11月に中国の習近平国家主席と行った会談のフォローアップとして計画され、北朝鮮や台湾付近での中国の挑発的な行動についても取り上げられた。 

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アメリカ、中国の政府高官たちがロシア・ウクライナ戦争について会談を持つ予定(US, Chinese officials to meet in Rome over Russia-Ukraine war

ジョセフ・チョイ筆

2022年313

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/598028-us-chinese-officials-to-meet-in-rome-on-monday-to-discuss-impact-of

中国とアメリカの政府高官たちが月曜日にローマで会談を持つ予定になっている。両者はロシアのウクライナ侵攻とその世界規模での安全保障に与える衝撃について議論を行うことになる。

国家安全保障会議のエミリー・ホーン報道官は声明の中で次のように述べた。「月曜日、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官と国家安全保障会議の高官たちがローマに向かう。サリヴァンは、アメリカと中華人民共和国との間のコミュニケイションのラインを維持する継続的な試みの一環として、中国共産党政治局員であり、中国共産党中央外事工領導弁公室主任を務める楊潔篪と会談を持つ予定だ」。

ホーン報道官は続けて「「両者は、両国の競争を管理するための進行中の取り組みについて話し合い、ロシアのウクライナに対する戦争が地域および世界の安全保障に与える影響について議論する」と述べた。

ローマ滞在中、サリヴァンはイタリアのマリオ・ドラギ首相の外交顧問であるルイジ・マッティオーロとも会談し、「プーティン大統領の選択戦争に対する強力で統一された国際的対応の調整」について話し合う予定だ。

ロシアのウクライナ侵攻が始まって以来、中国に対して、欧米とモスクワ(北京の最も近い同盟国)の仲介役を務めるように求める声が高まっている。中国はこれまでロシアの行動を非難することはせず、紛争当事者双方に自制を呼びかけてきた。

欧米諸国によるロシアへの厳しい制裁措置を受けて、中国がロシア経済への支援に乗り出すのではないかという見方もある。ホワイトハウスのジェイク・サリヴァン国家安全保障問題対東大雨量補佐官は日曜日、経済制裁の影響を打ち消すためにロシアを支援しようとする国には影響が及ぶと警告した。

サリヴァンはNBCの「ミート・ザ・プレス」に出演し、「私たちは北京だけでなく、世界中の全ての国に対して次のように明言したい。もし彼らが基本的にロシアを救済することができる、我々が科した制裁を回避する方法をロシアに与えることができると考えるなら、彼らは全く別の結果を得ることになるだろう。私たちは中国であろうと他の国であろうと、ロシアの被る損失をロシアが挽回できるようにはさせないからだ」と語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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