古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻が発生してから1カ月以上が経過し、4月になろうとしている。状況は膠着状態からウクライナ軍とウクライナ国民の頑強な抵抗によってロシア軍は押し返され、作戦範囲を縮小し、東部地区の制圧に注力するように変更するという報道がなされている。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はこの報道について信頼していないと述べている。

 一方で、ゼレンスキー大統領は西側諸国がゲーム・チェンジャーとなる措置を取っていないことに苛立ちを隠していない。飛行禁止区域設定や航空機供与があれば状況を一気に変化させて、ロシア軍を敗退させることは可能だ。今の状況では出血箇所の治療(止血)をしないままで、輸血をし、点滴で栄養を投与しているような状況だ。これでは根本的な解決にならないではないかというゼレンスキーの苛立ちは分かるが、一歩踏み込んだ措置は状況をさらに悪化させる可能性もある。

 このような踏み込んだ措置を取るにはアメリカが主体とならねばならない。飛行禁止区域設定では、アメリカ軍が区域を飛んだロシア軍機を撃墜するということになる。そうなれば、ロシア軍が報復ということで攻撃を仕掛けるということになり、米露間の直接戦闘に発展する。これが最終的に核ミサイルの撃ち合いにまで発展するのではないかというのが世界各国の政府の懸念となっている。

 アメリカ国民の多くはアメリカがロシアとの戦争に巻き込まれることを望んでいない。下の記事にあるように世論調査の結果では85%が懸念を表明している。これは太平洋戦争直前の状況に似ている。あの時も当時のフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領は「皆さんの息子を戦争に送ることはない」という主張を繰り返し、大統領選挙に当選した。当時も戦争を忌避するアメリカ国民は多かった。それが一気に変わったのは真珠湾攻撃だ。これによってアメリカは日本に宣戦布告、日本と戦争状態に入り、これは三国同盟の朱子氏からドイツの対米宣戦布告とつながり、アメリカはアジア・太平洋地域で日本、ヨーロッパでドイツと戦うことになった。あれだけ戦争に反対していたアメリカ国民は熱狂のうちに戦争を支持するようになった。

 このような偶発的な(かつ仕組まれた)事件や出来事が起きれば、今回の状況もどうなるか分からない。ロシア軍の中にアメリカのネオコンや人道的介入主義派につながっている勢力がいて、ミサイルをポーランドに向けて発射すると言ったようなことを実行すれば、アメリカ軍は出動しなければならなくなる。

 アメリカのジョー・バイデン政権は非常に慎重な姿勢を堅持しているが、同時に非常に強い言葉遣いをしているので危険である。これ以上の事態の悪化を招かないためにも、感情的にならずに冷静に判断し、対処することが重要だ。ゼレンスキー大統領は私たちの感情に訴えてくる。これが非常に危険なことであることを理解しながら、彼の言葉を聞くということが防衛策ということになる。

(貼り付けはじめ)

ゼレンスキーが西側諸国の臆病さを非難し、ロシアが国家分裂を望んでいると警告を発する(Zelensky accuses West of cowardice, warns Russia wants to split nation

AP通信

2022年3月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/wire/599968-zelensky-accuses-west-of-cowardice-warns-russia-wants-to-split-nation

リヴィウ(ウクライナ)発。ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は日曜日、西側諸国の臆病さを非難し、別の高官はロシアがウクライナを北朝鮮と韓国のように国を2つに分割しようとしていると述べた。

ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻軍から自国を守るために戦闘機や戦車を提供して欲しいと怒りを込めながら訴えた。ロシアは現在、東部のドンバス地域を支配することに主眼を置いているという。以前のより拡大した目標から明らかに後退しているが、これはウクライナの分裂を懸念させるものだ。

ジョー・バイデン米大統領が、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は権力を維持できないと痛烈な演説をした後(ホワイトハウスはすぐにこの言葉の重要性を消そうと努力した)、ゼレンスキー大統領は、ロシアのミサイル攻撃が民間人を殺し、閉じ込める一方で、「誰が、どうやってジェット機やその他の武器を引き渡すべきかという綱引き」をしている西側諸国に怒りを向けた。

ゼレンスキーはヴィデオ演説の中で、戦争の最大の窮乏と恐怖に見舞われた南部の包囲都市マリウポリに向かって次のように述べた。「私は今日、マリウポリの守備隊と話した。私は彼らと常に連絡を取り合っている。彼らの決意、ヒロイズム、決意の堅さには驚かされるばかりだ。何十台ものジェット機や戦車をどう引き渡すか、31日間考え続けてきた人たちに、彼らの勇気の1%でもあればいいのだが」。

また、ゼレンスキー氏は日曜日にロシアの独立系ジャーナリストたちに対し、政府は中立を宣言し、ロシアに安全保障を提供することを検討すると述べ、以前の発言と同じことを繰り返した。これには、ウクライナの非核化も含まれるとも付け加えた。

ゼレンスキーは記者団に対し、中立の問題、そしてNATOへの加盟断念に同意することは、ロシア軍撤退後にウクライナの有権者による国民投票で問うべきであると語った。ロシア軍が撤退してから数カ月以内に投票が行われる可能性があるとも述べた。

ロシアはすぐにこのインタヴューの報道を禁止した。モスクワの通信を規制する連邦コミュニケーション・情報技術・マスメディア監視局(Roskomnadzor)は禁止令を出し、参加したロシアのメディアに対して行動を起こす(法的手段を取る)可能性があり、その容疑の中には「外国の代理人として行動している外国メディア」も含まれていると述べた。

ロシアを拠点とするメディアは、インタヴューが海外で公開されたにもかかわらず、禁止措置に従ったようだ。

ゼレンスキー氏はこれに対し、モスクワはジャーナリストたちとの短い会話すらも恐れていると述べた。ウクライナの通信社RBKウクライナによると、「これは悲劇的でないとすれば、面白いことということになる」と彼は言ったという。

ロシアによるウクライナ侵攻は、多くの地域で行き詰まっている。首都キエフを素早く包囲し、降伏させるという目的は、アメリカや他の西側同盟国からの武器によって強化されたウクライナの頑強な抵抗に対して頓挫している。

モスクワは、2014年以来ロシアに支援された分離主義勢力によって部分的に支配されている東部ドンバス地域全体を奪取することに重点を置いていると主張している。金曜日にロシア軍の高官が、軍隊は国内の他の地域から東部に振り向けられていると述べた。

ロシアは、モスクワがウクライナからクリミア半島を併合した直後にルハンスクと隣接するドネツクで反乱が起きて以来、分離主義勢力の反乱軍を支援してきた。ウクライナとの会談で、モスクワはキエフにドネツクとルハンスクの独立を認めるよう要求している。

ウクライナ軍情報機関のトップであるキリロ・ブダノフは、ロシアがウクライナを2つに分割しようとしていると非難し、北朝鮮と韓国になぞらえた。

ブダノフは国防省が発表した声明の中で、「占領者は占領地を一つの準国家構造に引き込み、独立したウクライナと戦わせようとするだろう」と述べた。ブダノフは、ウクライナ人によるゲリラ戦がそのような計画を頓挫させるだろうとも述べている。

戦争終結に向けてロシアと協議しているウクライナ代表団の一員であるダヴィド・アラクハミアは、フェイスブックの投稿で、両国は月曜日からトルコで会談すると述べた。しかし、ロシア側はその後、会談を火曜日に開始すると発表した。両者は以前にも会談しているが、合意に至っていない。

ウクライナの優先事項は「主権と領土の保全」であるとゼレンスキーは毎晩の演説で国民に語っている。

ゼレンスキーは今回の演説で「我々は平和を求めている、本当にしかも遅滞なく、だ。トルコで直接会談を持つ機会と必要がある」と語った。

ゼレンスキーはまた、軍が発表していない、あるいは承認していない部隊や装備の移動に関する報道を禁止する法律に署名した。この法律に違反したジャーナリストは、3年から8年の禁固刑に処される可能性がある。この法律では、ウクライナ人記者と外国人記者を区別していない。

ウクライナは、ロシアに勝つためには、欧米諸国はミサイルなどの軍備だけでなく、戦闘機も提供しなければならないとしている。アメリカ経由でポーランド機をウクライナに譲渡する案は、直接戦闘に巻き込まれることへのNATOの懸念から、破棄された。

ゼレンスキーは、「西側諸国の政府がこの悲劇を防ぐことを恐れている。決断することを恐れているのだ」と非難した。

ゼレンスキーの訴えは、前日にロケット弾の直撃を受けた西部の都市リヴィウの司祭も同じように受け止めていた。空からの攻撃は、モスクワが、戦争を東に移すつもりだという主張にもかかわらず、ウクライナ国内の全ての場所が攻撃対象となり得ることを示唆している。

ユーリ・ヴァスキフ牧師は「外交がうまくいかない時は、軍事的な支援が必要だ」と語り、ギリシャ・カトリック教会から、恐怖に駆られた教会員たちが遠ざかっているとも述べた。

キエフに向かう道すがら、ある村の住民は、ロシアが続けている攻撃の残骸をかき集めていた。キエフから約22マイル(35キロ)離れたビシフの地元の人々は、本や棚、額に入った写真など、できる限りのものを引き揚げるために、砲撃によって引き裂かれ、破壊された建物の中を歩いていた。

かつて幼稚園の教室だった場所に立ったスベトラーナ・グリボフスカ先生は、あまりにも多くの子どもたちが犠牲になってしまったと語った。

グリボフスカはイギリスの放送局「スカイニュース」の取材に対し、「これは間違っている。子どもたちには何の罪もない」と述べた。

ロシアは、ポーランドとの国境に近いリヴィウの燃料貯蔵所と防衛施設を空から発射する巡航ミサイルで攻撃したことを確認した。ロシア国防省のイゴール・コナシェンコフ報道官は、海上発射ミサイルによる別の攻撃で、ウクライナが防空ミサイルを保管しているキエフの西にあるプレセツクの倉庫を破壊したと述べた。

ロシアの相次ぐ空爆は、爆撃を受けた町や都市から逃れた推定20万人の避難所となっているこの町を揺るがした。リヴィウは、ロシアが2月24日に侵攻して以来、ウクライナを離れた380万人の難民の大半にとって中継地となっており、爆撃をほとんど受けずに済んでいる。

最初の爆破地点に近い団地の下にある薄暗く混雑した防空壕で、34歳の情報技術者オラナ・ウクライナッツは、最も爆撃を受けた都市の一つである北東部のハリコフから逃げ出した後、再び隠れなければならないとは信じられなかったと語った。

彼女は「私たちは通りの片側にいて、反対側でそれを目撃した。火が見えた。私は友人に『これは何だ』と言いました。それから爆発音とガラスが割れる音が聞こえた」と語った。

ハリコフでは、ウクライナの消防士たちが斧やチェーンソーを使ってコンクリートやその他の瓦礫を掘り、ロシア軍の地方行政庁舎への攻撃による犠牲者を探しているところであった。消防士たちによると、土曜日に1人の遺体が発見された。3月1日の攻撃で少なくとも6人が死亡した。ロシア軍が150万人の人口を抱えるハリコフの中心部を攻撃したのは初めてだった。

日曜日の夜には、北西部のヴォリン州の石油基地がロケット弾で攻撃された。

ウクライナから非難した数百万人とともに、侵攻によって1000万人以上が故郷を追われ、これはウクライナの人口のほぼ4分の1にあたる。数千人の市民が殺害されたと見られている。

ハリコフのアンドレア・ローザ、キエフのネビ・ケーナ、リヴィウのキャラ・アンナ、および世界各地のAP通信記者がこのレポートに寄稿した。

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世論調査:アメリカ国民の85%はウクライナ・ロシア紛争にアメリカが引きずり込まれることを懸念(85 percent of Americans concerned US will be drawn into Ukraine, Russia conflict: poll

マイケル・シュニール筆

2022年3月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/599983-most-americans-concerned-us-will-be-drawn-into-ukraine-russia-conflict

アメリカ国民の圧倒的多数が、アメリカがウクライナとロシアの紛争に巻き込まれることを懸念していることが新しい世論調査で明らかになった。

AP通信とNORC・センター・フォ・パブリック・アフェアーズ・リサーチが実施した世論調査によると、アメリカの成人の85%が、アメリカがロシアとウクライナの紛争に巻き込まれることを懸念していることが分かった。

「非常に懸念している」と答えた人が21%、「とても懸念している」と答えた人が26%、「ある程度懸念している」と答えた人が38%だった。これに対し、調査対象の成人の11%が、アメリカがヨーロッパでの紛争に巻き込まれることをあまり心配していないと答え、4%が全く心配していないと答えた。

また、今回の世論調査では、ロシア・ウクライナ紛争がアメリカ国内の核に対する恐怖心を促していることも分かった。

調査対象の成人の71%が、ロシアのウクライナ侵攻により、世界のどこかで核兵器が使用される可能性が高まったと思うと回答した。また、25%の回答者は、モスクワの侵攻は世界中で核兵器が使用される可能性に影響を与えていないとし、4%は可能性を減らしたと答えた。

今回の世論調査は、ロシアがウクライナとの紛争で核兵器に頼る可能性を各国の指導者たちが議論している中で行われた。先進7か国(G7)の首脳たちは先週、ロシアに対し、ウクライナ紛争で化学兵器、生物兵器、核兵器を使用しないよう警告を発した。

G7首脳は「私たちは、化学兵器、生物兵器、核兵器、または関連物質の使用のいかなる脅威に対しても警告を発する。私たちは、ロシアが加盟している国際条約の下での義務を想起し、私たち全員を保護する」と声明に明記した。

G7首脳は「この点で、私たちは、国際的な不拡散協定を完全に遵守している国家であるウクライナに対するロシアの悪意ある、全く根拠のない偽情報キャンペーンを断固として非難する」と付け加えた。

今回の世論調査は、ロシア・ウクライナ紛争が2ヶ月目を迎えようとしていた3月17日から3月21日にかけて実施されたものだ。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は2月24日にウクライナへの軍事作戦を指示し、侵攻のきっかけとなった。

しかし、ロシアの侵攻は、ウクライナ軍の頑強な抵抗により、多くの地域で阻まれている。

アメリカは、ウクライナ上空の飛行禁止区域の宣言を拒否し、ウクライナにアメリカ軍を派遣しないと宣言し、ドイツの米空軍基地へのMiG-29戦闘機の移送というポーランドの提案を拒否するなど、紛争を通じてロシアと直接対立することを避けるよう努力している。

しかし、バイデン大統領は先週、NATO条約と第5条(同盟国の1つに対する攻撃は全てに対する攻撃と見なす)に対するアメリカの関与を繰り返した。

今回の調査は1082名の成人を対処に実施され、誤差は4ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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