古村治彦です。

 ウクライナ戦争は「消耗戦(attrition warfare)」に進んでいる。ロシア軍はウクライナ国内の軍事物資生産拠点や輸送拠点を中心に攻撃を行っている。これによってウクライナ国内の生産能力は下がっている。ウクライナは西側諸国からの支援を要請し、西側諸国はその要請に応え、より高度な武器を供給している。一方、ロシアは経済制裁の影響もあり、物資が不足していると指摘されている。ウクライナ戦争が長期戦の様相を呈し、「消耗戦」となっている。
 消耗戦ではロシアが不利であるのはその通りだ。西側諸国による経済制裁によって必要な物資を手に入れることは難しいだろう。そうなれば消耗戦となってしまうとロシアに不利だ。そこで出てくるのが核攻撃とロシアからのエネルギー資源の輸出制限というオプションだ。ヨーロッパ諸国はロシアからの石油と天然ガスに依存している。この供給を止められると国民生活に大打撃ということになる。西側諸国が高度な武器をウクライナに供給するということはロシアから見れば「共闘者による敵対行為」ということになる。そうなれば、攻撃対象となり得るし、エネルギー資源を供給する義理もない。

 消耗戦は不毛な戦いとなる。ロシア側が何らかのカードを切れば、ヨーロッパ諸国にとっても大きな痛手となる。そうなれば敵愾心が燃え上がり、戦争はエスカレートしながら継続することになる。何とも厳しい状況が続くことになる。

(貼り付けはじめ)

ロシア軍はプーティンのウクライナ非武装化命令を文字通りに受け止めている(Russian Troops Are Taking Putin’s Orders to Demilitarize Ukraine Literally

-ロシアの攻撃はウクライナ軍が切実に必要とする重装備を生産する施設に打撃を与えている。

ジャック・デッチ、ロビー・グラマー筆

2022年5月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/04/russia-demilitarize-ukraine-arms-facilities/

ロシアは火曜日夜にウクライナ全域で大規模なミサイル攻撃を実施した。ロシア軍はウクライナ国内の武器輸送の重要な拠点である西部の都市リヴィウの鉄道分岐点を含むウクライナ全域の攻撃目標にミサイルを叩きつけた。ウクライナ政府関係者や専門家たちによると、ロシアによる大規模なミサイル攻撃はウクライナ全域の最重要な防衛生産地域の目標への攻撃を強化する可能性が高まっていると示唆している。

ロシアの攻撃は、ウクライナ軍の軍事能力を潰し、ウクライナ東部の支配をめぐる戦いでモ苦戦を続けているロシア軍部隊の立場を優位にするため、ウクライナの主要産業基地や防衛産業の重要拠点を標的にしてきた。また、ロシアが攻撃を強化しているため、ウクライナは西側諸国からのハイエンド(高度な)兵器システムへの要望を高めている。

複数のウクライナ政府関係者が本誌に語ったところによると、ロシアはキエフ近郊の対艦ミサイル施設、ハリコフのマリシェフ戦車工場、ハリコフ、マリウポリ、ミコライフの各都市の重工業団地を破壊したり、大きな被害を与えたりしているということだ。特に多連装ロケットシステム、大砲、戦車、装甲兵員輸送車などは、ロシアの攻撃により、ウクライナ側で切実に必要とされている。

前述のウクライナ政府関係者はメディア対応する権限を持っていないために匿名で続けて次のように語った。「ロシアが私たちの施設を全て破壊したため、私たちはそのような重装備が必要だ。この戦争は本格的な戦争なのだ。毎日人員や武器を失っているが、部隊を再完成させるだけのことだ」。

ロシア軍によるウクライナ全域へのミサイル攻撃は、2カ月にわたる戦争において、一連の軍事的失敗が続いた後に行った戦略の転換をいみじくも表している。ウクライナ軍の強固で効果的な抵抗もあり、ロシア軍がキエフを占領してウクライナ政府を転覆させる試みは阻止された。しかし、複数の専門家たちはウクライナの重要な防衛生産拠点を攻撃するという戦略の根本は侵攻初期段階にまで遡ることができると指摘する。ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、2月24日にロシアの本格的な侵攻が始まったドンバス地方での軍事作戦を発表した際、ウクライナの「脱ナチス化」と「非軍事化」の意図を宣言した。侵攻早々、ロシアはキエフにあるウクライナの軍用輸送機メーカー、アントノフ社の組立工場に連続攻撃を行い、2名が死亡した。

シンクタンクのCNAのロシア軍専門家マイケル・コフマンは次のように述べている。「ロシアはウクライナ国内で達成すべき目標を設定し、その目標の一部は非軍事化だと考えている。プーティンがウクライナでの2つの目標を脱ナチス化と非武装化と宣言したとき、ロシア軍はそれを文字通り受け止めた。軍産複合体の一部である主要な軍事インフラや施設を攻撃すればいいのだ、と」。

ウクライナはかつてソ連の防衛産業の中心地と考えられた。冷戦時代からの軍事生産施設が大量に残っている。ウクライナの防衛産業は国有企業に統合され、2010年以降は装甲車、固定翼機、国産対戦車兵器の開発など、ウクライナ軍への装備品供給の大部分を担ってきた。ロシア軍はウクライナの燃料基地や生産施設を攻撃する努力を続けてきた。一方、ウクライナ軍はロシア軍に対抗しロシア軍を困らせるために物資を移動させることで挑戦してきた。

CNAのロシア専門家コフマンは、ロシアは主に防衛・航空宇宙部門の一部、戦車の製造・修理、燃料・弾薬の貯蔵施設と確認できるものを攻撃したようだと述べた。あるロシア政府高官は金曜日に、ロシア軍がキエフのアルチョム宇宙ロケット工場を破壊したと主張したが、ある米国防総省高官とウクライナ当局者たちはこれに反論し、ウクライナの首都に対する巡航ミサイル攻撃は工場ではなく住宅地を攻撃し、ジャーナリスト1人が死亡したと指摘した。

ロシアによる大規模な侵攻は、モスクワにとって急速に軍事的な泥沼に陥った。モスクワは、数日のうちにキエフを占領し、ウクライナの抵抗をほとんど受けずに親ロシア政権を樹立することを期待していたと伝えられている。コフマンによれば、ウクライナ人は基本的な機器の修理や点検はできるだろうが、ロシアが占領・包囲している地域の軍事・産業施設にはほとんど対応できない。例えば、アゾフ海沿岸のマリウポリのアゾフスタル製鉄所では、ロシア軍が迷路状の施設を襲撃しているため、数百人の市民が閉じ込められたままになっていると報道されている。

しかし、ロシアがウクライナの防衛産業への攻撃を強化することは、ロシア軍が自国の軍隊、物資、弾薬の在庫を消耗し、西側諸国がロシアの侵略を圧し戻すためにウクライナへの軍事支援を強化する中で、より長引く消耗戦となった戦争を優位に進める意図を示すことにもなる。

米国防総省のある高官は国防総省が定めた基本規則に基づいて匿名を条件で次のように語った。「ロシアがやろうとしていることは、ウクライナが自国の物資を補充し、自国を強化する能力を奪うことだと考えている。例えば、電力施設への攻撃が試みられている。おそらくロシア側は、電力を遮断すれば、列車の移動能力に影響を与えることができると考えているのだろう」。

ロシアは精密誘導弾が不足しており、西側による大規模な制裁によって世界の供給チェインから切り離されているため、ロシア軍の軍需品を補充するのに苦労しているだろう。

元ヨーロッパ駐留アメリカ軍司令官で現在はワシントンにあるシンクタンクのヨーロッパ政策分析センターで戦略研究のパーシング講座を担当するベン・ホッジスは次のように語っている。「ロシアがこの消耗戦の段階に入ると、ロシアの防衛産業は制裁のために精密弾薬を作ることさえできなくなる。少なくとも、ウクライナの新しい軍事物資を生産する能力を低下させようとするだろう」。

ホッジスはまた、ロシアがウクライナの防衛産業を標的にした攻撃を行っても、戦争に決定的な優位性を与えることはないだろうと持述べた。

ホッジスは「この消耗戦では、ロシアがいつまでこれを維持できるかに絞られる。彼らは無限の供給能力を持っているわけではない」。

※ジャック・デッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障記者。ツイッターアカウントは@JackDetsch

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・安全保障担当記者。ツイッターアカウントは @RobbieGramer
(貼り付け終わり)

(終わり)

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