古村治彦です。

 今年11月にアメリカで中間選挙が実施される。連邦上院の一部の議席と連邦会の全議席が選挙の対象となる。大統領選挙と大統領選挙の間に行われるので中間選挙(midterm elections)と呼ばれる。アメリカの大学では楽器の中間試験(midterm exams)をミッドターム(midterm)と略して呼ぶ。11月の選挙は現職大統領と所属政党にとっての中間試験となる。就任後の2年間の仕事ぶりを採点されることになる。歴代政権を見てみると、中間試験の結果はあまり芳しくない人たちが多かった。現在のジョー・バイデン大統領にとっても厳しい採点が下ることになるだろう。ジョー・バイデン大統領の支持率は40%台前半に低迷している。アメリカの有権者は基本的に厳しい。

 現在のところ、中間選挙に関する各種予想では、連邦上院は接戦、連邦下院は共和党が過半数を奪取するということになっている。以下のグラフや図をご覧いただきたい。
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 政党の支持率(赤:共和党、青:民主党)
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 中間選挙に向けて、バイデン政権は学生ローンの徳政令を打ち出してきた。これで多少、大統領に対する支持率が持ち直し、民主党の巻き返しが図れると期待されている。この学生ローン徳政令、具体的には卒業後に学生時代に借りたローンの返済に苦しむ人々が多く(借り手は約4300万人)、そうした人々に徳政令で返済免除とする(あくまで連邦政府の運営しているローンのみ)ということだ。この全国民が対象にならない徳政令については、民主党内部にも反対意見がある。一方、民主党内部の進歩主義派は、「学生ローン返済免除は、自分たちが長年訴え、大統領に働きかけてきた。その成果が出た」と喧伝している。しかし、進歩主義派は民主党内部の予備選挙では勝てておらず、「政策で勝って、選挙で負けている」と評されている。共和党側は学生ローン徳政令については反対している。

今年の11月の中間選挙で、連邦下院で過半数を握ると見られる共和党では、ドナルド・トランプ前大統領が支持・推薦する候補者たちが共和党内部の予備選挙に勝利している。本選挙で勝利すれば連邦議会内で議席を得ることになる。トランプ派は「MAGA派」とも呼ばれている。これはトランプのスローガンである「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」のそれぞれの単語の頭文字を取った言葉だ。連邦下院で過半数を掌握する共和党内部でMAGA派が勢力を拡大するということになる。

 アメリカの有権者は、経済、特に物価高であり、その原因となっているウクライナ戦争と新型コロナウイルス対策に関心を持っている。これから秋から冬へと移っていく。ウクライナ戦争がその時期まで長引けば、エネルギー高や食料価格の高騰の状態のままで、寒い冬を乗り切らねばならない。人々の不安が中間選挙の結果に反映される。バイデン政権と民主党は思い切った手段を取らねばならないが、それができるかどうかは不透明だ。

(貼り付けはじめ)

オピニオン:2022年中間選挙に向けた有権者の意気込みとその理由(Opinion: Voters are really fired up about the 2022 midterms -- and for good reason

SE・カップ筆

2022年8月25日

CNN

https://edition.cnn.com/2022/08/25/opinions/midterm-elections-critical-future-united-states-cupp/index.html

CNN発。2022年の中間選挙が目前に迫っているが、これほど重大な選挙はないだろう。当然のことながら、アメリカの有権者たちの関心は異常に高い。

ギャラップ社の最新の世論調査によると、アメリカの成人の約半数が2022年の選挙について「かなり」考えていると答えている。1998年から2014年までの全ての選挙に先立つ夏の間の平均は、わずか37%だった。

ギャラップが「関心の強度(intensity)」と呼ぶこの指標は、有権者の熱意を示している。そして、アメリカの有権者の半数は、通常よりも投票に熱心だということになる。

もし、あなたがこのような有権者でないなら、あなたとあなたの生活に直接影響を与える可能性のある選挙をよく見てみるべきかもしれない。今、政治から目を逸らすには、あまりにも多くの緊急課題がこの国に突きつけられている。

インフレイションから景気後退の可能性、ロウ対ウェイド裁判判決の転換と多くの州における人工妊娠中絶へのアクセスの後退、銃乱射事件と銃の改革、国境での移民問題、ロシアとウクライナの戦争、新型コロナウイルスの影響など、アメリカの有権者はこの重要な選挙期間に考慮しなければならない問題を数多く抱えている。

メディアは世論調査から社内外の調査まで、多くの有用なリソースを手にしていますが、有権者がどのように投票するかについては、投票前にしか分かりません。今年は「ロウ対ウェイド裁判判決」が投票率を押し上げると予測することもできるが、一方で、この不安定な経済状況では、民主党が本当に困ってしれない。そこで、我々はその源に直行する。

CNNオピニオン」は新シリーズ「アメリカの未来は今始まる」を開始し、アメリカの有権者の皆さんに意見を求めている。

大統領選挙ばかりに目が釘付けになりがちだが、こうした問題の多くを誰がどのように解決するのかを決めるのは連邦議会選挙である。来る11月の選挙は、少なくとも今後数年間の税制、銃規制、中絶法などの運命を文字通り決定する可能性がある。

「ロー対ウェイド」裁判の判を覆して中絶を事実上禁止している州の民主党は、中絶アクセスを成文化するのに十分な人数を確保できるだろうか?

フロリダ州のような州の共和党は、公立学校に影響を与える反スピーチ法をもっと通すようになるのだろうか?

あなたの州では、銃の安全性に関する法律は廃止されるのか、あるいはさらに前進するのか?

しかし、おそらくこれらの個々の政策問題よりももっと重要なのは、民主政治体制そのものという大きな問題である。NBCニューズの最新の世論調査によると、有権者の多くが11月に優先させたいことの上位に民主政治体制への脅威が挙げられている。2021年の連邦議会議事堂での暴動、2020年の選挙が盗まれたといまだに主張する前大統領、ジョー・バイデンを違法な大統領と信じる有権者の大部分、選挙は不正操作されているという嘘を主張しながら選挙戦を戦う何十人もの政治家候補、これら全てがこの中間選挙への賭けがこれ以上ないほど高いことを意味している。

ギャロップ社によると、インフレイション、食料価格の高騰、景気後退の危機などが大きくクローズアップされている今年、当然のことながら、経済が最優先課題となっているということだ。次いで銃政策、中絶、移民、税制、ロシアのウクライナ戦争、そして気候問題という順になっている。

しかし、それは選挙の投票率の実態に比べれば少しは整然としている。投票所での感情的な、時には非合理的な、動機付けを定量化することは不可能であり、過小評価されることもある。

例えば、どれだけの有権者が、ある1つの問題を他の全ての問題よりも優先しているのだろうか? 例えば、中絶か移民か、どちらを重視して投票するかという二者択一をしているだろうか?

右派のうち何人が、政策よりも、文化戦争的な衝動、「社会的正義のために進むこと(wokeness)」との戦いや「リベラル派を動揺させ敗北させる(owning the libs)」に突き動かされて投票しているか?

ドナルド・トランプ前大統領が選んだ共和党の候補者たちを議会から締め出すことに、より意欲を燃やしている左派の人々は何人いるだろうか?

2020年の大統領選挙が盗まれたという嘘に基づいて投票に行くのは誰だろう? そして、Qアノンや他の過激派グループが押し付ける他のおかしな陰謀論に基づいて投票するのは誰だろうか? 決して少なくない数だろう。

今年は何が有権者を振り向かせるのか、それはあまり意味をなさない。ある予備選挙を考えてみると、かつてワイオミング州のお気に入りだった共和党の娘であるリズ・チェイニーが、トランプが支持する2020年大統領選挙否定派のハリエット・ヘイグマンと対戦した。

連邦下院議員として93%の割合でトランプに好ましい投票し、間違いなく最も保守的な議員の1人であるリズ・チェイニーは共和党から追放された。この出来事は彼女の政策ではなく、トランプに対抗しようとしたことが原因である。

リズ・チェイニーは、2021年1月6日にトランプがもたらした損害について率直な意見を述べ、その数週間後にトランプ弾劾に投票し、1月6日事件に関する連邦議会委員会の役職に就いたことで、彼女は多くの共和党関係者から忌み嫌われる存在になった。実際、2021年、ワイオミング州共和党は、弾劾票を投じたリズ・チェイニーに対して問責決議し、その後、チェイニーを共和党員として認めないことにした。

昨年2月、連邦下院共和党は彼女を共和党所属連邦下院議員会会長の座から外そうとして秘密投票を行った。その結果はチェイニーにとってはつかの間の勝利だったが、61人の共和党議員が彼女を追い出す投票を行い、145人が彼女の残留を支持した。しかし、5月になると、20分足らずの音声投票によって、彼女は永久に追い出された。

最終的に、トランプが選んだヘイグマンからの挑戦に直面したチェイニーは、2016年に彼女を議員に圧倒的に投票した州での予備選で、その時とほぼ同じ差で敗退したのだ。

ワイオミング州の連邦下院議員共和党予備選にもう1つの奇妙なねじれを生じさせたのは、推定で数千人のワイオミング州の民主党員がチェイニーに投票するために党籍を切り替えたことだ。この行動について言えば、その理由はおそらく彼女の政策への支持ではなく、トランプを再び選挙で勝たせないという彼女の公約に対する支持ということになる。

ワイオミング州は確かに特殊なケーススタディだが、これは、一部の有権者がトランプに対する感情よりも政策によって2022年の中間選挙に臨む方法の縮図のようなものであるとも言える。

しかし、他の人々にとっては、トランプ前大統領はそれほど動機づけにならないようだ。例えば、ジョージア州、ノースカロライナ州、アイダホ州、ネブラスカ州では、トランプが選んだ候補者の何人かが他の共和党候補者に負けた。

民主党の予備選挙では、多くの場合、進歩主義派が穏健派候補に敗れており、おそらくバイデンの中道への回帰が再確認されたのであろう。もし彼らが多くの有権者と同じ問題意識を持っているとすれば、バイデンのインフレイションに対するアプローチを諦めず、銃規制、インフラ支出、税金、気候に関する彼の勝利を支持しているのだろうと思われる。

しかし、通常大統領選挙を含む総選挙の年よりもかなり投票率が低い中間選挙において、何が正確に投票率を押し上げるのかは、特に今年は常に定量化が困難となっている。

フロリダ州では、ロン・デサンティス州知事が提出した「教育における親の権利」法案(批判派からは「ゲイと言うな」法案と呼ばれる)が、民主、共和両党をそれぞれ支持する有権者にとって大きな動機づけになる可能性がある。

ロウ対ウェイド裁判判決の転覆によって中絶が事実上禁止された州では、この問題が大きくクローズアップされるかもしれない。

テキサス州やニューヨーク州のように、ユヴァルデやバッファローで起こった恐ろしい銃乱射事件が家族や地域社会にトラウマを与えた各州では、銃政策の行方は多くの有権者にとって一つの争点となり得るだろう。

しかし、他の選挙サイクルのような明確な指標がない以上、私たちは優れたジャーナリズムを発揮し、単純に問うことが肝要だ。「あなたにとって何が重要か、それはなぜか?」

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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