古村治彦です。

 ウクライナ戦争が始まって4カ月近くが経過した。ウクライナには欧米諸国から多額の資金援助、物資援助、軍事援助がなされている。武器のグレードが挙がり、ハイエンド(高度)な武器が供給されることで、戦争は停戦には向かわず、ロシアとの全面戦争という様相を強めている。戦争は容易に終了しないということだ。

 アメリカ政府の各機関はウクライナにどのような資金を提供しているのかということを紹介している記事があったので紹介する。ウクライナにはそこまでの資金がないので、欧米諸国の金で戦争を継続しているということになる。その原資は欧米諸国の国民の税金だ。軍事費となると途端に制限なくじゃんじゃん使えるようになるというのがアメリカの特徴だ。税金(と国債で賄っている資金)が湯水のごとくに投入されている。それに対して反対することは難しい。批判をすれば「国防は最重要だ」「アメリカが世界の秩序を守っている」「非国民」と言った悪罵を投げつけられるだろう。

 しかし、一方で、「どこまで続くぬかるみぞ」ということもある。欧米諸国の一般国民の生活は、エネルギー高もあり、高いインフレ率で苦しくなっている。インフレ率よりも高い給与の上昇があればなんということもないが、インフレ下ではそのようなことはない。日本の高度経済成長期のように毎年経済成長率が10%以上ということであれば給料もどんどん上がっていくだろうが、そんな国は今世界には存在しない(中国が新型コロナウイルス感染拡大まではそれに近かった)。「いつまで私たちの税金からウクライナ支援を続けるのか」「私たちの生活への支援はないのか」ということになる。

 最新の調査の結果では、ウクライナ支援が全体で11兆円、その内の上位3カ国は55%がアメリカ(約6兆円)、6%がイギリス(約6600億円)、4%がドイツ(約4400億円)である。アメリカが突出し過ぎている。ヨーロッパの大国だと威張っているイギリスとドイツが合わせてようやく1兆円である。ウクライナ戦争を支えているのはアメリカで、威勢のいいことばかりを言う口先番長はイギリスということになる。大英帝国だと威張ってみてもこの体たらくだ。それでいて、イギリスのボリス・ジョンソン首相は「戦争疲れが起きている」と述べている。

 ドナルド・トランプ政権を誕生させたアメリカ国民は思うだろう。「アフガニスタンからの撤退では混乱があったがまぁ良かった。だけど今度はウクライナかよ。ヨーロッパのことはヨーロッパで解決してくれ。アメリカがそんなに資金を出さなくちゃいかんのか。どこまで続くぬかるみか」。

 ロシアは経済制裁を受けてはいるが、対中、対印の石油輸出増加で、戦費を上回る収入を得ている。西側の対ロシア包囲網は破綻しつつある。これではいつまでウクライナ戦争を「続けさせる」ことができるのかということが焦点になってくる。良い条件の時に停戦しなかったことは何とも悔やまれるが、今からでも遅くはない。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ支援額、アメリカが5割超…日本は0・7%で7位

読売新聞

2022/06/20 23:41

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220620-OYT1T50018/

 【ロンドン=池田慶太、ワシントン=田島大志】ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナに対し、西側諸国が表明した支援額の5割超を米国だけで占めることが、ドイツの調査研究機関「キール世界経済研究所」の集計でわかった。各国が約束した支援が滞っている実態も判明しており、迅速な実行が課題となっている。

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日本は7位

 キール研究所は、先進7か国(G7)や欧州など37か国と欧州連合(EU)を対象に、侵攻開始1か月前の1月24日から6月7日までに表明された軍事・財政・人道分野の支援額を集計、比較した。

 各国の支援総額は783億ユーロ(約11兆円)に上り、国別では米国が427億ユーロ(55%)、英国48億ユーロ(6%)、ドイツ33億ユーロ(4%)などと続いた。日本は6億ユーロ(0・7%)で7位だった。

 米国は射程の長い 榴弾りゅうだん 砲や、高機動ロケット砲システム(HIMARS)など最新兵器の支援を次々と表明している。軍事物資購入に充てる資金援助を含めた軍事分野の支援額(240億ユーロ=約3・4兆円)は、日本の今年度防衛予算(5・4兆円)の半分を超える。

到着遅れ課題

 だが、兵器・弾薬支援の遅れも目立つ。キール研究所が公開情報を分析したところ、ウクライナに実際に届いた米国の兵器・弾薬は、約束した分の48%(金額ベース)にすぎず、ドイツはさらに低い35%だった。37か国全体でも69%にとどまるという。

また、ウクライナ政府に対する財政支援は総額309億ユーロが約束されたものの、支払われたのは2割弱だった。軍事侵攻の長期化はウクライナ財政を圧迫しており、国際通貨基金(IMF)は、兵士の給与や年金の支払いで毎月50億ユーロの外部資金が必要だと指摘する。支援がさらに遅れれば、政府機能がマヒしかねない。

限界指摘も

 国内総生産(GDP)比でみると、支援額では13位(2億ユーロ)のエストニアが0・87%と最も高く、ロシアと地理的に近い東欧、バルト諸国が上位を占めた。特にポーランドは、支援額が米英独に続く4位(GDP比では3位)で、ウクライナから多くの難民も受け入れており、貢献が際立っている。

 対照的に独仏伊は対GDP比では0・1%未満と低い。EUと加盟27か国の支援額を合わせても、米国の7割に届かない。キール研究所は「米国の支援が、激しい戦闘が間近で起きているEU加盟国の総額を上回るのは驚くべきことだ」と指摘する。

 ウクライナ侵攻以来、世界のエネルギー、食糧価格の高騰が各国の財政を直撃する中、支援をいつまで続けられるかも議論され始めた。英国のジョンソン首相は18日、地元メディアに「世界各地で『ウクライナ疲れ』が起き始めていることは懸念だ」と語った。米国でも、国内のインフレを背景に、支援の限界を指摘する声が出ている。

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ウクライナ国内でアメリカからの資金が流れている場所はここだ(Here’s where US money is flowing in Ukraine

ブラッド・ドレス筆

2022年4月28日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/finance/3469118-heres-where-us-money-is-flowing-in-ukraine/

ロシアが2022年2月24日にウクライナへの侵攻を開始して以来、アメリカはいくつかの同盟諸国とともに、ウクライナ国民とウクライナ軍を支援するためにさまざまな形での支援を約束してきた。

アメリカは3月にウクライナへの経済、人道、軍事支援として136億ドルのパッケージを承認した後、ウクライナにとっての最大の支援者となったが、現在ではほぼ使い果たされている。

バイデン大統領は木曜日、9月までのウクライナ支援のため、連邦議会の承認が必要な330億ドルの追加パッケージを要求した。

これまでに承認されて支出されたアメリカ・ドルは、ウクライナの経済と国民を支援し、首都キエフ周辺のロシア軍を食い止める手段をウクライナ軍に与えることで、ウクライナを後押ししている。

これまでに承認された資金の内訳とウクライナ支援のために使われる場所は以下の通りだ。

●軍事・安全保障(Military/Security

ウクライナに提供されたアメリカの資金の大部分は軍事・防衛費に割り当てられている。

ジョー・バイデン政権は大統領就任以来、ウクライナへの安全保障支援に40億ドルを支出したが、この中にはロシアの侵攻以来34億ドルも含まれている。さらに30億ドルがアメリカ軍のヨーロッパ司令部の作戦に承認された。

米国防総省はヘリコプター、対空ミサイル、榴弾砲など、様々な軍備や兵器をウクライナに提供してきた。

■軍事車両(Military vehicles

4月22日現在、ウクライナには155mm榴弾砲を牽引する戦術車72台、Mi-17ヘリコプター16台、装甲多目的車数百台、M113装甲兵員輸送車200台、無人沿岸防衛船などが供給されている。

■装備と武器(Equipment and arms

1400以上の対空システム、2万以上の対装甲システム、700台以上のスイッチブレイド・ドローン、90台の155mm砲榴弾砲が安全保障支援に含まれている。

また、7000丁の小火器と5000万発以上の弾薬、7万5000セットの防護服とヘルメット、レーザー誘導ロケットシステム、レーダー、C-4爆薬も含まれている。

■その他(Other

通信システム、暗視装置、衛星画像サーヴィス、生物・核・放射性物質防護装置が供与されている。

●経済(Economy

これまでに承認された10億ドルの経済安全保障支援は、ウクライナの様々な部門に流れ込んでいる。

バイデンは、資金がウクライナ国内の地元の共同体や労働者に向けられていることを強調している。

バイデン大統領は4月21日、「これはウクライナ政府が経済の安定を助け、ロシアの猛攻撃によって荒廃した地域社会を支援し、ウクライナの人々に不可欠なサーヴィスを提供し続けている勇敢な労働者に支払うために使える資金だ」と述べた。

ジャネット・イエレン米財務長官は、経済援助は従業員の給与や年金を支払い、その他の社会プログラムを支援することで、ウクライナ政府の運営を維持することになると述べた。

3月の支援策には「ウクライナのマクロ経済的ニーズ、エネルギーやサイバー安全保障などの政府の取り組みの継続、または近隣諸国のニーズのいずれか」を支援するために20億ドル近くが含まれていた。

●人道支援(Humanitarian aid

米国国際開発庁(USAID)によると、アメリカはこれまでウクライナに3億100万ドル以上の人道支援を実施してきた。

3月10日、USAIDはウクライナ難民のために約5300万ドルを承認し、戦争中の国から逃れてきた人々のための世界食糧計画(WFP)の活動を支援することを決定した。

別のパッケージには、国連国際子ども緊急基金への680万ドルが含まれていた。

そして、国際移住機関への約610万ドルの援助は、HIVの治療に使われる抗レトロウイルス薬や、HIV移動検査車、薬の宅配などに使われた。

USAIDはこれらに加えて、国際赤十字に2万800ドル、国連食糧農業機関に30万ドル、国連人道問題調整事務所に250万ドルの援助を発表した。

世界保健機関には約96万7280ドル、ウクライナ東部のドネツク、ルハンスク両地域のウクライナのパートナー支援に1160万ドルが支出された。

国務省は更に、国連難民高等弁務官事務所やその他のパートナーのために9300万ドル以上を費やした。

USAIDと国務省の残りの資金は、ハンガリー、ベラルーシ、ルーマニア、モルドバ、ポーランド、スロバキア、その他のヨーロッパにおける関連する人道的対応に使用された。

3月のパッケージでは、紛争を支援するための人道的および対外的な支援ニーズに対して、各機関合計で約50億ドルが承認された。

●その他(Other

3月のパッケージで承認された追加支援には、エネルギーとメディア分野への資金が含まれている。

エネルギー省:ウクライナの電力網を支援するために3000万ドルを拠出する。

農務省海外農務局:ウクライナとウクライナ難民への食糧支援寄付を支援するため、「平和のための食糧」プログラムに1億ドルを拠出する。

商務省:経済・貿易関連の分析、執行、調整のために2210万ドルを拠出する。

司法省:サイバー犯罪の脅威や制裁措置の執行、紛争に関連するその他の事件や捜査に取り組む司法省のウクライナ対策本部とFBIを支援するため、5490万ドルを拠出する。

財務省:ロシアに対する制裁措置の実施、その他の金融措置の実施、情報支援、ウクライナ支援のための対策本部を支援するために3月のパッケージで6100万ドルが承認された。
(貼り付け終わり)
(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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