古村治彦です。
 世界が「西側世界(the West)対それ以外の世界(the Rest)」に分断していることがウクライナ戦争によって明らかにされた。ここで重要なのは大きな戦争を起こさないことだ。ウクライナ戦争から更に大きな戦争に向かう流れを遮断することだ。ここで重要なのは、「米中G-2Group of Two)」という考え方だ。G-2という考え方は一時期喧伝されたが、米中対立激化によって話題にされることが少なくなった。
 「西側対それ以外」の2つの陣営のリーダーはそれぞれアメリカと中国だ。西側は衰退を続け、それ以外の国々は成長を続けており、近い将来に力関係は大きく変化することになるだろう。成長と発展が止まった旧先進国とそれ以外ということになるだろう。世界の構造は大きく変化していく。こうした変化に伴って世界は不安定化していく。そうなれば世界全体で安全と平和を確保することが難しくなっていく。小さな戦争が頻発するということにもなりかねない。それが大きな戦争につながるということも出てくるだろう。

 こうした悪い方向への変化を抑制するために、米中G-2による世界管理が必要である。中国がここまで大きくなり、BRICsを中心とする発展途上諸国も力をつけている中で、これまでのようなアメリカ一極の世界管理、西側諸国中心の世界構造には限界が近づいている。私たちは自分たちの考え方、世界観を大きく変えねばならない。

 今回のウクライナ戦争はG-2を機能させるためのタイミングとなる。戦争当事国であるウクライナとロシアに対して、まずは停戦、それからお互いが譲り合えるポイントを探り、和平交渉を行えるようにし、講和条約を締結して平和を回復できるようにする。そのためには、ウクライナとロシアが属しているグループのそれぞれのリーダーである米中が出てこなければ済まない。中国は目立つようなことはあまりしたくないだろうが、米中G-2時代を確立するためにはここが1つのタイミングということになる。停戦と戦争が与える経済への悪影響の払しょくのために米中両国の果たすべき役割は大きい。
(貼り付けはじめ)
ウクライナにとってのG-2時代を理解する(Grasping the G-2 moment for Ukraine

ジーチュン・ジュー筆

2022年49

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/congress-blog/3263053-grasping-the-g-2-moment-for-ukraine/

ウクライナで展開されている人道上の災厄を止めるために、イスラエルやトルコなど一部の国が仲介を試みている。しかし、実際に戦争終結に貢献できるのは、アメリカと中国という二大超大国だけだ。

ワシントンと北京の政策は結果的であり、ウクライナ戦争の結果を形成する。3月18日に行われたジョー・バイデンと習近平のヴィデオ通話は、正しい方向への一歩と言える。両首脳は外交的解決への支持を表明したが、具体的な方策の提示には至らなかった。今こそ、取り組みを強化し、関係者全てを交渉のテーブルに着かせるべきだろう。

グループ・オブ・ツー((Group of Two)、いわゆるG-2は、2005年に経済学者のC・フレッド・バーグステンが提唱した概念で、中国の世界貿易機関(WTO)加盟後、中国経済が拡大する中で、アメリカと中国の経済関係を説明するためのものだ。この概念は、現代世界における米中関係の中心性を認識する用語として、外交政策分野で一定の評価を得た。元国家安全保障問題担当大統領補佐官ズビグニュー・ブレジンスキー、歴史学者のナイオール・ファーガソン、元世界銀行総裁ロバート・ゼーリック、林義豪経済学者のジャスティン・イーフー・リンなどがG-2を評価し、唱導した。G-2の協力体制は、世界経済を安定させるだけでなく、国際安全保障にも貢献すると期待されていた。

2010年、中国経済は日本を抜いて経済規模で世界第2位となり、アメリカとの差が縮まった。中国の習近平が政権を握り、バラク・オバマ大統領が2期目を迎える頃には、米中関係の力学は変化していた。アメリカは、中国の急速な台頭に対応するため、「ピボット(pivot)」政策またはアジアへの戦略的重点の再調整を決定した。中国はアメリカの利益に対する挑戦であり、脅威であるとさえ見なされるようになった。二国間関係がより競争的になるにつれて、G-2 のコンセプトは静かに消えていった。

今日、G-2を復活させるべき時が来ている。それは、アメリカと中国が和解して世界の諸問題についての解決に関する考えが一致したからではない。米中二大国が世界を脅かすウクライナ危機を協力して直ちに食い止めなければならないからだ。

ロシアによる主権国家への正当な理由なき侵略は正当化できない。しかし、ジョージ・ケナン、ヘンリー・キッシンジャー、ジョン・ミアシャイマーなど多くの人々が指摘しているように、冷戦後、NATOの東方拡大に対するロシアの深刻な懸念をワシントンが無視したことが災いのもととなったのだ。つまり、アメリカは少なくとも部分的にはこの危機に責任があることは間違いなく、その汚名を晴らすために何か建設的なことをしなければならない。

ロシアのウクライナ戦争は、中国が最も大切にしている外交原則の1つである主権と領土の一体性の尊重の原則に反するものでもある。中国最高指導部はロシアの残忍な侵攻に驚かされたと伝えられている。中国はロシアの侵攻を支持せず、ロシアに関する国連決議にも棄権した。中露関係には「限界はない」と喧伝されているが、そこには国連憲章で定められた信条と原則という底辺がある。中国は平和的で責任ある大国であることを公約している。今こそ中国が輝く時である。

ウクライナ紛争を解決するために、中国は内外の制約を受けている。中国が調停に関心を示している以上、西側諸国、特に米国から何らかの励ましと誘惑があれば、中国がより深く関与する決断を下すのに役立つだろう。そのような前向きな姿勢には、中国の積極的な外交の結果、危機が終結すれば、中西部の関係は大幅に改善されるという北京への再保証が含まれる。制裁の脅威を振りかざしたり、公然と北京に圧力をかけたりすることは逆効果である。

China faces internal and external constraints for leading the efforts to end the Ukraine war. Since China has expressed interest in mediation, some encouragement and enticement from the West, particularly the United States, would be conducive to China’s decision to get more deeply involved. Such positive gestures could include reassurance to Beijing that relations between China and the West will significantly improve if the crisis is brought to an end as a result of active Chinese diplomacy. Brandishing threats of sanctions or publicly pressuring Beijing is counterproductive.

ヨーロッパ地域における戦争は、世界経済に深刻な打撃を与え、エネルギー価格は高騰している。ロシアもウクライナも今すぐ紛争から脱却するための出口が必要である。アメリカと中国は、世界の利益を第一に考えるべきだ。2000年代の北朝鮮に関する6カ国協議での協力や、2021年11月のグラスゴーでの気候変動に関する合意など、以前は両国の相違が大きな課題への協力を阻むことはなかった。

今こそバイデンと習近平は、それぞれNATOとプーティンに対する並々ならぬ影響力を行使して、紛争の実行可能な解決策を描くべき時である。アメリカと中国が主導する複数の関係国が参加するプラットフォームは、ロシアの安全保障上の懸念に配慮しつつ、ウクライナの主権を確保する、相互に受け入れ可能な解決策を見出すことを目指すべきだろう。アメリカと中国は、そのような結果に対する共同保証を提供し、ウクライナとロシアの戦後復興を支援する必要がある。双方の犠牲者が日々増えている今、逡巡している時間はない。

これこそがまさにG-2が輝く瞬間だ。バイデンも習近平もタイミングを逃してはならない。

※ジーチュン・ジュー:ペンシルヴァニア州バックネル大学政治学・国際関係論教授。

(貼り付け終わり)
(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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