古村治彦です。

 私が著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』を出してから1年が経過した。この本の1章で私は、バイデン政権の外交・安全保障関係の高官たちの分析を行った。特に重要な人物だと考えたのは、コンサルタント会社「ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社」の創設者であるミッシェル・フロノイ元国防次官だ。ウエストエグゼク社には、現在のジョー・バイデン政権の高官たちが多数在籍していた。アントニー・ブリンケン国務長官は共同創設者である。その他には、ロバート・O・ワーク国防副長官、アヴリル・ヘインズ国家情報長官、ホワイトハウス報道官ジェン・サキ、イーライ・ライトナー国防長官特別補佐官が在籍していた。
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 このウエストエグゼク社を広報会社テネオ社が買収するという話が出ており、合意間近だということだ。テネオ社は創業者が不祥事で辞任して先行き不透明と言いながら、利益は出ており、事業拡大のための買収ということだそうだ。ウエストエグゼク社に在籍していた人物たちがバイデン政権の高官になっているということも買収にとっては大きなポイントになっているということも考えられる。

 今年の3月にジョー・バイデン大統領が台湾に送った代表団の中に、ミッシェル・フロノイが入っていた。下の記事にある写真では右から2番目に写っている。フロノイの隣、右端に写っているのは、ジョージタウン大学教授マイケル・グリーンである。

 この2つの話から、ミッシェル・フロノイがバイデン政権においても重要な役割を果たしていること、更に言えば中間選挙後のバイデン政権1期目後半にはフロノイが政権入りするのではないか、具体的には国防次官もしくは国家安全保障会議に重要メンバーとして入るのではないかと考えている。

 フロノイと共にグリーンが台湾への代表団に入っていたのは気になるところだ。ホワイトハウスの国家安全保障会議でアジア担当上級部長を務めた経歴からの代表団入りだと考えられる。ウクライナ戦争勃発後に、グリーンは「台湾はウクライナだ」という主張を展開していた。フロノイとグリーンが台湾を訪問したということは、台湾への武器売り込みや対中強硬姿勢の確認ということもあったと考えられる。こうした人物たちの暗躍によって、アジア地域における安全環境が乱されるのはどの国にとっても利益とはならない。

 しかしながら、現状のアメリカではアジア地域で戦争が起きてもきちんとした対応はできない。2つの戦争を支えるだけの力はない。そう考えると、本気でぶつかるということではなく、武器を売り込んでアメリカの軍需産業の利益を少しでも上げようということになるのだろう。

 中間選挙後にバイデン政権がどのような動きをするかということを注視する必要がある。

(貼り付けはじめ)

アドヴァイザリー企業テネオ社がウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社買収間近となっている(Advisory Firm Teneo Near Deal to Buy WestExec Advisors

-合意によってテネオ社は地政学的、政策的コンサルタント業務へ専門分野を拡大することになるだろう。

カラ・ロンバルド筆

2022年6月7日

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

https://www.wsj.com/articles/advisory-firm-teneo-near-deal-to-buy-westexec-advisors-11654644028

テネオ・ホールディングス・LLCTeneo Holdings LLC)は地政学および政策分野でのコンサルティングの焦点を拡大するアドヴァイザー企業の買収合意間近となっている。有名な広報企業テネオ社がこうした分野に拡大することになる。

テネオ社は、ワシントンD.C.に本社を置くウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社(WestExec Advisors)の株式の過半数を購入する契約を、早ければ水曜日に締結する可能性がある。この問題に詳しい関係者はこのように述べている。

およそ1年前、テネオ社の創業者であるデクラン・ケリーが、チャリティーイヴェントでの泥酔による不品行が報じられ、最終的に辞任したことで、テネオ社の将来は不安定な状態に陥っていた。

テネオ社は2021年に5億ドル近い売上を計上し、今年も約10%の成長を見込んでいると同社の関係者たちは述べている。従業員数は約600人増の約1500人で、増加分の約半分はイギリス・デロイト社リストラクチャリング事業を買収したことによるものだ。

ウエストエグゼク社はオバマ政権高官だったミッシェル・フロノイ(Michèle Flournoy)、セルジオ・アグリア(Sergio Aguirre)、ナイティン・チャッダ(Nitin Chadda)によって創設された。ウエストエグゼク社には約40名のスタッフがおり、貿易などの政策や地政学的な諸問題について、顧客の企業が理解し、ビジネス上の意思決定に役立てることを専門としている。特に、安全保障・防衛産業を専門としている。

テネオ社は2021年にウエストエグゼク社に対してマイノリティ投資(過半数の株式を所有しない投資)を行った。ウエストエグゼク社の社名は「ウエスト・エグゼクティヴ・アヴェニュー」から来ている。同社のウェブサイトによると、この通りは、ホワイトハウスの大統領執務室(ウエストウィング)に向かうための一般には閉鎖されている通りである。

テネオ社とウエストエグゼク社のような企業は、アメリカや世界の各企業に対して、舞台裏で影響力を発揮し、取締役会や経営幹部に対して事業戦略やコミュニケーションに関する指導を行っている。中国との緊張の高まりやロシアによるウクライナ戦争など、世界規模で予測すべき、そして対応すべき不安定な政治情勢が絶えない状況下で、こうした企業のサーヴィスに対する需要は高まっている。

広報会社サード・ヴァービネン社は最近、ライヴァルのフィンスブリー・グローヴァー・はーリング社と合併し、FGSグローバル社という大企業になった。

テネオ社は2011年にケリーがクリントン大統領時代のホワイトハウスに勤務したダグ・バンド、元コンサルティング会社のポール・ケアリー(現在は最高経営責任者)と共同で設立し、PR業界に参入した。テネオは、ゼネラル・エレクトリック社やコカ・コーラ社などの顧客企業に助言を行い、リスク・アドバイザリーからエグゼクティヴ・サーチに至るまで、あらゆる分野に焦点を当てた様々な部門を持つまでに成長した。

テネオ社の急成長は、同社にとって長年の「顔」であり続け、最大の利益を生み出す存在であったケリーが、2021年5月に慈善団体「グローバル・シティズン」が主催した有名人が参加したイヴェントで不適切な行動をとり、辞職したことによって脅かされることになった。ケリーは持ち株を売却してテネオ社とは無関係になり、その後、アメリカン・フットボールのスター選手トム・ブレイディをパートナーに迎えた新会社「コンセロ・LLC社」を創設した。

プライヴェート・イクィティ企業であるCVCキャピタル・パートナーズ社は2019年からテネオ社の最大株主となっている。

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●「バイデン米大統領が派遣する代表団、台湾に到着」

発信日: 2022/03/02

『タイワン・トルディ』紙

https://jp.taiwantoday.tw/news.php?unit=148,149,150,151,152&post=215628

アメリカのバイデン大統領の指示を受けた代表団が1日、専用機で台湾に到着した。マイケル・マレン元統合参謀本部議長(右から3人目)が率いる代表団で、メンバーはほかに、ミシェル・フロノイ元国防次官(右から2人目)、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(中央)、国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏(右)とエバン・メデイロス氏(左から4人目)。空港では外交部の呉釗燮部長(右から4人目)が一行を出迎えた。(外交部)

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アメリカのバイデン大統領が派遣する代表団が1日、専用機で台湾に到着した。マイケル・マレン元統合参謀本部議長が率いる代表団で、メンバーはほかに、ミシェル・フロノイ元国防次官、メーガン・オサリバン元大統領副補佐官(国家安全保障担当)、それに国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めたマイケル・グリーン氏とエバン・メデイロス氏。

外交部の呉釗燮部長(=外相)は1日午後、中華民国政府を代表し、松山空港(台湾北部・台北市)で一行を出迎えた。訪問団一行は2日まで台湾に滞在し、蔡英文総統、頼清徳副総統、行政院の蘇貞昌院長(=首相)、国防部の邱国正部長(=国防相)などと会見する。また、外交部の呉釗燮部長が昼に、蔡英文総統が夜に設宴して一行をもてなす。双方は、台米関係に係る重要な議題について意見を交換するとしている。

マレン氏は2007年から2011年にかけて米統合参謀本部議長を務めるなど、豊富な軍事経験を持つ。フロノイ氏は2014年と2015年の2回にわたり、新アメリカ安全保障センター(CNAS)の「NextGenプログラム(Next Generation National Security Leaders Program)」の訪問団を率いて台湾を訪れたことがある。オサリバン氏は現在、ハーバード大学で教鞭をとっているが、2004年から2007年まで、ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)でイラク及びアフガン問題を担当した。グリーン氏とメデイロス氏はそれぞれ、ブッシュ政権とオバマ政権下で、国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長を務め、台湾問題を担当した。いずれも何度か台湾を訪問したことがある。バイデン政権が台湾に派遣したこの訪問団は、民主党及び共和党に属する政府元高官から構成されており、米国が与野党を問わず台湾問題に関して高いコンセンサスを持っていることと、台湾への揺るぎない支持を見て取ることができる。

バイデン政権が代表団を台湾に派遣するのは、昨年4月のクリス・ドッド元上院議員以来、2回目のこと。外交部は1日に発表したニュースリリースで、「ウクライナ情勢が緊迫する中、バイデン政権が再び重量級の代表団を台湾に派遣したことは、米国の台湾に対する一貫した支持と重視と、米国の台湾に対する約束が『盤石(rock-solid)』であることを改めて示すものだ。マレン氏の訪台を通して、米国政府と緊密な協力を維持する方法を模索し、台米の緊密なパートナーシップを一層強化したい」と述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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