古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、ウクライナによる強力な抵抗、反撃が続いている。ウクライナ政府にはデジタル省があり、デジタル担当大臣はミハイロ・フョードロフという31歳の若さの人物だ。フョードロフ大臣はIT軍を創設し、SNSを使って情報戦を展開している。フェイスブック、ツイッターなどのビッグテック各社も協力的だ。ロシアに対しては世界各国で自発的にハッキングに参加する「義勇軍」が展開されている。その規模は数十万人規模となっている。インターネットを使った情報戦はウクライナが先手を取っている。SNSがウクライナ側につけば情報戦を圧倒できるのはとうぜんということになる。

 フェイスブック(メタ)は、ウクライナ内務省直轄の国家親衛隊に所属しているアゾフ特殊作戦分遣隊(Azov Special Operations Detachment)、通称「アゾフ大隊(Azov Battalion)」と呼ばれる軍事組織をフェイスブック上で称賛することを許可した。アゾフ大隊はネオナチの軍事組織であり、2019年からはアゾフ大隊がフェイスブックを利用することが禁じられ(イスラム国やクー・クラックス・クランと同じ措置)、フェイスブックのユーザーが自由に議論することも許されないという措置が取られてきた。アゾフ大隊の本拠地は激戦地のマリウポリだ。

下の記事にあるように、創設者は白人至上主義者であり、ナチスドイツが使った「劣等民族」という言葉を使って、アーリア人が最後の十字軍として、列島民族と戦うことがウクライナの国家使命だと発言するような人物だ。また、ロシア系の住民に対するレイプ事件や殺害事件を起こしており、このことは国連にも報告されている。

 フェイスブックはロシアによるウクライナ侵攻に伴い、このアゾフ大隊を称賛することを許可することにした。ネオナチ的な言説ではなく、ウクライナのロシアへの抵抗の文脈で称賛するということになる。しかし、これは非常に危険な措置だ。フェイスブックが「公認」するネオナチ・グループが英雄として祀り上げられることは戦後に大きな禍根を残すことになると考えられる。

 ソーシャルネットワークサーヴィスが本格的に戦争の道具として使われるのは今回が初めてだ。今回の事態を受けて、ビッグテック各社は新たなルール作りをするべきであろうと思う。

(貼り付けはじめ)

ウクライナの善戦を支える「サイバー戦」立役者・31歳副首相の手腕 SNSでは「プーチンを木星に飛ばす」計画も

3/21() 11:15配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/5b2f807bf94c0789d4035243b69da40a4349b654

https://news.yahoo.co.jp/articles/5b2f807bf94c0789d4035243b69da40a4349b654?page=2

https://news.yahoo.co.jp/articles/5b2f807bf94c0789d4035243b69da40a4349b654?page=3

 ロシアによるウクライナ侵攻は、ウクライナ軍による必死の抵抗が続いている。一方、SNSを中心とした情報戦においては、ウクライナがロシアを圧倒しており、KGB出身のプーチン大統領は思わぬ苦戦に焦っているようだ。それを指揮するのが、ミハイロ・フョードロフ副首相兼デジタル転換相(31)。台湾のデジタル担当大臣に35歳という若さで就任して話題となったオードリー・タン氏になぞらえてウクライナのオードリー・タンとも評されるフョードロフ氏について、国際ジャーナリストの山田敏弘氏が解説する(文中一部敬称略)。

 * * *

 ロシアのウクライナ侵攻が始まって20日以上になる。戦闘はまだ続いており、ここからどのような形でこの戦争が終焉するのかはわからない。

 ただ、はっきりしていることは、この戦争が本格的にSNSで情報戦が繰り広げられた戦いとして記憶されることになるということだ。さまざまな情報が、SNSを使って世界に発信され、戦況にも影響を及ぼしている。

 ウクライナ政府でSNSを使った情報戦を率いるのは、フョードロフ副首相兼デジタル転換相である。戦闘のための武器ではなくSNSで戦った政府首脳として、フョードロフの名も語り継がれていくはずだ。

 まずフョードロフの存在が広く知られるようになったのは、ロシアによるウクライナ侵攻が開始されてから数日後の、227日のことだ。フョードロフはこんなツイートを投稿した。

「われわれはIT軍を立ち上げる。デジタル才能が必要だ」

 そこからフョードロフのオンライン上での戦いが始まった。ウクライナのサイバー民兵たちを率いてサイバー攻撃を指揮すると同時に、世界の著名人に直接SNSでメッセージを送る。

 例えば、イーロン・マスクだ。テスラの創業者でもあるマスクは、現在、スターリンクと呼ばれる世界の至る所で高速インターネット接続を可能にする衛星ネットワークシステムを立ち上げている。このスターリンクを使うことで、ウクライナで使われている従来のインターネット網がロシアによって破壊されても、ウクライナでインターネットを継続して利用でき、コミュニケーションも遮断される心配はない。

 プーチン大統領が侵攻後すぐに計画していた作戦として、ウクライナ国内のコミュニケーションシステムの破壊、というものがあったと報告されているが、それを踏まえて、フョードロフはマスクにツイッターで「ウクライナにスターリンクを送ってください」と直談判した。

 するとマスクがそれに反応。「スターリンクのサービスをウクライナでスタートさせた。通信機器を送る」──そして48時間以内に、フョードロフは実際にウクライナに到着した数多くのスターリンクを写真で公開した。とんでもない時代である。

楽天から10億円の寄付を引き出す

 さらにフョードロフは、ロシアでビジネスを展開する欧米側の企業のトップに連絡し、ロシアでのビジネスを停止するよう要請。要請にあたっては公式文書を公開し、国際世論の注目度を高めている。

 楽天が提供する無料通信アプリのViberはロシアなどでも使われているが、フョードロフは楽天にもサービス停止をSNS上で要求。結局、楽天は要請に応じなかったが、その代わりに、ウクライナに10億円を寄付することになった。その資金がロシアとウクライナの戦いに注がれていき、戦況にも影響していくことになる。

 SNS上でこうしたやり取りを報告することで、企業にプレッシャーを与えることもできる。SNSに書かれたら、侵略行為で人権侵害が続くウクライナからの切実な要請を無視するわけにはいかないからだ。

 さらにフョードロフは、無料メッセージングアプリであるTelegramのチャンネルを開設し、チャンネルに登録している30万人以上のハッカーやプログラマーなどにサイバー工作を実施するよう指示を出している。

 実は、このようにインターネットで「愛国者」のハッカーらを妨害工作に巻き込むのは、もともとロシアが得意としていた。例えば、ロシアが2007年にエストニアに激しいサイバー攻撃を行なって国家機能を麻痺させたことがあったが、その際には、ロシア国内でインターネットの掲示板などを使って攻撃先のサーバーのIPアドレスや、サイバー攻撃の実施方法の手順などを情報機関が掲載していた。今回、それと同じことをウクライナがロシアに対して行なっているのは皮肉なことだ。

 ウクライナ側のサイバー空間での攻勢はこれに止まらない。例えば、Telegramで、ロシアに進出しているドイツの卸売店「メトロ」を撤退させる作戦を行ない、IT軍の兵士らに、同社のフェイスブックのページに批判メッセージを送るよう英語の文面まで掲載している。

 またある投稿では、ロシアのニュース機関のYouTubeチャンネルを凍結させるべく、YouTubeに「不適切なコンテンツ」であると通報する方法を指南している。

 ツイッターでは、破壊された街の様子や、住民を助けるウクライナ兵の写真を掲載したり、世界に向けて現場の惨状を伝えている。もちろん「ロシアよ、出ていけ」といった投稿も多く見られる。

 フェイスブックでも同様の投稿が掲載されているが、それ以外にも、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ国防相の電話の会話を盗聴したと思われる音声も公開されている。

メッセージをランダムにロシア人に送る

 ある投稿では、ウクライナ側が設置したウェブサイトのリンクが掲載されている。このサイトに行くと、「ロシアに暮らす約15000万人はウクライナ戦争の原因や実態を知らない」というメッセージが書かれ、SMSや電子メール、無料通信アプリWhatsAppのメッセージをランダムにロシア人に送信できるボタンが設置されている。直接、ロシア人にアクセスしようする試みだ。

 こうしたSNSの投稿などと合わせて、ウクライナがロシアに抵抗を続けるための資金の寄付も募っている。「1億ドルの寄付を達成してプーチンを木星に飛ばしてしまおう」という標語のもと、寄付を募るサイトもウクライナ政府が公開している。仮想通貨で寄付できるクラウドファンディングのサイトも、フョードロフはツイッターで拡散している。

 積極的かつ有効的にサイバー空間での戦いを率いるフョードロフとはどんな人物なのか。1991年生まれで、ウクライナ南部の工業都市ザポリージャの大学を卒業、デジタル系のサービスを提供する企業を立ち上げている。2019年に28歳の若さで副首相兼デジタル転換相に就任しているが、もともと、ゼレンスキー大統領が勝利した選挙戦でもSNS関連は彼が仕切っていた。

 こうしたIT戦は、実際の戦闘が続く限り、続けられるだろう。サイバー空間なら誰でも無料で手軽にウクライナのために「戦争」に参加できるのである。今回、新たな戦い方を、ウクライナは見せつけている。

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ツイッターは私たちの戦争を戦う努力の一部となっている-ウクライナの大臣(Twitter is part of our war effort - Ukraine minister

ジョー・ディディ(サイバーレポーター)筆

2022年3月7日

BBC

https://www.bbc.com/news/technology-60608222

ウクライナ軍と市民がロシアの侵攻軍と戦う中、ウクライナはハイテク技術を駆使してシリコンバレーの支持を集め、敵を弱体化させるという新たな戦線を展開している。デジタル担当大臣のミハイロ・フョードロフ(Mykhailo Fedorov)はその先頭に立つが、彼の戦術の中には分裂を引き起こすものがある。

ウクライナで最も若い閣僚フョードロフは、キエフにある秘密の地下シェルターから、ロシアとのデジタル戦争を繰り広げている。

ミハイロ・フョードロフは、彼自身が好む武器であるソーシャルメディアを使って、大企業の最高経営責任者たちにモスクワとの関係を断つよう促している。彼は更に、「敵」に対してサイバー攻撃(cyber-attack)を仕掛けるために、ヴォランティアの「ウクライナIT軍(IT Army of Ukraine)」を設立するという前代未聞の行動に出たのである。

31歳と若いフョードロフは、携帯電話を通して、あるいは携帯電話上で生活するというライフスタイルを軸に、政府の役割を形成してきた。

戦争勃発前、彼の最大の目標は、行政サービスを100%オンラインで提供する「スマートフォンの中の国家(state in a smartphone)」を構築することだった。今は、このプロジェクトは中断され、デジタル戦争(digital war)に全力を注いでいる。

フョードロフは多国籍企業にロシアをボイコットするよう圧力をかけている。

アップル、グーグル、メタ(フェイスブック)、ユーチューブ、マイクロソフト、ソニー、オラクルなどハイテク分野の大企業はウクライナ政府からの公式書簡を無視しなかった。

フョードロフは世界中の人が見られるように、公式書簡と各企業からの返信の一部をソーシャルメディアに投稿している。

これが企業の行動に影響を与えたかどうかは分からないが、ほとんどの企業はその後、ロシアに対する方針を変更し、アップルのようにロシアでの製品販売を停止したり、事業を停止したりしている。

土曜日にペイパルが発表したロシア国内でのサービス停止は、メディアで報道される前にフョードロフのツイッターに投稿された。サムスンとエヌヴィディアがロシアとの取引を全て停止するというニューズも同様で、フョードロフは彼のソーシャルフィードで公然と呼びかけていたことだ。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった直後、フョードロフがイーロン・マスクにしたあるツイートは、すぐに結果をもたらした。億万長者のハイテク企業経営者であるイーロン・マスクは、48時間以内にスターリンク衛星を調整し、ウクライナにインターネット接続可能な端末をトラック1台分送り込んだ。

このサーヴィスは、インターネットや通信ネットワークが損傷したり破壊されたりした場合に、政府にとって生命線となり得るものだが、その後、マスクは、衛星アンテナはロシアのミサイルの標的になり得るので、注意して使用するよう警告を発した。

フョードロフはツイッター、フェイスブック、インスタグラム、テレグラムで合計50万人以上のフォロワーを持ち、自分のメッセージを伝えるためにそれら全てを利用している。

フョードロフはEメールを通じてBBCに対して次のように語った。「私たちは、ウクライナで起きているこの恐怖に大企業が関心を持つように、あらゆる機会を利用している。私たちはロシア人に真実を伝え、戦争に抗議させようとしているのだ」。

フョードロフはインターネット上ではほとんどウクライナ語で話しているが、危機が始まってからはツイッター上では英語に切り替え、最も影響力を発揮している。

Twitterは、ロシアの軍事的侵略に対抗するための効率的なツールになりました。ロシア経済を破壊するための、私たちのスマートで平和的なツールなのです」と彼は言う。

"Twitter has become an efficient tool that we are using to counter Russian military aggression. It's our smart and peaceful tool to destroy Russian economy," he says.

ハイテク研究者で作家のステファニー・ヘアはフョードロフが成功を収めていることに驚きを隠せないと述べている。

ヘアは「彼は31歳で、ハイテクとインターネットを理解している」と述べた。

説得(persuasion)やプロパガンダ(propaganda)を利用するのは昔からある戦争の戦術だ。しかし、2000年代にソーシャルメディア企業が重要さを増して以来、「彼らは人々がメッセージを広めることができる速度と幅によって計算を変えた」。

フョードロフの広報担当官は、彼が率いる若いチームが常に新しいアイデアを出し、それをデジタル省が迅速に実行に移そうとしていると話している。先週、キエフは軍の資金調達のために非可溶性トークン(NFT)を発行することを発表した。しかし、他のいくつかは物議を醸している。

例えば、フョードロフは暗号通貨取引所に対して、ロシア国民全ての口座を凍結するよう求めている。この考えは、バイナンス取引所のCEOを含む多くの人が、暗号が存在する理由に「反している(fly in the face)」と述べている。

ハッカー集団「アノニマス」は、プーティン大統領に「サイバー戦争(cyber-war)」を宣言している。

デジタル省は更に、世界中から集まった数千人のヴォランティアハッカーを含む「ウクライナIT軍団(IT Army of Ukraine)」を立ち上げ、そのテレグラム内のグループには現在27万人のメンバーがいるがこれにも不安もある。

フョードロフはBBCの取材に対し、「ハイテクは戦車に対する最良の解決策だ。IT軍は、ロシアとベラルーシの企業、銀行、国家ウェブポータルのデジタルおよびオンラインリソースに向けられている。ロシアの公共サービスのウェブポータル、取引所、タス、コメルサント、フォンタンカ、その他ロシアのトップメディアのウェブサイトなどの運営を停止させた」と述べた。

今のところ、ハッキングのほとんどは低レベルのサイバー破壊行為のようだが、フョードロフのチームは鉄道や電力網への攻撃も明確に呼びかけており、これが成功して十分に混乱すれば、一般市民にも被害が及ぶ可能性がある。サイバーセキュリティの世界では、このことが不安視されている。

戦略国際問題研究所(Centre for Strategic and International StudiesCSIS)のスザンヌ・スポルディングは次のように語った。「この分野では本当に注意が必要だ。もし、市民による重要なインフラへの破壊的な攻撃が行われるようになれば、戦争の不確定要素(fog-of-war)、誤認(misattribution)、予想外の連鎖的な影響に遭遇することになると考える。市民が行ったことに対して、一方から報復を受けるかもしれないし、事態は急速にエスカレートする可能性がある」。

金曜日、フョードロフの部署と密接に連携しているウクライナの国家特殊通信局副局長は、ロシアに対してハッカーを結集させるという決定を擁護した。

局長は侵略が始まった「2月24日に世界秩序が変わった(the world order changed on 24 February)」ため、ハッキング集団「アノニマス(Anonymous)」を含むあらゆるグループからのロシアに対する違法なサイバー攻撃を歓迎すると述べた。

ウクライナに対しても、ロシアに同調する人たちによるハッキングが行われているが、現状ではロシアの方の分は悪いようだ。ロシアの軍事ハッカーは、理由は不明だが、今のところ大きな役割を担っていないようだ。

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フェイスブックはもしロシアの侵攻に対して戦う場合には、ウクライナ国内のネオナチ大隊への称賛を許可する(FACEBOOK ALLOWS PRAISE OF NEO-NAZI UKRAINIAN BATTALION IF IT FIGHTS RUSSIAN INVASION

-このポリシーの逆転現象は、ニュアンスや文脈を無視していると批判されているフェイスブックのブラックリストを基盤としたコンテント・モデレイション(content moderation 訳者註:投稿された内容の検閲)に疑問を生じさせる。

サム・ビドル筆

2022年2月25日

『ジ・インターセプト』誌

https://theintercept.com/2022/02/24/ukraine-facebook-azov-battalion-russia/

フェイスブックは一時的であるが、アゾフ大隊(Azov Battalion)を称賛することを数億人規模の利用者たちに許可することになる。アゾフ大隊はウクライナ国内のネオナチ(neo-Nazi)軍事組織であり、以前であれば、フェイスブックの「危険人物・組織」ポリシーの下で自由に議論することが禁止されていた。

このポリシーの大きな変更は今秋実施されたが、現在進行中のロシアによるウクライナ侵攻とそれに先立つ軍事的エスカレーションに起因している。アゾフ大隊は、より広範な基盤を持つウクライナの白人至上主義的な(white nationalists)アゾフ運動(Azov movement)の武装部門として機能し、2014年に正式にウクライナ国家親衛隊(Ukrainian National Guard)に加わる前は、ヴォランティア(訳者註:志願の意味がある)の反ロシア民兵(anti-Russia militia)として活動を開始した。連隊は、筋金入りの右翼的な過激な民族主義(right-wing ultranationalists)とそのメンバーの間に広まったネオナチ思想で有名である。最近ではネオナチへのシンパシーを隠すようになっていたが、その親和性は決して低くない。アゾフの兵士たちはドイツ第三帝国(Third Reich)のアイコンが描かれたユニフォームを着て行進し、訓練を行う。指導部はアメリカのオルトライトやネオナチの要素を取り入れたと言われている。2010年、大隊の初代隊長で元ウクライナ国会議員のアンドリー・ビレツキーは、ウクライナの国家目的(national purpose)は「世界の白人種をリードし、セム族が率いる人間以下の劣等民族たち(subhumansUntermenschen[ウンターメンシェン]に対する最後の十字軍(crusade)になること」と述べている(訳者註:ナチスがユダヤ人、ロマ、スラブ人といった非アーリア人に使用した言葉)[lead the white races of the world in a final crusade … against Semite-led Untermenschen [subhumans]]。ロシア軍はウクライナ全土の攻撃目標に対して急速に移動していると報じられている。そうした中で、フェイスブック社の投稿内容に関する検閲(content moderation)に対する鈍感な、リストベースのアプローチは、同社を窮地に陥れる。「自由に議論するには危険過ぎると判断したグループが、全面的な攻撃から国を守っている場合にどう対処するのか?」という問題が出てくる。

本誌が入手したフェイブック内部のポリシーに関する資料によると、フェイスブックは 「ウクライナ防衛における役割やウクライナ国家親衛隊の一員としての役割を明示的かつ独占的に賞賛する場合、アゾフ大隊の賞賛を許可する」ということだ。フェイスブックが現在許容できると判断した言論の社内での例としてはあ、「アゾフ運動ヴォランティアたちは真の英雄であり、彼らは私たちの国家親衛隊に大いに必要な支援だ」、「私たちは攻撃を受けている。アゾフはこの6時間、勇気をもって私たちの町を守ってくれている」「この危機の中で、アゾフは愛国的な役割を果たしていると思う」といったものが挙げられている。

内部資料では、アゾフは依然としてフェイスブックのプラットフォームを募集目的や独自の声明を発表するために使用できないこと、連隊の制服やバナーは、アゾフの兵士がそれらを着用・掲示して戦うことがあっても、禁止されたヘイトの象徴のイメージとして扱われることが規定されている。内部資料には、連隊のイデオロギーを暗黙の了解として、新しいポリシーで許されない投稿の例が2つ示されている。それは「ゲッペルス、総統、アゾフ、全てが国家的犠牲と英雄主義の偉大なモデルである」「ウクライナとその白人至上主義の遺産を守るためにアゾフはよく戦っている」だ。

フェイスブックが公式にアゾフの使用を禁止したのは2019年だ。アゾフ大隊はビレツキーのような複数の関連個人とともに、同社のヘイトグループに対する禁止対象に指定され、ユーザーが同社のプラットフォーム上でブラックリストに載った団体の「賞賛、支援、表現」に関わることを禁じる、最も厳しい「ティア1」制限の対象になった。本紙が昨年公開したフェイスブックの非公開とされていた使用禁止グループと人物の名簿では、アゾフ大隊はイスラム国(Islamic State)やクー・クラックス・クランKu Klux Klan)のような団体と並んで分類されており、「深刻なオフライン被害(serious offline harms)」や「民間人に対する暴力(violence against civilians)」の傾向があるとして、ティア1グループに分類されている。実際、国連人権高等弁務官事務所による2016年の報告書では、ロシアの2014年のウクライナ侵攻時にアゾフ大隊の兵士たちが市民をレイプし拷問していたことが判明している。

この免責措置は、同社の混乱した、時には矛盾した検閲ルールを、疲弊した状況下で解釈することを任務とするフェイスブックの検閲担当者たちに混乱をもたらすことは間違いない。フェイスブックのユーザーたちは、アゾフ堕胎の兵士によるロシアに対する今後の戦場での行動を称賛することができるようになったが、新しいポリシーでは、グループによる「暴力の称賛」は依然として禁止されていると記している。フェイスブックがどのような形の非暴力的な戦争を想定してこのような規定を決めたのかは不明瞭だ(it’s unclear what sort of nonviolent warfare the company anticipates)。

 

 

非営利団体「ムネモニック」でコンテント・モデレイションMnemonicでコンテンツモデレイションの現実世界への影響を専門に研究しているディア・カイヤリは、アゾフ大隊に関するフェイスブックの新しいスタンスは、オフライン暴力に対する禁止という文脈では「ナンセンス」だと指摘する。カイヤリは「これは典型的なフェイスブックのやり方だ」と述べ、この免責によって一般のウクライナ人が、さもなければ検閲されるかもしれない身の回りの大惨事についてより自由に議論できるようになる一方で、こうした方針の微調整が必要だという事実は、ブラックリストベースの危険な個人と組織の非公開の方針が機能不全に陥っていることを反映していると指摘する。カイヤリは次のように述べている。「何が危険な組織であるかの評価は常に文脈的であるべきで、ある特定の瞬間という理由だけで、他の方法ではポリシーに適合するようなグループのために何か特別な振り分けが行われるべきではない。フェイスブックは常にその危険性のレヴェルの分析をしているはずだ」。

このポリシー変更は、「広範で大部分が非公開の危険な個人と組織に関するポリシーがオンライン上の表現の自由を抑圧している」と主張している批判者たちにとっては歓迎すべきニューズかもしれない。しかし、フェイスブックがアメリカの外交政策判断に基づいて許される言論を決定していることの更なる証拠にもなっている。例えば、昨年の夏、マザーボードは、フェイスブックが今回と同様にイランでの検閲ポリシーの例外を発表し、2週間の間、ユーザーが「ハメネイに死を」と投稿することを一時的に許可したと報じた。カイヤリはアゾフ大隊に関する検閲緩和と免責について「これはアメリカの外交政策に対する直接的な反応だと思う。そして、今回のことが示しているのは、フェイスブックが作っている禁止リストがどのように機能するのかということだ」。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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