古村治彦です。

 日本国内でも様々な商品の値上げ、内容量の削減が続いている。政府は物価高騰対策に躍起となっている。その大きな原因は石油価格の高騰であるが、世界規模での食糧供給にもウクライナ戦争が影響を与えている。ウクライナは世界有数の食糧輸出国である。ソヴィエト連邦の急速な近代化、五か年計画のために、その資金と労働者への食糧確保のために、ウクライナの農民たちが収奪され飢饉が発生したことは歴史の悲しい事実だ。ウクライナの農業生産力がソ連をあれほどの大国に押し上げたということになる。ソ連加盟時代には重工業化も進められ、生産力という点でウクライナという国は大きな可能性を秘めている国、大国になる可能性のある国と言われ続けてきた。

 ウクライナからの穀物輸出に依存している国々は多い。そのウクライナから収穫された穀物が輸出できないという状態が続いている。ウクライナ戦争によってロシアの艦船による黒海封鎖が実施されているためだ。ウクライナから輸出される穀物はそのほとんどは黒海沿岸の港湾から船で出荷されてきた。しかし、黒海がロシア海軍によって封鎖されてしまうと、ウクライナからの穀物は輸出できなくなる。戦争中ではあるが、ウクライナ国内では例年の80パーセントの作付けがなされたということだ。ウクライナでは年に2回小麦が収穫できるということだが、それらが輸出できないということになると、世界の食糧供給に大きな影響を与えることになる。

 船で輸出できないということで、ウクライナ国内の小麦を鉄道でヨーロッパ各国に運んで、各国の港から輸出するという案も検討されているようだが、鉄道の幅が違うこと、コストとリスクの高さのために実現は難しいと見られている。また、ロシア海軍の黒海封鎖に対抗してヨーロッパ各国の有志諸国が海軍を出すという提案もなされているが、そうなればロシアと直接対峙することになるという危険もありこの話も進んでいない。

 西側諸国による対ロシア経済制裁はロシア側には打撃であるが、西側諸国にもまた深刻な影響を及ぼしている。遠く離れた日本でも影響が出ている。ここは早期の停戦ということも真剣に検討されるべきだ。しかし、状況はそうはいかないようだ。ウクライナ側はこの戦争を利用してクリミアとウクライナ東部を完全に回復しようと考えているようだ。そうなれば戦争はますます泥沼化していく。西側諸国はより高度な武器をウクライナに供給せざるを得なくなるが、そうなれば共闘者扱いでロシアからの攻撃のリスクも高まる。第三次世界大戦ということにもなりかねない。そうしたことにならないように、是非早期の停戦をとこれまでと同様に繰り返して訴える。

(貼り付けはじめ)

ロシアによる黒海封鎖は世界の食糧危機を加速させる(Russia’s Black Sea Blockade Will Turbocharge the Global Food Crisis

-リトアニアは、ロシアによるウクライナの輸出制限を打破するために海軍連合創設を呼びかけたが、まだ取り上げられていない。

ロビー・グラマー、クリスティアン・リュー、メアリー・ヤン筆

2022年5月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/24/russia-ukraine-blockade-food-crisis-black-sea/

ウクライナにおけるロシアの地上戦が停滞する中、ロシア海軍の艦艇が黒海で純緒に前進し、ウクライナの海岸線を掌握して内陸部の目標への攻撃を可能にし、ウクライナの輸出を封鎖する試みを強化している。

現在、西側諸国はロシアによる封鎖を解除し、戦争で揺れた世界の商品・農産物市場の緊張を和らげる方法を見つけようと躍起になっている。ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯(breadbasket of Europe)」と呼ばれ、世界全体で約4億人を養っている。そして、数多くの発展途上諸国に対するトップの穀物供給国である。そうした国々の中には、また、ロシアが2月末にウクライナへの侵攻を開始して以来、政治的に不安定な中東やアフリカ諸国が含まれている。これらの国々では食料価格が高騰している。

時計の針は刻々と進んでいる。あと2ヶ月で今シーズン最初の収穫を迎える。ロシアの封鎖が続けば、現在ウクライナの港に滞留している数千万トンの穀物の多くが出荷できなくなる。

今月、国連世界食糧計画(U.N. World Food ProgramWFP)デイヴィッド・ビーズリー代表は次のように警告した。「港を開放し、使えるようにする必要がある。さもなければ、大惨事の上に大惨事を重ねることになる。このことが、世界中の最も貧しい人々にどれほどの打撃を与えることになるのか、信じがたいことが起きる」。

NATOとヨーロッパ連合(EU)の加盟国であるリトアニアは、封鎖されたウクライナの穀物を満載した貨物船を安全に護衛し、ロシアの軍艦をかわして黒海を通過し、海上貿易ルートにアクセスするために、各国の海軍の「有志連合(coalition of the willing)」の結成を提案している。他のNATO加盟諸国がこの計画に署名するかどうかは不透明だ。ほとんどのNATO加盟諸国はウクライナに軍事物資を送っているが、NATOとロシアの対立を誘発するような事態を避けるため、貨物船の護衛とはいえ、自国軍を紛争に直接巻き込むことには慎重である。

このような計画は、1936年の「海峡の規制に関するモントルー条約」に基づいて、黒海の出入口と通過できる艦艇の数を管理するNATOの同盟国であるトルコの承認も必要となるだろう。

同時に、EU加盟諸国は、ウクライナの穀物供給を、西ヨーロッパを経由して鉄道で輸送して、ヨーロッパの他の港に陸送する代替ルートを計画している。しかし、この計画は論理的に実行が難しく、コストも高くつく。ウクライナの鉄道は他のEU加盟諸国と異なるゲージを使用しており、ウクライナの国境でチョークポイントを作り出している。

国際食糧政策研究所の上級研究員ジョセフ・グラウバーは次のように述べている。「ウクライナ国外に穀物を出荷させようとする誘因は十分にある。しかし、システムは上流に向かうようにできておらず、全て港に向かうように構築されている」。

また、そのように鉄道を使ってヨーロッパ各国に送るようにしても、ウクライナ戦争勃発前にウクライナの黒海沿岸の各港から出荷された輸出量を補うことは不可能だ。グラウバーは「通常ウクライナから輸出される穀物の大部分は黒海沿岸の各港から船によって輸出されている。また、一部はアゾフ海沿岸のウクライナ東部の港からも輸出されている。アゾフ海は黒海の一部だ」と述べている。

食糧危機の到来を告げる警告にもかかわらず、ロシアは国連や西側諸国による封鎖解除の要請を無視し、代わりに食糧危機を悪化させた西側による対露経済制裁に責任があると主張している。

NATO加盟諸国の中には、ロシアの海上封鎖を突破するために、ウクライナ海軍を支援する取り組みを強化し始めたところもある。ロイド・オースティン米国防長官は月曜日、デンマークが長距離対艦ミサイルシステム「ハープーン」をウクライナに送ることを発表した。この動きは、現在ウクライナの港を封鎖しているロシアの軍艦を危険に晒す可能性がある。ロシア海軍は4月に旗艦「モスクワ」が沈没するなど、既に大きな挫折を経験している。

しかし、これらの新しい防衛資産が、ロシアの海上封鎖を完全に撤回したり、ウクライナの重要な港湾都市オデッサに対するロシアの攻撃回数を緩和したりして、ウクライナの輸出供給ラインを安全に復活させるのに十分であるかどうかは不透明だ。更に、戦争の影響で黒海の海上保険料が高騰しているため、ロシアによる海上封鎖に亀裂が生じたとしても、商船がウクライナの港に寄港しなくなる可能性もある。

ウクライナ産の小麦は、多くの国の主要食糧であり、年に2回収穫される。ロシアの封鎖によって輸出がストップすれば、今収穫を迎えている作物を簡単かつ迅速に補充することはできない。昨年、ウクライナは約2000万トンの小麦を輸出したが、これは専門家が予測する今年の小麦の総収穫量にほぼ匹敵する。

ウクライナの港湾封鎖は、今後何年にもわたって世界の食糧供給に影響を与える可能性がある。戦争にもかかわらず、ウクライナの農家はこの春、例年の80パーセントの耕作地で小麦を植えることができたと推定されている。2シーズン分の穀物輸出が今、ロシアの封鎖によって縛られる可能性があるという見通しが立っている。

国際通貨基金(IMF)のオルタナティブ・エグゼクティブ・ディレクターで、以前はウクライナ国立銀行の副総裁を務めたウラディスラフ・ラシュコバンは次のように語っている。「私たちは前回の収穫について話している。そしてこれは、最も低所得の国々において、食料価格の上昇と食料不足を引き起こすことになるだろう」。

それは、ウクライナの小麦だけのことではない。ウクライナとロシアを合わせると、世界の大麦生産の3分の1近く、ひまわり油の輸出の半分を占めている。更には、ロシアと隣国のベラルーシは、ウラジミール・プーティン大統領の戦争を仕組んだ共犯者であり、農業用の重要な肥料成分であるカリの世界的な生産国である。両国は現在、戦争の資金源を断つため、国際的な制裁措置と輸出禁止措置に直面している。

世界の農業と気候の動向をテクノロジーで追跡するソフトウェア会社「グロ・インテリジェンス」上級副社長、スティーヴ・マシューズは次のように述べている。「ソヴィエト連邦が崩壊して以来の過去30年間、ウクライナ、ロシア、そして旧ソヴィエト諸国における農業生産性は急上昇を続けてきた。人々はその生産に依存するようになり、突然その生産が停止されると、多くの問題が発生することになる」。

主要供給国からの輸出が途絶えたことで、他の潜在的輸出国にも間接的な影響を及ぼしており、彼らは更なる食糧不足に備えて国産の穀物を備蓄している。例えば、インドは最近、小麦の価格が上昇し、記録的な猛暑に見舞われたため、小麦の輸出を禁止した。このような傾向は、穀物価格をさらに上昇させている。世界銀行の4月の報告書によると、小麦の価格は今年40%以上上昇し、インフレ調整前の名目ベースで過去最高を記録すると予測されている。

封鎖が続く限り、その影響はウクライナの次の収穫にまで及ぶ可能性があると専門家は警告を発している。ウクライナの穀物倉庫が満杯のままであり、十分な臨時貯蔵施設を確保できない場合、同国の次の収穫は貯蔵不能になる可能性がある。

シカゴ国際問題評議会の著名な研究員で、国連世界食糧計画の前事務局長であるエルサリン・コーシンは次のように述べた。「保管場所も輸送手段もないため、次の収穫で大きな食糧損失が発生する可能性がある。そうなれば、ウクライナ国内での収穫は1回だけでなく2回分も失われることになる」。

エイミー・マキノンがこの記事に貢献している。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウントは@RobbieGramer

※クリスティアン・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌編集員。ツイッターアカウントは

@christinafei

※メアリー・ヤン:『フォーリン・ポリシー』誌インターン。ツイッターアカウントは@MaryRanYang

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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