古村治彦です。
ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は世界各国の議会で演説をして支援を訴える活動をしている。日本での「国会演説」は23日に午後から夕方にかけての時間帯が予定されているそうだ。議事堂の本会議場では映像を見る装置がない、設置が難しいということで議員会館の国際会議室などで映像中継が行われるということだ。こうなると、日本の国会議員全員が一堂に会して同時に演説を拝聴するという訳にはいかないようだ。
ゼレンスキー大統領はドイツとイスラエルの議会で演説し、上から目線で、両国に取って言われなくないことを嫌らしく責めたてて、一部から反感を買ってしまったようだ。ドイツではホロコーストを取り上げ、ウクライナの首都で起きたナチス親衛隊によるウクライナ人虐殺事件のあった場所にも言及した(この事件にはウクライナ人協力者もいたのだが)。そして、「再び起こさない(Never Again)」というドイツの政治家たちが述べてきたスローガンは「無価値だ」と断じた。イスラエルの国会でも演説し、イスラエル首相がモスクワに飛んでプーティン大統領と直接会談を持ちその後も電話会談を続け、ゼレンスキー大統領とも電話会談を続け、仲介のために動いていることに触れ、支援をするのか、仲介だけをするのか選んでその答えを出せと迫り、現在の状況をホロコーストと比較する発言も行った。その内容に関して、イスラエルの一部の国会議員は怒りを持っているようだ。
英米に対しては下手に出て、ドイツやイスラエルには高飛車に出る。このような調子で、日本の国会議員たちに対して一体何を語るのだろうか。ゼレンスキー大統領の演説内容には日本政府は要望を出せるだろうが、それを受け入れるかどうかは分からない。ゼレンスキー(と彼の側近グループ)は相手の聞きたいことをいう能力に長けているようだが、それは同時に相手の聞きたくないことをピンポイントで突いてくる能力もあるということだ。
日本の国会議員に対する演説がどのようになるかは気になるところだ。
(貼り付けはじめ)
ゼレンスキーがドイツに対する演説の中でホロコーストのスローガンを引用:「再び起こさない」のスローガンが今は「何の価値もない」(Zelensky cites Holocaust slogan in address to Germany: 'Never again'
now 'worthless')
マウリーン・ブレスリン筆
2022年3月17日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/europe/598565-zelensky-invokes-holocaust-in-address-to-german-lawmakers-never
CNNは、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は木曜日、ドイツの連邦議員たちを前に演説し、ホロコースト(Holocaust)に関連して、よく知られたスローガン「再び起こさない(never again)」を使用したと報じた。
ゼレンスキーはドイツ連邦議会(ブンデスターク、Bundestag)に対して強固な態度で臨み、「政治家たちは毎年毎年“再び起こさない”と言う言葉を述べてきた。その言葉をこれまで聞いていた皆さんに申し上げる。この言葉には何の価値もないこと(worthless)は私にとっては明らかことだ。今、私たちの国全体がヨーロッパにおいて絶滅させられそうになっている。それはなぜだ?」と述べながら、更なる援助を懇請した。
ゼレンスキーはドイツ連邦議会で続けて「第二次世界大戦を生き延びた、もしくは占領から救出された、バビ・ヤール(Babyn Yar)の虐殺(1941年、キエフの収容所でドイツの親衛隊と地元の協力者たちによってユダヤ人が虐殺された事件)を生き抜いた、あなた方の中の高齢の方々に申し上げている。昨年バビ・ヤールの悲劇の80周年で式典にはドイツのシュタインマイヤー大統領も出席した。そこにロシアのミサイルが直撃したのだ」と述べた。
ゼレンスキーは「そこで家族が殺されたのだ。80年後に再び」と続け、現在のロシアの攻撃を第二次世界大戦中の攻撃と比較してその悲惨さを強調した。
ゼレンスキー氏は、「あなた方もまた壁の向こう側にいる。私たちの土地に爆弾が着弾する度にウクライナで死んでいくウクライナ人とあなた方を隔てる壁がある」と述べ、過去のソ連の東ドイツ占領とベルリンの壁のイメージも呼び起こした。
ゼレンスキーは「この国(ロシア)は、ヨーロッパに壁をもたらした国だ。この壁の向こうには何があるのか?」と問いかけた。ゼレンスキーは更に「これは新しい壁の基礎だ。多くの人には政治のように見えるが、これは新しい壁のための石だ」とも述べた。
「NATOの一員となるためにウクライナ人は何をすべきかと質問したが、あなた方は、テーブルの上にそのような決定はないと言い続け、テーブルには今のところ皆さんのための椅子はないと述べ、今なお保留を続け、ウクライナのEU加盟を遅らせている」と述べ、彼自身がEUの行動不足と呼んだ状況を批判した。
ゼレンスキー大統領はまた、ロシアを非難し、ドイツ連邦議会でウクライナの状況がいかに酷いことになっているかを説明した。ゼレンスキーは「彼らは私たち全員を砲撃している。昨日、何百人もの人々が隠れていた劇場が爆破された。その前に産婦人科医院が爆撃された。これは24時間起きている。マリウポリ市には援助の手を差し伸べることができない。人々が生き延びる可能性を一切認めないのだ」と述べた。
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ゼレンスキーは国会議員への演説の中でイスラエルのロシアによる戦争への対応を批判(Zelensky
criticizes Israel's response to Russian war in speech to lawmakers)
オラヒミン・オシン筆
2022年3月20日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/europe/598963-zelensky-presses-israel-on-response-to-russia-in-speech-to
『エルサレム・ポスト』紙はウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は日曜日、イスラエルの国会議員に対して「ロシアから自国を守るために支援して欲しい」と懇願したと報じた。
イスラエルの国会(クネセト、Knesset)での演説で、ゼレンスキー大統領は、なぜイスラエルの政府関係者が、アメリカやヨーロッパが科しているのと同様の制裁をロシアに対してまだ科していないのかと疑問を呈した。また、ウクライナに壊滅的な打撃を与えているロシアの空爆から国民を守るため、イスラエルのミサイル防衛システム「アイアンドーム(Iron Dome)」をウクライナに供与するよう要請した。
ゼレンスキー大統領は「イスラエルはなぜロシアへの制裁を控えているのか? イスラエルはこれらの質問に対して答えを出す必要があり、その後、出した答えと生きていく必要があ
る。ゼレンスキー大統領は、イスラエルのアイアンドーム・システムを「世界最高水準」と賞賛した。しかし、『エルサレム・ポスト』紙によると、ウクライナ大統領は、イスラエルがウクライナの防衛に貢献していないことへの不満を表明した。
ゼレンスキーは次のように語った。「私たちはあなた方に向かって、支援を与えることがより良いことなのか、それともどちらかに味方をするということを決めずに仲介を行うことがより良いことなのかということを今この時に質問する。私はこの質問に対する答えをあなた方に決めてもらうことにするが、無関心は人々を殺す(indifference kills)ということは指摘しておきたいと思う」。
ゼレンスキー氏大統領はまた、現在ウクライナが戦争状態で忍耐を強いられていることをホロコースト(Holocaust)と比較し、イスラエルの国会議員の一部を怒らせた。
宗教的シオニスト党のベザレル・スモトリッチ党首は、ゼレンスキー大統領の講演後、「彼のイスラエル批判は正当であり、私たちへの期待が高いことを理解した。しかし、ゼレンスキーがホロコーストと現状を比較したことや、歴史を書き換えて、ユダヤ人絶滅の試みにおいてウクライナ人が一定の役割を果たしたことを抹消しようとする彼の行為は、腹立たしく、馬鹿げたものだ」と断じた。
先週、アメリカの連邦議員たちに対して演説した際、ゼレンスキーは911事件と真珠湾攻撃を持ち出して、米連邦議会に更なる援助と「ウクライナの上空を閉鎖せよ(close the sky over Ukraine)」と迫った。
バイデン政権は、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することは支持しないと述べている。飛行禁止区域設定はロシアとの紛争をさらにエスカレートさせるとバイデン政権は主張している。
エルサレム・ポスト紙は、イスラエルのヤイール・ラピド外相が声明の中で、ゼレンスキー大統領が「自分の気持ちとウクライナの人々の苦難を分かち合ってくれた」ことに感謝し、イスラエルはウクライナへの支援を続け、「戦争の悪夢に苦しむ人々に決して背を向けない」と述べたと報じた。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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