古村治彦です。

 2022年11月15日、ドナルド・トランプ前大統領が2024年の大統領選挙への立候補を表明した。大統領選挙は民主、共和両党の候補者を決める予備選挙(primary)と本選挙の2段階で実施され、トランプはまず共和党予備選挙での勝利を目指す。まだ候補者が揃ってはいないが、「どの候補者が共和党の指名候補としてふさわしいか」という各種世論調査の結果では、トランプが1位を維持している。2位には、今回のフロリダ州知事選挙で再選を果たしたロン・デサンティスがつけており、その差は縮まりつつあるが、それでもトランプが大きなリードを保っているのは間違いない。

2024republicanpresidentialcandidates202207202211511
uspoliticiansfavorabilityratings511

 また、ジョー・バイデン大統領も2024年の大統領選挙への立候補を表明した。民主党予備選挙にはバイデンに挑戦する候補者が出るかどうかだが、バーニー・サンダース連邦上院議員が対抗馬として出馬する可能性はある。しかし、これからバイデンにスキャンダルや健康問題がなければ、民主党の候補者となるだろう。バイデンの支持率下落はひと段落しており、世論調査の結果ではトランプと拮抗している状態にある。また、カマラ・ハリス副大統領が候補者となった場合ということでの世論調査も実施されているが、こちらはトランプがリードしているという結果が出ている。
generalelectiontrumpvsbiden202207202211511
generalelectiontrumpvsharris20220302211511 

 今回の中間選挙で、共和党が予想よりも連邦議会での獲得議席数が少なかったということで、それはトランプの責任だ、トランプの勢いに陰りが出てきた、2024年の大統領選挙ではトランプ以外の候補者を共和党は選ぶべきだという主張が多く出ている。しかしながら、現在の共和党において、トランプ以上に全国的な政治的影響力と資金力を持っている人物は他に存在しない。もしいるならば、そろそろ名前が出てくる時期だが、今のところ、前述のフロリダ州のロン・デサンティス知事くらいのものだが、彼はまだ全国的な知名度と支持を得ているとは言えない。また、デサンティスがバイデンに打ち勝てるかどうかというのは厳しいのではないかと考えられる。エスタブリッシュメント派同士の戦いになれば、現職のバイデンの方が有利ということになる、

 こうして見ると、現在のところ、トランプ前大統領が2024年大統領選挙の共和党有力候補者であり、トランプを打ち倒せる存在ということになる。これから2024年11月までの2年間、大統領選挙の長丁場が始まる。こうして見ると、アメリカの政治は選挙が次から次へとやってくる。日本の選挙も大変だと言われるが、アメリカもまた過酷である。しかし、選挙こそは民主政治体制にとっての最重要な基盤ということになる。世界で最も力を持つ存在を選ぶ戦いはスタートした。

(貼り付けはじめ)

トランプが2024年大統領選挙出馬を受け共和党が分裂(Republicans divided as Trump kicks off 2024 bid

コール・フォルマー筆

2022年11月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3737570-republicans-divided-as-trump-kicks-off-2024-bid/

ドナルド・トランプ前大統領が3度目の大統領選出馬を表明したことに対し、共和党の有力者の反応は火曜日の夜、二分された。トランプを共和党の正当な指導者として歓迎する者もいれば、スポットライトから退くべきだと主張する者もいる。

トランプの盟友であるマージョリー・テイラー・グリーン議員(ジョージア州選出、共和党)は、マールアラゴのイヴェントでの正式発表前に前大統領の出馬を支持し、トランプが出馬の意向を公にした時点でこれまでの発言をリツイートした。

グリーンは「トランプ大統領を2024年の共和党の候補者として、私は全面的な支持と支援を送る」と書き、トランプが2度目の当選を果たした場合に「アメリカ・ファースト(America First)」を掲げると約束したヴェベントの映像をシェアした。

共和党所属の連邦下院議員であるトロイ・ネールズ(テキサス州選出)とアンディ・ビッグス(アリゾナ州選出)も前大統領を支持し、ネールズはトランプの演説映像をシェアし、「アメリカのカムバックはたった今、これから始まる」と書いた。

ビッグスは「トランプ大統領は共和党のリーダーだ。さあ、アメリカを再び偉大にしよう(Let’s Make America Great Again)」と述べた。

リンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、トランプへの全面的な支持を表明しなかったが、前大統領が発表で用いた政治戦略を称賛した。

グラハムは次のようにツイートした。「トランプ大統領がこの調子で一貫してメッセージを発信し続ければ、彼を打ち負かすのは難しいだろう。今夜の演説は、バイデン政権に対する彼の政策と結果を対比させ、予備選挙と総選挙での彼の勝利に向けた道筋を描いている」。

しかし、引退するメリーランド州のラリー・ホーガン知事やアーカンソー州のエイサ・ハッチンソン知事など他の共和党関係者は、トランプの立候補を否定し、2024年の大統領選挙で彼が共和党候補になれば失敗すると予測した。

ホーガンは「負け惜しみを言うのは愚かなだけでは済まない。民主党への贈り物となってしまう。今こそ、ページをめくる時だ」と書いた。

ハッチンソンは、次期大統領選挙の共和党候補には「もっと良い選択肢がある」と述べ、前大統領の人格を鋭く批判した。

ハッチンソンは「バイデンの失敗についてはトランプが正しいが、怒りを助長する自己中心的なメッセージは変わっていない。2022年にうまくいかなかったし、2024年にもうまくいかないだろう」と書いている。

共和党のエスタブリッシュメント派のメンバーたちは、先週の中間選挙をきっかけにトランプに対してやや冷めた態度を取っており、党員たちは赤い波を期待しいただけに失望している。

共和党の著名なジェブ・ブッシュ・ジュニアは、トランプを「弱い」と攻撃し、「#SleepyDonnie」(訳者註:眠たげなドニー[ドナルド・トランプ])というハッシュタグをつけた。

ブッシュは「ドナルドの演説はなんとも低エネルギーなものだった。新しいリーダーの時間だ!」と書き、「人々を団結させるリーダーシップを」と呼びかけた。

トランプ政権でスタッフを務めた、アリッサ・ファラ元ホワイトハウス戦略広報部長、サラ・マシューズ副報道官、ミック・マルバニー大統領首席補佐官らもトランプの大統領選挙出馬に疑問を投げかけている。

ファラはCNNに出演し、「これはまた、ある種のプロフェッショナルなものとして始まった。最初は台本通りだったが、その後、まったくの嘘を散りばめ、中国が中間選挙に関係しているかもしれないという陰謀(conspiracy)に手を染め、インターネットの暗い隅でさえ見たことがないようなことが話された」と述べた。

ファラは次のように続けた。「共和党の信頼できる人物は、今日のこの発表を望んでいなかったが、演説自体は脚光を浴びるだろう。私たちは今後2年間彼を取材することになるが、再び彼が大統領になる可能性はゼロではない」。

ファラはツイッターで、トランプについて「完全に大統領にふさわしくなく、民主政治体制に対して明確かつ現在の危険な存在だ」と述べた。

マシューズは、上司だった人物の演説について、「今まで聞いたトランプ大統領の演説の中で最もエネルギーがなく、元気のない演説の1つ」と評した。

「彼の演説は大統領選出馬を発表する時に望むものとはちょっと違った」と彼は続けた。

マルバニーはトランプの演説中に、「30分以上経ってもほとんど台本通りだ。2020年に彼が台本通りにやってくれていたら、彼は勝っていただろう」とコメントした。

マルバニーは「トランプがどれだけ長くそのようにおとなしい態度を続けられるかが興味深い。さすがに今夜だけということはないだろうが」と述べた。

=====

共和党が岐路に立つ中、2024年の選挙に飛び込んだトランプ(Trump jumps into 2024 race with GOP at crossroads

ブレット・サミュエルズ筆

2022年11月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3737617-trump-jumps-into-2024-race-with-gop-at-crossroads/

ドナルド・トランプ前大統領は、共和党が再び彼の背後に集結することを期待して、カムバックを目指している。一方で共和党の一部が、彼を3度目の大統領候補として指名することは、投票所での失敗を招くと懸念している。

トランプ前大統領は火曜日の夜、フロリダ州のマーアラゴの邸宅から2024年の大統領選挙キャンペーンの開始を発表し、バイデン大統領の下で国が無政府状態(anarchy)に陥ったと主張し、政権1期目の政策の成功を繰り返すことができると述べた。

しかし、2021年1月6日の暴動と2度目の弾劾という状況の中で、大統領の座から去って以来、共和党員の一部からトランプから離れるべきだという声が大きくなっている時に、彼は大統領選挙出馬を表明した。

トランプは、コロナウイルスの大流行が始まる前の好調な経済、貿易取引の手直し、アメリカを外国の紛争から遠ざけてきた国際関係への果敢な取り組みを、自分の新たな任期で努力すべき課題として指摘した。

しかし、トランプは、共和党の一部がトランプの成功する力について大きな疑念を抱いているがこれを無視し、新型コロナウイルス対応や1月6日の連邦議事堂での暴動における彼の役割について言及を避け、共和党の中間選挙の予想外の成績の責任を負わなかった。

トランプは「投票はもっと違うものになるだろう。2024年だ、皆さん、準備はできているだろう?」 と述べ拍手喝采を浴びた。そして、「私も準備ができている」と続けた。

共和党は、先週行われた中間選挙の余波を受け、大勝利が期待されたものの実現できなかった。連邦上院では民主党が過半数を維持し、連邦下院は共和党が期待されたより少ない差で過半数を奪還するようだ。

党内の一部の有力者にとっては、この選挙は状況が大きく変化する変曲点(inflection point)の役割を果たした。多くの人がトランプ氏の名前をはっきりとは挙げなかったが、彼らのメッセージは明確だった。そのメッセージとは、「共和党はトランプをあらゆる活動の中心にすることから離れるか、それとも2024年に更に痛烈な敗北を喫するリスクを冒すかを選択できる」というものだ。

連邦上院少数党(共和党)院内総務ミッチ・マコーネル連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は火曜日、「無党派層や穏健派の間では、党の指導的立場にある人々の多くが、混乱や否定的な態度、過剰な攻撃に巻き込まれているという印象を持たれており、それが無党派層や穏健派の共和党支持者を怖がらせている」と述べた。

トランプと4年間一緒に仕事をしたマイク・ペンス前副大統領はシリウスXMに出演し、中間選挙で最も良い成績を収めた候補者は、インフレや犯罪などの大きな問題に対して前向きな解決策を提示し、一方で「前回の選挙について再び争うことに焦点を当てた候補者たちはそれほど良い成績を収めなかったと思う」と述べた。

ジョシュ・ホウリー連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)は、2022年の中間選挙をについて「私たちが知っている共和党の葬儀だ」と評した。

そして、2024年の共和党の大統領候補として、おそらくトランプの最大のライヴァルと見られているフロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)は、多くの有権者の間でのバイデン大統領の不人気ぶりを共和党が活用することができなかったことに懸念を示した。

デサンティスは火曜日に「バイデンがホワイトハウスにいて、失敗を目の当たりにしても、無党派層が私たちの候補者に投票しなかった。これは問題だ」と述べた。

共和党の予想外の中間選挙での成績の責任の一部は、本選挙で敗北した連邦上院、連邦下院、州知事の候補者たちが予備選挙を通過するのに貢献したトランプにあるのだと主張する共和党の政治家や党員たちが存在する。

トランプは演説の中で中間選挙の結果に言及し、共和党が当然の批判に晒されていることを認めた。しかし、その批判は自分に向けられるべきものではないとトランプは述べた。

トランプが最も注目し、最も強力に推薦した候補者たちの多くが本選挙で敗退した。ペンシルヴァニア州連邦上院議員選挙と州知事選挙の候補者だったメフメト・オズとダグ・マストリアーノ、アリゾナ州連邦上院議員選挙と州知事選挙の候補者だったブレイク・マスターズとカリ・レイク、ミシガン州知事選挙候補者のテューダー・ディクソン、ウィスコンシン州知事選挙のティム・ミシェルズ、ニューハンプシャー州連邦上院選挙のドン・ボルドゥなどの名前が挙がる。

トランプは、共和党の劣勢を有権者のせいにして、バイデン政権の政策がいかに自分たち有権者の生活にとって悪いものかをまだ理解していないのだと示唆した。

トランプは「我が国の市民は、我が国が経験している痛みにまだ気づいていない。彼らはまだそれを感じていないのだ。しかし、彼らはすぐに感じるようになる。2024年までに、悲しいことだが状況はずっと悪くなり続け、何が起こったのかずっとはっきりと分かるようになるのは間違いない」と発言した。

中間選挙の結果を受けて、トランプの共和党内での影響力は、おそらくホワイトハウスを去った直後以来、最も不安定な状態にある。トランプが数ヶ月をかけて2020年の選挙をめぐって支持者たちを熱狂させ、16日の連邦議事堂での暴動で最高潮に達した後、多くの共和党員がトランプ氏と距離を置く準備を整えているように見える。

トランプへの批判は薄れ、共和党の多くは2年間トランプに忠実であったが、今問われているのは、保守派の一部の間では、重荷を背負うことなしに、トランプの政治ブランドを継承できる候補に移ろうという動きをトランプ前大統領が食い止めることができるかどうかという疑問が生じている。

ペンスは2024年の大統領選挙への立候補を考えていることを示唆しており、マイク・ポンペオ前国務長官も同様だ。両者とも、トランプの選挙戦開始が自身の決断に影響を与えることはないと述べている。

一方、デサンティスは、先週行われた再選を目指した知事選挙で地滑り的勝利を収め、フォックス・ニューズや『ニューヨーク・ポスト』紙から好意的に報道され、保守派の多くにとって一躍スターとなった。

中間選挙での支持に関して、トランプと対立した保守系団体の「クラブ・フォー・グロース」は、2024年の出馬表明前夜に世論調査を発表し、アイオワ州やニューハンプシャー州といった予備選挙が初期段階で実施される各州や、トランプの地元フロリダ州での一対一の勝負でデサンティスがトランプをリードしていることを明らかにした。

しかし、今週発表された『ポリティコ』誌・モーニング・コンサルト社の共同世論調査では、共和党員および共和党寄りの無党派層の47%が、もし今日大統領予備選挙が行われたらトランプを支持すると答えたのに対し、フロリダ州知事デサンティスを支持すると答えたのは33%で、トランプにより有利な結果となっている。

2015年以降、共和党はトランプのイメージに影響されて構成されてきた。トランプは、移民、国際的な同盟、貿易について、共和党が議論する方法を再形成した。彼は数多くの新しい有権者を取り込み、オハイオ州やフロリダ州といった州での共和党の優勢を強固にし、熱心な支持者を育て、党内で驚くほど高い支持層を形成した。

しかし、トランプは、予測不可能な行動、自分を批判したり反対したりする人々への絶え間ない個人攻撃、2020年の選挙が盗まれたというデマへの固執、ビジネス取引や機密文書の取り扱いをめぐる法的問題(後者は、火曜日の夜に出馬発表した場所の捜索にまでなった)により、無党派や穏健派の有権者をも遠ざけてきた。

火曜日の出馬表明演説は、共和党が当分の間トランプの政党であり続けるのか、それとも有権者が前進する準備ができたのかについて意思決定ための長いプロセスの始まりとなった。

トランプは、「これから始まる旅は簡単なものではない。この不正にまみれ腐敗したシステムに真に挑もうとする者は、少数の者しか理解できないような火の嵐に直面することになるだろう」と語った。

=====

トランプが2024年の大統領選挙出馬を表明(Trump announces 2024 run for president

マックス・グリーンウッド筆

2022年11月15日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3541693-trump-announces-2024-run-for-president/

フロリダ州パームビーチ発。共和党への影響力を疑問視されている中、ドナルド・トランプ前大統領は火曜日、2024年のホワイトハウスを目指す選挙への参戦を表明した。

中間選挙の結果が予想よりも悪く、共和党が長い間期待していた「赤い波」が起きず、結果として共和党内で非難合戦が繰り広げられた。そのわずか1週間後に、トランプはフロリダ州パームビーチの私邸兼クラブであるマーアラゴで待望のイヴェントを開催し、大統領選挙出馬を発表した。

金色に輝く舞踏場で12枚のアメリカ国旗に挟まれたトランプは、大統領執務室での記録を自慢し、しばしば誇張して、共和党が「議会を奪取した(taken over  Congress)」、ナンシー・ペロシ連邦下院議長(カリフォルニア州選出、民主党)を「解雇した(fired)」と主張し、共和党の中間選挙の成績を擁護するイヴェントの開始演説を行なった。

共和党の中間選挙の失敗について、トランプは「アメリカ国民が私たちの国が経験している痛みの全容と重大さにまだ気づいていない」と主張した。

トランプは次のように語った。「私たちは常に、これが終わりではないことを認識している。アメリカン・ドリームを救うための私たちの戦いの始まりに過ぎないのだ。アメリカを再び偉大で輝かしい国にするために(In order to make America great and glorious again)、私は今夜、大統領選挙への出馬を表明する」。

トランプ前大統領は火曜日、2020年にバイデン大統領に再選を阻止された後、カムバックする可能性を示唆していたが、それを実行に移した。落選して以来、トランプは、広範な選挙不正(voter fraud)と組織的不正行為(systemic irregularities)によってホワイトハウスでの2期目が奪われたという誤った主張に固執し続け、共和党内一部からは、これによって重要な中間選挙を犠牲にしたという主張が出ている。

火曜日に大統領選挙出馬を発表した際に、トランプは「中国が2020年の選挙に非常に積極的な役割を果たした可能性」を示唆した。また、選挙では紙の投票用紙のみを使用すべきであると主張し、期日前投票を廃止するよう求め、共和党の一部が期日前投票や郵送による投票を重視するよう最近求めていることについてけん制した。

火曜日に、トランプにとっての4回目となる大統領選挙の選挙戦がスタートした形になった。彼が真剣に政治家として出馬するのは今回が3回目だ。しかし、トランプは2015年に初めてホワイトハウスへの立候補を成功させた時とは全く異なる立場で2024年の選挙戦に臨むことになる。

トランプはもはや、アメリカ南部国境に「壁を作る(build the wall)」、ワシントンの「沼の水を抜いてきれいにする(drain the swamp)」という大げさで物議をかもす公約で共和党支持の有権者を獲得した実業家、リアリティ番組のスターにとどまらない存在となった。

多くのアメリカ人にとって、トランプは、人生のあらゆる面で勝者であるという自分の評判を保つため、政権の平和的な権力移譲を妨害しようとした政界の除け者(political pariah)である。

2020年の選挙での敗北をひっくり返そうとするトランプは、議会の調査の中心に置かれ、かつて彼の政治的知名度を高めるのに役立ったツイッターなど、最大のソーシャルメディアプラットフォームから疎外されている。

トランプは更に、彼自身のビジネスに関する調査から2021年1月6日の連邦議会議事堂での暴動における彼の役割に関する調査まで、複雑な法的脅威の網の中心にいることに認識している。8月には、機密文書に関する調査の一環として、FBI捜査官たちが南フロリダ州のマーアラゴの敷地に踏み込んだが、これは前例のない動きだ。

トランプはまた、弱体化した状態で選挙戦に臨んでいる。共和党は、2022年にいわゆる「赤い波」が来ると長い間期待していた。バイデンと民主党の議会支配に対する恨みが、共和党を多数派に押し上げると信じていたのだ。

しかし、今回の選挙では、かなり雲行きが怪しくなってきた。共和党は連邦下院では僅差で過半数を確保する構えだが、連邦上院では主導権を握る機会を逸した。この失敗は、多くの共和党員は、トランプの存在とトランプが共和党の予備選挙に繰り返し介入したことに起因すると考えている。

実際、アドヴァイザーの中には、中間選挙後、ある程度の時間が経過するまで出馬発表を延期するようトランプに促した者たちがいたとも伝えられている。

しかし、他のアメリカ人にとっては、トランプは不透明な連邦官僚制度をブルドーザーで破壊し、ますますグローバル化し相互接続が進む世界でアメリカの最善の利益を擁護しようとした先見の明がある人物であることに変わりはない。

そして実際、トランプが2024年の大統領選に向け、心機一転して新しい主張を行う兆しはない。火曜日に発表された彼の声明は、彼の政治キャリアを特徴づけてきたテーマと呼応している。バイデン政権下でアメリカは弱体化したと述べ、制御不能のインフレと移民に憤慨し、中国が再びアメリカを利用し始めたと主張した。

トランプは、自分の大統領時代にアメリカに「黄金時代(golden age)」をもたらしたとし、現在、アメリカは「衰退する国(a nation in decline)」になっていると述べた。

トランプは次のように語った。「私たちのリーダーシップの下で、私たちのアメリカは偉大で輝かしい国だった。この時のアメリカは皆さん方がかなり長い期間見聞きしたことがないものだった。今、私たちのアメリカは衰退し続けている。失敗した国(a failing nation)となっている。何百万人ものアメリカ国民にとって、ジョー・バイデン政権下の過去2年間は、苦痛と苦難と絶望の時となった」。

しかしながら、トランプの演説は普段の激しい暴言に比べると控えめな時もあった。2020年の選挙が自分に不利になるように操作されているという彼の誤った主張について長々と話すことはなく、中間選挙の成績が振るわなかった共和党を前にして冷静さを演出しようとした。

枕の販売で有名になった超保守的な実業家マイク・リンデルのような強固な政治的同盟者を含む支持者の群衆を前に、トランプは1時間以上演説を行った。それでも、時折、聴衆が熱狂的でないように見えることがあった。トランプは演説中、拍手やチャントを引き出したが、大規模な集会の騒々しい雰囲気に比べれば、控えめな反応が多かった。

全く予想外という訳ではないが、2024年の大統領選挙へのトランプの参戦表明は異例のタイミングとなった。

中間選挙は終了したものの、ジョージア州の連邦上院議員選挙の決選投票までまだ3週間あり、共和党の中にはトランプ大統領の出馬が同州の選挙戦に与える影響を危惧する者もいる。

また、トランプは現在のところ共和党で最も人気のある人物であり続けているが、彼が7年前に始めた政治運動の旗手兼指導者として最適かどうかという疑問も出ている。

トランプは依然として多くの有権者の間で不人気だ。2022年の中間選挙の出口調査では、トランプは、好感度が水面下に深く沈んでいるバイデンよりも人気がないことが明らかになった。火曜日に発表された『ポリティコ』誌・モーニング・コンサルト社共同の世論調査では、有権者の65%が、トランプが再びホワイトハウスに立候補すべきだとは考えていないことが分かった。

初期の世論調査では、トランプ氏は2024年の共和党大統領選の最有力候補とされていた。しかし、フロリダ州のロン・デサンティス知事を筆頭に、他の候補者が追い上げている兆しもある。トランプの長年の盟友であるデサンティス知事をホワイトハウスの最有力候補と見る共和党所属の連邦議員の数は増えている。

デサンティスは大統領選への野心を抱いているという考えを否定しているが、2024年の立候補を直接否定はしていない。中間選挙で19ポイントの差をつけて地滑り的勝利を収め、2期目の知事の任期を担当することになったことが、大統領選出馬の論拠が強まっている

複数の共和党員やストラティジストは、アメリカ全土の共和党員の間でデサンティスの知名度が高まっていることが、トランプがこれほど早く選挙戦に飛び込むことを決めた理由の1つかもしれないと分析している。

スタートしたばかりの2024年の大統領選挙レースの力学について率直に話すために匿名を要求したある共和党の大口献金者は「大統領は先手を打ちたいのだ」と述べている。彼は続けて「毎日、自分の存在意義が少しずつ失われていることをトランプは知っているのだろう。彼の考えは 他の誰かが来る前に、自分を売り込むことだ」とも語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505