古村治彦です。

 今回は1カ月前にご紹介しようと考えていたがその後、忙しさなどに取り紛れて忘れていた記事をご紹介する。ウクライナ戦争が始まって1カ月後の3月末にロシアはウクライナの首都キエフの掌握を断念し、ウクライナ東部のドンバス地方の確保に注力するという決定を行った。その際にどのようなことが言われていたのかという観点で記事をお読みいただきたい。

 2022年4月のウクライナ戦争の状況はウクライナ東部のドンバス地方での激戦が展開されてきた。ロシア軍の苦戦が伝えられているが、戦争は膠着状態に陥っていると言える。アゾフ大隊の本拠地マリウポリはロシア軍の攻勢に晒されているが、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領はマリウポリが陥落すればロシアとの停戦交渉には応じないという姿勢を示し、マリウポリ死守の姿勢を示している。
 3月までは停戦交渉による停戦ということに対して期待が持たれていたが、4月に入ってから停戦交渉による停戦ということへの関心は低くなっている。ウクライナ軍が善戦しているのでこのままいけばロシア軍をやっつけることができる、という楽観論が広がっている。そのためには欧米諸国はロシアを撃破するためにより高度な武器を供与すべきだという戦争のエスカレートを支持する声が高まっている。これは非常に危険だ。

 ロシアはヨーロッパ諸国のエネルギーの供給源であり、エネルギー分野に関しては対ロシア制裁も例外とされている。ロシアが戦争のエスカレートに合わせて、ヨーロッパへのエネルギー供給を制限するということになれば、ヨーロッパ各国の人々の生活に直撃する。更に言えば、エネルギー価格は高騰し、物価高は日本に暮らす私たちにも影響を与える。

 繰り返しになるが停戦交渉による停戦の実現を望む。しかし、それを許さない状況である。戦争は続き、私たちの生活に大きな影響を与える。世界は第三次世界大戦の戦時下と言えるかもしれない。

(貼り付けはじめ)
ロシアはウクライナ国内で何を望んでいるのか?(What Does Russia Want in Ukraine?

-ロシア政府高官たちは、キエフから手を引くと述べた。しかし、それは侵攻が終わったことを意味しない。

ジャック・デッチ、ロビー・グラマー筆

2022年3月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/29/russia-withdrawal-kyiv-ukraine-war-not-over/?tpcc=recirc_latest062921

アメリカは、ロシアがウクライナの首都キエフ近郊に展開していた戦闘部隊を撤退させ、他の地域に移動する可能性があると見ている。ヨーロッパ駐留のアメリカ軍司令官の将軍は火曜日、連邦議会に出席し、戦争が始まって1カ月が経過し戦線は膠着しており、クレムリンが大きな戦略転換を示す可能性があることを認めた。

ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官でNATOの最高連合司令官であるトッド・ウォルターズ大将は連邦上院の公聴会に出席し、ロシアの決定の存在を認めた。ロシアによる重要な意思変更を示すものである。欧米の各国政府高官たちはこれまで、モスクワがウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領を打倒し、親ロシア派の傀儡政権を樹立するために、200万人以上が住むウクライナの首都キエフを奪取しようと考えていると見ていた。

ここ数週間、ウクライナ軍は首都近郊のブカ、イルピン、ホストメルなどの都市において、断固とした反撃でロシア軍を追い返した。ロシア国防省は2日、キエフとチェルニヒフ方面での「敵対行為の大幅な削減」を選択したと発表した。CNNは、アメリカがすでにロシアの大隊戦術群の東方への移動を確認し始めたと最初に報じた。

アメリカ政府の国防関係の高官は月曜日、記者団に対し、ロシアは親クレムリン派の2つの独立を宣言した国家を含むドンバス地方に軍事作戦を再集中させ、東部のウクライナ軍部隊を孤立させ、この地域に占領体制を確立することでウクライナに対する交渉力を取り戻そうとしていると述べた。この政府高官は、最近機密解除された戦場の最新情報を提供するために匿名を条件に取材に応じ、「ロシアが戦略目標を再評価しているのは今かもしれない」と述べた。

ロシアの突然の撤退の背景には何があるのか? 政府関係者や専門家たちは、ロシアがウクライナの首都から圧力を取り除く動機となり得るいくつかのシナリオについて概説した。

●ウクライナ東部への全力を傾注する攻撃(All-Out Assault on the East

ロシア軍は、いわゆる特別軍事作戦(ウクライナ侵攻に対するクレムリンが使用する呼称)の第1段階は終わったと主張している。金曜日に行われた軍事に関するブリーフィングで、ロシア軍幹部たちはウクライナ東部に焦点を当て、おそらく以前よりも広範囲に離脱地域を切り開く試みを開始することを示唆した。

ロシア国防省のある高官は、部隊の撤退は和平交渉の土台を築くためのものだと述べた。ロシアとウクライナの交渉担当者は火曜日、イスタンブールで2週間ぶりに会談した。

ロシア国防省のアレクサンドル・フォミン副大臣は火曜日、「相互信頼を高め、更なる交渉と最終目標である合意への到達、協定の調印に必要な条件を整えるため、キエフとチェルニヒフ方面での軍事活動を大幅に縮小する決定を下した」とロシアの国営メディアのテレビ番組の中で発言した。

戦争が始まって1カ月が経過し、ロシアはすでに数千人の兵力を失ったと推定される。火曜日の会談では、キエフとその他の地域を武力で制圧するというロシアの当初の取り組みがやや鈍化していることが示された。

火曜日午前のウォルターズ大将のコメントに加え、イギリス国防情報局は今週初め、ロシアがドンバスに外国人戦闘員を補強しており、民間軍事請負業者ワグナー・グループの戦闘員数千人をシリアやアフリカから移動させて戦闘に参加させていると判断を下している。

アメリカ国防総省のジョン・カービー報道官はブリーフィングで、「これは再配置であって、本当の撤退ではないと考える。ウクライナの他の地域に対する大規模な攻勢を監視する準備をすべきだ」と述べた。イギリス国防情報局は24日の声明で、ウクライナ全域でロシア軍は軍事的リセットを試みながら、「阻止態勢」を維持していると述べた。

●外交交渉のためのテコ入れ(Leverage for Diplomatic Talks

ロシアの外交官たちは火曜日、キエフへの攻勢を中止する動きがウクライナ政府に対して戦闘を終わらせるためのオリーブの枝(訳者註:平和や勝利の象徴)となる可能性があることを示唆した。

プーティン大統領の最側近で、ロシアのベラルーシ外交団を率いているウラジミール・メディンスキーは国営放送RTの取材に対し、クレムリンはウクライナの首都キエフを更なる軍事的リスクに晒したくないと考えていると語った。なぜなら外交交渉について「決定を下す」人たちがそこに居住しているからと指摘した。

しかし、西側諸国の首都では、ロシアが首都キエフにミサイルを発射し、何度もロシア連邦保安局のヒットマンを送り込んでゼレンスキー暗殺を試みたと報じられていることから、クレムリンのオリーブの枝には大きな懐疑的な見方が示されている。その代わりに、先週ウクライナの反撃で大きく後退したロシア軍は、クレムリンの外交官たちが交渉の席で譲歩を引き出すために仕事をする一方で、キエフに砲撃を続ける可能性がある。

西側のヴェテラン外交官たちも、ロシアの和平交渉の申し出に懐疑的な声を上げており、クレムリンは2014年のクリミア併合以来、ウクライナ東部の離脱地域への権益を強固にするための政治的隠れ蓑として和平交渉を使ったことがあると主張している。

イギリス国防情報局は火曜日に発表した声明の中で、ロシアは依然としてキエフに攻撃能力を持つ「重大な脅威」を与えていると評価した。ちょうど1週間前、3月20日にロシアがキエフを空爆し、都心のショッピングモールを破壊し、住宅を直撃、8人が死亡した。キエフは、ロシア語を話す地域の中心地であるハリコフやマリウポリなど、戦争で最も大きな被害を受けた都市の惨状を免れているが、クレムリンの攻撃で吹き飛ばされた窓は、1ヶ月の戦争で歓迎されない特徴となっている。

ジョー・バイデン米大統領やヨーロッパ各国の指導者たちとの電話会談で、ボリス・ジョンソン英首相は、ロシアの外交的駆け引きが策略である可能性を警告した。ジョンソン首相は「プーティンは、ウクライナとその同盟国に降伏を強いるために、ウクライナの開いた傷口にナイフをねじ込んでいる」と他の首脳に語ったとイギリス政府の通話記録は伝えている。

●ヨーロッパ諸国を説得する(Getting Europe to Back Down

ロシアのウクライナ戦争によってガソリン価格が世界的に高騰している。既に世界全体が深刻な経済的打撃を受けている。東ヨーロッパ諸国は、ウクライナが戦場で優位に立っているように見えるにもかかわらず、西ヨーロッパ諸国がロシアによる経済的圧力に屈して早々に自分たちの退路を断ってしまうのではないかという懸念が出てきている。

しかし、プーティンがドンバス地域のロシア語を話す人々に対するウクライナ人からの迫害というでっち上げの主張を使ってウクライナ侵攻のための理由を数週間かけて作り上げたように、ロシアの指導者プーティンは、不安に駆られたヨーロッパ諸国を不快な平和協定に誘導するために目的を絞ろうとしている可能性がある。

バラク・オバマ政権下でヨーロッパとNATOを担当した元国防次官補のジム・タウンゼントは「プーティンがやっているのは目的を達したと説明するための土台作りだ。ドンバス周辺での自分たちの立場を改善して、本格的な交渉が始まったときに優位に立てるようにする意図を持っているのだ」と分析している。

それは、ウクライナ人への武器供与を制限するようなロシアの圧力にも現れるかもしれない。週末に行われたNATO諸国への演説で、ゼレンスキーは、ウクライナに戦車やミサイル防衛、対艦兵器などを送る西側の行動があまりにも遅すぎると非難した。実際、アメリカはソ連時代のポーランド製戦闘機ミグ29をウクライナに直接譲渡することも控えている。ロシアがこの動きをエスカレートとみなし、NATO同盟に報復することを恐れている。

ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官ウォルターズ大将は、ロシア軍戦車を無力化するのに有効な無人偵察機「スイッチブレード」を米国はまだウクライナに供与していないと述べた。

在ウクライナ・エストニア大使のカイモ・クースクは本誌にテキスト・メッセージを送りその中で「ウクライナでの成功を恐れるべきではない」と述べた。クークスは続けて「私たちは、ロシアの侵略が成功することを恐れている。しかし、ウクライナが成功すれば、負けたプーティンがエスカレートすることを恐れているようだ。私たちはそれを恐れるべきではない」と述べた。

●ロシアのおとり商法(Russian Bait-and-Switch

ロシア軍は1カ月以上にわたるウクライナでの継続的な戦闘で疲弊しており、モスクワはロシア軍の基幹部隊である大隊戦術群の75%までを紛争に投入したと西側諸国の政府当局者たちは一様に指摘している。そして、キエフ近郊で激しい戦闘が行われている中でウクライナ政府に圧力をかけることで、ロシア軍はその傷を癒し、さらに努力を重ねることができる。そしておそらく、ウクライナ軍を首都キエフから遠ざけ、東方へと誘うことができるだろう。

元国防次官補のタウンゼントは「まるで手品師のようだ。手品師は、もう片方の手で何かをしているときに、こちらを見ているように仕向けるのだ」と述べた。

アメリカとヨーロッパの各政府当局者たちは、ロシアが首都キエフへの電光石火の攻撃で必要以上の後方支援を行った後、より多くの物資を持ち込もうとしている兆候が見られると数週間前から述べている。

ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官のウォルターズ大将は、「ロシアはまた戦車部隊を強化する努力を行っている」と発言した。戦車は、アメリカが提供したジャベリン対戦車ミサイルやイギリスがウクライナに提供した同様の武器による攻撃を受けやすくなっているのだと述べている。戦略的な変化にもかかわらず、ロシアはまだ一部の軍をキエフ近郊に残しており、後に首都に対してさらなる攻撃を行うオプションを残していると当局者たちは述べた。

前述のタウンゼントは「ロシアにやって欲しくないのは、キエフからドンバスに軍を移動させることだ。そうすれば、ロシアはより弱い立場に置かれてしまうので、ロシアは再びキエフを奪還しようとするだろう。ウクライナ政府がウクライナ軍を移動させてくるかどうか、ドンバスの上に餌をぶら下げている可能性もある」と述べた。

※ジャック・デッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウントは@JackDetsch

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障分野担当記者。ツイッターアカウントは@RobbieGramer
(貼り付け終わり)
(終わり)


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