古村治彦です。

 ウクライナ戦争の影響、対ロシア経済制裁によって世界的にエネルギー価格が高騰している。エネルギー価格高騰に合わせて食料など他の物資の価格の高騰している。アメリカのジョー・バイデン政権はこれまで関係の悪かったヴェネズエラなどとの関係修復で石油輸入の減少を穴埋めしようという動きに出ている。また、国内でも石油増産を行うように業者に促している。増産は実施されているもののそれは期待に沿ったものではない。
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 それは、各石油企業が投資家からの圧力を受けているからだという分析がある。石油価格が低迷していた時期に投資家たちが利益分配を要求することで、新規投資や増産に消極的な姿勢を余儀なくされてきたということが挙げられている。増産に向けた新たな投資が実施され、それが実現するのに数カ月を要し、その時に石油価格が現在よりも下がっていれば、リターンは期待よりも少なくなる。そうなればかえって損をするということで、投資が積極的に行われないということもある。また、化石燃料以外のエネルギー源(クリーンエネルギーなど)に対する投資が増えている中で、石油増産への投資が鈍化しているということもあるようだ。

 アメリカのジョー・バイデン政権としては忸怩たる思いだろう。「石油価格が高騰しているのも高いインフレーション率も悪いのは全部プーティンだ」を連呼しているが、アメリカ国民からすれば「それは分かった。それではこれからどうしてくれるのだ」ということになる。これから夏に向かってアメリカ国民は旅行やレジャーを楽しむ。そのためにはガソリン価格は低い方が良い。これが高いままでは不満はバイデン政権と菱化上院で過半数を握っている民主党に向かう。そうなれば今年11月の中間選挙の結果は民主党にとって厳しいものとなる。選挙結果の不振はバイデン政権にも打撃となる。バイデン政権としてはガソリン価格の引き下げは至上命題となる。

 しかし、現状では非常に厳しいと言わざるを得ない。ウクライナ戦争が続く限り、世界経済は不安定であり、実物資産の価格は高値を維持するだろう。石油の国際価格が高値のままならば国内で生産すればとなるがそれもままならない。アメリカ国民がいつまでこうした状況を我慢するかにかかっている。

(貼り付けはじめ)

アメリカの石油生産は増加しているが、ロシアによる戦争によってガソリン価格は高値を維持している(US oil production grows, but Russia’s war keeps gas prices high
レイチェル・フラジン筆

2022年4月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/energy-environment/3466798-us-oil-production-grows-but-russias-war-keeps-gas-prices-high/

アメリカの石油生産量は増加傾向にある。しかし、民主、共和両党が望むようなガソリン価格への直接的な影響はない可能性が高い。

2022年3月中旬に比べ日量30万バレル増産できている。ロシアのウクライナ侵攻によってロシア産原油のボイコットが始まり、他国からの限られた供給に対する需要を高めた。結果として、少なくとも近い将来は価格を高く維持すると予想されている。

原油価格の高騰はジョー・バイデン政権にとって政治的な頭痛の種であり、大統領はこの高騰を「プーチンによって値上げ」と繰り返し言い、同時に石油生産者たちを非難している。共和党は、バイデン大統領を非難し、国内生産の拡大を求めている。

ロシアのウクライナ侵攻後、欧米諸国がロシアの石油を忌避したため、価格が急騰し、初期の推定では日量約300万バレルの供給減となった。

バイデン政権は、原油価格の上昇を緩和するため、国内の戦略的埋蔵量から日量100万バレルを放出すると発表し、石油業界にもさらなる原油の採掘を呼びかけている。

価格高騰を受け、石油活動は活発化しているが、需要増に対して完全に対応できる見込みはない。

「ガスバディ」の石油分析部門の責任者であるパトリック・デハンは「1日30万バレルの増産は悪くはないが、戦略石油備蓄から1日100万バレルが出ているという文脈で考えるとその規模は小さいということになる」と述べた。

デハンは更に、「より大きな文脈で見れば、増産は良い兆候だが、非常に大きな車輪の中の小さな歯車に過ぎない」とも述べた。

アメリカの石油生産量は4月15日現在で日量1190万バレルと、新型コロナウイルス感染拡大前の水準に比べるとまだやや低い。一方、将来の生産量を示すシグナルである石油掘削装置(リグ)の数は、昨年は438基だったのが695基にまで急増している。しかし、デハンはリグ数を「遅行指標(訳者註:景気に対し遅れて動く経済指数)」と表現している。

デハンまた「石油業者がリグを掘削しても、リターンが見つかるまでに3カ月から6カ月かかるかもしれない」と述べた。

エネルギー情報局は、今年、アメリカの原油生産量は平均で日量約1200万バレルに増加し、2019年に記録した1230万バレルにわずかに及ばないと予測している。2023年には、アメリカの生産量は平均で日量1300万バレルの新記録を達成するとエネルギー情報局は予測している。

ダラス連邦準備銀行が2022年3月に石油・ガス企業の経営者を対象に行った調査では、大企業は2021年12月から2022年12月の間に生産量が中央値で6%増加すると予測した。小規模な企業では中央値で15%の伸びを予測している。

ダラス連銀の上級ビジネスエコノミストのクナル・パテルは「これらの企業は生産を伸ばしている。しかし、価格を押し上げる需要が増加していることを忘れてはいけない」と指摘している。

それでも今なお、生産を減速させるハードルは存在する。

ダラス連銀の調査によると、石油・ガス企業の経営者たちの59%が、投資家からの「資本規律の維持」に対する圧力が、生産者が生産を抑制している最大の理由であると回答している。

エネルギー経済・財政分析研究所の石油・ガス業界アナリストであるトレイ・コーワンは、企業の生産への支出について、「過去に原油価格が現在のように本当に急騰した時期の対応に比べるとかなり控えめになっている」と評価している。

コーワンはこれを2016年の石油価格低迷に起因するとし、その後、投資家は気弱になり、生産者たちに対して「いいか、生産と成長に投資する代わりに、我々にもっと還元する方法を考えなければならない」と言い始めたと述べている。

コーワンは、新型コロナウイルス感染拡大時の企業は既に掘削された井戸から多くの石油を生産し、現在は新しい井戸を掘削してから石油を抽出することに力を入れなければならないため、生産が阻害されている可能性があると述べている。

今回の調査では、生産抑制の理由として、環境、社会、ガヴァナンスへの懸念や、使用できる設備の制限、サプライチェーンの問題などが挙げられている。

「ウッド・マッケンジー」の米州上流研究部門長であるマーク・オーバーストーターは、「もし投資家が、もっとたくさん増産に資金を使って良いという許可を出したとしても、それを実行するには物理的な制約がある」と述べている。

オーバーストーターは「油田に代わる労働力、パイプやリグ、トラックの供給、鉄鋼価格の上昇により、実際に井戸を掘るための十分な条件が揃わないなど、様々な点で物理的な制約が発生している」とも述べている。

一方、ジョージ・ワシントン大学ビジネススクールのロバート・ワイナー教授は、世界が化石燃料からクリーンエネルギーへと移行する中で、投資家が「座礁資産(stranded assets)」を恐れる可能性があると警告を発している。

ワイナーは「誰も石油を買わなくなってしまえば、彼らはにっちもさっちも行かなくなる」と述べている。

ワイナーは更に「エネルギー転換に大きなリスクが伴うのに、誰が投資をしたいと思うだろうか」と述べ、石油生産に対して投資はまだ行われているが、それが鈍化しているとを指摘した。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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