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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカ軍の機関紙であるスターズ・アンド・ストライプス紙に掲載されたアメリカの対外政策に関する論稿を皆様にご紹介いたします。

 

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オバマ大統領は外交政策ドクトリンをイラクでテストされている(Iraq putting Obama's foreign policy doctrine to the test

 

レスリー・クラーク、アニータ・クマー・マクラッチー(ワシントン支局)

2014年7月2日

スターズ・アンド・ストライプス紙

http://www.stripes.com/news/iraq-putting-obama-s-foreign-policy-doctrine-to-the-test-1.291780

 

ワシントン発。イラクでは現在大きな衝突が起きている。この衝突は、バラク・オバマ大統領の外交政策ドクトリンに対するテストとなっている。

 

 バラク・オバマ大統領は彼自身の外交政策ドクトリンは、今年5月にアメリカ陸軍士官学校の卒業式での演説で明らかにした。オバマ・ドクトリンの内容は次のようなものだ。①世界中の紛争に対して軍事介入すべきという圧力に抗する、②軍事力の行使はアメリカの国益が重大な危機に瀕している時に限る、③軍事力の行使はアメリカ、もしくは同盟諸国が危機に陥っている時に限る、④同盟諸国や外国政府により大きな責任と負担を求める。

 

 このドクトリンの下、オバマ大統領はイラクに戦闘部隊を送らない代わりに、300名の軍事顧問団を派遣する計画があると発表した。今週にはバグダッドの空港など重要な施設を防衛するために200名の部隊が送られることが承認された。

 

 オバマ大統領のイラクに関する一連の決定は彼のドクトリンに従ったものである。これに対して、批判者たちは、「イラク国内の無秩序がもたらす複雑な脅威に対して十分に対処しているとは言えない」と批判している。

 

 米連邦下院議長ジョン・ベイナー下院議員(オハイオ州選出、共和党)は次のように批判している。「世界という舞台からアメリカが退くことは選択肢とはなり得ない。アメリカが退けば、同盟諸国は動揺し、アメリカ人をより大きな危険に晒す無秩序を生み出すだけのことだ」

 

 アトランティック・カウンシルのブレント・スコウクロフト記念センター(国際安全保障を研究)の副所長で運営責任者であるバリー・ペイヴェルは、オバマ大統領の後ろ向きの態度は、「アメリカの同盟諸国に対して、アメリカは自分たちの国益も含めて、アメリカにとって重要な国益を防衛する意志を持たないという認識を持たせることになる」と警告している。

 

 オバマ大統領がイラクに対して取った最初の方策は特別変わったものではない。アメリカは既に70以上の国々に対して軍事顧問団を送っている。ワシントンにあるアメリカン大学国際関係学部学部長のジェームズ・ゴールドガイガーは次のように語っている。「オバマ大統領に限らず、米大統領は常に軍事力の行使に“慎重”なものである」

 

イラクに派遣されるアメリカの軍事顧問団についてゴールドガイガーは「これは重要な動きではない。極めて小さな、最低限の動きである。アメリカの軍事顧問団派遣がイラクの将来にとって大きな影響を与えるとは考えない」と述べている。

 

 専門家の多くはオバマ大統領が空爆命令を下す場合、それを支持すると述べたが、オバマ政権ではオバマ・ドクトリンの下、そのような可能性を除外している。ある政権高官は、イラク国内の状況に関して「より良い情報」を受けた後でなら、オバマ大統領は空爆の命令を下すだろうと述べている。この政府高官は状況をよく分かってはいるが、政権の政策について対外的に発言する権限を有していない人物である。政権関係者の中には、コカ的な攻撃を行うために必要な諜報情報をアメリカ政府は持っていないと述べている人たちがいる。

 

 オバマ大統領は昨年、イラクの隣にあるシリアでの空爆を検討した。オバマ大統領は、シリア国内で継続している内戦に関わることを躊躇している。オバマ大統領は、ロシアが提案したシリアのアサド政権の化学兵器を完全に放棄させるための計画を支持した。化学兵器は廃棄されたが、シリア国内での内戦は継続している。先週、オバマ大統領は、議会に対して、シリアの穏健な反政府勢力の武装化に対する最終的な支援のために5億ドルを拠出する許可を与えるように求めた。

 

 ゴールドガイガーはオバマ大統領のアプローチについて次のように語っている。「オバマ大統領のアプローチの目的は、イラク政府がイスラム国家(正式にはイラク・シリア・イスラム国家)との戦いを進めるための援助を行うことである。しかし、オバマ大統領は大統領選挙期間中に反対した戦争にアメリカ人を関与させようとはしていない」

 

 ゴールドガイガーは次のように発言している。「オバマ大統領は、彼が大統領を退任する時に、アメリカがイラクとアフガニスタンに関与していないようにするという決心をしている。彼はまたアメリカが新しい戦争に関与しないようにさせているのだ」

 

 5月28日の米陸軍士官学校の卒業式での演説の中で、オバマ大統領はイラクについてほとんど言及しなかった。それでも言及した中で、オバマ大統領は卒業生たちに対して、「皆さんは2001年9月11日の同時多発テロ発生以降、イラクとアフガニスタンに派遣されることがないであろう最初の卒業生たちとなる」と述べた。

 

 オバマ大統領のアプローチが持つ1つの例外は、2011年にリビアに介入する決定を下したことだ。しかし、オバマ大統領は、ムアンマル・カダフィの追い落としのための国際的な協力体制をきちんと組織化するまでは介入を行わなかった。リビアにはアメリカ軍の地上部隊は派遣されなかった。このことについて、オバマ大統領は後に「これが将来の成功にとって重要なカギとなる」と述べた。しかし、リビア国内は無秩序状態が続き、暴力が蔓延している。2012年には、アメリカ公使と3名のアメリカ人が殺害される事件が起きた。

 

 オバマの思考は、アメリカ人がアフガニスタンとイラクからの撤退を熱望していた時期に選挙戦で約束した公約よりも先に進んでいる。

 

ランド研究所の上級政治学者で、米陸軍の将校を務めていたリック・ブレナンは、「オバマ大統領のアプローチは国際安全保障に対する哲学的なアプローチである。オバマ大統領のアプローチは哲学的な信念でしかない」と述べている。

 

 ブレナンは、「オバマ大統領のアプローチはアメリカの軍事力を使うのではなく、その他の方法で支援を与え、“他国がより大きな役割を果たす”ようにさせるようにするものだ」と述べている。

 

 オバマ大統領は士官学校の卒業式での演説で多くのことを話している。オバマ大統領はアメリカにとっての最大の脅威は、アルカイーダや過激派のテロ攻撃の可能性であり、それが今でも残っていると述べた。オバマ大統領は「テロリストのネットワークが拠点を定めようとする国々とより効率的な協力関係を築く」方法の実現を求めた。

 

 オバマ大統領はイエメンが協調のモデルケースになると指摘している。アメリカはイエメンに戦闘部隊を送っていない。しかし、イエメン政府がアラビア半島に蟠踞するアルカイーダ勢力と戦うことを支援するために無人機を派遣している。

 

オバマ大統領は最近ホワイトハウスでの演説の中で次のように述べている。「シリアとイラクの抱える諸問題を解決するために私たちがどのように協調のためのモデルケースを生み出したかを見て欲しい」

 

 オバマ大統領は「アメリカは、“アメリカの大規模部隊を派遣することなし”に、イエメンの対応力を強化することができている」と述べた。続けて、オバマ大統領は、「アメリカは十分な対テロ能力を持っている。私たちは、私たちの大使館を攻撃しようとしたり、ヨーロッパやアメリカにテロリズムを拡散しようとしたりしている人間たちを追いかけることができるのだ」とも述べた。

 

 ワシントンにある戦略国際問題研究所の戦略部門のアーレィ・A・バーク記念部長アンソニー・コーデスマンは「オバマ大統領の士官学校の卒業式での演説には限界がある」と述べている。

 

 コーデスマンは「オバマ大統領のアプローチは事態が緊迫化したら対応できないものである。しかし、オバマ大統領のイラクに対する対応は“正しい第一歩”である」と述べている。

 

 コーデスマンは次のように語っている。「しかし、問題は“第二、第三、第四”の段階である。そして、もし大変重要な決定的な行動を取る必要が発生した時、何が起きるだろうか?」

 

(終わり)