古村治彦です。

 ウクライナ戦争が始まってからの重要なポイントとしてNATOによるウクライナ上空の飛行禁止区域(no fly zone)設定がある。飛行禁止区域とは指定された空域で特定の軍隊の航空機の活動を禁止するもので、これに反して飛行すれば撃墜するというものだ。ウクライナ軍は初期段階で航空戦においてロシア軍に負けており、飛行禁止区域をNATOに設定してもらって劣勢を挽回したいと考えていた。それは今も変わらない。しかし、アメリカをはじめとする西側諸国は飛行禁止区域設定に反対している。それは、飛行禁止区域を設定すればその空域を飛行するロシア軍機を撃墜しなければならなくなるからだ。撃墜しなければこのような措置の効果はないので設定する意味はない。しかし、設定してしまうと、空域を飛行するロシア軍機を撃墜しなければならなくなり、それはおそらくアメリカ軍が中心となるであろうNATO軍がロシア軍と直接戦火を交えることになるのだ。

 ウクライナとしては戦争当初から飛行禁止区域設定を要求し続けてきた。ロシア軍が東部に注力するという転換を行った今でもできることならば飛行禁止区域設定を要求したいところだろう。しかし、そうならばアメリカ軍がロシア軍と直接戦闘することになり、それが結果としてどこまでエスカレートするか分からない。核ミサイルを米露間で撃ち合うということになればウクライナだけの問題では済まなくなる。アメリカとしては自分たちが一兵も死なせることなく、戦争が長く続いてアメリカ製の武器がどんどん売れればこんなにおいしいことはない。だから直接戦闘に関与することだけは回避している。この点で国際関係論の専門家たちのほぼ一致したコンセンサスとアメリカ政府の姿勢は同じということになる。

 ウクライナ側もそれが分かってきているので「もっと武器を、もっと武器を」という要求をより声高に行うようになっている。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は焦土作戦を展開しようとしているのではないかと疑いたくなる。これがウクライナ国民の生命と財産にどれほどのダメージを与えるのかということを考えると、それはあまりにも悲惨なことであり、かつ欧米の軍需産業を超え太らせる、軍産複合体に膨大な資金を流すことにつながることだ。そして、その原資は西側先進諸国に住む一般国民の血税である。

ヨーロッパ諸国はロシアからの天然資源輸入に依存し続けている。経済制裁と言いながら、自分たちがロシアからの天然資源輸入の代金支払いに関しては例外事項にしている。ロシアに流れるヨーロッパ諸国の資金がロシア軍の軍費になってウクライナ攻撃に使われているということになる。綺麗ごとをいくら述べても、御身大切、自分が一番大事ということになる。一時的に正義に酔って感情的になることは仕方がないことではあるが、冷静にかつ現状で最善の方法を模索し続けることが大人の態度だ。

(貼り付けはじめ)

調査:専門家たちがウクライナでの飛行禁止区域設定に反対(Poll: Experts Oppose No-Fly Zone Over Ukraine

-国際関係論の学者たちの大多数がアメリカの航空パワーの関与は制御不能なエスカレーションを引き起こす危険性があると述べている。バイデンと彼のアドバイザーも同意見だ。

イレイン・エントリンジャー、ライアン・パワーズ、スーザン・ピーターソン、マイケル・J・ターニー筆

2022年3月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/16/poll-no-fly-zone-ukraine-zelensky-speech-biden/

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、ウクライナの大義のために広く共感を集めている。ロシアの侵攻に直面したウクライナを率いる彼の勇気は、ウィンストン・チャーチルやジョージ・ワシントンといった人物と比較されるほどだ。水曜日、ゼレンスキーはヴィデオ映像を通じてアメリカ連邦議会の合同会議に出席し、アメリカとNATOに対し、「ウクライナの上空を閉鎖し」、飛行禁止区域を実施するよう、今やおなじみの嘆願を繰り返した。

2022年2月24日のロシアの侵攻直後の世論調査では、ウクライナにおけるロシアの更なる空爆を制限するためにアメリカの空軍力を使用することをアメリカ国民が強く支持していることが分かった。このところ、この政策に対する国民の支持はやや低下しているが、一部の連邦議員たちは依然として飛行禁止区域の設定と実施を主張している。ロシアと国境を接するエストニアは月曜日、飛行禁止区域の設置を求める決議をNATO加盟国として初めて自国の議会で採択した。

こうした要求にもかかわらず、バイデン米大統領と補佐官たちは、NATOによるウクライナ上空の飛行禁止区域の設定を一貫して拒否している。彼らは、この政策によってアメリカ軍とロシア軍の直接戦闘にまで発展し、制御不能なエスカレーションを招く危険性があると主張している。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は2022年3月3日、「まさに私たちが避けたいステップ」だと述べた。先週金曜日、バイデンはこの考えを強調した。「私たちはウクライナでロシアと戦争するつもりはない。NATOとロシアが直接対決することは第三次世界大戦であり、我々はそれを防ぐ努力をしなければならない」と述べた。

国際関係論(International RelationsIR)の専門家たちの圧倒的多数はバイデンに同意している。ウィリアム・アンド・メアリー大学グローバル・インスティテュートのティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトは、アメリカ国内の大学やカレッジの国際関係論研究者たちに、ウクライナ上空に飛行禁止区域とするためにアメリカの空軍力を行使することについての見解を求めた。以下に報告する結果は、3月10日から14日の間に調査対象となった866人の回答者の回答に基づいている。

これらの専門家のほぼ全員が、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定、実施することに反対している。ウクライナやNATO諸国に対するロシアの核攻撃の可能性など、エスカレーションのリスクを高めることを懸念し、アメリカによる飛行禁止区域の設定に否定的だ。

●国際関係論の専門家たちは飛行禁止区域設定に「ノー」と答えた(IR experts say “no” to a no-fly zone

ロシアによるウクライナ侵攻に対して、アメリカはウクライナ上空に飛行禁止区域を設定することで対応すべきか、という質問に対しては、わずか7%の回答者が「そう思う」と回答した。ロシア政府とその指導者に対する制裁、ウクライナ難民のアメリカへの再定住、ウクライナへの軍事物資の送付、ロシアからの石油と天然ガス購入の禁止、ウクライナへの軍事力の増強など、その他のアメリカの政策対応について、多くの専門家たちが支持している。

飛行禁止区域よりも人気のないアメリカの政策対応は、ロシア軍に対するより一般的な軍事作戦だけであった。ロシア軍に対するサイバー攻撃への支持もかなり低く、わずか29%であった。全体としてこのメッセージは明確である。国際関係論の専門家たちは概して、ロシアがエスカレートしていると見なす可能性のあるアメリカの政策対応を支持したくないということである。

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これまでの約20年間、ティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトは国際関係論の専門家たちを対象にして調査を実施してきた。その中で、重大な結果をもたらす現代の政策問題についてこれほど結果が一致したものはこれまでなかった。アメリカによる飛行禁止区域設定に対する圧倒的な反対は、学問的地位、性別、理論的枠組み、専門地域、専門分野に関係なく維持されている。

国際関係論の専門家たちの回答は、飛行禁止区域を広く超党派で支持しているアメリカ国民の世論調査の結果とは反対の内容となっている。3月3日、4日に実施されたロイター通信・イプソス社の共同世論調査の結果では、74%がウクライナ上空の飛行禁止区域設定を支持すると答えている。3月8日から11日にかけて行われたCBSニューズ・YouGovの共同世論調査の結果では、59%の人が飛行禁止区域設定を支持すると答え、41%が反対と答えた。

しかし、最近の調査では、一般市民は飛行禁止区域を支持しながらも、その内容を理解していない可能性があることも示唆されている。3月5日から8日にかけて行われた『エコノミスト』誌・YouGovの世論調査の結果では、アメリカ国民の40%がウクライナ上空の飛行禁止区域の設定に賛成したが、ウクライナ上空のロシア航空機の撃墜には31%しか賛成していないことが明らかになった。飛行禁止区域を設定すれば、NATOがロシア軍機やロシアの防空システムを攻撃することはほぼ間違いなく起きるものだ。

一方、アメリカの政策立案者の中にも、飛行禁止区域を求める世論に同調する人物たちがいる。ロジャー・ウィッカー連邦上院議員やアダム・キンジンガー連邦下院議員(いずれも共和党)は飛行禁止区域設定を支持し、リンゼー・グラハム連邦上院議員はロシアがウクライナで化学兵器を使用した場合に飛行禁止区域設定を支持すると述べた。3月8日には、元外交官や外交政策分野の大物27名が、人道的回廊を保護するために限定的な飛行禁止区域を設けることを求める公開書簡を発表した。一方で、別の書簡では、飛行禁止区域の設定に反対しており、それには78名が署名している。

ウクライナ上空の飛行禁止区域をめぐっては、外交専門家の間でも意見が分かれている印象を与えているが、今回の国際関係論の専門家たちを対象にした調査では、より多くの国際関係論の専門家たちを対象にした調査の結果では飛行禁止区域は望ましくないという圧倒的なコンセンサスが得られている。

●飛行禁止区域はどのような結果をもたらすのだろうか?(What are the potential consequences of a no-fly zone?

国際関係論の専門家たちは、アメリカがウクライナ上空を飛行禁止区域にすることにどういう理由で反対しているのか? 今回の調査で得られた回答から、専門家たちはこのような政策がエスカレートする危険性を懸念していることが分かる。仮に米国が飛行禁止区域を設定するとすれば、それはほぼ間違いなくNATOのパートナー諸国とともに行われるであろう。回答者には、NATOが飛行禁止区域を設定した場合、ロシアがどのような戦術的対応をとるかを考えてもらった。その結果、特にウクライナやNATO諸国に対するロシアの核攻撃のリスクが大幅に高まると判断された。

回答者たちはまず、NATOがウクライナ上空に飛行禁止区域を設定しないと仮定した場合、ロシアが今後30日以内にウクライナやNATOの目標に対して様々な戦術を取る可能性について質問された。次に、これらの専門家に、NATOが直ちに飛行禁止区域を設定し、実施した場合を考え、ロシアが同じ戦術を採用する可能性を推定するよう求めた。その結果、驚くべき結果が明らかになった。

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国際関係論の専門家たちは、飛行禁止区域を設定すれば、ロシアがウクライナ人に対する化学・生物兵器の使用からNATO諸国に対する核兵器の使用まで、私たちが質問したほぼ全ての軍事的エスカレーション戦術を用いる確率が高まると推定している。最も大きな違いは、NATO諸国に対する通常兵器の使用に関する予想である。回答者たちは、ウクライナ上空を飛行禁止区域とした場合、ロシアとNATOが通常兵器で対立する確率は23%から64%へとほぼ3倍になると答えている。

国際政治に最も大きな影響を与えるのは、ロシアが大量破壊兵器を使用する確率に関するものだ。NATOがウクライナ上空に飛行禁止区域を設定した場合、ウクライナやNATO諸国に対する化学兵器、生物兵器、核兵器の使用確率が高くなると国際関係論の専門家たちは予想している。このような兵器の使用は、戦争がウクライナの国境を越えて拡大する可能性を高めることになる。

回答者たちは、飛行禁止区域が設定されれば、ロシアによるNATO諸国への核攻撃のリスクは9%から22%へと実質的に倍増すると判断している。飛行禁止区域がウクライナに対する核攻撃の可能性に及ぼす影響は小さく、19%から 27%に増加すると推定された。これは主に、回答者が高いベースラインから出発したためである。

ロシアがウクライナの人口密集地に対して大規模かつ意図的な通常攻撃を行う場合、飛行禁止区域がエスカレートのリスクを高めると国際関係論の専門家たちが推定しなかった唯一のケースとなった。NATOが飛行禁止区域を設定するか否かにかかわらず、回答者たちはこのような事態が起こりうると判断しているが、これはおそらく、多くの学者がロシアは既にこのような戦術をとっていると想定しているためであろう。決定的ではないが、この結果は、NATOによる飛行禁止区域がロシアによる民間人への攻撃を効果的に防ぐとは専門家たちが考えていないことを示唆している。

ティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトの調査結果では、飛行禁止区域に反対する国際関係論の専門家たちが発表した最近の公式声明が、アメリカの専門家集団の圧倒的なコンセンサスを反映していることを強く示唆している。

また、ティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトの調査結果を受けて、その理由を説明したいと回答した専門家数名に、Eメールによるフォローアップを行った。ブラウン大学上級講師のニーナ・タネンワルドは、飛行禁止区域は大国間の戦争を引き起こす危険性があるという議論に歴史的な背景を使って説明した。「これはアメリカ軍とロシア軍の直接戦闘を意味する。冷戦時代には、核兵器の使用に発展しかねない極めて危険な状況であったため、私たちはこれを強く避けてきた」と彼女は書いている。

国際関係論の専門家たちはウクライナの危機の大きさを認めながらも、解決策としての飛行禁止区域を否定している。ミネソタ大学のタニシャ・ファザール教授は次のように書いている。「助けたいと思うのは自然な衝動である。しかし、飛行禁止区域がもたらす結果は、ウクライナの近隣諸国にとって悲惨なものであり、ウクライナ自身にとってもさらに悲惨なものとなりかねない。核武装した大国同士の直接対決は避けるべきだ」。

武力紛争を研究する国際関係論の専門家たちも、飛行禁止区域の有効性に疑問を呈している。ウェルズリー大学のステイシー・ゴダード教授は次のように書いている。「そうすることで民間人が狙われなくなるなら、エスカレーションのリスクを取る価値があるかもしれないが、そうはならない。ロシアは民間人を攻撃するために、航空戦力ではなく、主に大砲、巡航ミサイル、弾道ミサイルに頼っているので、飛行禁止区域も効果がないのだ」。

最後に、ハーヴァード大学ケネディ・スクールのエリカ・チェノウェス教授は、このような政策の法的位置づけと政治的効果について説明するために次のように書いている。「飛行禁止区域は“違法”に設定されなければならない。ロシアは国連安全保障理事会での拒否権を行使して、そのような措置を認める決議を阻止するだろうし、理事会を無効化すれば、他の国連加盟国によるロシアの侵略に対する圧倒的な非難を弱めることになる」。

戦費が増大し、ロシアが戦場で目立った前進を見せれば、アメリカの内外でウクライナ上空の飛行禁止区域を求める声が高まるのはほぼ間違いない。しかし、国際関係論と安全保障の専門家たちは、アメリカとNATOの同盟諸国は、ウクライナ上空のロシア航空機やウクライナ、ロシア、ベラルーシのロシア対空戦闘システムと直接交戦し、第三次世界大戦のリスクを避けるべきだという見解で、驚くほど一致している。彼らの専門知識は、ウクライナの地上情勢が悪化しても、飛行禁止区域への反対を揺るがすことはなさそうだ。

イレイン・エントリンジャー:ウィリアム・アンド・メアリー大学のティーチング、リサーチ、アンド、インターナショナル・ポリシープロジェクトのプロジェクト・マネジャー。ツイッターアカウント:@EntringerIrene

※ライアン・パワーズ:ジョージア大学公共・国際問題大学院助教授。ツイッターアカウント:@rmpowers

※スーザン・ピーターソン:ウィリアム・アンド・メアリー大学政治学部長兼ウェンディ・エメリー記念政治学・国際関係論教授。

※マイケル・J・ターニー:ウィリアム・アンド・メアリー大学グローバル・リサーチ・インスティテュート部長兼ジョージ・メリー・ヒルトン記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@MikeTierneyIR

(貼り付け終わり)

(終わり)


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