古村治彦です。

 ウクライナ戦争はウクライナ東部にロシア軍が注力する中、ウクライナ軍の抵抗も激化している。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は重要拠点マリウポリが陥落すれば、ロシア側とは交渉しないと発言している。マリウポリ死守命令であり、ゼレンスキー大統領は戦争を停止することはないと宣言したようなものだ。そうした中で、ウクライナは国家を挙げて西側諸国により効果の高い武器の供与を求めている。NATO加盟の国々の中には、戦車や重火器支援を行おうとしている国も出ている。こうした支援はただ武器そのものを与えるのではなく、交換用のパーツや整備員(メカニック)も支援することであり、その輸送運搬、資金まで提供することである。
 こうした支援の程度を引き上げることで、ロシアから見れば実質的にこれらの国々はウクライナの共闘者(co-combatant)ということになる。具体的にはヨーロッパ諸国ということになるが、これらの国々は非常に危険な火遊びをしているということになる。「ロシアが攻撃してくるなんてありえない」と甘く考えて後で痛い目に遭うということはあり得る。また、こうした支援をいつまで続けられるのかということもある。武器商人たちは武器が売れて結構なことだが、売り買いということは現金が必要となる。その現金はどうやって調達するのかということになる。ウクライナに支払わせるということは無理だろうから、自国民の血税ということになる。日本でもそうだが戦争によって、一般国民の生活は苦しくなっている。エネルギー価格の高騰によって、新型コロナウイルス感染拡大で傷んだ経済に更なる打撃が加えられている。そこに戦争に巻き込まれる(自分たちが攻撃される、家族に死傷者が出る、自分の親族が所属する軍隊が派遣されるなど)ことまで加わってくる。

 日本は安全で、口先で「どんどんやれ」「いいぞいいぞ」と勇ましく述べるのは簡単だが卑怯だ。そして現実が見えていない。日本はロシアと国境を接している。日本も気を付けて対応しなければどんな事態に巻き込まれるかもわからない。ロシアも「日本はアメリカの属国で色々と大変だ、独自の行動は難しいんだろう」と忖度してくれることもあるだろうが、それは最大限善意で解釈すればの話だ。現状で日本にまで戦争を仕掛けるということはロシアの国力から考えて無理だし、アジアの平和と安定を望む中国(それによって経済成長という利益を得ている)が許さないだろう。しかし、戦争以外の方策で日本にダメージを与えようとしてくるだろう。だから日本は気を付けて行動しなければならない。

 ヨーロッパ諸国はハイエンドな(高度な)武器をウクライナに供与しようとしている。そうなれば戦争はより大規模に、より深刻に、より泥沼になっていく。ヨーロッパ諸国がウクライナ戦争のエスカレーションに踏み切れば、それはもう第三次世界大戦ということになる。

(貼り付けはじめ)

西側諸国は最終的にウクライナにとっての重要な武器を本格展開し始める(The West Finally Starts Rolling Out the Big Guns for Ukraine

-ウクライナ人の中には、これはあまりにも小さ過ぎ、かつ遅過ぎるのではないかと懸念する人もいる。

ロビー・グラマー、ジャック・デッチ、アイミー・マキノン筆

2022年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/15/tanks-heavy-weapons-ukraine-russia-nato-putin-offensive/?tpcc=recirc_latest062921

アメリカとNATOの同盟諸国は、ウクライナ軍がウクライナ東部のドンバス地方でロシア軍との大規模な戦闘に備えるため、戦車、ヘリコプター、重火器の提供を強化した。

この新しい武器供与は、戦争初期における西側のウクライナ支援からの著しい転換を意味する。当時、欧米諸国の当局者たちは、ウクライナがロシアの大規模な侵攻に対してどの程度持ちこたえられるかを確信できず、ロシアの手に落ちる可能性のある重火器を提供することに慎重になっていた。また、今回の武器供与は、対戦車ロケットなどの防御的なシステムから、戦争の重要な局面でウクライナが必要としているより攻撃的な兵器へのシフトを意味している。

チェコ共和国は今月初め思い切って水門を解放した。2月24日にロシアが侵攻を開始して以来、NATO諸国としては初めて戦車をウクライナに提供した。チェコ共和国はその他にも、ウクライナに装甲戦闘車輛と大砲システムも送った。

NATOの他の国々も、NATOの国境を越えてウクライナに高度な軍用機器を送り、チェコの動きに追随している。スロヴァキアはウクライナにS-300防空システムを送り、アメリカは水曜日に、ウクライナに8億ドル相当の軍需品を追加で供給すると発表した。その中には、MI-17ヘリコプター11機、M113装甲兵員輸送車200台、四輪駆動車ハンヴィー100台、スイッチブレード「カミカゼ」ドローン300機、重榴弾砲、数千発の砲弾、その他の軍需品が含まれている。

戦争の最初の段階では、西側諸国の政府関係者の多くが、キエフは数日のうちにロシア軍の攻撃によって陥落すると考え、生き残れるかどうか分からない政府に重火器を送ることに躊躇していた。

しかし、欧米諸国からの対戦車兵器や小火器に支えられたウクライナの強固な抵抗と、装備の不十分なロシア軍の不手際により、ウクライナ北部でのロシアの大規模な攻勢が停滞したことで状況が大きく変化した。

ウクライナへの重火器の移送は単純な話ではない。重車両や武器そのものの提供以外にも、ウクライナへの重火器の移送は、紛争地域で車両を稼働させ続けるための訓練、交換用部品、整備士など、バックアップのための大規模な物流が必要になる可能性がある。ロシアは、アメリカやNATO諸国の兵器がウクライナに輸送されるのを攻撃すると脅している。

元在ヨーロッパ米軍司令官ベン・ホッジスは次のように述べている。「戦車はただのレンタカーではない。機械化された車両や装甲車の譲渡について話すときはいつでも、交換用部品、メンテナンスパッケージ、訓練、燃料、弾薬など、彼らが作戦を継続できるようにすることも考えなければならない」。

それでも、あるアメリカ国防省高官は月曜日、複数の同盟諸国がウクライナに戦車を提供することをまだ検討中だと語った。提供する戦車のほとんどは、キエフの部隊がすでに訓練を受けているソヴィエト時代のものである。ホッジスは、「これはおそらくウクライナ人が既に慣れ親しんでいる装備なので、訓練にかかる時間は比較的短くてすむだろう」と述べた。

ウクライナの高官は、兵力も人員も不足している軍隊への更なる支援を求めている。しかし、物流の複雑さから、西側諸国の政府の中には、ウクライナへの大型重車両の移送を差し控える動きもある。

また、特にドイツの一部の政治家たちは、ウクライナ軍を重火器で強化することで、西側諸国がロシアの更なる侵略の標的になるのではないかと懸念している。この議論は、ドイツの連立与党内に亀裂を生じさせたとも報じられている。

ドイツの大手兵器メーカーであるラインメタル社は今週初め、中古のレオパード1戦車を最大50台、ウクライナに供給する用意があると語ったが、ドイツ政府はまだこの兵器移送を承認していない。ドイツ政府関係者の中には、東ヨーロッパで一般的なソヴィエト連邦後の兵器システムに精通しているウクライナ人に、西洋製の戦車を訓練するには時間がかかり過ぎると考えて、この案に難色を示す者もいる。ラインメタル社の最高経営責任者であるアルミン・パッパーガー氏は、この議論に反論し、数日で訓練が可能であると述べた。

ウクライナ側からすれば、西側諸国による新たな武器供与は歓迎すべき変化であるが、まだ十分ではないと映る。ウクライナの新旧の政府関係者たちは、戦争の決定的な新段階になると予想される事態を目前に控える状況下で、西側諸国はウクライナをより武装させるためにもっとできることがまだあると口を揃えて訴えている。

ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は水曜日、「武器を追加しなければ、この戦争は終わりのない血の海になり、悲惨さと苦しみと破壊を広げるだろう」とツィートし、ロシア軍が軍事攻撃中に民間人に残虐行為を行った都市を列挙した。ゼレンスキーは「マリウポリ、ブチャ、クラマトルスク・・・、リストは続くだろう。ウクライナの重火器以外、誰もロシアを止めることはできない」とツィートした。

ウクライナ政府関係者や政府アカウントは、重火器のさらなる提供を訴えて、ソーシャルメディア上でハッシュタグ「#ArmUkraineNow」を使い始めている。

ウクライナの独立反腐敗防衛委員会の委員長であるオレナ・トレグブは、今回実施される西側からの新たな重火器提供は、数的に優勢なロシア軍との戦いでウクライナを優位に立たせるのに十分ではないと述べた。トレグブは「ウクライナは点滴を打たれて、ゆっくりと死んでいくようなものだ」と述べた。

しかし、米欧の当局者は、今回の新たな重火器提供は、ワシントンと他のヨーロッパの同盟諸国が、ウクライナがロシアの猛攻を生き残るだけでなく、攻勢に転じるのを支援する準備を始めたことを意味する、と述べている。たとえウクライナが不十分だと考えていても、重火器の供与はウクライナの軍事的成功に不可欠であることが証明されるだろうというのがその主張だ。

リトアニアのアルビダス・アヌサウスカス国防相は、「西ヨーロッパ諸国は、この戦争に勝つためにウクライナを支援するためにできる限りのことをしており、この支援は量的にも質的にも増大する一方だ」と、本紙『フォーリン・ポリシー』誌に語っている。

ウクライナからは戦車に対する欲求が高まっており、そして西側諸国が戦車をもっと送るよう圧力をかけている。それは、ウクライナ東部のドンバス地方が平坦な戦場で、戦車の操縦がしやすいことも要因となっている。

ロンドンにあるシンクタンク、国際戦略研究所のフランツ・ステファン・ガディ研究員は次のように語っている。「ウクライナ東部の大部分は、いわゆる“戦車の国”で、機械化戦争に理想的な平らなオープングラウンドだ。そのため、ウクライナはこの戦いにとどまり、ロシア軍を足止めし、最終的に機会を捉えて反撃するために、主力戦車、歩兵戦闘車、中距離防空システム、徘徊型兵器(訳者註:攻撃型無人航空機)などを必要としている。ウクライナ軍の重要な課題は、優れたロシア軍の火力を前にして、いかに大規模な複合武器作戦を行うかである」。

アメリカは、ウクライナへの最新の武器提供について、ウクライナの広範な希望リストのいくつかのボックスにチェックをつけ始めている。米国防総省の高官は、国防総省が定めた基本規則に基づき匿名を条件に取材に応じ、ウクライナの訓練生たちが東ヨーロッパのNATO加盟諸国で榴弾砲や対砲台レーダーなどの新システムの使い方の訓練を受ける計画が進行中であると述べた。

また、ヨーロッパのNATO諸国がウクライナに軍備を移転する際にも、アメリカは重要な後ろ盾となっている。スロヴァキアがS-300防空システムをウクライナに送った後、アメリカはスロヴァキアにパトリオットミサイル防衛システムの1つを配備し、空白を埋めた。また、アメリカは今月初めにポーランドと大規模な武器取引に調印し、ポーランド軍に250台のエイブラムス戦車を供給することになった。

専門家の中には、米国はさらに踏み込んで、ポーランドなどのNATO加盟諸国がウクライナにミグ戦闘機を譲渡する際に、旧式のF16戦闘機の空軍への補充を提案することで支援すべきだと主張する者もいる。一部の同盟諸国はこの旧式のミグ戦闘機の譲渡に難色を示しており、訓練や兵站を考慮すると複雑化する可能性がある。スロヴァキアはミグ戦闘機のウクライナへの移送を検討していると言われている。

前述の元在ヨーロッパ米軍司令官ホッジスは、こうした軍事支援がロシアとNATO諸国との間の紛争の引き金になるという西側諸国の懸念は誇張されすぎており、ワシントンはウクライナへの武器供与をさらに強化する必要があると主張した。

ホッジスは「私たちはリスクを誇張してきたし、ロシアもそれを知っている。世界史上最も強力な同盟が命がけで戦っている国に25年前の旧式の航空機を提供することにロシア派怯えているのである」と述べている。

ホッジスは更に「もし我々が民主政治体制にとっての兵器庫(the arsenal of democracy)であるならば、民主政治体制にとっての兵器庫として、ドアを開け、ウクライナ人が必要とするものをすべて持ち出そう」と述べた。

この議論は、ロシアがキエフ郊外から撤退した後に再編成し、ウクライナ軍がウクライナ東部の支配をめぐる新たな戦いに直面するためにできる限りの火力を結集している、戦争の重大な局面で行われている。米国防総省当局によると、ロシアはウクライナ東部のドネツク市の南に大砲部隊を配置している。今週初めに公開されたイギリスの国防情報報告書は、クレムリンがドンバスの主要人口拠点に対する空爆を強化すると予測しており、主要鉄道拠点であり、先週のロシアの弾道ミサイル攻撃で59人が亡くなったクラマトスクなどにも空爆を行うと分析している。

セントアンドリュース大学のフィリップス・オブライエン教授(戦略研究専攻)は、「ウクライナはドンバス地方においてロシア軍の重火砲に対してより脆弱となる可能性がある。ウクライナ軍がロシア軍に対して町や都市での戦いを強いるのではなく、より広い場所で争おうとすればロシア軍の重火砲の攻撃に晒されることになる」と指摘した。オブライエンは更に「個人的には、ウクライナに航空戦力を与えるために、防空システムとUAV‘(訳者註:ドローン)から始めるのが良いと考える。長距離砲も非常に有効となるだろう」と述べた。

西側諸国からの武器提供が増大すれば、ロシアがウクライナ東部で攻勢を維持することが難しくなる可能性がある。西側諸国は、クレムリンが5月9日のナチス・ドイツに対するロシアの第二次世界大戦の勝利を記念する祝日に向け、自軍に大きな戦果を挙げることを切望していると考えている。専門家たちは、ロシアは戦争開始後1カ月で大きな損失を被った後、支援歩兵の不足とドンバスでの前進の鈍化によってロシアは困難に直面するだろうと見ている。

前述の国際戦略研究所のフランツ・ステファン・ガディ研究員は、「確かに、攻勢が永遠に続くことはない。私の推測では、ロシアにはこの戦いを6月まで続ける力はないだろう。だから、ウクライナに対してそれまでに何かを与えなければならないということになる」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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