古村治彦です。

 少し古い記事でしかも我田引水のような内容になっていることをまずお断りしておく。今回のウクライナ戦争は物理的にも大量の武器が使われ、多くの生命が失われそして傷つき、建物や財産が失われている。この状況は止まる兆候は見いだせていない。これに加えて、サイバー空間での戦争も激化している。こちらもハッキングなどによって相手のインフラを機能できなくしたり、情報を盗み出したりと行ったことが行われている。ウクライナ政府は世界各国の人々に「サイバー義勇兵となってロシア攻撃に参加して欲しい」と呼びかけ、日本を含む数十万人単位でこうした行為に参加しているようだ。ハッキング行為は違法行為となっている国も多いが、「対ロシア」のハッキングであれば思い切りやって下さい、ということになるのだろう。ロシアに制裁を科してロシアの海外資産を没収するということも含めて、ロシアに対してであればどんなに違法なことでもやって良い、というとても21世紀とは思えない状況が続いている。

 さて、アメリカ政府は各大企業に対して、サイバーに関しての「愛国的な」行動を取ることを求めている。ロシアからのサイバー攻撃から自分たちを守るようにと求めている。しかし、こうした行動はこれまでもやって来たことであろうし、何もロシアからだけサイバー攻撃を受けている訳ではない。しかし、下の記事にあるバイデンの発言は「サイバー空間でも既に相当な闘争が繰り広げられている」ということを示している。アメリカ政府も既にロシアに対して相当な攻撃を仕掛けており、それに対する報復に備えよということも示唆しているのだと考えらえる。私は昨年『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)という本を出した。宣伝がしつこくて申し訳ないが是非多くの方々に読んでいただきたい。

 サイバー空間での対ロシア攻撃の尖兵となるのはビッグテック各社である。SNSを運営している各ビッグテックは、情報戦のところで「愛国的な」行動を取っている。フェイスブック上ではこれまでネオナチや過激なテロ組織に対する制限を加えていたのに、「アゾフ大隊だけは別」として、人種差別やネオナチ的な文脈でない場合には称賛しても差し支えない、ということになっている。アゾフ大隊の根本思想やこれまでやって来たことを無視して(臭いものにふたをして)、「素晴らしい愛国的な勢力」ということにしてしまっている。フェイブック公認の「愛国的ネオナチ」ということになった。

 ビッグテック各社の情報に関する独占力の凄まじさは拙訳『ビッグテック5社を解体せよ』(ジョシュ・ホウリー著、徳間書店)でも明らかにされている。私が最近話したある編集者の言葉が印象的だった。それは「古村さん、SNS上にないものはいないのと一緒なんですよ」というものだ。つまり、ビッグテック各社がSNS上で制限したり隠したりして人々の目に触れにくい、もしくは触れない情報は現実世界でも存在しないのと同じということになる、ということだ。それほどの力をビッグテックは持っている。私たちはますます困難な時代をいきることになりそうだ。

(貼り付けはじめ)

ホワイトハウスがロシアはアメリカに対するサイバー攻撃の準備中の可能性があると警告(White House warns Russia prepping possible cyberattacks against US

モーガン・チャルファント筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/599072-white-house-warns-russia-prepping-possible-cyberattacks-on-us

ホワイトハウスは月曜日、ロシア政府がアメリカ国内の重要インフラを標的とした「潜在的なサイバー攻撃の選択肢」を模索していることを示唆する情報が集まっているとして、民間企業にサイバー防御を強化するよう促した。

ホワイトハウスの国家安全保障問題担当大統領副補佐官(サイバー、新技術担当)アン・ニューバーガー(サイバーおよび新技術担当)は、月曜日の午後のブリーフィングで記者団に対し、「明確に述べておきたいが、重要インフラに対するサイバー事件が確実に起きるかどうかは分からない」と述べた。

「それでは、なぜ私はここにいるのか? これは、私たち全員に対する行動の要請であり、責任の要請があるからだ」と続けて述べた。

バイデン政権はここ数週間、ロシアがアメリカ国内外のインフラをサイバー攻撃で狙う可能性があると警告しているが、当局者はこれまで、アメリカに対する具体的で信頼できる脅威はないと述べていた。

ニューバーガーは月曜日、当局がロシア側によるいくつかの「準備活動」を発見しており、政権は先週、影響を受ける可能性のある企業や部門に機密扱いで説明を行ったと述べた。

ニューバーガーは「私たちが特定のインフラに対するサイバー攻撃を予期しているがそれについての確たる証拠はない。私たちが見ているのはいくつかの準備活動で、それは私たちが影響を受けるかもしれないと考えた企業と機密の文脈で情報を共有した」と語った。

ニューバーガーは、準備活動にはウェブサイトのスキャンや脆弱性の探索が含まれる可能性があると述べたが、具体的な内容は明らかにしなかった。 

その後、ニューバーガーは、アメリカ政府はロシア側の「潜在的な意図の変化」を察知したと述べた。

ホワイトハウスはファクトシートを配布し、各企業に対し、多要素認証の使用義務化、システムのパッチ適用、対応策を準備するための緊急訓練の実施、脅威を探すためのセキュリティツールの導入、データのバックアップ、データの暗号化、その他の情報保護とサイバー脅威から守るためのセキュリティ強化を促している。

バイデン大統領は声明で、「私は以前、同盟国やパートナーとともにロシアに課した前例のない経済的コストへの対応としてなど、ロシアがアメリカに対して悪意のあるサイバー活動を行う可能性について警告した。これはロシアの戦術の一部である。本日、ロシア政府がサイバー攻撃の可能性を探っているという新たな情報に基づいて、私の政権はこれらの警告を再度表明する」と述べた。

バイデンはその後、月曜日の夜にワシントンで開催されたビジネスラウンドテーブルの会議で出席したCEOたちに対してこの警告を再度提示した。

バイデンは「ロシアのサイバー能力の大きさはかなり重大であり、攻撃が私たちに近づいて

バイデン政権は先月、ウクライナの国防省と銀行を標的としたサイバー攻撃をロシアに起因するものとしている。これらの攻撃は、224日にロシアがウクライナに侵攻を開始する前に発生した。

ロシア政府が支援しているアクターたちによるサイバー攻撃は以前にもあり、おそらく最も顕著なのは2016年の大統領選挙への干渉作戦とソーラーウィンズ社に対する大規模なハッキングに関連したものだ。

ロシアのサイバー犯罪者たちは、コロニアル・パイプラインへの攻撃にも関与した。 

バイデン政権は過去1年間、大部分が民間企業によって所有・運営されている重要インフラのサイバーセキュリティを向上させる試みに取り組んできた。

ニューバーガーは、具体的にどの重要インフラ部門が標的にされる可能性があるのか、月曜日には言及しなかった。重要インフラには、水道、エネルギー、医療、金融サーヴィスなど、様々な分野が含まれる。

ニューバーガーはバイデン政権がロシアによるサイバー攻撃に対応すると明言した。

「大統領が述べたように、アメリカはロシアとの対決を求めていないが、ロシアが重要なインフラに対して破壊的なサイバー攻撃を行った場合、対応する用意があるとも明言している」とニューバーガーは述べた。 

バイデン大統領は声明の中で、「バイデン政権は重要インフラに対するサイバー攻撃を抑止し、攻撃を破壊し、必要であれば対応するためにあらゆる手段を使い続ける」と述べた。

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バイデンが各大企業のCEOにロシアのサイバー攻撃から守る「愛国的義務」を訴える(Biden tells CEOs they have 'patriotic obligation' to guard against Russian cyberattacks

アレックス・ガンギターノ筆

2022年3月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/599118-biden-asks-top-ceos-to-invest-in-combating-potential-cyberattacks

ジョー・バイデン大統領は月曜日、ウクライナ侵攻のさなか、ロシアのウラジミール・プーチン大統領からのサイバー攻撃(cyberattacks)の可能性に対処するため、企業の能力を高めるよう、企業トップに対して呼びかけた。

バイデンは月曜日の夜、ビジネスラウンドテーブルの四半期会議の席上、次のように発言した。「サイバーセキュリティの潜在的な使用で危機に直面しているのは皆さん方の利益だけではない。国益の危機に直面している。私は、皆さん方がサイバー攻撃に対処するための技術的能力を構築したことを確認するためにできる限り投資することが、愛国的義務であると真剣に提案する。そして私たちはいかなる方法でも支援する」。

バイデンはこのような攻撃に対抗するための技術に投資することは、企業を保護し、重要なサーヴィスを提供し続け、アメリカ人のプライバシーを保護することにつながると述べた。

バイデンは、サイバー攻撃はプーティンが「最も使いそうな手段」の1つであると述べた。ホワイトハウスは月曜日、ロシア政府がサイバー攻撃の可能性を探っていることを示唆する情報が集まっているとして、民間企業にサイバー防御を強化するよう促した。

バイデンはビジネスラウンドテーブルでの発言で、「プーティンはサイバー攻撃能力を保持しており、まだ使用してはいないが、プーティンのプレイブックの一部だ」と述べた。

バイデン大統領は、例えば、銀行が全ての顧客に対して追加のサイバーセキュリティ対策をデフォルトで実施にすることで支援できることを示唆した。

バイデンは「どのようなステップを踏むか、その責任は皆さん方にあり、私たちの責任ではない」と述べた。

大統領の四半期総会への出席は金曜日に発表された。ビジネスラウンドテーブルのCEOであり、ジョージ・W・ブッシュ大統領の前チーフスタッフであるジョシュ・ボルテンがバイデン大統領を紹介し、ビジネスラウンドテーブルの議長であり、ゼネラルモーターズのCEOであるメアリー・バーラがCEOと大統領との非公開質疑応答セッションの進行役を務めた。

バイデンはまた、プーティンがヨーロッパで生物兵器や化学兵器を使用することについて、出席したCEOたちに警告を発した。

また、バイデンは、プーティンがヨーロッパで生物兵器や化学兵器を使用することについて、CEOグループに警告を発した。「プーティンの背中が壁にぶつかっているほど、彼が用いる戦術の厳しさは大きくなる」と述べた。

また、バイデンはアメリカがウクライナの反撃を支援するために十分な軍備を提供していないという批判に反論した。

バイデンは次のように発言した。「洗練された装備が十分でないというのは単純に正確ではない。ここで詳細に説明する時間を取るつもりはないが、私たちの軍隊とNATOの軍隊に基づいた合理的な意味を持つ全てのあらゆる装備を彼らは持っているということだ」。

バイデンは続けて、ウクライナ軍はロシア軍に「大混乱を引き起こしている」とも述べた。

バイデン大統領は加えて、アメリカと同盟諸国がロシアに対する制裁を科すのを支援してくれた企業に対して感謝の意を表した。アメリカは最近、モスクワとの貿易関係の正常化を終了した。

バイデン大統領は次のように述べた。「私たちがロシア経済に制裁を科し、コスト、実質的な費用を負担するのを助けるために、皆さんは大変なことをして下さった。そして今、私たちは、皆さんがして下さったことが重要で、本当に大切なことだと理解している。皆さん全員がそうしなければならないとは言わないが、立ち上がってくれた人たちは、大きな影響を及ぼした」と述べた。

アップル、ヴィザ、マクドナルド、ディズニー、コカ・コーラなど、アメリカを拠点とする何百もの企業がロシアでの業務の一部または全部を停止している。

ビジネスラウンドテーブルは月曜日の会合への出席者リストを公表していないが、理事会にはアップルCEOのティム・クック、JPモルガン・チェイスCEOのジェイミー・ディモンド、シティCEOのジェーン・フレーザーなどが出席した。

バイデンは次のように述べた。「私たちが世界の舞台でリードしているのは皆さん方のおかげだ。アメリカ企業が立ち上がり、それぞれの役割を果たし、ウクライナへの寄付や、誰の要請もなく事業を縮小するという点で、皆さんがやっていることを嬉しく思う。このことを明確にしておきたい。ロシアでの事業を自ら縮小している。全てではないが、多くの企業が、皆さん方だけでなく世界中の企業を縮小している」。

月曜日午前、バイデン大統領と政権幹部たちは、石油、クリーンエネルギー、銀行といった様々な産業分野の16の大企業の経営陣と面会し、ロシアに関する情勢について意見交換を行った。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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