古村治彦です。

 少し古い記事になるが、国際関係論の専門家382名を対象にして昨年12月から今年1月にかけて実施されたアンケート(英語ではクエスチョナリー、questionary)の結果をまとめた記事をご紹介する。このアンケートでは「ロシアが実際にウクライナに侵攻すると考えるか」「もしロシアによるウクライナ侵攻が起きたらアメリカはどのような対応をすべきと考えるか」という質問がなされた。

 結果としては、「ロシアのウクライナ侵攻が起きると考えるか」については、「イエス」が約56%、「分からない」が約24%、「ノー」が約20%だった。今回の調査対象となった専門家たちの間で、約半数が起きると考えていた。今年1月の時点ではロシアはウクライナ国境に軍を集結させていたが、専門家たちの半数は戦争が起きると考えていた。しかし、4割以上はそのようには考えていなかったということで、予測は難しいものであったと言えるだろう。「ロシアはウクライナ東部の独立を宣言した地域に軍を派遣するがそれ以上は進まない」という質問であれば「イエス」はもっと増えただろう。現在ロシア軍はウクライナ東部への注力を開始しており、結局東部確保ということになりそうである。

 続いて、「戦争が起きたらどのような対応をすべきか」と質問については、現在も行われている制裁(約90%)と武器や物資の供与(約72%)という選択肢が圧倒的な支持を得ている。アメリカ軍が直接ロシア軍と対峙することにはほとんどの専門家たちは賛成していない。やはり第三次世界大戦までエスカレートすることを恐れてのことだろう。「ロシア軍に対するサイバー攻撃」という選択肢を支持した専門家が約40%ということが興味深い。サイバー戦争は実際に人が無残に殺害される姿は見なくて済むが大きな効果がある攻撃である。サイバー攻撃が現代の戦争にとって重要なオプションになっていること、直接銃を撃ったり、ミサイル攻撃をしたりすることよりも心理的な負担が少ないので支持しやすいと考えられることが示唆されている。

 今回のウクライナ戦争について、発生の可能性については専門家たちの間でも意見は半々だった。そして戦争へのアメリカの対応は直接対峙することではなく、制裁と武器や物資の供与に留めるべきだという考えが大多数の専門家たちの答えだった。しかし、決定的な状況の大きな変化をもたらす方策がないままに武器や物資の供与を続け、しかもロシアからの天然資源の輸入を完全に止めないので代金は支払い続けているという状況では、人々の苦しみは続き、しかも西側諸国の人々の税金(これから重税が襲い掛かるだろう)で武器は大量に買われてウクライナで使われ続け、儲かって仕方がないのが軍需産業であり、益々栄耀栄華を誇るのは軍産複合体である。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が停戦を受け入れる姿勢を全く見せていないのでこのような状況がしばらく、下手をすると年単位で続くことになる。私たちが現在のような状況を耐えていけるのかという問題になってくる。

(貼り付けはじめ)

調査:ロシアはウクライナに侵攻するか?(Poll: Will Russia Invade Ukraine?

-国際関係論(International Relations)の学者たちはモスクワが軍事力を使用する可能性が高いとが、ワシントンは抑制的であるべきだと考えている。

イレイン・エントリンジャー、ガルシア・ブレインズ、ライアン・パワーズ、スーザン・ピーターソン、マイケル・J・ターニー筆

2022年1月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/01/31/poll-russia-ukraine-invasion-crisis-biden-response/

この6週間、ロシアはウクライナ国境周辺の軍事配備を強化し、アメリカとNATOが外交的要求、具体的には、NATOがウクライナに加盟を認めず、ロシア国境へ向けた更なるNATO拡大を停止するという法的拘束力のある約束をしないなら行動すると脅迫している。2021年12月、アメリカはNATOの門戸開放政策に変更はないと答えた。

その後、アメリカとロシアの外交官たちによる直接会談が連続して行われたが、ウクライナとの国境付近には10万人以上のロシア軍が展開している。軍事力を抑止する方法を模索する中で、多くのアナリストやジョー・バイデン米大統領までもが、ロシアがそのような行動に出ることを予測している。しかし、ロシアの脅しはハッタリで、攻撃してこないだろうという見方もある。

国際関係の専門家たちは今後何が起こると予測し、アメリカはどう対応すべきなのだろうか? ウィリアム・アンド・メアリー大学グローバル・リサーチ・インスティテュートとデンヴァー大学シーセンターが共同して設置しているティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトは、大規模な調査の一環として、アメリカの大学・カレッジの国際関係論研究者たちにロシア・ウクライナ危機に対する見解を尋ねた。以下に報告する結果は、2021年12月16日から1月27日の間に362名の専門家たちから得られた回答に基づいている。

回答者たちは、ロシアがウクライナで軍事力を行使することを約3対1の差で予想しているが、真に不確実であるとする回答も少数派であるがある程度の割合を占めている。それにもかかわらず、国際関係論研究者たちは概して、アメリカは直接的な軍事衝突を避けるべきであると考えている。おそらく驚くべきことに、回答は調査期間中あまり変化せず、これらの予測はヘッドラインや日々の現地の変化に敏感ではないことが示唆された。

バイデン政権も国際関係論の専門家たちと同じように考えているのかもしれない。ロシアがウクライナに侵攻する可能性は高いが、不確実性も多く残っている。ロシアがウクライナに侵攻する可能性は高いが、不確実性が大きい。ロシアにコストをかけつつ、エスカレートのリスクを抑える対応を選択することが課題である。その点では、ウクライナへの軍事支援やロシアへの大幅な経済制裁など、アメリカがこれまで取ってきた措置の一部は、国際関係論の専門家たちからも広く支持されている。

●戦争発生の可能性はどれくらいか?(How likely is war?

今後1年間にロシアがウクライナ軍やウクライナ領の未占領地域に対して軍事力を行使するかという質問に対して、国際関係論の専門家たちの56%がイエスと答え、ノーと答えたのはわずか20%であった。56%は圧倒的なコンセンサスではないが、紛争の平和的解決を望む人々にとって安心できる数字ではないことは確かである。専門家たちの回答は、ウクライナで武力紛争が激化する可能性が高いことを示唆している。

国際安全保障に専門性を持つと答えた回答者は、国際安全保障を専門としない回答者(51%)よりも、ロシアが武力を行使すると予測する傾向が強い(62%)。一方、ロシアや東欧を専門とする地域研究の専門家たちは、同僚と大きく異なる予測をしている訳ではない。ロシアが軍事力を行使するとの回答は、地域研究専門家の60%に対し、他の回答者は58%であった。

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●戦争についてアメリカは何をすべきか?(What should the United States do about it?

国際関係論の研究者たちは、現在の抑止努力が失敗し、ロシアがウクライナで軍事力を行使した場合、米国は自制すべきだという意見に圧倒的に同意している。この調査では、6つの政策が提示され、回答者は妥当だと考えるもの全てにチェックを入れることができる。

その結果、専門家の間では、ロシア軍に対する直接な軍事行動への意欲はないという考えが圧倒的であり、直接軍事行動を行うという選択肢を選んだ回答者は3%未満であった。国際関係論の研究者たちが選択する外交政策は制裁であるようだ。回答者の90%近くが、ロシアが侵攻してきた場合に制裁を行うことを支持している。

また、いわゆる「最終的な援助(lethal aid)」についても、73%が「アメリカはウクライナに武器や軍事物資を追加で送るべき」と回答しており、広く支持されている。また、ロシア軍に対する攻撃的なサイバー作戦を開始することを支持する人も41%とかなり少数派で、27%の回答者がアメリカはより広い地域に軍を派遣すべきだと答えている。

最後に、専門家の22%が、アメリカは「ウクライナの領土保全を正式に保証するべきだ」と答えている。この結果は、特に直接的な軍事力の行使にほぼ全員が反対していることを考えると、解釈が難しい。正式な保証とは、ウクライナのNATO加盟を認めることかもしれないが、単に現状を継続することかもしれない。アメリカ(そして国連全加盟国)は既に他の加盟国の領土の完全性を正式に承認している。

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これまでの常識では、国際関係論の研究者たちや超党派の外交政策エスタブリッシュメントたちは、圧倒的にインターナショナリズムを志向していると考えられてきた。この考え方では、世界秩序は、人権、航行の自由、安定した世界通貨制度、あるいは国民国家の主権的な国境を守るために、アメリカのリーダーシップを世界が必要としているというものだ。過去30年間、現実主義と自制は、学界とアメリカの意思決定者の間で支持されない傾向にあった。

しかし、国際関係論の学界ではリベラル・インターナショナリズムに基づく考えが広まりつつあるにもかかわらず、調査対象の専門家たちは、ロシアの侵略に直面して国際規範を行使することで軍事的エスカレーションのリスクを冒すような政策には警戒心を抱いているようだ。これらの結果は、国際関係論の研究者たちがバイデン政権の現在の路線に同調する可能性が高いことを示唆している。

※イレイン・エントリンジャー:ウィリアム・アンド・メアリー大学のティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトのプロジェクト・マネジャー。ツイッターアカウント:@EntringerIrene

※ライアン・パワーズ:ジョージア大学公共・国際問題大学院助教授。ツイッターアカウント:@rmpowers

※スーザン・ピーターソン:ウィリアム・アンド・メアリー大学政治学部長兼ウェンディ・エメリー記念政治学・国際関係論教授。

※マイケル・J・ターニー:ウィリアム・アンド・メアリー大学グローバル・リサーチ・インスティテュート部長兼ジョージ・メリー・ヒルトン記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@MikeTierneyIR
(貼り付け終わり)
(終わり)


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