古村治彦です。

 アメリカはバラク・オバマ政権下でのヒラリー・クリントン国務長官(2009-2013年)下で策定した「アジアへ軸足を移す(Pivot to Asia)」を基にして「中国封じ込め(containment of China)」を進めている。この流れはドナルド・トランプ政権でも変わらず、ジョー・バイデン政権も推進している。その中で、構築されたのが「クアッド(Quad)」と呼ばれる日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue)である。アメリカ、オーストラリア、インド、中国によるインド太平洋における安全保障の枠組みと言えば聞こえは良いが、簡単に言えば中国封じ込め、東南アジア諸国を取られないための枠組みである。しかし、インドは両天秤をかけている。
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 インド太平洋地域における枠組みにAUKUS(オーカス)がある。これはオーストラリア、イギリス、アメリカの枠組みである。アメリカが原子力潜水艦建造技術をオーストラリアに供与する、オーストラリアはフランスとの間で進めていたディーゼル潜水艦建造協力を破棄するということで、フランスが態度を硬化させたことで注目を集めた。オーストラリアは原潜を持ち、原潜の製造・修理工場を国内に持つことで、対中国の最前線ということになる。アメリカ軍と協力して中国海軍の源泉とにらみ合うことになる。オーストラリアにおけるアメリカの核兵器の配備、オーストラリアによる買い兵器開発と保有まで進む可能性もある。この「アングロサクソン軍事同盟」はクアッドに代わる枠組みになる可能性がある。
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 オーカスが結成された当初、日本政府は参加することはないと述べていたが、日本も参加して「JAUKUS(ジャーカス)」にすべきだという議論は出ている。日本がクアッドとオーカスに参加するということになると、対中国に備えた軍備増強を図るということになる。岸田文雄政権は「防衛費の対GDP比2%」という総額ありきの防衛予算増額を決め、そのために増税を国民に押し付けようとしている。国民から搾り取ってその金でアメリカから武器を買うということになる。アメリカから武器を買って済むことならまだ我慢もできるかもしれないが、問題は外国に対しての先制攻撃を可能にする安全保障戦略を発表している。先制攻撃と軍備拡張は「いつか来た道」である。国民に塗炭の苦しみを味わわせた先の大戦の反省はすっかり忘れられている。

 先の大戦の前も「日本は世界の五大国だ」「国際連盟の常任理事国だ」と浮かれ、大国意識だけが増長し、実態とはかけ離れた自己意識の肥大のために、最後は大きく進むべき道を誤ることになった。「日本は世界第3位の経済大国だ」「日米同盟は世界で最も重要な同盟だ」などというスローガンに踊らされて、調子になってバカ踊りをやって後で泣きを見ることがないようにするのが大人の態度であるが、今の日本の政治家にそのような期待をすることは難しい。

(貼り付けはじめ)

日本がAUKUSに参加すべき理由(Why Japan Should Join AUKUS

-東京はインド太平洋において不可欠な安全保障上のアクターとなった。

マイケル・オースリン筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/japan-aukus-jaukus-security-defense-pact-alliance-china-containment-geopolitics-strategy-indo-pacific/?tpcc=recirc_latest062921

インド太平洋地域では、新たな四カ国同盟(quad)が形成されつつある。それはオーストラリア、インド、日本、アメリカが参加する日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)よりも大きな影響を与える可能性がある。中国の影響力とパワーの拡大に対抗して、オーストラリア、イギリス、日本、米国が安全保障上の利害を一致させるようになったことで、新たな連携が生まれつつある。2021年に締結された豪英米防衛協力協定(Australia-United Kingdom-United States defense cooperation pact、通称AUKUS)に日本が加わり、JAUKUSとなる見込みであり、これまでの同盟(alliance)や準同盟(quasi-alliance)にはなかったインド太平洋の自由主義的民主政体諸国(liberal democracies)間の安全保障協力

このようなパートナーシップはあらかじめ決まっていたものではない。実際、今年初め、日本がAUKUSへの加盟をひそかに検討しているという報道があったが、東京はすぐに否定し、当時のホワイトハウスのジェン・サキ報道官もこの報道内容を否定した。しかし、日本はこの3カ国と連携するようである。これは、日本の安全保障姿勢を一変させるだけでなく、インド太平洋においてますます重要な役割を果たすアクターに変貌させた戦略的革命の一部となる。7月に暗殺された安倍晋三首相(当時)の下、日本は共同兵器開発に関するほとんどの制限を撤廃し、軍事予算を着実に増やし、自衛隊がパートナー諸国の軍隊との集団的自衛権に関与することを認めるなどより積極的な防衛態勢を取るようになっている。

2021年10月の就任以来、岸田文雄首相は安倍元首相の外交・安全保障政策を基礎とするだけでなく、アジアや世界の主要自由主義的な諸国と日本の関係を拡大・強化した。岸田首相は、ロシアがウクライナに侵攻した後、直ちにワシントンやヨーロッパ各国とともにロシアへの制裁を行った。また、NATOとの関係を深め、6月には日本の指導者として初めてNATO首脳会議に出席した。国内では、岸田首相は日本の防衛予算を増やし続け、1000億ドル近くまで倍増させる可能性があり、近く新しい国家安全保障戦略(national security strategy)を発表する予定である。アジア専門家たちにとって重要なことは、日本の戦略的変革は政治家たちの個性がもたらしたのではなく、むしろ深刻化する中国と北朝鮮の脅威と結びついている。アジアの安全保障環境が不安定なままである限り、東京はその能力を高め、パートナーシップを拡大し続けるだろう。

岸田首相のアプローチの核となる要素は、AUKUSの3カ国との着実な連携だ。10月下旬、キャンベラと東京は安全保障協力に関する共同宣言に署名した。正式な相互防衛協定(formal mutual defense pact)ではないが、この協定は日本とオーストラリアの「特別な戦略的パートナーシップ(Special Strategic Partnership)」を強化するものであり、グローバルな規範と地域の開放性に対する両国の支持を繰り返し表明している。1月には既に、日豪両国は軍の相互アクセス協定(military reciprocal access agreement,)に調印しており、これにより、訪問部隊の手続きが容易になり、オーストラリアと日本の軍隊が合同演習(joint exercises)を実施し、アメリカを含めて災害救援に協力できるようになる。

実際のJAUKUSを作るには、次のステップとして、日本の参加を徐々に正式なものにする方法を検討する必要があるだろう。

新たな安全保障協力宣言により、日豪両国は、情報の共有、サイバー防御に関する協力、サプライチェーンの確保などの活動を行いながら、軍隊間の「実践的な協力を深め、相互運用性を更に強化する」ことに合意している。完全に実施されれば、提案された協力の範囲は、各国にとって最も重要なパートナーシップとなるだろう。

一方、英国と日本は12月に、日本が既にオーストラリアと結んでいる協定と同様の相互アクセス協定に署名し、互いの国への軍隊の入国を緩和し、合同軍事演習と兵站協力を強化する予定である。これは、東京とロンドンが次世代戦闘機の開発でイタリアと協力するという7月の発表に続くものだ。イギリス海軍と海上自衛隊は前月、英仏海峡で合同演習(joint exercises)を行ったが、これは新型空母HMSクイーン・エリザベスと打撃群が日本を訪れてからちょうど1年後のことであった。

イギリスにとって、日本とのアクセス協定は、ボリス・ジョンソン首相が最初に説明したインド太平洋地域へのロンドンの「傾斜(tilt)」の骨に、更に肉を付けることになる。日英の防衛関係の深化は、リシ・スナック新首相がロンドンの最も重要な公的戦略文書である「統合的レビュー(integrated review)」を中国の脅威により明確に焦点を当てるよう改訂する見込みであることと合わせて、日本とのアクセス協定は、インド太平洋地域におけるキャンベラ、東京、ワシントンとのより正式な協力関係を構築する舞台となるものである。

しかし、4カ国が正式な合意に達する前であっても、中国の前進に対してバランスを取ることを目的とした行動の調整のおかげで、非公式のJAUKUSが既に出現している。2021年10月には、4カ国の海軍がインド洋で共同訓練を行っている。 8月、AUKUSが極超音速技術と対極超音速技術の両方の開発に焦点を当てると述べた直後に、日本は極超音速ミサイルを研究すると発表した。同様に、日本は量子コンピューティングへの投資を増やしており、その投資の一部は、世界で2番目に高速なスーパーコンピューターを所有する富士通によって行われている。このイニシアティヴは、潜在的な軍事的影響を伴う量子および人工知能技術を共同開発するというAUKUSの関与と一致している。

同様に、4カ国は国内の安全保障問題でも連携を強めている。4カ国はいずれもファーウェイを国内の通信ネットワーク、特に6Gから締め出しているが、その実施状況はまちまちだ。更に言えば、イギリスの安全保障担当大臣トム・トゥゲンドハットが最近、イギリスに残る孔子学院を全て閉鎖すると発表したことは、世界中の大学に圧力をかけて中国批判を封じ込め、中国国家の利益につながる肯定的なシナリオを押し付けてきた北京系組織の存在と影響力を、4カ国それぞれが削ごうとして動いていることを意味する。

実際のJAUKUSを作るための次のステップは、日本の参加を徐々に正式なものにする方法を検討することだ。まず、量子コンピュータや極超音速機開発など、共通の関心を持つ分野について、AUKUSの17のワーキンググループのいくつかに日本の関係者を招き、見学させることから始めることができるだろう。次の段階として、日本のJAUKUSにおけるステータスを変更したり、共同運営グループの会合に定期的に出席したりすることを検討することも考えられる。共同運営グループは、AUKUSが重視している2つの主要テーマ、潜水艦(submarines)と最先端の技術を使った能力(advanced capabilities)について方針を決定し、長期的なメンバーシップを議論する。また、オーストラリアへの原子力潜水艦供給という AUKUS の中核的な取り組みに東京がどのように参画できるかを冷静に探れば、特に軍事利用のための原子力技術に反対する日本の国内政治において、潜在的な外交的・政治的地雷の可能性を排除することができるだろう。

その過程や最終的な地位が同盟であれ協定であれ、あるいはもっと非公式なものであれ、JAUKUSは、インド太平洋を戦略的に考える意思と能力を持つ4つの主要な自由主義的な諸国による安全保障上の懸念とイニシアティヴの収束の自然な展開である。政策や目標の共通性が明らかになるにつれ、JAUKUS諸国は、インド太平洋地域の安定を維持するために、それぞれの努力を更に調整し、結合することの利点を理解するであろう。

※マイケル・オースリン:スタンフォード大学フーヴァー研究所研究員。著書に『アジアの新しい地政学:再形成されるインド太平洋に関する諸論稿(Asia’s New Geopolitics: Essays on Reshaping the Indo-Pacific)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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