古村治彦です。
2022年2月24日に勃発したウクライナ戦争は年を越した。戦争期間は300日を超え、もうすぐ開戦して1年ということになる。2023年もウクライナ戦争の暗い影が私たちの上にかかってくる。食料や資源価格の高騰を私たちは身をもって感じている。年末年始に買い物をした時に改めて価格の高騰や消費税の重税感を持った人たちも多いと思う。
昨年12月、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官がウクライナ戦争停戦の提案を行った。提案は、ウクライナはNATOと正式な関係を結び(正式な加盟とは書いていない)、ロシアはウクライナ戦争後に占領した地域から撤退し、戦争前にロシアが掌握している地域での住民投票を行うという内容だ。
キッシンジャーの提案は、戦争前に戻るということだ。ウクライナがNATOと正式な関係を結ぶという彼の発言内容は気になるところだが、正式加盟ということではないだろう。ウクライナがNATOとの関係を深め、アメリカが軍事支援を行い、ウクライナが増強されていく過程で、ロシアは恐怖感を募らせ、最終的にウクライナ戦争となった。ウクライナの国防をNATOとロシアが交渉してその内容を決めれば、ロシアがウクライナを攻撃することはなく、NATOもウクライナを支援することが可能となる。そういう意味での正式な関係であろう。その内容はロシアも承認できるものであるべきだ。
ウクライナ政府は、1991年時点でのウクライナ国土を全て奪還することを目指し、このような提案は拒絶している。ウクライナは今回の戦争を通じて、ウクライナ東部とクリミア半島を奪還しようとしている。戦争でなければアメリカをはじめとする西側諸国が支援することはない。支援がなければウクライナは戦争をすることはできない。ウクライナ戦争がなければ、ウクライナは現状を容認するしかない状況だった。しかし、ウクライナ戦争が起きたことで、西側からお手盛りで支援が行われる。それを利用して、東部とクリミア半島をめぐる問題を解決しようとしている。
しかし、西側諸国には「戦争による疲労」が蓄積している。西側諸国は打ち出の小槌を持っている訳ではない。ウクライナに対する支援は西側諸国の一般国民の血税が原資だ。一般国民は生活が苦しい中で、「いつまで続くのか」という不満を募らせている。
ウクライナ戦争に関しては、アメリカ政府の中でも停戦を行うべきという声もある。ウクライナ軍がウクライナ戦争後にロシアに占領された地域の奪還までは支援するだろうが、それ以上となると西側諸国は支援を躊躇するだろう。それでもなお、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領率いるウクライナ政府が戦争を継続し、あくまで全領土の奪還を目指すならば、アメリカはゼレンスキーを処分することだろう。安倍晋三元首相がそうであったように。
(貼り付けはじめ)
ロシア・ウクライナ戦争を終わらせる交渉のためのロードマップをキッシンジャーが提案(Kissinger
proposes roadmap for talks to end Russia-Ukraine war)
コリン・メイン筆
2022年12月18日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/policy/international/3780225-kissinger-proposes-roadmap-for-talks-to-end-russia-ukraine-war/
ヘンリー・キッシンジャーは、ウクライナにおけるロシアの戦争を終わらせるための和平交渉を推し進め、停戦のための枠組みを提供する記事を、土曜日に発表した。
キッシンジャー元米国務長官は『ザ・スペクテイター』誌に寄稿した、ウクライナがNATOと正式な関係を結び、ロシアが侵攻して以来獲得した領土から撤退し、ウクライナ戦争の前にロシアが占領した領土の運命を国民投票で決める可能性があることを示唆した。
キッシンジャーは次のように書いている。「私は、ウクライナにおけるロシアの侵略を阻止するための連合諸国の軍事的な努力に、繰り返し支持を表明してきた。しかし、既に達成された戦略的変化を基礎にして、交渉による平和の実現に向けた新しい構造に統合する時期が近づいている」。
キッシンジャーは5月に、「戦争前の状況(the status quo ante)」に戻るための「境界線(dividing line)」にロシアとウクライナの両者が合意すべきであると述べ、基本的にウクライナに平和と引き換えにクリミア半島やドネツク州の一部を含む領土を割譲するよう求めている。
週末の記事で、99歳の外交官であるキッシンジャーは、これらの領土の支配は停戦合意の後に決定されると述べている。
キッシンジャーは次のように書いている。「戦前のウクライナとロシアの境界線が戦闘や交渉によって達成できない場合、自己決定(self-determination)の原則に頼ることが検討されるだろう。国際的な監督下にある自己決定に関する住民投票(referendums)を、何世紀にもわたって何度も変更されてきた領土に適用することができるだろう」。
そして、キッシンジャーは、ウクライナはウクライナ戦争の期間中、「中央ヨーロッパの主要国(major state in Central Europe)」として「ヨーロッパで最大かつ最も効果的な陸軍(one of the largest and most effective land armies in Europe)」の地位を確立し、西側の安全保障同盟に加盟する道を開いたと主張している。
キッシンジャーは「和平プロセスは、ウクライナを、たとえ表明されたものであっても、NATOと結びつけるべきである。中立(neutrality)という選択肢は、特にフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した後ではもはや意味をなさない」と書いている。
ウクライナのNATO加盟の可能性は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領によるウクライナへの侵攻の原動力と見なされていた。
ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、今年初めにスイスのダヴォスで開かれた世界経済フォーラムでのキッシンジャーの提案を厳しく批判し取り上げなかった。また、ゼレンスキーの大統領官邸は今週、より詳細な提案を受け入れないと示唆した。
ゼレンスキー大統領の補佐官を務めるミハイロ・ポドリャクはテレグラム錠に次のように投稿した。「単純な解決策を支持する人は皆、次の明白なことを思い出すべきだ。悪魔との合意、つまりウクライナの領土を犠牲にした悪い平和は、プーティンの勝利であり、世界中の独裁者の成功のレシピとなる」。
ウクライナ政府は、ロシアへの譲歩を含む和平案を拒否しており、いかなる領土も譲らず、モスクワの軍隊が国内から完全に撤退するまで戦うと主張している。
ウクライナのある外交官は、10月に億万長者のイーロン・マスクが、ロシアとの戦争を終わらせるために、ウクライナの領土を譲り、争いのある地域で新しい選挙を行うことを提案した後、「ふざけるな(f— off)」とマスクに向かって直接吐き捨てたと伝えられている。
米統合参謀本部議長マーク・ミリー陸軍大将は11月、ロシアがケルソンから撤退し、冬の間は「交渉の好機(a window of opportunity for negotiation)」になるかもしれないと示唆し、ウクライナ当局を激怒させた。
ミリー議長はその後、自身の発言の真意を明らかにしようとして、アメリカは「ウクライナを自由にするために必要な限り支援を続ける。いつ交渉するかはウクライナ次第だ」と発言した。
しかしながら、アメリカは、ウクライナを支援する世界各国での戦争による疲労(war
fatigue)に対応するため、ゼレンスキー大統領にロシアとの交渉に前向きであることを示すよう促したと複数のメディアが報じている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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