古村治彦です。

 ウクライナ戦争はやがて越年し、開戦から11カ月近くが経過しようとしている。ほぼ1年と言ってよい。ロシア軍の侵攻に対して、ウクライナ軍が押し返したが、現在は膠着状態というところだ。ロシアがウクライナの領土の20%近くを掌握している状況には変化がない。「ロシアは敗北しつつある」という主張もなされてきたが、これだけの面積をウクライナ軍がこれから全て奪還するということはほぼ不可能であろうと思う。そのためには、西側諸国、特にアメリカとイギリスからの最新鋭戦闘機の投入が必要になる。

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ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、東部の激戦地バフムトでウクライナ軍将兵を激励した後、その足でウクライナ国内を横断し、ポーランドからアメリカの首都ワシントンに向かい、ジョー・バイデン大統領と会談し、米連邦議会で演説を行い、支援を訴えた。今回のゼレンスキーのワシントン訪問は戦争勃発後初めての外国訪問となった。
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 バイデンは20億ドル分の追加支援を発表した。しかし、ロシア軍に致命的な打撃を与えるような武器の供与はなされていない。そうなれば、戦争が長期化し、ウクライナ国民の苦しみは続いていくことになる。厳しい冬を迎え、やはり進めるべきは停戦交渉だ。それこそが日本国民を含む世界の多くの人々が救われる唯一の途だ。

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●「ゼレンスキー氏とバイデン氏の会談、ウクライナ兵からの「贈り物」も」

20221222日 BBC日本語版

https://www.bbc.com/japanese/video-64060517

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が21日にアメリカ・ワシントンを訪れ、ホワイトハウスでジョー・バイデン米大統領と会談した。ゼレンスキー氏にとっては、ロシアによる軍事侵攻が今年2月に始まって以降で初の外国訪問となった。

米東部時間21日午後2時半(日本時間22日午前4時半)ごろホワイトハウスの大統領執務室にゼレンスキー氏を迎え入れたバイデン氏は、アメリカはウクライナの「公正な平和」を支援していると語り、世界はウクライナの大統領に「感銘を受け」続けているとたたえた。また、米誌タイムが「今年の人」にゼレンスキー氏を選んだことを念頭に、本人を「あなたは今年の人だ」と呼んだ。

これに対してゼレンスキー氏は、アメリカ訪問は「大きな名誉」だとして、アメリカによる「多大な支援」を「心からありがたいと思っている」と述べた。

また、訪米前に訪れていたウクライナ東部ドネツク州の激戦地バフムートに言及し、現地の軍指揮官からバイデン大統領への軍事勲功メダルを託されたと説明。バイデン氏が「とても勇敢な大統領」なので、勇気をたたえるメダルを授けたいと、「とても勇敢な指揮官」からことづけされたとして、バイデン氏に勲章を手渡した。この指揮官は、アメリカが提供したM142高機動ロケット砲システム(HIMARS)の使用を担当しているという。

 

バイデン氏は、自分にそれほどの勲章を受ける資格はないものの「とてもありがたい」としてこれを受け取り、バフムートで戦うウクライナ軍の指揮官に返礼品を送りたいと答えた。

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 ウクライナ軍は戦争を継続できるであろうが、問題はウクライナ国民の生活がどうなるかである。厳しい冬季にエネルギー不足となれば、弱者から凍死などの危機的状況に陥ることになる。ウクライナ政府は国民の生活を支えながら、戦争を継続するという難しい仕事をしなければならない。ウクライナへの支援は西側諸国にとっても大きな負担である。西側諸国の国民や政治家の一部には「どこまで続く泥濘(でいねい、ぬかるみ)ぞ」と、もういい加減にしてもらいたいという声が出ている。

 

 

 

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ロシア・ウクライナ戦争が冬季に入る中で起きる5つの重要な疑問(Five crucial questions as Russia-Ukraine war enters winter

エレン・ミッチェル、コリン・メイン筆

2022年11月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/3748660-five-crucial-questions-as-russia-ukraine-war-enters-winter/

ウクライナ全土に冬が訪れる中、ロシアの空爆はとどまるところを知らない。

クレムリンが派遣しているロシア軍がウクライナの都市や主要インフラを攻撃しているにもかかわらず、キエフの軍隊は回復力(resilient)を証明し、ウクライナ東部と南部の占領地域からロシア軍を追い出している。

ウクライナ軍を更に強化しているのは、アメリカとヨーロッパ諸国からの安定した軍事・人道支援であり、アメリカ政府が水曜日に発表した、極めて必要な防空弾薬を含む4億ドルの重要な支援もその1つである。

西側諸国の武器は、ロシアの動きをとどめ、ミサイル弾幕を鈍らせるのに役立ったが、ロシアがウクライナのエネルギーシステムを完全に麻痺させることで冬を兵器化しようとしている。国際社会は季節が戦いにどのように影響するかを注意深く見守っている。

ロシア・ウクライナ戦争が冬に入る中で、5つの重要な疑問を見ていく。

(1)戦闘において冬がどれくらいの役割を果たすか?(How much will winter play a role in the fight?

戦闘が10ヶ月目に入り、ウクライナに冬が訪れ、寒さが厳しくなるにつれ、戦闘は徐々に先細りになると予想されている。

ウクライナは9月に開始した反攻作戦(counteroffensive)で占領地の解放に成功したが、ロシアは現在もウクライナの約20%の領土を支配している。ドネツク州やルハンスク州などウクライナ東部の大部分とクリミアもその範囲に含まれる。

コリン・カール政策担当米国防次官は先週、「ウクライナの雪によって道がぬかるんでいる天候(sloppy weather in Ukraine)」が既に戦闘をやや減速させており、ぬかるみによってどちらの側も大規模な攻勢を実行するのは困難になっていると述べた。

カール次官は「気候の課題は今後数週間で更に悪化すると思うので、その結果として戦闘が遅くなるかどうかを見なければならないと考えている」と記者団に語った。

米国防総省によると、厳しい冬に備え、アメリカは発電機やテントに加え、数万枚のパーカー、フリースの帽子、ブーツ、手袋などの防寒具を提供しようとしていると述べている。

(2)ウクライナ国民は寒冷な気候の中でどれくらい苦しむだろうか?(How much will Ukrainians suffer in the cold?

ウクライナは、全土の主要な人口密集地やエネルギー社会資本(インフラ)に対して、ロシアによる容赦ない空爆に晒されている。

モスクワは10月以降、ミサイルやドローンによる攻撃を強化し、イランが提供するカミカゼ・ドローンを使って主要都市を狙い、最大限の被害を与えている。

11月14日だけでも、ロシアは推定60から100発のミサイルをウクライナの多数の都市に向けて発射した。

ウクライナ政府系の送電システム運営会社ウクレナーゴ(Ukrenergo)の社長によれば、先週はウクライナの送電網への攻撃で「甚大な」被害を受けたが、国内の火力発電所も水力発電所も現在のところ無傷だということだ。

結果は壊滅的なものとなっている。ウクライナのエネルギー省は水曜日、クレムリンの攻撃によって「大多数の電力消費者が電力を失った」と指摘している。

世界保健機関(WHO)のヨーロッパ地域局長であるハンス・ヘンリ・P・クルージによると、ウクライナはエネルギー節約のために計画停電を行っているが、冬の間は市民が大きな被害を受けると予想され、寒さが厳しくなるにつれ、今後数か月で200万から300万人が避難する可能性があるということだ。

また、米統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将は先週、冬の到来とともに「ウクライナの家族は電力も、更に言えば暖房も使えなくなる」と述べ、それが「計り知れない苦痛」を人々にもたらすと予想した。

ミリー議長は記者団に対して次のように語った。「人間の基本的な生存と生活が深刻な影響を受け、ウクライナの人々の人的苦痛が増すだろう。これらの攻撃は、ウクライナの病人や高齢者をケアする能力を間違いなく阻害するだろう。病院は部分的に稼働することになるだろう。高齢者は風雨にさらされることになるだろう」。

(3)ロシアはウクライナ東部で領土を獲得できるか?(Can Russia take territory in the east?

ロシアは数週間前から東部の都市アヴディフカとバフムトを攻撃し、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領が「本物の地獄」と表現する状況を作り出している。

そして、状況は悪化の一途を辿っている。ドネツク州東部の砲撃は今週エスカレートしており、戦争監視団は、ロシアが南部のケルソンから撤退した後、東部に更に軍隊と武器を送り込む可能性があると述べている。

ウクライナ軍参謀本部は火曜日、「敵は、接触線付近の我が軍の位置と居住地への砲撃を止めない」と発表した。

ウクライナ軍参謀本部は声明の中で「重要なインフラや民間住宅への砲撃が続いている。バフムトとアヴディフカ方面では、敵は攻撃的な行動に集中している」と述べている。

しかし、ウクライナは今のところ何とか持ちこたえている。

先月、戦争の専門家たちの間で、ドネツクでのロシアの取り組みを主導しているワグネル準軍事部隊が、10月末までにバフムトを奪取する期限を与えられているとの話が広まり、プーティンは、他の地域で増大する損失を相殺するために勝利を切望している。

ウクライナがバフムトを失えば、ロシアはドネツクの他の重要都市に進出することが可能になる。

ロシアは、以前ケルソンにいた2万人以上の部隊から、今後数カ月間の戦争に参加するために動員されているとされる20万人近い予備役まで、十分な支援軍勢力を持っている。

しかし、ワグネル・グループを設立したロシアのオリガルヒで戦争タカ派のエフゲニー・プリゴジンでさえ、ウクライナ軍の進展が遅いことを認めている。

プリゴジンは先月発表した声明の中で次のように述べている。「私たちの部隊は常に最も激しい敵の抵抗にあっているが、敵は十分に準備され、動機づけられ、自信に満ちて調和的に働いていると考えている。これは、私たちの戦闘機が前進することを妨げるものではないが、私はそれがどれくらいかかるかについてコメントすることはできない」。

(4)ロシアの動員は効果を発揮するだろうか?(Will Russia’s mobilization start to make a difference?

プーティンが予備役の動員という劇的な措置を取り、ウクライナでの戦争に30万人の兵士を加える可能性が出てから2ヶ月以上が経過した。

この動きはロシアで即座に影響を及ぼし、「特別軍事作戦(special military operation)」に参加するために召集された息子や父親を持つ何千もの家族にとって、戦争がより身近に感じられるようになった。

しかし、予備役が訓練を受け、装備を整え、戦場に送り出されるまでには数カ月かかると予想されていた。それでも、訓練された強固なウクライナ軍部隊に対して、ロシアの予備役投入がどのような影響を与えるのか、もし与えることができるとすれば、それには大きな懐疑が残っている。

戦争研究所は、「ロシアの動員された予備役が抗議と脱走を続けているにもかかわらず、新しく編成された部隊の最初のグループは訓練を受け、ロシアに併合されたウクライナ東部のザポリツィア、ルハンスク、ドネツク地域に配備されている」と報告している。

戦争研究所は、「ロシア軍は、ドネツク州での攻撃活動を再開し、ルハンスク州での防御態勢を維持するために、新たに動員されたもしくは再配置された軍人を使い続けるだろう」と今月(11月)初めに報告している。

クレムリンはまた、来年の春と夏にロシア軍を強化するために、12月と2023年1月に始まる動員の「第二波(second wave)」を準備していると伝えられている。

このような大規模な動員によって、ロシア軍がこれまで苦しんできた士気低下や兵站の問題を克服できるかどうかは不明確である。

(5)ロシアとウクライナ双方は交渉を行う可能性があるだろうか?(Could the two sides talk?

ウクライナで戦闘が激化する中、アメリカと他の西側諸国は、モスクワとの和平交渉に向かうようキエフをどれだけ強く後押しできるか、頭を悩ませている。

今月初め、ミリー議長は、ロシア軍は9カ月間の紛争で「あらゆる(every single)」目的に失敗し、「本当に酷い(really hurting bad)」状態であるため、戦争を終わらせるための交渉の窓があるかもしれないと述べた。

先週、ミリー議長は記者団に対し、「交渉は、自分が強く、相手が弱いときに行いたいものだ。政治的解決の可能性はあるかもしれない。私が言っているのは、その可能性があるということだけだ。私が言っているのはそれだけのことだ」と述べた。

しかし、ミリーは、冬季を間近に控えたこれからの戦いの現実も強調した。

ウクライナ人がクリミアを含む全てのロシア軍を国から追い出すというウクライナの軍事的勝利の可能性は「高くない」とミリーは予測した。

これらのコメントは、ミリー議長がニューヨークでのイヴェントで交渉を推進しているように見えた1週間後に出された。ミリー議長はイヴェントで聴衆に対して、今回の戦争でウクライナとロシア双方は、軍事上の勝利を獲得することは不可能で、戦争を交渉で終わらせることが必要だということを受け入れるべきだと述べた。

ミリーは「交渉の機会があれば、平和を実現できるのであれば、それを掴むべきだ」と述べた。

しかし、ホワイトハウスは、キエフにモスクワとの会談や領土の譲渡を強要しているのではないと強調している。

ジョン・カービー国家安全保障担当報道官は先週、記者団に対し「交渉の準備ができたかどうか、いつ交渉に応じるか、そしてその交渉がどのようなものかは、ゼレンスキーが決めることだ」と述べた。

カービー報道官は「アメリカからは誰も、ゼレンスキー大統領を交渉のテーブルに着かせた

また、ゼレンスキーが今月初め、交渉が合意される前にプーティンが政権から退くという要求を取り下げたことも、今後の交渉の可能性に関する憶測を呼んでいる。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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