古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻は膠着化しつつあり、双方にとって泥沼化していく可能性が高まっている。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は3月中旬にウクライナのEUNATOの加盟は行わない(どちらもウクライナを入れようと本気で考えていないことがよく分かったと発言した)ことを示唆した。私はこれが叩き台というか、前提になって停戦交渉が進むのではないか、と考えた。そもそも1回目の停戦交渉の時にはいかなる条件も付けずに交渉を行うということだったので、「ある程度の不利を甘受しても低羽扇に進むのだろう」と私は考えていた。そして、EUNATOに入らないということ(入れてもらえないと分かった)を述べていたので、停戦に進むだろうと考えていた。

 しかし、それから急に欧米諸国の議会でヴィデオ演説を始め、戦争を煽り始めた。アメリカ連邦議会での演説の後、アメリカの議員たちの中には強硬な意見を吐く者たちも出ている。ジョー・バイデン大統領と側近たちは戦争のエスカレートだけは避けねばならないということで慎重な姿勢を堅持してきたが、エスカレートさせよという圧力も高まっている。そうなれば、不測の事態が起き、最悪の場合には米露が核爆弾を搭載したミサイルを発射し合うということにもなりかねない。

 そして、今回のロシアとの交渉が決裂すれば世界大戦が始まるというゼレンスキー大統領の発言である。ウクライナ自体には世界大戦を始める力はない。しかし、ウクライナがアメリカや国連安保理理事国でありイギリス、フランス、G7のドイツ、カナダ、日本、大きな枠組みでNATOを戦争に巻き込めば世界大戦は起こる。そうなれば戦禍はウクライナ以外にも拡大することは容易に予想されるし、それこそ米露の領土内に核ミサイルが着弾すれば甚大な被害が出る。ウクライナとロシアとの交渉が決裂しても、他国が慎重に対応していれば(飛行禁止区域設定や戦闘機供与を行わない、軍隊をウクライナに派遣しない)、世界大戦は起きない。不幸なことだが、ウクライナ国内で戦争が長引いて、ウクライナ国民の不幸が長引くだけだ。

 ゼレンスキー大統領は、ロシアとの交渉が決裂すれば、欧米諸国を巻き込んで戦争を拡大するということを警告した。しかし、欧米諸国が慎重な姿勢を崩さねば、戦争は拡大しない。しかし、その慎重な姿勢を崩す、欧米諸国も巻き込んでやる、高みの見物を許さないということであり、そのための戦術として欧米諸国の議会で演説し、下手(したて)に出て、相手のプライドをくすぐり、また、高圧的に出て相手の嫌なところをぐりぐりとついてみたいしている。私は戦争が拡大することには反対であり、ゼレンスキー大統領はこの点で非常に危険な人物であると考えている。戦争を拡大することは戦争屋、軍事産業を肥え太らせることにつながるが、ゼレンスキーがやっていることは、ウクライナ国民の中にある愛国心や義侠心を利用して、こうした人々を肥え太らせる手伝いをしているようにしか見えない。

 再度言いたい。ゼレンスキー大統領は危険だ。

(貼り付けはじめ)

ロシアとの交渉が決裂すれば世界体制が起きるとゼレンスキーが警告(Zelensky warns of third world war if negotiations with Russia fail

オラハミハン・オシン筆

2022年3月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/sunday-talk-shows/598934-zelensky-says-if-negotiations-fail-with-russia-there-would-be-a

ウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーは日曜日、ロシアとの交渉が不調に終われば第三次世界大戦が起きるだろうと警告した。

ゼレンスキーはCNNのファリード・ザカリアに対して、ロシア大統領ウラジミール・プーティンとの交渉は極めて重要であり、モスクワが侵攻を開始して以来、ウクライナは締め付けられてきていると述べた。

ゼレンスキーはザカリアに対して「私たちは毎日のように、罪のない人々を失い続けてきた。ロシア軍は私たちを抹殺するために来た」と語った。

ゼレンスキーは続けて「残念ながら、私たちの尊厳では命を守れない。だから、プーティンと話す可能性を持つために、どんな形式でも、どんなチャンスでも、やらなければならないと思っている。しかし、これらの試みが失敗すれば、それは.第三次世界大戦を意味する」と述べた。

ザカリアはまた、ゼレンスキーに、ウクライナはロシアの侵攻を終わらせるために、プーティンが要求しているNATOへの加盟を見合わせるなど、妥協する考えはあるかと質問した。

ゼレンスキーは「もうこの状況を覆すことはできない。紛争を意図して奪われた領土を認めるようウクライナに要求することはできないし、こうした妥協は単純に間違っている」と続けた。

国連は最近、ロシアによる侵攻開始以来、ウクライナ国内で650万人が避難生活を送っていると発表した。

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ゼレンスキーはバイデンの対ロシア戦争をけなす(Zelensky rubbishes Biden’s war on Russia

-ロシア・ウクライナ戦争はアメリカの意思を他国に強制する能力が否応なく低下していることを示している。

MK・バハドラクマール筆

2022年3月11日

『アジア・タイムズ』紙

https://asiatimes.com/2022/03/zelensky-rubbishes-bidens-war-on-russia/

ロシアが安全保障の要求をワシントンに伝えた2021年12月中旬以降に起こったことは、いったい何だったのだろうか? この疑問は、ジョー・バイデン米大統領が公職を退いた後もずっとつきまとうだろう。

バイデン大統領時代の外交政策上の財産と半世紀にわたって公職にあり、その多くがアメリカの外交政策の領域であったはずの、この大いに期待される80歳の政治家の評判はボロボロで修復不可能な状態にある。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、ウクライナが北大西洋条約機構の加盟を目指さないというロシアの要求に対して譲歩したとのニューズ報道があった。

今週初め、ABCニューズのインタヴューで、ウクライナのNATO加盟をもう迫らないことを明らかにした。

実際、ゼレンスキー大統領は、「NATOがウクライナを受け入れる用意がないことを理解した後、この問題に関してはずいぶん前に冷静になった」とさりげなく付け加え、うっかりと事実を暴露してしまった(let the cat out of the bag)。

ゼレンスキーはその理由を「NATOは議論が分かれるような内容のものに恐れを抱いている。そして、とロシアと対峙することも恐れている」と説明した。

これは、東部ドンバス地域のルガンスクとドネツクの2つの分離共和国の主権とクリミアの地位について「妥協する余地がある」と先に明かした後のことである。

ABCニューズは東部時間月曜夜にこのインタヴューを放映したと報じている。それ以来、ウクライナ戦略、あの終末的な「地獄の制裁」、そしてここ数ヶ月のプーティンの悪魔化を指揮したバイデン陣営の2人組、アントニー・ブリンケン国務長官とヴィクトリア・ヌーランド国務次官はどこにも姿を見せなくなった。

ブリンケンが運転し、ヌーランドが隣でナビゲートするという東欧系の2人組がフロントシートに座っており、超大国としてのアメリカの威信を事実上失墜させているこの茶番劇について説明する必要があるのではないか?

疑問は山ほどある。第一に、ロシアの正当な安全保障上の要求、特にウクライナのNATO加盟と同盟の更なる拡大に関して妥協点を見出すことがそれほど容易であるなら、問題の緊急性を考慮すれば、なぜバイデンはその議論すら頑なに拒否したのだろうか?

バイデンは、来る6月29日から30日にかけてマドリッドで開催されるNATO首脳会議でウクライナの加盟を正式に決定することによって、モスクワに既成事実を作るために賢く行動したということなのだろうか?

ほとんどの国の経済が新型コロナウイルス感染拡大後の経済回復の道に入りつつあるこの時期に、ヨーロッパ経済を不安定にし、世界の石油市場を揺るがす必要があるか?

ウクライナの政権や体制に対するバイデンの不自然なまでの執着の理由な何なのか?

80歳の世界的政治家にふさわしくない、バイデンや周辺者たちのロシアに対するこのような直感的な憎悪はなぜなのか?

火曜日のホワイトハウスでの演説が示すように、ロシアに対する経済戦争がバイデンにとって非常に個人的な問題になっているのは何故か?

しかし、ウクライナのNATO加盟をめぐるこの一連のエピソードに、このような不名誉な結末が待っていたのはまったくの予想通りのことであった。バイデン、ブリンケン、ヌーランドは、1万キロも離れた場所で、他国の内政に干渉し、脅し、懲らしめ、アメリカの命令に逆らうことを罰するというネオコンの古い習慣に興じているど素人たち(dilettantes)である。

ゼレンスキーがインタヴューで話した後も、バイデンはどんな反応をしているのか? 彼は、アメリカが今後ロシアから石油を輸入しないことを発表するために演説を予定していた。ウクライナ戦争が収束に向かっていることに安堵のため息をつくべきではないだろうか?

その代わり、バイデンはアメリカの聴衆に、遠い国で民主政治体制を推進し、まだ勝ち組であることを印象づけるために、この奇妙な歯抜け策に頼ったのである。このような仕掛けは、騙されやすいアメリカ国民に対する侮辱ではないだろうか?

バイデンは、ヨーロッパの人々が、ロシアの石油に大きく依存していることを考えると、ロシアに対するそのような動きには興味がないとはっきり言った後に、この新しい一歩を踏み出したのである。

第二に、バイデンは、アメリカが実際に自分の足元を撃っていることを知らないか、そうでないふりをしているようだ。ロシアの価格は非常に競争的であり、アメリカの企業は今後、精製所に適した重質油を調達するために、より多くの費用を支払わなければならなくなるからだ。

バイデンは既にプライドを飲み込んで、アメリカの不自由な制裁下にあるヴェネズエラに官僚ティームを送り込み、ロシアの石油の代わりにニコラス・マドゥロ大統領(彼は少し前に社会主義者であるとしてCIAのヒットリストに載っていた)から石油をせびるようになっている。

マドゥロ大統領は、ヴェネズエラとアメリカのより広い互恵的な関係(mutually beneficial relationship)を示唆し、うまくやり返してきた。このドラマは全て、西半球全体が目撃する白昼の中での出来事となった。彼らは、アメリカの大統領がカカシ(man of straw)であることを笑っているのではないだろうか?

バイデンは、アメリカがロシアから石油を買うのをやめれば、プーティンが彼の「戦争マシーン」を動かすための資金を持てなくなるとを確認していると主張している。これは笑わずにはいられない主張であり、ほぼ嘘と言えるものだ。

アメリカはロシアの石油輸出総量の約12%を購入していた。なるほど、これはまともな数字だ。しかし、バイデン大統領の「地獄からの制裁(sanctions from hell)」のおかげで原油価格が1バレル130ドル近くまで高騰した世界市場で、ロシアからの石油に他の買い手がつかないとは誰にも断言できない。

バイデン大統領による石油輸入制裁措置で余った在庫を解消するために、ロシアが(アメリカ企業に対して行ってきたように)競争力のある価格を提示すれば、いくらでも買い手の候補は現れるのは間違いないところだ。

とにかく、バイデン大統領は、ロシアの現在の予算が、原油価格が1バレルあたり40ドルから45ドル程度になると考えてバランスを取っていることを知らないはずはないのである。現在の原油価格の水準では、ロシアは実際に大儲けしている。そして面白いことに、それはバイデンの制裁によるプレゼントなのだ。

根本的に、問題はアメリカのエリートたちが妄想していることだ。多極化した世界では、アメリカの意思を他国に強制する能力がどうしようもなく低下していることを世界の他の国々が知っているのに、アメリカのエリートたちはその現実に目をつぶっているの。現在の

ワシントンが被った戦略的敗北は、世界中でアメリカの威信を傷つけ、環大西洋における指導力を弱め、インド太平洋戦略を頓挫させ、21世紀におけるアメリカの影響力の低下を加速させるだろう。バイデン大統領の任期は、この重い十字架を背負うことになる。

この記事は、『インディアン・パンチライン』と『グローブトロッター』が共同で作成し、『アジア・タイムズ』紙に提供したものだ。

MK・バハドラクマールはインドの元外交官。ツイッターアカウント:@BhadraPunchline

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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