古村治彦です。

 日本の大型連休前半の5月1日の月曜日、アメリカのカリフォルニア州を基盤としていたファースト・リパブリック・バンク(FRB)が経営破綻し、JPモルガン・チェースが預金や資産を買い取ると発表された。アメリカの地方銀行破綻は連続しており、「次はどこか?」という不安が出ている。預金減少率というデータもある訳で、このデータに出てくる銀行に関して厳しい見方が出ているだろう。

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ファースト・リパブリック・バンクは今年3月からのアメリカの地方銀行連続破綻の影響をもろに受けて、預金が10兆円程度急激に減少し、それが破綻につながった。預金減少に軌を一にして、株価も急落した。2023年3月中旬までは120ドル台をキープしていたのに、それから真っ逆さまに急落し、最後は3ドル台になっている。
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 ファースト・リパブリック・バンクの資産や預金がJPモルガン・チェースに買収されたことで、一応の安心は得た。しかし、これからも連鎖的に銀行破綻が続くのではないかという不安を拭い去ることはできない。預金者としては「安心安全な銀行に預金を移す」という行動を取ることになり、大手銀行に預金が集中するということになるだろう。そうなれば、中小の銀行はさらに厳しくなる。
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 アメリカの中央銀行である連準備制度(Federal Reserve System)理事会(Federal Reserve BoardFRB)は政策金利(FFレート)を引き上げ、5%に達すると見られている。アメリカ国内の物価高、インフレに対処するための利上げであるが、銀行にとっては厳しい環境になる。新規融資は減少する、住宅ローンの返済が厳しい借り手が増えてくる、預金者は増えていくが利子をつけなければならない、こうした状況で、銀行の経営は厳しくなる。銀行が保有する米国債にしても、金利が上昇すれば価格(資産価値)が下がる。日本のように、預金者(資金の貸し手)に利子をつけないということはアメリカではできない状況になっている。

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 アメリカは利上げもあって、不況に突入していく。そうなればさらに銀行が破綻することになる。しかし、アメリカの中央銀行である連邦準備制度理事会は5%までは金利を上げて、物価を下げることを優先しようとしている。2023年は厳しい状況が続くことになる。現在の物価高は、エネルギー価格や食料価格の上昇が原因であり、その根本原因はウクライナ戦争である。ウクライナ戦争が終わらねば、物価高の状況は終わらない。しかし、戦争は終わりそうにない。終わらせないという勢力がいる。世界中の人々の苦しみは続く。

(貼り付けはじめ)

ファースト・リパブリック・バンク破綻は銀行システムとより広範な経済についての恐怖感を醸成している(First Republic Bank collapse spurs fears for banking system, broader economy

カール・エヴァース・ヒルストロム筆
2023年5月1日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/business/banking-financial-institutions/3982011-first-republic-bank-collapse-spurs-fears-for-banking-system-broader-economy/

ファースト・リパブリック・バンク(FRB)の破綻は、アメリカの銀行システムとそれに依存する広範な経済の強さについて疑問を投げかけるものだ。

ファースト・リパブリック・バンクの資産規模は先月2300億ドル近くに達しており、月曜日に発表されたファースト・リパブリック・バンクの経営破綻は、シリコンヴァレー銀行(SVB)の破綻を上回る、アメリカで2番目に大きな銀行破綻となった。アメリカ史上最大の銀行破綻4件のうち3件が、この2ヶ月の間に起きている。

連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance CorporationFDIC)は月曜日、サンフランシスコに拠点を置く地方銀行ファースト・リパブリック・バンクの経営権を取得し、JPモルガン・チェースへの売却を仲介した。この取引により、預金者たちの預金は保護され、株主は一掃され、アメリカ最大の銀行であるJPモルガン・チェースが更に大きくなる可能性が高い。

ファースト・リパブリック・バンクの運命は、SVBの破綻によって富裕層の顧客がパニックに陥った後、同銀行が1千億ドルの預金を失ったことを明らかにした時に決まった。ファースト・リパブリック・バンクの株価は先週、75%急落した。

ファースト・リパブリック・バンクが最近の銀行危機の最後のドミノになるかは不明だ。それは、預金者が他の金融機関から資金を引き揚げるかどうかにかかっているからだ。

JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは月曜日、「危機のこの部分は終わった」と述べ、金融システムは強固だと信じているが、より小さな銀行が破綻する可能性はあると続けて述べた。

●より多くの銀行が破綻するのか?(Will more banks go under?

ファースト・リパブリック・バンクは、富裕層の顧客への依存度が高く、預金の3分の2以上がFDICの保険上限額である25万ドルを超えている。この比率はシリコンヴァレーバンクよりは低いものの、他の地方銀行よりは高く、預金者は損失を恐れて資金を引き揚げることになった。

また、米連邦準備制度(Federal Reserve)の利上げで価値が急落した長期国債の含み損が大きく、預金流出をカヴァーするための資金調達に支障をきたしていたことも、シリコンヴァレーバンクが抱えていた大きな問題だった。

他の銀行にはそれほど多くの無保険預金はなく、規制当局が全ての無保険預金者を保護するための措置をとった後に流出が鈍化したが、銀行部門は投資に関する同じ種類の含み損で溢れている。

FDICによると、アメリカの銀行は2022年末時点で6200億ドルの有価証券の含み損を抱えている。ニューヨーク大学とペンシルヴァニア大学ウォートン経営大学院の教授たちによる3月の研究では、全ての貸付金と証券を考慮すると、その含み損は1兆7000億ドルに近いと推定されている。

ゴールドマン・サックスのアナリストによると、この部門は約3兆1000億ドルの商業用住宅ローンを保有しており、中小銀行や地方銀行がその80%を占めているという。リモートワークの普及に伴い、オフィスビルの価値が下がり、債務不履行の可能性が高まっている。 

銀行は通常、銀行の経営破綻や市場の暴落に直面することがない限り、こうした損失を食い止めることができる。

ファースト・リパブリック・バンクのような地方銀行の上場投資信託は、月曜日に2.4%下落した。このファンドは3月上旬以来、約30%下落している。JPモルガンの株価は月曜日に2.3%上昇した。

アメリカ銀行協会のロブ・ニコルズCEOは、月曜日のファースト・リパブリック・バンクの資産売却は「国の銀行システムに対する信頼を強化する」と述べた。

アメリカ独立コミュニティバンク経営者協会のCEOであるレベッカ・ロメロ・レイニーは月曜日、政策立案者たちに対して、地域銀行と保険外預金に依存しない小規模なコミュニティバンクを区別するよう促した。

●減速する経済に対するもう1つの脅威(Another threat to a slowing economy

各金融機関のチーフエコノミストの多くは、今年いくつかの大手銀行が破綻する前に、アメリカが2023年に不況に陥ると見ていた。何年にもわたる高インフレと、商品やサーヴィスに対する需要を鈍らせることを目的とした利上げの結果、個人消費は落ち込んでいる。

大手銀行がバランスシートのリスクを減らすために融資を控えている今、予測はさらに暗くなっている。信用へのアクセスが減少すると、新規事業の成長が鈍化し、雇用主が自社に投資して労働者を増やす能力が損なわれると、専門家たちは述べている。

eToroの投資アナリストを務めるカリー・コックスは、電子メールの中で「銀行システムは、私たち自身のお金から、私たちを雇用する企業のお金、そしてそれらの企業の経済的安定性まで、私たちの生活の多くの領域に関連している」と述べている。

コックスは更に「小さな問題が、あっという間に大きな問題になることがある。これが中央集権的な金融システムの弊害だ」と述べている。

●バイデンは銀行に対して自信を示す(Biden expresses confidence in banks

ジョー・バイデン大統領は月曜日、連邦規制当局の行動により、アメリカの金融システムは「安全かつ健全(safe and sound)」であると述べた。また、連邦議会に対し、銀行経営者たちの責任を追及するよう求め、規制当局には大手銀行に対する規制を強化するよう促した。

「皆さん、私たちは再びこのような状況に陥らないようにしなければならない。私たちはその保証をするための道を順調に進んでいると考えている」とバイデンは述べた。

3月の銀行破綻の原因を検証する金曜日の報告書で、連邦準備制度(FR)当局者たちは、資産1000億ドル以上2500億ドル未満の銀行に対する資本要件とストレステストを緩めた2018年の法律の存在を指摘した。連邦準備制度は、法律に基づく権限の一環として、より厳しいルールを検討している。

金融委員会の共和党幹部は月曜日、アメリカの銀行システムは強固な足場を築いていると主張し、FDICがファースト・リパブリック・バンクの民間での買い手を見つけたことを称賛した。シリコンヴァレーバンクの破綻の際には見つけることができなかった。

連邦下院金融サーヴィス委員会のパトリック・マクヘンリー委員長(ノースカロライナ州選出、共和党)は声明の中で、「アメリカ人は、アメリカの銀行に預けている預金の安全性に自信を持ち続けるべきだ」と述べた。

FDIC決議が反発を招く(FDIC resolution sparks backlash

FDICが月曜日、JPモルガン・チェースが大手銀行の資産を政府補助の割引価格で購入することを事実上許可した。そのことで反発に晒された。

批判者たちは、規制当局は銀行の破綻を解決するための効果的で公正なガイドラインを策定する必要があるとし、FDICはファースト・リパブリック・バンクの破綻に十分な備えをしていなかったと主張した。

FDICの共和党側理事であるジョナサン・マクカーナンは、月曜日の生命の中で、「私たちは、利益を私物化し、損失を社会化する我が国の救済文化を最終的に終わらせる最善の策として、強力な資本要件と有効な解決枠組みに焦点を当てて、銀行破綻に対処する計画を立てるべきだ」と述べている。

政策研究会社フェデラル・フィナンシャル・アナリティックスのマネージング・パートナーであるカレン・ペトロウは、FDICが「利己的な経営、手のかからない取締役会、不十分な監督、システム上のリスクを可能にするモラルハザード」を助長しているとメモを発表した。

ファースト・リパブリック・バンクの預金者たちを保護するため、FDICは銀行への手数料で賄われている預金保険基金から推定130億ドルを使用している。

他の専門家たちは、この合意によって、「大きすぎて潰せない(too big to fail)」銀行だけが安全だという考えが定着し、小規模な金融機関の預金が脅かされる可能性があると主張している。

コーネル大学法科大学院のロバート・ホケット教授(法律・金融)は電子メールの中で、連邦議会はFDIC保険の上限を撤廃するか、「金融化したウォール街の銀行が全てを手に入れる」ことを許す(allowing “financialized Wall Street banks to take all”)リスクを冒すべきだと述べた。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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