古村治彦です。

 昨日、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領がヴィデオ映像(生中継だったそうだ)で日本の国会議員たちを前にして演説を行った。国会議事堂の本会議場ではなく、議員会館の国際会議室とホールに映写設備を整えての演説となった。全体として具体的な要求はほぼなく、総花的なものとなった。

 私がまずとても違和感を持った、と言うよりも嫌悪感を持ったのはゼレンスキー大統領之円前後との山東昭子参議院議長の芝居がかった(三文芝居そのもの)スピーチだった。山東議長はお勇ましい言葉を並べ立て、「(ゼレンスキー氏が)先頭に立ち、貴国の人々が命をもかえりみず祖国のために戦っている姿を拝見し、その勇気に感動している。一日も早く貴国の平和と安定を取り戻すため、私たち国会議員も全力を尽くす」というような内容の発言を行った。ウクライナ国民が「命をかえりみず」戦い、亡くなっていることに感動しているということを日本の政治家が述べたことに私は嫌悪感を持つ。

彼女の言葉に亡くなっていった人たちへの哀惜の念や、戦争を一日も早く止めるべきだという考えは全くなかった。いざとなれば政治家たちは安全な場所にいて、国民を鼓舞して「国のために」死ねと命令する。私はこういう不安定な時期に、その人の地が出ると思う。このような他国の戦争を利用して、日頃は存分に言えないお勇ましい発言をここぞとばかりに言うような人間は最低だ。山東昭子という人物は非常に危険な人物であり、「良識の府」と言われた参議院の議長には全くもって不適格な人物だ。このような人物が政治家で、このような人物を「感動させる」ために、国家存亡に際して国民は何をさせられるのか、分かったものではない。このような政治家たちを「縛る」ために憲法があり、私は現在の憲法を変更するはないと考える。

 ゼレンスキー大統領の演説は総花的で、日本を非難することもなく、過度に持ち上げることもなく、日本側にとっては穏やかに終わった。恐らく、相当な根回しがあっただろう。それでも、原発への言及、サリンという言葉、核兵器使用という言葉、侵略の津波という言葉、今も家に帰ることができない人々がいることへの言及など、日本政府や自公政権にとっては言って欲しくなかった表現もあった。ウクライナ側はこうした言葉を嫌がらせで使う意図はなかったと思う。日本国民に訴えやすい言葉として選んだのだろうが、それが日本政府にとっては痛しかゆしということになった。

 ゼレンスキー大統領とウクライナ側からのリップサーヴィスは「国際機関が機能してくれませんでした。国連の安保理も機能しませんでした。改革が必要です」「予防的に全世界が安全を保障するために動けるためのツールが必要です。既存の国際機関がそのために機能できないので、新しい予防的なツールをつくらなければならないです。本当に侵略を止められるようなツールです。日本のリーダーシップがそういったツールの開発のために大きな役割を果たせると思います」というところだと思う。日本は長年、国連安全保障理事会の常任理事国(アメリカ、イギリス。フランス、中国、ロシア)入りを目指してきた。しかし、常任理事国の顔ぶれを見ても分かる通り、第二次世界大戦で連合国だった国々しか常任理事国になっていない。国連の実態は連合国であり、それが大きくなって国連となった。長らく敵国条項というものも存在したということもある。ウクライナは日本が常任理事国入りということになれば支持するということを述べている。しかし、国連改革は無理だ。

 そうなれば新しい国際機関や枠組みを作るということになるが、国連安保理常任理事国の特権がはく奪されるようなものになるとは考えられない。こうした議論の大本は簡単に言えば、中国とロシアを特権的な地位から追い出したいということだ。新しい国際機関や枠組みが出来たとしても、大本に中国とロシアの排除があるならば、少なくとも中国やロシアは入らない。また、アメリカと中露の間でバランスを取りたい国々も厳しい他立場に追い込まれる。世界は再び2つに分かれての新たな冷戦状態になる可能性もある。冷戦とは「長い平和」だったという主張もあるが、世界各地で悲惨な戦争、内戦が続いたこともまた事実だ。世界は混とんを深めていく。

 日本がウクライナに対して軍事支援をすることはできないし、そうなれば経済制裁を続けて下さい、民生用の支援をお願いしますということくらいしかできない。だからどうしても総花的になってしまう。日本という国がやるべきことはそれくらいで良いし、それくらいしかできない。国民はウクライナ戦争以来、続く円安や資源や資材不足による、物価高騰を甘受しなければならない。そのために支払う代金だって言ってみれば、ウクライナ支援の一環だと牽強付会で言えば言える。今は戦争がエスカレーションしないことを望む。そのためにアメリカが参戦して直接ロシア軍と矛を交えるような事態に陥らないことを望む。ルシタニア号事件や真珠湾攻撃のようなことが起きないように祈るばかりだが、私は悲観的になっている。

 

(貼り付けはじめ)

●「「日本のみなさんもきっと…」ゼレンスキー大統領、演説の内容とは」

ウクライナ情勢

2022323 2029分 朝日新聞

https://www.asahi.com/articles/ASQ3R6R2JQ3RUTFK01H.html

 ウクライナのゼレンスキー大統領が同時通訳を介し、23日に行った演説の概要は以下の通り。(言葉は、演説の原文を訳したものではなく、同時通訳によるものです)

「チェルノブイリ原発が支配されました」

 細田衆議院議長、山東参議院議長、岸田総理大臣、日本国会議員のみなさま、日本国民のみなさま、本日は、私がウクライナ大統領として史上初めて、直接みなさまに対しまして、お話しできることを光栄に存じます。

 両国の間には8193キロメートルあります。経路によって飛行機で15時間もかかります。ただし、お互いの自由を感じる気持ちとの間の差はないです。生きる意欲の気持ちの差はないです。それは224日に実感しました。日本がすぐ援助の手を差し伸べてくださいました。心から感謝しております。

 ロシアがウクライナの平和を破壊し始めたときには、世の中の本当の要素を見ることができました。本当の反戦の運動、本当の自由、平和への望み、本当の地球の安全への望み。日本はこのようなアジアのリーダーになりました。

 みなさまがこの苦しい、大変な戦争の停止のために努力し始めました。日本がウクライナへの平和の復活に動き始め、それはウクライナだけではなくてヨーロッパ、世界にとって重要です。この戦争が終わらない限り、平和がない限り、安全に感じる人がいないでしょう。

 チェルノブイリ原発の事故をご存じだと思います。1986年に大きな事故がありました。放射能の放出がありました。その周りの30キロゾーンというのがいまだに危険なものでありまして、その森の中には事故収束当時から多くのがれき、機械、資材などが埋められました。

 224日にその土の上にロシア軍の装甲車両が通りました。放射性物質のダストを空気にあげました。チェルノブイリ原発が支配されました。事故があった原発を想像してみてください。核物質の処理場をロシアが戦場に変えました。また30キロメートルの閉鎖された区域を新しいウクライナに対する攻撃の準備のために使っています。

 ウクライナでの戦争が終わってからどれだけ大きな環境被害があったかを調査するのに何年もかかるでしょう。どういう核物質が空気に上がったかということです。ウクライナには現役の原子力発電所4カ所、15の原子炉があり、すべて非常に危険な状況にあります。

 すでにザポリージャ原発というヨーロッパ最大の原発が攻撃を受けています。公共施設の多くが、被害を受け、環境に対するリスクになっています。石油パイプライン、および炭鉱もそうです。またサリンなどの化学兵器を使った攻撃もロシアが今準備しているという報告を受けています。核兵器も使用された場合の世界の反応はどうなのかが、いま世界中の話題になっています。

「国際機関が機能不全」

 将来への自信、確信というのが今誰にも、どこにもないはずです。ウクライナ軍が28日にわたって、この大規模の戦争、攻撃に対して国を守っています。最大の国が戦争を起こしたのですが、影響の面、能力の面では大きくないです。道徳の面では最小の国です。

 1千発以上のミサイル、多くの空爆が落とされ、また数十の街が破壊され、全焼されています。多くの街では家族、隣の人が殺されたら、ちゃんと葬ることさえできません。埋葬が家の庭の中、道路沿いにせざるをえません。数千人が殺され、そのうち121人は子どもです。住み慣れた家を出て、身を隠すために避難しています。ウクライナの北方領土、東方領土、南方領土の人口が減り、人が避難しています。

 ロシアは海も封鎖しています。海運を障害することによって他の国にも脅威を与えるためです。すべての民族、国民にとって、社会の多様化を守り、それぞれの国境、安全を守り、また子供、孫のための将来を守るための努力が必要です。

 国際機関が機能してくれませんでした。国連の安保理も機能しませんでした。改革が必要です。ロシアによるウクライナ攻撃によって世界が不安定になっています。これからも多くの危機が待っています。世界市場における状況も不安であり、資材の輸入などの障害が出ています。

 これからも戦争をやりたいという侵略者に対して、非常に強い注意をしなければならないです。平和を壊していけないという強いメッセージが必要です。責任のある国家が一緒になって平和を守るために努力しなければならないです。

「侵略の津波を止めるために、貿易禁止を」

 日本国が建設的、原理的な立場をとっていただきましてありがとうございます。ウクライナに対する本当の具体的な支援に感謝しています。アジアで初めてロシアに対する圧力をかけはじめたのが日本です。引き続きその継続をお願いします。また制裁の発動の継続をお願いします。ロシアが平和を望む、探すための努力をしましょう。

 ウクライナに対する侵略の津波を止めるためにロシアとの貿易禁止を導入し、各企業が撤退しなければならないです。

 ウクライナの復興を考えなければならないです。人口が減った地域の復興を考えないといけないです。

 それぞれの人たちが、避難した人たちがふるさとに戻れるようにしなければならないです。日本のみなさんもきっとそういう気持ちがお分かりだと思います。住み慣れたふるさとに戻りたい気持ち。

 予防的に全世界が安全を保障するために動けるためのツールが必要です。既存の国際機関がそのために機能できないので、新しい予防的なツールをつくらなければならないです。本当に侵略を止められるようなツールです。日本のリーダーシップがそういったツールの開発のために大きな役割を果たせると思います。

 ウクライナのため、世界のため、世界が将来、明日に対して自信を持てるように。安定的で平和的な明日が来るという確信ができるように日本の国民のみなさま、一緒になって努力し、想像以上のことができます。

「日本がウクライナと共にいられることを期待」

 日本の発展の歴史は著しいです。調和をつくり、調和を維持する能力が素晴らしいです。環境を守って文化を守るというのが素晴らしいです。ウクライナ人は日本の文化が大好きです。それはただの言葉ではなくて本当にそうです。2019年私が大統領になって間もなく、私の妻が目がよく見えない子供のためのプロジェクトに参加しました。それはオーディオブックのプロジェクトでした。そして日本の昔話をウクライナ語でオーディオブックにしました。ウクライナ語で。

 それは一つだけの例ですけれども、日本の文化が本当にウクライナ人にとって非常に興味深いです。距離があっても、価値観がとても共通しています。心が同じように温かいです。

 ロシアに対するさらなる圧力をかけることによって平和を戻すことができます。また国際機関の改革を行うことができるようになります。将来の反戦連立が出来上がった際に、日本が今と同じようにウクライナと一緒にいらっしゃることを期待しています。ありがとうございます。

 ウクライナに栄光あれ。日本に栄光あれ。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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