古村治彦です。

 アメリカでの世論調査で「トランプが大統領のままだったらプーティンはウクライナに侵攻しなかっただろう」と考えている人が62%いたということが明らかになった。これは党派別で考えが分かれるところで、共和党氏支持者の85%、民主党支持者の38%がそのように答えたということだ。民主党支持者でも4割弱がそのように考えているという点は、ジョー・バイデン米大統領の政権運営にとって深刻な結果ということになる。

 一方で、「トランプが大統領であったとしても、プーティンはウクライナ侵攻を実行していただろう」という主張もある。以下に紹介する記事では、国際関係論の「安全保障のジレンマ」という理論を使って分析している。この理論を使うと、「ウクライナがEUNATOに加盟することで自国の安全保障を強化すれば、隣国であるロシアはそれを脅威に感じて自国の軍事力を高める、そうなると、ウクライナの安全保障は弱体化してしまう」ということになる。トランプはNATOの弱体化、アメリカの撤退を望んでいたのだから、トランプが大統領のままでもどちらにしても西側の軍事力は弱くなっていた。軍事力のバランスが崩れたのが原因でこのような事態になったということを述べている。また、トランプはウクライナに対して厳しく対応してきたとも述べている。

 トランプが大統領であれば、常識的な方法ではなく、今回のロシアによるウクライナ侵攻に対応したことだろう。アメリカ軍をいきなり派遣するということはないだろうが、クレムリンに電話をして直接プーティンと話をするというくらいのことをしただろう。プーティンに侵攻を止めろと言い、条件は何だと聞き、ウクライナのゼレンスキー大統領には、EUNATO加盟を諦めろと説得したことだろう。それが奏功したかどうかは分からない。しかし、トランプ、プーティン、習近平の「嫌われ者3人による新しいヤルタ体制」で世界が意外と安定する形はできていた可能性もある。プーティンはここが良いタイミングだと判断して最終決断をしたのだろうが、その際に「アメリカはバイデンが大統領だから」ということも判断のための要素ということになったのかもしれない。
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(貼り付けはじめ)

世論調査:有権者の62%が「もしトランプが大統領だったらプーティンはウクライナに侵攻しなかっただろう」と答える(62 percent of voters say Putin wouldn't have invaded Ukraine if Trump were president: poll

キャロライン・ヴァキル筆

2022年2月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/595919-62-percent-of-voters-say-putin-wouldnt-have-invaded-ukraine-if-trump  

金曜日に発表された最新の世論調査の結果によると、アメリカの有権者の大多数は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ドナルド・トランプ前大統領がまだ大統領をしていたら、プーティンはウクライナに侵攻しなかっただろうと答えたということだ。

金曜日に発表されたハーヴァード大学アメリカ政治研究センター(CAPS)とハリス・ポール社の最新の共同世論調査の結果によると、調査対象者の62%が、トランプが大統領を続けていれば、プーティンはウクライナに対して動かなかったと考えていることが明らかになった。民主党支持者と共和党支持者の回答を厳密に見ると、共和党支持者の85%、民主党支持者の38%がこのように回答した。

しかし、今回の世論調査に答えたアメリカ人全体の38%は、トランプが大統領を続けていたとしても、プーティンはウクライナに侵攻していたと考えているということだ。

トランプへの批判の内容は、トランプ前大統領とプーティン大統領の関係が極めて密着していたというものだ。例えば、トランプはロシアをG7に加盟させることを公言し、ウクライナ批判を繰り返している。一方、バイデン政権はウクライナの独立をかたくなに擁護してきた。

アメリカ連邦下院はトランプを2度弾劾したが、1度目の弾劾はウクライナへの軍事支援に反対したことに関連するものであった。

また、今回の世論調査では、59%という過半数のアメリカ人が、ロシア大統領がウクライナに動いたのは、プーティンがバイデン大統領の弱点を見抜いたからだと考えており、41%が、バイデン大統領の存在はプーティンがウクライナ侵攻を決定する要因とはなていないと回答している。

水曜深夜にロシアがウクライナに侵攻した直後、バイデン大統領は「いわれのない不当な攻撃(unprovoked and unjustified attack)」と非難し、ウクライナとの連帯(solidarity)を表明した。アメリカは、ロシアの金融機関、ロシアのエリートとその家族、ノルドストリーム2・パイプラインの親会社であるノルドストリーム2AG、そして金曜日にホワイトハウスが承認したプーティン自身などに対して制裁を科している。

しかし、アメリカ政府は、ウクライナ政府関係者や一部のアメリカ連邦議員からの訴えにもかかわらず、ロシアを国際銀行システム「SWIFT」から追い出すよう求める声に抵抗している。

今回の世論調査は、バイデン氏がここ数カ月間、低い支持率に苦しんでいたことを受けて行われた。バイデン大統領は就任以来、長引く新型コロナウイルス感染拡大、アフガニスタンからの混乱した撤退、政権の立法課題をめぐる民主党の内紛、そして今回のウクライナ侵攻など、多くの問題を乗り越えていかなければならなかった。

ハーヴァード大学CAPS・ハリス社共同世論調査は2022年2月23日から24日まで、登録済有権者2026名を対象に実施された。この調査は、ハリス・パネルから抽出したオンライン・サンプルで、既知の人口統計を反映するように重み付けされている。代表的なオンライン・サンプルであるため、確率的な信頼区間は報告されていない。

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いや、トランプはロシアによるウクライナ侵攻を止めることはできなかっただろう(No, Trump would not have stopped Russia's invasion of Ukraine

ジェフリー・トレイストマン筆

2022年3月3日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/international/596662-no-trump-would-not-have-stopped-russias-invasion-of-ukraine

『ザ・ヒル』誌は、アメリカの有権者の大多数は、ドナルド・トランプがまだ大統領であったなら、ロシアのプーチン大統領はウクライナに侵攻しなかったと考えている、という世論調査の結果について報じた。世論調査結果の詳細な内訳を見ると、典型的な党派的分裂(つまり、共和党の方がトランプ前大統領ならロシアの侵略を防げたと強く信じている)が見られるが、それでもこの調査の結果は、プーティンがバイデン大統領を弱いと見ただけでウクライナに侵略したというかなり均一的な意見を示している。残念ながら、大多数のアメリカ人は間違っており、この調査はウクライナ紛争の原因に対する理解に重大な欠陥があることを露呈している。

プーチンは10年以上前から、ソ連の崩壊を「今世紀最大の地政学的大惨事(greatest geopolitical catastrophe of the century)」と捉えていることを明言している。元KGBの情報将校であったプーチンは、ソ連帝国の崩壊を嘆き、ロシアをかつての偉大な姿に戻したいという願望に深く搦めとられている。実際、元CIA長官で国防長官を務めたレオン・パネッタは、「プーティンの最大の関心事は旧ソ連を復活させたいということだ」と明言している。この評価は、長い間、歴史家や学者も共有しており、プーティンがロシアを世界の超大国として復活させたいと願っていることを丁寧に記録してきた。その結果、「大ロシア」の再建というプーティンの明確な外交目標には、トランプを含むどんなアメリカ大統領にも思いとどまらせることのできない帝国主義的願望が本質的に含まれているのである。

今回の世論調査の結果はまた、平均的なアメリカ国民は戦争の原因についてほとんど理解していないということを示している。このような話題は大学レベル、しかも国際関係論の非常に特殊な講義でしか取り上げられないのである程度は理解できる。その結果、ほとんどのアメリカ人は、戦争の根本的な原因の一つである「安全保障のジレンマ(security dilemma)」(ある国の防衛政策が他国を本質的に脅かす状況)を知らない。安全保障のジレンマによれば、西側諸国が防衛力を強化し、NATOを拡大しようとすることは、本質的にロシアを脅威にさらすことになる。NATOが防衛力を強化する努力は、ロシアにとって直接的な存亡の危機(direct existential threat)と解釈される。プーティンが昨年12月に、「ミサイルを持って我が家にやってきて、すでに玄関先に立っているのはアメリカだ。我が家の近くに攻撃システムを設置するなと要求するのは行き過ぎだろうか?」と宣言した。

したがって、安全保障のジレンマの論理は、トランプ、バイデン、プーティンを含む個々の意思決定者は、ヨーロッパのチェス盤で繰り広げられる大きな軍事的闘争に無関係であることを主張するものだ。戦争の可能性を決めるのは、個々の指導者ではなく、軍事力のバランスである。

それにもかかわらず、アメリカ国民は、トランプの「アメリカ・ファースト(America First)」外交政策が、大部分が孤立主義(isolationism)で、長年の同盟関係を損ねたことを忘れているように見える。複数の海兵隊の将軍たちは、トランプの外交政策はアメリカの世界的地位を弱め、敵国を強化するとさえ主張した。彼らは、「そのような動きは、私たちの民主政治体制と生活様式、世界秩序を解体する脅威を与える、ならず者国家、グローバル・テロリスト、非国家主体を強化するだけだ」と主張した。

また、トランプが単独でNATOの弱体化を図り、多国間主義(multilateralism)を否定していたことも想起される。2016年、トランプはNATOの同盟諸国がまず財政的義務を果たさない限り、支援しないことを示唆した。つまり、同盟諸国への支援は、モスクワから発せられるような直接的な安全保障上の脅威ではなく、金銭的な前提条件に基づいて行われることになる。更に悲惨なことに、トランプはアメリカのNATOからの脱退を検討していた。この提案は、多くの人がロシアを強化することになると考えていた。ミシェル・フロノイ元国防次官は、「アメリカのNATO脱退はアメリカ大統領が行える、アメリカの利益を最も損なう行動の1つだろう。そして、これは、ウラジミール・プーティンが夢見る最も荒々しい成功だろう」と主張した。

ウクライナに関して、トランプはウクライナの主権と安全保障を損ねてきた明確な実績がある。2016年のアメリカ大統領選挙中、トランプは、アメリカはロシアによるクリミアの併合を受け入れるべきだと示唆した。多くの点で、トランプの発言はヒトラーの拡張主義を黙認したことを思い起こさせる、現代の宥和政策(appeasement)に相当するものだった。また、ロシアの更なる侵略からウクライナを積極的に支援しようとする他の共和党議員とは対照的な、衝撃的な視点だった。

おそらく最も非難されるべきは、2019年にトランプがウクライナへの4億ドル近い軍事援助を一時的に差し控えるという決定を下したことだろう。トランプの宣告は、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に圧力をかけ、ハンター・バイデンのウクライナでのビジネス取引について調査を開始させようとした、個人的利益を増進するための政治的動機による強要の試みであった。アメリカ政府説明責任局は、トランプの企みは連邦法に違反すると宣言し、その後、連邦議会で弾劾された。

最後に、アメリカ国民は、トランプが公然とプーティン(および他の独裁者)を非常に好意的に、愛情を持って評価していることを思い起こすべきだ。トランプはプーティンの冷酷な権威主義的な政策を賞賛し、彼が「自分の国を見事にコントロールしている(great control over his country)」と指摘している。現在、ロシア軍が国際法に著しく違反してウクライナに侵攻している中、トランプはプーティンが「賢明な(savvy)」動きで「天才の一撃(stroke of genius)」とトランプが呼んだ行動に祝意を表している。

いや、トランプはロシアの今回のウクライナ侵攻を止めることはできなかっただろう。実際、トランプの外交政策はプーティンを増長させ、大西洋横断同盟(trans-Atlantic alliance)を弱めることになったという逆事実の方がより妥当であろう。トランプのヨーロッパに対する敵意は、最終的には米国と西側同盟国(ウクライナを含む)の両方の安全保障を損ない、破壊的なものとなってしまったのだ。

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●「佐藤優「もしもアメリカがトランプ大統領のままなら、ロシアのウクライナ侵攻は起こらなかった」」

「ロシアが軍事介入するなら、アメリカも軍を送る」と脅せたはず

PRESIDENT Online

佐藤 優

作家・元外務省主任分析官

2022年3月2日

https://president.jp/articles/-/55173?page=1

https://president.jp/articles/-/55173?page=2

https://president.jp/articles/-/55173?page=3

ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。元外交官で作家の佐藤優氏はアメリカのバイデン政権の「国際情勢を分析する専門家がプーチンの論理をわかっていない」、トランプ前大統領の「私が大統領ならウクライナ侵攻は起きなかった」という主張は「意外と事柄の本質を突いている」という――。

224日、ロシアのプーチン大統領はウクライナへの軍事侵攻に踏み切りました。

すべての国連加盟国は武力による威嚇や武力行使に訴えてはいけないという、戦後長らく守られてきた国連憲章第24項の約束事を露骨に破り、既存の国際秩序を破壊したわけですから、ロシアの責任は法的にも道義的にも大きい。ロシアの行っていることは厳しく指弾されなくてはいけません。

しかし、情勢を正確に分析するためには、ロシア側の理屈、つまりはプーチン大統領の頭の中を冷静に理解する必要があります。

米議員の中にはプーチン大統領の精神状態を危惧する声もあります。ホワイトハウスのサキ報道官は227日、テレビのインタビューで「(プーチン氏は)コロナ禍で明らかに孤立している」と指摘しましたが、私の見る限り、プーチン大統領はいたって冷静で孤立もしていません。

プーチンの強烈な被害者意識

プーチン大統領の演説を聞くと、ロシアは1990年代初頭から抑え込まれ、このままでは大国として生き残れなくなるという危機意識が、非常に強いことがわかります。国民に向けて行った224日のテレビ演説では、こう述べていました。

〈過去30年間、われわれはNATO主要国との間で、安全保障の原則について辛抱強く合意しようと試みてきた。NATOは、われわれの抗議や懸念にもかかわらず拡大し続けた。そして、兵器はロシアの国境に近づいている。なぜこんなことが起きているのか。(中略)答えは明瞭だ。1980年代後半、ソ連は弱体化し、その後崩壊した。われわれが自信を失ったのはほんの一瞬だったが、世界の力の均衡を崩すには十分だった。〉

〈これ以上のNATOの拡大やウクライナ国内に軍事拠点を構えようとする試みは受け入れられない。NATOは米国の外交政策の道具だ。〉

〈米国と同盟国にとって、これはロシアの封じ込め政策だ〉(224日・共同)

ソ連の崩壊によって国力が衰え、90年代から2000年代初めまでのロシアは、アメリカによって一方的な軍縮を強いられ、耐えてきた。だが、あの頃とはもう違うんだという自負は、ロシア人全体に共通するものだといえます。

プーチン、アメリカに挑むも、米国民は「関わりたくない」

221日には、「ウクライナのゼレンスキー大統領はアメリカの単なる操り人形だから、話をしても意味がない。問題はアメリカだ」という主旨の演説をしました。

つまりロシアは、アメリカの覇権に挑んだのだとわかります。これまで、イランのハメネイ師や北朝鮮の金正恩総書記など何人かの指導者がアメリカに挑みましたが、これだけ大規模な挑戦はありませんでした。

ではアメリカは、今回の事態をどう受け止めているのか。

AP通信が行ったアメリカの世論調査によると、ウクライナ情勢で「米国が主要な役割を果たすべきだ」という回答が26%にとどまった一方で、「小さな役割を果たすべき」は52%、「役割を果たすべきではない」との回答は20%でした。

アメリカ国民の大半は、こんな戦争に関与しないでほしいと思っているのです。

トランプなら電話をかけて直にディールする

トランプ前大統領が掲げた「アメリカ第一主義」は、国民が共有する感覚です。トランプ氏は、国民が進んで選び出した大統領だったのです。

そのトランプ氏は当初、プーチン大統領に理解を示していました。

ロシアが軍事侵攻を始めるに先立ち、ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力が実効支配してきた「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を独立国家として認める大統領令に署名したことについて、22日、トークラジオ「CBショー」のインタビューでこう言いました。

「プーチンはウクライナの広い地域を『独立した』と言っている。私は『なんて賢いんだ』と言ったんだ。彼は(軍を送って)地域の平和を維持すると言っている。最強の平和維持軍だ。我々もメキシコ国境で同じことをできる」(223日・朝日新聞デジタル)

平和維持を名目に軍を展開したロシアの手法は、メキシコ国境の不法移民対策に応用が可能だという考えを示したのです。

さすがにロシアがウクライナに軍事侵攻した後の226日の演説では、「ロシアのウクライナへの攻撃は、決して許してはならない残虐行為である」と非難したものの、

「プーチンは賢い。問題は我々の国の指導者たちが愚かなことだ」

「プーチンは(バイデン米政権の)情けないアフガン撤退を見て、無慈悲なウクライナ攻撃を決断したことは疑いない」

「私は21世紀の米国大統領で、任期中にロシアが他国に侵攻しなかった唯一の大統領だ」

「私が大統領ならこれは起きなかった」(228日・同前)

などと語って、バイデン政権やNATOの対応を批判しています。

トランプ氏の見方は、意外と事柄の本質を突いているといえます。

要するに「俺だったらすぐプーチンに電話をかけて、直にディールをする」と言いたいのでしょう。きちんと取引していればこんな事態に至らなかったという指摘は、トランプ氏の言う通りです。

トランプ氏ならばモスクワに飛んで行ってプーチン大統領と会談し、「ロシアがウクライナに軍事介入するならば、アメリカも軍を送る。アメリカ第一主義はひと休みだ」と言ってプーチン大統領を脅したうえで、取り引きを持ちかけ、戦争を回避したと思います。

耐乏生活に強いロシア人

バイデン大統領の弱点は、民主主義国が団結すれば全体主義に勝つものと思っていることです。世界がイデオロギーでは動かないことが、わかっていません。さらに、ソ連崩壊後の混乱で砂糖や石鹸の入手にさえ苦労した耐乏生活を経験しているロシア人が、経済制裁に屈しない人たちだということも、バイデン大統領はわかっていないのです。

アメリカ政府で国際情勢を分析する専門家のレベルが、基準に達していない。

そのことは、昨年夏のアフガニスタンからの米軍撤退を見れば明らかでした。217月、バイデン大統領は「(反政府組織タリバンが全土を制圧する可能性は)ありえない」としていましたが、8月にタリバンは全土を掌握。ガニ政権の正規軍は30万人もいたのに、わずか7万のタリバンにまったく歯が立たないことを、事前に読めていませんでした。アメリカ型の正義がいつも勝つわけではないという半年前の失敗から、何も学んでいないのです。

アメリカがウクライナへ軍を送らないのは、国内での賛同が得られないからです。プーチン大統領は核兵器の使用をちらつかせました。第3次世界大戦のリスクがある介入をアメリカは絶対にしないとプーチン大統領が確信しているからです。バイデン大統領があまりに早くから軍事的な手段をとらないと表明してしまったため、プーチン大統領が勢いづいたのです。

バイデン大統領はロシアに対して、経済制裁くらいしか切るカードがありません。プーチン大統領は、23年後に結局はEU諸国が、ロシアの変更した現状を追認せざるを得なくなり、10年後にはアメリカもそれに倣うことになると考えているのでしょう。

トランプが再び大統領になる日

アメリカは、ロシアの暴力性を軽視したのです。ある程度の圧力をかけ、インテリジェンス情報の異例の公開だと言ってロシア軍の動きをオープンにすれば怖がるだろうと思ったのに、ロシアは怯みませんでした。またも大きな読み違えです。

私が問題だと思っているのは、アメリカのブリンケン国務長官が、224日に予定していたロシアのラブロフ外相との会談をキャンセルしたことです。

会談の実施は、ロシアが侵攻しないことが前提条件だったためです。ブリンケン長官は「いまや侵攻が始まり、ロシアが外交を拒絶することを明確にした。会談を実施する意味はない」と述べたそうですが、この判断は感情的すぎます。アメリカは軍事介入するつもりがないのですから、ロシアと交渉するしか手段がないのです。

外交では、相手が間違っているときや、関係が悪化したときこそ、積極的に会う努力をしなければいけません。ウクライナにおける戦闘の拡大を防ぐために、ブリンケン国務長官はいまからでもラブロフ外相と会談して、解決策を探るべきです。

ただでさえ支持率が低迷するバイデン政権ですが、ウクライナ情勢がこのまま混迷を続ければ、11月の中間選挙や2年後の大統領選挙に影響を及ぼすことは必至です。再びトランプ氏が大統領になることもあり得るのです。

(構成=石井謙一郎)

(貼り付けおっわり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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