古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: アメリカ政治

 古村治彦です。

 

 前回、掲載した民主党全国委員会暫定委員長を務めたドナ・ブラジルの最新刊に関する報道が続いているようです。今度は『ワシントン・ポスト』紙が発売前の本を手に入れ、記事にしています。

 

 本の中で、ブラジルは民主党全国委員会委員長の権限として、大統領候補をヒラリー・クリントンからジョー・バイデンに交代させることを考慮したと書いているということです。その理由として、ヒラリーは熱意を持っていたが、選対幹部に熱意はなかった、また、ヒラリー選対の幹部たちが自分(ブラジル)を奴隷のように扱い、敬意を払わなかったということを挙げています。

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ドナ・ブラジル 

 ブラジルは、ヒラリー・クリントン勝利のために民主党予備選挙を捻じ曲げたデビー・ワッサーマン=シュルツの後任として暫定委員長となりました。ブラジルは民主党全国委員会について調査をし、ヒラリー・クリントンが有利になるようにしていた証拠を発見し、また、ヒラリー選対からは奴隷のように扱われたということを暴露しています。また、ヒラリーでは労働者階級から投票を期待できない(民主党の本来の支持基盤であるはずなのに)、ということをブラジルが認識していたということも分かりました。

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 私は民主党内部がここまでボロボロで、ヒラリー選対がそこまで腐っていたのかということに今更ながらに驚きを隠せません。ブラジルという人物は立派な人で、立派な民主党員であるのに、敬意も払わらずに、傲慢であったということは問題ですし、ヒラリー選対が口では綺麗ごとを述べながら、一番身近な黒人女性であるブラジルに「自分を鞭で打たれる奴隷少女のように扱うな」と言わせてしまうところに馬鹿らしい矛盾があり、ヒラリー陣営は敗れるべくして敗れたのだということが改めて明らかになりました。

 

 ブラジルはヒラリーに対して、というよりも選対幹部たちに対して批判的です。彼らはアメリカの一流大学を卒業した、若くて優秀な人々でした。しかし、彼らは選挙において必要な熱意や人間を遇する方法を知らなかったためにヒラリー落選という結果をもたらしてしまいました。

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ヒラリー選対 

 私はデイヴィッド・ハルバースタムの名著『ベスト・アンド・ブライテスト』を思い出します。この本は、アメリカ最高の頭脳がアメリカ政府に結集しながら、ヴェトナム戦争でアメリカは敗れてしまう、という内容です。エリートが陥りやすい落とし穴というものがあり、本来は労働者やマイノリティのために戦うべき民主党が、エリートたちのための党になってしまい、それが民主党の、ヒラリーの敗北をもたらしたということなのだろうと思います。ここから民主党が持ち直すには原点回帰ということしかないのだろうと思いますが、それが最も困難なことであろうと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

ブラジルは、「2016年の大統領選挙候補者をヒラリー・クリントンからジョー・バイデンに交代することを考えた」と語る(Brazile says she considered swapping Clinton for Biden as 2016 nominee

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年11月4日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/358775-brazile-says-she-considered-swapping-clinton-for-biden-as-2016-nominee

 

民主党全国委員会(DNC)暫定委員長を務めたドナ・ブラジルは、2016年の民主党の大統領選挙候補者指名を受けたヒラリー・クリントンの指名を取り下げ、ヒラリーの代わりに当時のジョー・バイデン副大統領を指名することを熟考したと発言した。

 

『ワシントン・ポスト』紙が土曜日に今度刊行されるブラジルの最新刊の一部について報道した。この記事の中で、ブラジルは著書で、民主党全国委員会暫定委員長の権限を行使して、労働者階級を熱狂させることができる候補者たち(大統領候補と副大統領候補)を立てることを考えた、と述懐していると報じられた。

 

ワシントン・ポスト紙によると、ブラジルが考えた大統領選挙候補者はバイデンで、副大統領候補はコーリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)であったということだ。

 

しかし、最終的にブラジルはこのような変更をしないと決断した。それは、ブラジルが、二大政党で初めての大統領選挙候補者の選挙運動をひっくり返すことなどできないと考えたからだと語っている。

 

「私はヒラリーについて、そして彼女を誇りに思い、熱狂しているアメリカの女性全てについて思いをはせた。この人たちのためにそんなことはできなかった」とブラジルは著書の中で書いている。

 

ブラジルの回顧録『切り刻まれた傷:ドナルド・トランプをホワイトハウスに導いた割込みと崩壊のインサイドストーリー(Hacks: The Inside Story of the Break-ins and Breakdowns that Put Donald Trump in the White House)』は11月7日に発売される。この本の中で、ヒラリー選対は、ヒラリー・クリントン元国務長官を大統領に当選させるために必要な熱意に欠けていた、とブラジルは書いている。

 

ヒラリー・クリントン選対の上級幹部たちはブラジルに尊敬の態度を示さなかった、また、有権者の動員を促進するための必要な資金を民主党に供給することを拒否した、と民主党に長年属しているヴェテランのストラティジストであるとブラジルは述懐している。

 

ブラジルはヒラリーに対しておおむね好意的に書いている。しかし、ブラジルは、ヒラリー・クリントン選対は、ヒラリーを当選させようとする熱意に欠け、ヒラリーを落選に導いた数多くの間違いを犯した、と書いている。ブラジルは、ヒラリー・クリントン選対のニューヨーク市ブルックリンに構えた本部を「人が亡くなっていく」病院のようだ、と考えていた、とワシントン・ポスト紙は報じている。

 

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ブラジルは、ヒラリー・クリントン選対が自分のことを「鞭を打たれる奴隷の少女」のように扱ったと批判(Brazile hit Clinton campaign for treating her like a ‘whipping girl’

 

マックス・グリーンウッド筆

2017年11月4日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/358777-brazile-hit-clinton-campaign-for-treating-her-like-a-whipping-girl

 

民主党全国委員会暫定委員長(DNC)を務めたドナ・ブラジルは、ヒラリー・クリントン選対の幹部たちから奴隷のように扱われ、それに対して、あなたたちの「鞭を打たれれる奴隷の少女」のように扱われるためにここにいるのではない、と語ったと著書の中で書いている。

 

「ワシントン・ポスト」紙は土曜日、ブラジルの最新刊『切り刻まれた傷:ドナルド・トランプをホワイトハウスに導いた割込みと崩壊のインサイドストーリー(Hacks: The Inside Story of the Break-ins and Breakdowns that Put Donald Trump in the White House)』からの引用を記事にして報じた。ワシントン・ポスト紙は発売前の本を手に入れたということだ。

 

回顧録の中で、ブラジルは、ヒラリー・クリントン選対の幹部チャーリー・ベイカー、マーロン・マーシャル、デニス・チェンとのやり取りを書いている。ブラジルは、ドラマ映画「それでも夜は明ける(12 Years a Slave)」に出てきた奴隷の少女のように扱われた、と述べている。

 

ブラジルは、「それでも夜は明ける(12 Years a Slave)」でルピタ・ニョンゴが演じたパッツィーを自分になぞらえた。そして、ヒラリー選対の幹部たちに対して次のように言ったと書いている。「私は“奴隷のパッツィー”ではないのよ。あなたたちは私を鞭打ち続けている。それに対して、出すと約束している資金を出さないし、私に仕事をさせない。私は、鞭を打たれる奴隷少女になるつもりはないの!」と言ったと書いている。

 

ワシントン・ポスト紙によると、ブラジルは著書の中で、ヒラリー・クリントンが意欲のある候補者であったが、ヒラリー選対には彼女を当選させるための必要な熱意と気持ちに欠けていたと書いている。

 

ブラジルは、ヒラリー選対が民主党全国委員会の行う有権者動員策に対する資金を提供せず、自分のことを尊敬もって扱わなかったと書いている。

 

ブラジルは著書の中で、彼女は怒りを感じながら、ヒラリー選対の幹部たちに対して、民主党全国委員会委員長の権限として、必要と感じたら候補者を後退させることもできるのだと述べたと書いている。ある時点で、ブラジルはヒラリー・クリントンと副大統領候補ティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出、民主党)を、ジョー・バイデン副大統領(当時)とコーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)に交代させることを考慮したと書いている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








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 古村治彦です。

 

 昨年の大統領選挙で民主党の予備選挙がゆがめられたものだったという内部告発がなされました。具体的にはヒラリー・クリントンに有利になるように仕向けられていた、その証拠があるというものです。この内部告発を行ったのは、ドナ・ブラジルという人物で、昨年、民主党全国委員会暫定委員長を務めました。

 

 昨年の民主党大会(ヒラリーが予備選挙で勝利して大統領選挙候補者指名を受ける大会)の前、民主党全国委員会の当時の委員長デビー・ワッサーマン=シュルツやスタッフがやり取りしたEメールがハッキングされ、流出しました。そして、その中に、「ヒラリーを勝たせるにはどうしたらよいか」ということを話し合う内容が含まれていました。これが大問題になり、ヒラリーの対抗馬だったバーニー・サンダースを支持する人々が抗議活動を展開し、デビー・ワッサーマン=シュルツは委員長を辞任しました。そして、後任で暫定委員長となったのがブラジルです。


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ワッサーマン=シュルツ(左)とブラジル

 ブラジルは、本を出版することになり、その内容に、昨年の大統領選挙予備選挙でヒラリーが有利になるように仕組まれていたということを示す証拠がある、ということを書いています。彼女は暫定委員長として、民主党全国委員会の内部について調査をする仕事をし、その結果として、予備選挙がゆがめられていたということを示す証拠を見たと書いています。

 

 具体的には2015年8月に、民主党全国委員会、ヒラリー・クリトン選対、ヒラリー・クリトン資金集め委員会連合の間で合意が締結・署名され、それによって、ヒラリー選対が資金不足に苦しんでいた民主党全国委員会に運営資金を提供する見返りに、民主党の財政、戦略、集めた資金すべてをコントロールする、というものでした。民主党は2012年のオバマ大統領の再選のために多額の負債を抱えていたという話は初耳で驚くばかりです。

 

 これでは、民主党が「ヒラリー・クリトン党」になるのと同じです。本来は公平な予備選挙を実施すべき全国委員長デビー・ワッサーマン=シュルツが率先してヒラリーに肩入れをしていたのも当然の帰結です。

 

 今回、このような暴露がなされたことで、ヒラリーの再登板の目はなくなりました。落選後、全国を回って、自分は悪くない、悪いのはCIA長官だったジェイムズ・コミーや対抗馬だったバーニー・サンダース、バラク・オバマ大統領、ジョー・バイデン副大統領、そして民主党全国委員会だと悪口を言い続け、トランプ大統領に対するロシアゲート問題に対して、「私の本を読めばもっとわかる」などとうそぶいていました。しかし、「お前がそもそもフェアな戦いをしないようにしていたのではないか、それで負けたら世話ないわ」ということになって恥をかきました。

 

 ドナ・ブラジルは汚れきっていない民主党員なのでしょう。彼女によってヒラリーのあくどさが暴露されました。これは民主党にとっては大きな痛手となりますが、「膿を出し切って再生の道を進む」ためには必要なステップということになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

ブラジル:クリントンが大統領候補指名プロセスをゆがめた「証拠」を見つめて「心が傷ついた」(Brazile: ‘Proof’ that Clinton rigged nomination process ‘broke my heart’

 

マロニー・シェルボーン筆

2017年11月2日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/358390-brazile-proof-that-clinton-rigged-nomination-process-broke-my-heart

 

民主党全国委員会(DNC)暫定委員長を務めたドナ・ブラジルが本を出版した。この最新刊の中で、ブラジルは、ヒラリー・クリントン選対が民主党の大統領候補指名システムにおいて、ヒラリーが有利になるようにしたことを示す証拠(とブラジルが主張している)を見つけた時「心が傷ついた」と書いている。

 

ブラジルの最新刊『切り刻まれた傷:ドナルド・トランプをホワイトハウスに導いた割込みと崩壊のインサイドストーリー(Hacks: The Inside Story of the Break-ins and Breakdowns that Put Donald Trump in the White House)』からの引用が『ポリティコ』誌に掲載された。この記事の中で、ブラジルは、ハッキングされたEメールが流出し、その中でクリントン陣営が大統領候補指名をゆがめたことが示唆されており、自分が暫定委員長になったのはこのことを調査することが責務であったと書いている。

 

ブラジルは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)に言及する際に、「9月7日に私はバーニー(・サンダース連邦上院議員)に電話を掛けた。この日までに私は証拠を見つけ、心が大きく傷ついていた」と書いた。

 

ブラジルは、クリントン陣営、民主党全国委員会、そしてクリントンの資金集め委員会連合との間に結ばれた合意について書いている。ブラジルによると、この合意は、「クリントン選対が党の財政、戦略、集めた資金全体をコントロールする」という内容であった。この合意内容によって、民主党は財政的に助けられた。ブラジルによると、2012年のバラク・オバマ大統領の再選のための活動で民主党は大きな負債を抱えることになったので、この合理はありがたいものであった。

 

ブラジルは「クリントン選対は民主党全国委員会の延命を行った。選対は民主党全国委員会の月々の最低限の必要経費分の資金を提供してくれた。一方、クリントン選対は民主党を資金集めのための情報センター・手形交換所として使った」と書いている。

 

ブラジルは、この合意は2015年8月に締結されて署名されたと書いている。ヒラリー・クリントンが民主党の指名を受けるほぼ1年前から、民主党はヒラリー・クリントンのコントロール下にあった。

 

ブラジルは「合意内容は、違法ではないが、倫理的ではなかったのは確かだ」と書いている。

 

「選挙運動を公平なものにしようとするならば、有権者がどちらに指導者になって欲しいかを決定する前に、一方の選対が党をコントロールするようなことを起こしてはならない。これは刑法上の犯罪行為ではないが、私の考えでは、これは党の誠実さを損なうものであった」とブラジルは書いている。

 

ブラジルの暴露は、サンダースの支持者たちの批判の列に加わるものだ。サンダースは民主党の予備選挙でヒラリーに対抗して出馬し、指名を得ることができなかった。

 

ブラジルは、自分よりも前に民主党全国委員会委員長を務めたデビー・ワッサーマン=シュルツ連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)を批判している。ブラジルは、デビー・ワッサーマン=シュルツが、「暫定委員長の役割は党をコントロールしないことで、素晴らしい管理者である必要などない」と述べた、と批判している。

 

「党の委員長というものは、大統領選挙が行われない期間は本部スタッフを縮小するものだ。しかし、デビー(・ワッサーマン=シュルツ)はそうしないという選択を行った。彼女は民主党全国委員会からの給与を与えるコンサルタントを多数雇用することにこだわった。そして、オバマ大統領の雇用したコンサルタントの給与も民主党全国委員会から支払われていた」とブラジルは書いている。

 

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ウォーレンは2016年の民主党予備選挙がクリントン有利にゆがめられていたと同意した(Warren agrees that 2016 Democratic primary was rigged for Clinton

 

ブランドン・カーター筆

2017年11月2日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/358514-warren-says-she-agrees-that-2016-democratic-primary-was-rigged-for-clinton

 

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は木曜日、2016年の民主党の大統領選挙予備選挙はヒラリー・クリントン有利にゆがめられていたと確信していると述べた。

 

CNNのジェイク・タッパーがウォーレンに対して、「民主党の予備選挙がヒラリー・クリントンに有利になるようにゆがめられていたと考えているか」と質問され、ウォーレンは簡潔に「イエス」と答えた。

 

タッパーは民主党全国委員会暫定委員長を務めたドナ・ブラジルの最新刊についてウォーレンに質問した。著書の中でブラジルは、ヒラリー・クリトン選対が民主党の予備選挙を自陣に有利になるようにゆがめた証拠を見つけたと述べている。

 

ブラジルの著書の引用は『ポリティコ』誌に掲載された。ヒラリー選対が指名を得るために予備選挙をゆがめようとしたことを示す民主党全国委員会のEメールがハッキングされ流出したあと、自分の仕事は民主党全国委員会を調査することであったとブラジルは述べた。

 

ブラジルは、民主党全国委員会、クリントン選対、そしてヒラリーの資金集め委員会連合との間に合意が結ばれていたことを発見した、とブラジルは語っている。合意内容は、クリントン選対が「民主党の財政、戦略、集めた資金すべてをコントロールする」というものだとブラジルは述べている。合意は、ヒラリー・クリントンが党の指名を受けるほぼ1年前の2015年8月に締結・署名された。

 

ウォーレンは、嫌疑は「本当の問題」であって、民主党全国委員会の新委員長トム・ペレスに対して、民主党の融和と統一に努力するように求めた。

 

「トム・ペレスが民主党全国委員会委員長に選ばれた直後、私は彼と話をしました。この時、私は彼に対して、民主党をまとめて欲しい、すべての人が民主党が民主党員のために働いているという確信を持てるようにして欲しい、民主党員が民主党のために働いていると思わせないで欲しいと言いました。ペレスは今試練を受けている最中なのです」とウォーレンは語った。

 

ウォーレンは続けて次のように語った。「これはトム・ペレスにとっての試練です。バーニー・サンダース、彼の代議員を党の統一過程に参加させて、“これは公平に行われているし、うまくいっている。これは私たちの確信だ”と言ってもらえるか、失敗するか、なのです」。

 

ブラジルは著書の中で、合意について暴露し、「これは違法ではないが、倫理的ではなかったと思われる」と書いている。

 

ブラジルは「これは犯罪行為ではないが、党の誠実さを傷つけるものだと考えている」と書いている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 これまでにもアメリカにおける戦闘的な左派グループであるantifaについての記事をご紹介しました。今回もまた、ピーター・ベイナートによる論稿をご紹介します。ベイナートの基本的な立場は、「antifaの暴力には反対だが、それを反対派が過剰に強調することにも反対」というものです。トランプ大統領が、シャーロッツヴィルでの事件が起きた後、白人優越主義やネオナチを明確に批判せずに、ぶつかり合った両者が悪い、という言い方をして批判を浴びました。

 

 白人優越主義やネオナチとそれらを信奉する人々による暴力はまずもって批判されねばなりません。白人優越主義やナチズムが席巻し、それが政権のイデオロギーになった時に、人類に大きな不幸をもたらしました。

 

 こうした白人優越主義やネオナチに対抗するために、反ファシズム運動、antifaが生まれたという歴史を考えると、その正当性が高いということは言えます。しかし、一般の人々を威圧するような行動が出てくるようになると話は別です。ポートランドで開催されたパレードで、参加者の中にトランプがかぶっている赤い帽子をかぶっている人がいれば、乱入する、という警告を出したのはやりすぎであり、自分たちの正義を押し付けて、かえって人々を抑圧し、彼らが反対していることを自分たちがやっているということになります。

 

 正義が暴走する、目的が手段を正当化する、という言葉がありますが、これは右派であろうが、左派であろうが、誰であろうが、許されることではありません。常に自分たちの主張に瑕疵はないか、間違っていないかということを顧みなければ、自分たちが抑圧する側になるということが起こります。そこは常に気を付けたいものです。

 

(貼りつけはじめ)

 

antifaに関してトランプが間違っていること(What Trump Gets Wrong About Antifa

―トランプ大統領が左派の暴力について懸念を持っているのなら、暴力的な左派の台頭を招いている白人優越主義運動と戦うことで左派の台頭の対処を開始することができる

 

ピーター・ベイナート筆

2017年8月16日

『ジ・アトランティック』誌

https://www.theatlantic.com/politics/archive/2017/08/what-trump-gets-wrong-about-antifa/537048/

 

火曜日の記者会見で、ドナルド・トランプは、彼が「オルト左派(alt left)」と呼ぶものについて長広舌をふるった。トランプは、先週末のシャーロッツヴィルで起きた事件について、白人優越主義者だけが非難されるべきではないと主張した。トランプは次のように明言した。「白人優越主義者たちの反対側にいたグループもまた大変に暴力的だった。これは誰も言いたがらないが」。

 

私はトランプの最後の言葉は正しくないということを自信をもって言える。本誌9月号には私の論稿「暴力的左翼の台頭」も掲載されている。その中で、私は、トランプが「誰も議論したくない」と主張している現象について議論している。トランプ大統領の発言は正しい。シャーロッツヴィルやその他の場所で、左派の活動家たちが振るう暴力が深刻な問題となっている。トランプ大統領が間違っているのは、左派と白人優越主義を比較可能なものと主張していることだ。

 

トランプが「オルト左派(この言葉が悪いということを後ほど説明する)」と呼ぶものは、antifaだ。Antifaは、反ファシスト(anti-fascist)を縮めた言葉だ。antifaの運動は1920年代から1930年代にかけてドイツ、イタリア、スペインの路上でファシストと戦った戦闘的左派にまで遡ることができる。1970年代から1980年代、1990年代にかけて、イギリスとドイツの人種差別に反対するパンクたちが、音楽シーンに浸透しつつあったネオナチのスキンヘッドたちを追い出そうとした。パンクを通じて、反人種差別行動と自称したグループ、のちの反ファシスト行動、antifaがアメリカで勢いを増していった。 antifaはトランプ時代になって爆発的な成長を遂げている。それには明確な理由がある。それは、白人優越主義が公の場に出てくるようになり、それに対抗するために人々が動員されるようになったからだ。

 

アナーキズム運動の一部として、antifaの活動家たちは、政府の政策を変更させることよりも直接行動で白人優越主義と戦っている。彼らは白人優越主義者たちを公の場で特定しようとし、彼らが失職し、アパートから追い出されるようにしようとしている。彼らは白人優越主義者のデモに乱入する。時には暴力が伴う。

 

私は論稿の中で同意したように、彼らの戦術の中にはトラブルを引き起こすだけのものが存在する。戦術のためにかえってマイナスになることがある。それは、保守派がantifaの暴力を自分たちの正当化や白人優越主義者たちの暴力の免罪に使うからだ。これはトランプが記者会見の時に行ったことだ。戦略的にもマイナスだ。それは、白人優越種者たちが自分たちを集会の自由の権利を侵害されている被害者であると描写するからだ。道徳的にもマイナスだ。それは、antifaの活動家たちはこの権利を蹂躙しているからだ。暴力を使用することで、公民権運動の白人優越主義との闘いにおける道徳的な遺産を否定している。 そして、人種差別主義者たちが集まることを否定することで、ACLUの道徳的な遺産を拒否している。1977年、ACLUは、ネオナチがイリノイ州スコーキーで行進する権利を守るために連邦最高裁まで戦った。

 

antifaの活動家たちはまじめだ。彼らは、自分たちの行為は弱い立場の人々が傷つけられることから守っていると純粋に信じている。コーネル・ウエストは、シャーロッツヴィルで自分たちが行ったのはこれだと主張している。しかし、antifaが主張している反権威主義は、根本的に権威主義的だということが言える。それは、antifaの活動家たちは誰も選挙で選ばれていないのに、「この人の考えは醜いので公の場で表明することはできない」ことを決めることができるという主張は権威主義的だ。このような反民主的、正統ではない権力は腐敗する。これは今年4月にオレゴン州ポートランドで起きたことが示している。Antifaの活動家たちは、ポートランドのローズフェスティヴァルのパレードで共和党の地方委員会が参加する場合に、トランプ大統領がかぶっている赤い帽子をかぶっている人々が一緒に歩く場合には、パレードに乱入するという警告を発した。Antifaの警告のために、共和党の地方委員会は、物理的な暴力や脅迫のために、有権者登録ができないと主張した。

 

だから、antifaは、保守陣営の創造の産物ではない。 リベラル派こそが対峙しなければならない道徳的問題なのだ。

 

しかし、antifaが問題であると発言することは、トランプが行ったように、白人優越主義と同等の問題だと示唆することとは違う。「オルト左派」という言葉を使うことは、存在しない道徳的な問題であると主張することである。

 

第一に、antifaは、暴力を使っているが、白人優越主義者たちが使うほどのレヴェルの暴力を使ってはいない。シャーロッツヴィルで殺人を犯したのは、antifaの活動家ではなく、ナチスの信奉者であったことは偶然ではない。名誉毀損防止連盟(Anti-Defamation League)によると、2007年から2016年までの10年間で、右派過激派は372件の政治的な動機を持った殺人を犯した、ということだ。左派の同様の事件はこの数字の2%以下に過ぎない。

 

第二に、antifaの活動家たちは、オルト右翼のように権力を掌握していはいない。白人優越主義、キリスト教優越主義はアメリカ史の中の長い期間、アメリカ政府の政策となってきた。アナーキズムはそうではなかった。アメリカの公園や政府機関の建物にミハイル・バクーニンの銅像がないのはそのためだ。Antifaにはスティーヴ・バノンのような人物はいない。バノンは、彼が参加していた「ブライトバート」について、「オルト右翼の討論の場」と呼んでいる。そして、現在はホワイトハウスで働いている(訳者註:その後は更迭された)。antifaにはジェファーソン・ボーリガード・セッションズ三世司法長官のような人物はいない。彼のミドルネームは南軍の将軍の名前で、ファーストネームは、南部連合の大統領の名前である。また、セッションズはNAACPを「反米的」と呼んだ。It boasts no equivalent to Alex Jones, アレックス・ジョーンズはドナルド・トランプを「素晴らしい」と称賛した。antifaの社会に関する考えは「オルト右翼」の考えほど有害ではないが、考えを実現するだけの力を持っていない。

 

antifaの考えは有害ではない。antifaの活動家たちは大量虐殺や強制奴隷労働を行った政権や体制を称賛しない。彼らのほとんどはアナーキストだ。アナーキズムは現実的なイデオロギーではない。しかし、アナーキズムはある特定の人種や宗教の人々を人間以下の存在と描くようなイデオロギーではない。

 

ドナルド・トランプがantifaを弱体化させたいと望むなら、自分自身の偏見をなくすように最大限の努力をすべきだ。彼の偏見に対抗して、antifaは人々を動員しているのだ。シャーロッツヴィルのような場所で南軍の銅像を降ろすことは良いスタートとなるだろう。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)

アメリカの戦闘的左派グループについての論稿をご紹介します③

 

 古村治彦です。

 

 これまでにもアメリカにおける戦闘的な左派グループであるantifaについての記事をご紹介しました。今回もまた、ピーター・ベイナートによる論稿をご紹介します。ベイナートの基本的な立場は、「antifaの暴力には反対だが、それを反対派が過剰に強調することにも反対」というものです。トランプ大統領が、シャーロッツヴィルでの事件が起きた後、白人優越主義やネオナチを明確に批判せずに、ぶつかり合った両者が悪い、という言い方をして批判を浴びました。

 

 白人優越主義やネオナチとそれらを信奉する人々による暴力はまずもって批判されねばなりません。白人優越主義やナチズムが席巻し、それが政権のイデオロギーになった時に、人類に大きな不幸をもたらしました。

 

 こうした白人優越主義やネオナチに対抗するために、反ファシズム運動、antifaが生まれたという歴史を考えると、その正当性が高いということは言えます。しかし、一般の人々を威圧するような行動が出てくるようになると話は別です。ポートランドで開催されたパレードで、参加者の中にトランプがかぶっている赤い帽子をかぶっている人がいれば、乱入する、という警告を出したのはやりすぎであり、自分たちの正義を押し付けて、かえって人々を抑圧し、彼らが反対していることを自分たちがやっているということになります。

 

 正義が暴走する、目的が手段を正当化する、という言葉がありますが、これは右派であろうが、左派であろうが、誰であろうが、許されることではありません。常に自分たちの主張に瑕疵はないか、間違っていないかということを顧みなければ、自分たちが抑圧する側になるということが起こります。そこは常に気を付けたいものです。

 

(貼りつけはじめ)

 

antifaに関してトランプが間違っていること(What Trump Gets Wrong About Antifa

―トランプ大統領が左派の暴力について懸念を持っているのなら、暴力的な左派の台頭を招いている白人優越主義運動と戦うことで左派の台頭の対処を開始することができる

 

ピーター・ベイナート筆

2017年8月16日

『ジ・アトランティック』誌

https://www.theatlantic.com/politics/archive/2017/08/what-trump-gets-wrong-about-antifa/537048/

 

火曜日の記者会見で、ドナルド・トランプは、彼が「オルト左派(alt left)」と呼ぶものについて長広舌をふるった。トランプは、先週末のシャーロッツヴィルで起きた事件について、白人優越主義者だけが非難されるべきではないと主張した。トランプは次のように明言した。「白人優越主義者たちの反対側にいたグループもまた大変に暴力的だった。これは誰も言いたがらないが」。

 

私はトランプの最後の言葉は正しくないということを自信をもって言える。本誌9月号には私の論稿「暴力的左翼の台頭」も掲載されている。その中で、私は、トランプが「誰も議論したくない」と主張している現象について議論している。トランプ大統領の発言は正しい。シャーロッツヴィルやその他の場所で、左派の活動家たちが振るう暴力が深刻な問題となっている。トランプ大統領が間違っているのは、左派と白人優越主義を比較可能なものと主張していることだ。

 

トランプが「オルト左派(この言葉が悪いということを後ほど説明する)」と呼ぶものは、antifaだ。Antifaは、反ファシスト(anti-fascist)を縮めた言葉だ。antifaの運動は1920年代から1930年代にかけてドイツ、イタリア、スペインの路上でファシストと戦った戦闘的左派にまで遡ることができる。1970年代から1980年代、1990年代にかけて、イギリスとドイツの人種差別に反対するパンクたちが、音楽シーンに浸透しつつあったネオナチのスキンヘッドたちを追い出そうとした。パンクを通じて、反人種差別行動と自称したグループ、のちの反ファシスト行動、antifaがアメリカで勢いを増していった。 antifaはトランプ時代になって爆発的な成長を遂げている。それには明確な理由がある。それは、白人優越主義が公の場に出てくるようになり、それに対抗するために人々が動員されるようになったからだ。

 

アナーキズム運動の一部として、antifaの活動家たちは、政府の政策を変更させることよりも直接行動で白人優越主義と戦っている。彼らは白人優越主義者たちを公の場で特定しようとし、彼らが失職し、アパートから追い出されるようにしようとしている。彼らは白人優越主義者のデモに乱入する。時には暴力が伴う。

 

私は論稿の中で同意したように、彼らの戦術の中にはトラブルを引き起こすだけのものが存在する。戦術のためにかえってマイナスになることがある。それは、保守派がantifaの暴力を自分たちの正当化や白人優越主義者たちの暴力の免罪に使うからだ。これはトランプが記者会見の時に行ったことだ。戦略的にもマイナスだ。それは、白人優越種者たちが自分たちを集会の自由の権利を侵害されている被害者であると描写するからだ。道徳的にもマイナスだ。それは、antifaの活動家たちはこの権利を蹂躙しているからだ。暴力を使用することで、公民権運動の白人優越主義との闘いにおける道徳的な遺産を否定している。 そして、人種差別主義者たちが集まることを否定することで、ACLUの道徳的な遺産を拒否している。1977年、ACLUは、ネオナチがイリノイ州スコーキーで行進する権利を守るために連邦最高裁まで戦った。

 

antifaの活動家たちはまじめだ。彼らは、自分たちの行為は弱い立場の人々が傷つけられることから守っていると純粋に信じている。コーネル・ウエストは、シャーロッツヴィルで自分たちが行ったのはこれだと主張している。しかし、antifaが主張している反権威主義は、根本的に権威主義的だということが言える。それは、antifaの活動家たちは誰も選挙で選ばれていないのに、「この人の考えは醜いので公の場で表明することはできない」ことを決めることができるという主張は権威主義的だ。このような反民主的、正統ではない権力は腐敗する。これは今年4月にオレゴン州ポートランドで起きたことが示している。Antifaの活動家たちは、ポートランドのローズフェスティヴァルのパレードで共和党の地方委員会が参加する場合に、トランプ大統領がかぶっている赤い帽子をかぶっている人々が一緒に歩く場合には、パレードに乱入するという警告を発した。Antifaの警告のために、共和党の地方委員会は、物理的な暴力や脅迫のために、有権者登録ができないと主張した。

 

だから、antifaは、保守陣営の創造の産物ではない。 リベラル派こそが対峙しなければならない道徳的問題なのだ。

 

しかし、antifaが問題であると発言することは、トランプが行ったように、白人優越主義と同等の問題だと示唆することとは違う。「オルト左派」という言葉を使うことは、存在しない道徳的な問題であると主張することである。

 

第一に、antifaは、暴力を使っているが、白人優越主義者たちが使うほどのレヴェルの暴力を使ってはいない。シャーロッツヴィルで殺人を犯したのは、antifaの活動家ではなく、ナチスの信奉者であったことは偶然ではない。名誉毀損防止連盟(Anti-Defamation League)によると、2007年から2016年までの10年間で、右派過激派は372件の政治的な動機を持った殺人を犯した、ということだ。左派の同様の事件はこの数字の2%以下に過ぎない。

 

第二に、antifaの活動家たちは、オルト右翼のように権力を掌握していはいない。白人優越主義、キリスト教優越主義はアメリカ史の中の長い期間、アメリカ政府の政策となってきた。アナーキズムはそうではなかった。アメリカの公園や政府機関の建物にミハイル・バクーニンの銅像がないのはそのためだ。Antifaにはスティーヴ・バノンのような人物はいない。バノンは、彼が参加していた「ブライトバート」について、「オルト右翼の討論の場」と呼んでいる。そして、現在はホワイトハウスで働いている(訳者註:その後は更迭された)。antifaにはジェファーソン・ボーリガード・セッションズ三世司法長官のような人物はいない。彼のミドルネームは南軍の将軍の名前で、ファーストネームは、南部連合の大統領の名前である。また、セッションズはNAACPを「反米的」と呼んだ。It boasts no equivalent to Alex Jones, アレックス・ジョーンズはドナルド・トランプを「素晴らしい」と称賛した。antifaの社会に関する考えは「オルト右翼」の考えほど有害ではないが、考えを実現するだけの力を持っていない。

 

antifaの考えは有害ではない。antifaの活動家たちは大量虐殺や強制奴隷労働を行った政権や体制を称賛しない。彼らのほとんどはアナーキストだ。アナーキズムは現実的なイデオロギーではない。しかし、アナーキズムはある特定の人種や宗教の人々を人間以下の存在と描くようなイデオロギーではない。

 

ドナルド・トランプがantifaを弱体化させたいと望むなら、自分自身の偏見をなくすように最大限の努力をすべきだ。彼の偏見に対抗して、antifaは人々を動員しているのだ。シャーロッツヴィルのような場所で南軍の銅像を降ろすことは良いスタートとなるだろう。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12








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 古村治彦です。

 

 今回は前回に引き続き、ジェイク・サリヴァンについての記事をご紹介します。今回は後半部についてご紹介します。

 

 サリヴァンは、それでもやはりアメリカの偉大さは、海外に介入することである、とい信念を変えていません。アメリカが世界に介入することで、世界を良くするという考えを捨てていません。また、エスタブリッシュメント、エリートとしての態度も崩していません。

 

 しかし、自分は故郷のミネソタ州に帰って、政治家をやるか、地区検事をやるべきではないか、そうすることで人々の声を聞き、生活を目にすることができる、とも考えているようです。彼は新たなエリート像を模索しているようです。

 

 それでも彼はワシントンの重力から逃れることはできず、また、ヒラリーとの関係も着ることができないでいるようです。

 

 サリヴァンは、人道的介入主義派のプリンスとして、これから温存されて、いつか民主党が政権に近づく時には大物となって出てくることになるでしょう。

 

 

(貼り付け終わり)

 

ケンタッキー州の田舎の町で生まれ育ったというある学生がサリヴァンの話に入り、「人口の少ない、飛行機や高速道路で通過するだけの田舎の州の出身ですが、私が一緒に育った人々と同じ考え方をすることは難しいのです」と語った。これを受けて、サリヴァンはアメリカの「拡大しつつある」、「恐ろしい」分裂について話すことになった。

 

この学生の話を受けて、サリヴァンは自分が生まれ育ったミネソタ州のことを思い出した。1989年にベルリンの壁が崩壊した時、サリヴァンは13歳だった。それから数か月後、ソヴィエト連邦の指導者ミハイル・ゴルバチョフは一般的なアメリカ人たちと会いたいと熱望し、サリヴァンの住んでいた、ミネアポリスの近所にやってきた。ソ連首相の車列に対して、ラトヴィア系とエストニア系のアメリカ人たちがバルト三国の独立のために抗議活動をしていた。サリヴァンはこの様子を見て、世界にとってアメリカの存在が重要なのだということを感じ取った。

 

候補者としてのトランプは、アメリカ例外主義という考えを不必要な負担であるとして拒絶した。トランプはテキサス州で開催されたティーパーティーの集会で次のように語った。「アメリカ例外主義は素晴らしい言葉だなどと思わない。私たちは例外で、お前たちはそうではないということだ。私はアメリカがこれまで世界に与えてきたものを取り返したい。私たちはこれまで世界にあまりにも多くを与えてきた」。

 

サリヴァンはトランプ主義に対する対抗手段として、彼がミネソタで感じていた種類のアメリカ例外主義を徹底的に主張することだと考えるようになっている。サリヴァンは次のように語っている。「私たちの国家として持つDNAに基礎を持つ何かしら傲慢な考えが必要となります。DNAは、私たちがアメリカ人としてのアイデンティティを規定するものです。このDNAは人々を奮起させるための武器となります」。

 

しかし、サリヴァンは自分の考えを詳しく語ることに困難を感じた。彼の考えを深めるために、サリヴァンは1890年に軍事戦略家アルフレッド・セイヤー・マハンが発表した難解な論文を読んだ。マハンはアメリカを国際的な海軍強国と形容した。サリヴァンは、歴史家スティーヴン・カインズナーの著書『ザ・トルゥー・フラッグ』を研究した。この著書は、セオドア・ルーズヴェルト、マーク・トウェイン、アメリカ帝国の誕生に関する内容だ。

 

サリヴァンはミネソタやケンタッキーの人々の考えと共鳴すべきという考えを軽視した。サリヴァンは次のように述べた。「アメリカの例外主義は、アメリカは新しいものを生み出し、気候変動、流行病、核拡散といった厳しい諸問題を解決する力を持っているという考えを基礎にしています」。これから数週間後、サリヴァンは、アメリカの例外的な使命は、強力で成長を続ける中間層への関与をしていくということになる、とも述べた。

 

しかし、こうした主張は、何も大きなことではなく、傲慢でもなく、人々を鼓舞するものではない。

 

サリヴァンは、彼が世界における考えを「ミネアポリスの公立高校」で培ったと常に述べている。しかし、サリヴァンは同時にワシントンの排他的な外交政策エリートが作り上げたということも明確だ。

 

アメリカでは党派同士の憎しみ合いが存在しているが、共和党と民主党の国際主義者たちは、彼らは憎しみ合いなどないと訴えてきた。彼らは最大の諸問題について合意していた。:アメリカは世界の中でも特異な道徳的権威を持っており、世界の指導者として特別な責任を担っている、と彼らは考えている。共和党内の外交政策エスタブリッシュメントのほぼ全員はトランプが大統領選挙候補者になることに反対する公開書簡に署名した。

 

サリヴァンはこうしたエリートの最も奥ゆかしい特性を体現した人物と言えるかもしれない。彼は反対者をシャットアウトしないし、ツイートで悪口を言わない。共和党関係者の多くはサリヴァンを称賛している。イランとの合意を激しく批判しているマーク・ダボウィッツは次のように語っている。「サリヴァンは誠実そのものの人物だ。批判すべき点は見当たらないし、彼がどんな問題を持っているかを指摘することもない」。

 

大統領選挙期間中、そして大統領に就任してからも、トランプは外交政策の常識のほぼすべてに挑戦してきた。トランプはアメリカの同盟諸国を口汚く罵り、核不拡散の試みに疑問を呈し、民主的な諸価値、人権、自己利益を基盤として構築されてきたアメリカの外交政策の理想を拒絶した。

 

ワシントン内部からのトランプへの対応は、ワシントン外に広がることはない。ワシントンの外交政策専門たちがティームを組んで、ブルッキングス研究所から発表したレポートの中に次のような一節がある。このティームにサリヴァンも参加した。「私たちは、国際秩序に対してアメリカが行ってきた支援を放棄することは深刻な戦略的間違いであり、これがアメリカをより脆弱により貧しくし、世界をより危険な場所にするだろう、と確信している」。

 

最近まで、サリヴァンはこうした努力の価値と学識について考え込んでしまっていた。長年にわたり、外交政策分野のエスタブリッシュメントは、アメリカ主導の、ルールに基づいた国際秩序の維持の重要性を訴えてきた。この訴えはアメリカ国民のほとんどにとってはよくて意味のないものである。悪くとると、こうした訴えは魂のこもっていないグローバリズムにつながるものである。

 

サリヴァンにとって、エスタブリッシュメントの知的な消耗の衝撃的な具体例は12か国が参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が今年の初めにトランプ大統領が公式に廃棄すると発表したことだ。共和党と民主党の国家安全保障問題アナリストたちは長年にわたりTPPをアメリカの国家安全保障と中国封じ込めにとって必要不可欠であると主張してきた。サリヴァンもまたTPPを支持していた。

 

サリヴァンは次のように語った。「こうした専門家のほとんどはTPPの詳細やアメリカ労働者に対するマイナスの影響が出る可能性について関心を払わなかった。エリートたちは、TPPは南シナ海の領海争いのような他の問題にとってプラスの効果があると主張した」。TPPの交渉過程の中で、エリートたちは、彼らが仕え、守ることになっている人々のことを忘れてしまったのだ。

 

サリヴァンは、エリートと一般の人々との間の懸隔は、より大きな問題の前兆だと主張している。

 

サリヴァンは次のような質問をした。「私たちの社会において広がりつつある基礎の部分での分裂が生み出している尊厳、孤立、アイデンティティに関する諸問題を私たちはどのように解決できるだろうか?」。彼は自分のすぐ近くに座っているケンタッキー州出身の学生を見つめた。サリヴァンは続けて次のような質問をした。「私たちが今話題にしている、人々とは切り離された、謙虚な姿勢を持っているエリートになることなしに、この質問をすることは可能なのか、可能ならそれはどのようにしてか?」。

 

この質問は部屋の雰囲気を暗くした。

 

サリヴァンは最近になって、ワシントン、ハーヴァード、イェールといった場所から離れたら、こうした疑問に対してより容易に答えられるだろうと考え始めている。

 

サリヴァンはあるインタヴューで次のように語った。「TPPが南シナ海の紛争を解決するなどという主張は、善良なアメリカ国民にとって価値のある主張ではないのです。ミネソタ、ニューハンプシャー、タルサといった場所にこれから行って住んでみても、これまで手に入れられなかった知恵を急に手にできるなんて思いませんよ。しかし、考え方を身に着けることはできます。自分がしてきた考え方とは異なる考え方をする、これが重要だと思います」。

 

サリヴァンが2005年に連邦最高裁判所事務官の仕事を終えて最初に行ったことは、地元に帰ることであった。この時、ワシントンの大きな法律事務所からは契約金25万ドルでの契約を提示されたが、これを断り、ミネアポリスの法律事務所に入った。この事務所の顧客のほとんどは農業関係や食品産業であった。

 

この当時のことについて、サリヴァンは、ワシントンで政府関係の仕事をするか、ミネアポリスで平凡な生活をするかの分かれ道であったと語っている。「ワシントンでは、仕事が全ての中心です。それはワシントンでの仕事はその人の全てを投入させるハードな内容のものだからです。ミネアポリスでは、仕事は人生の一部に過ぎません」。

 

ヒラリーが国務長官を辞任した2013年、サリヴァンは地元に帰る予定にしていた。彼は、連邦議会の選挙に出馬するか、連邦検事になろうかと考えていた。しかし、オバマ大統領(当時)は、サリヴァンにホワイトハウスで働くようにと説得した。当時、オバマ大統領の首席外交政策補佐官であったベン・ローズは次のように述懐している。「オバマ大統領は、帰るならいつでも帰ることができるじゃないか、と言いました。地元がなくなりはしないだろう、だけど、ホワイトハウスの最高レヴェルで働く機会がそこにあるんだし、その機会が次いつ来るかは分からないじゃないか、ともね」。

 

ホワイトハウスでの仕事を終えても、サリヴァンはワシントンとのつながりを保つことができた、それは、ヒラリー選対を通じて、また彼の妻を通じてであった。サリヴァンの妻は、連邦最高裁判事スティーヴン・G・ブライヤーの秘書官となる予定で、そのため、夫妻は少なくとも来年はワシントンに留まることになるだろう。

 

翌年以降にワシントンを去って、どこか基盤を置ける場所に移り住むというのが次の計画だ。サリヴァンは、結果がより現実的で、即座に出て、手に取ることができる、地域プロジェクトの様なものに関わることを考えている。ミネソタは一つの選択肢であり、妻が育ったニューハンプシャーがもう一つの選択肢だ。

 

もう一つの可能性はワシントンに留まることだ。サリヴァンは「私は人々と実際に会って、過去10年の経験を基にして、これからアメリカがどこに向かうかということを話したいという希望を諦めている状態です」とも語った。

 

サリヴァンのレヴェルの人物で、ワシントンを去るとか地元に帰るという選択をすることはほぼないことだ。問題はより複雑なものだ。お金の面は心配ないのだ。アジアのある国は、最近、サリヴァンの2日間の訪問に2万5000ドルを提示した。

 

彼はこの提示を断る前に、「よく分からないが、そんなものなのかな?」と考えたことを覚えている。

 

イェールの学生たちの心配は、サリヴァンの考えとは全く反対の方向に向かっていた。彼らは、トランプ大統領のいるワシントンで彼らにとって魅力的な機会が今でも残っているのかということを懸念していた。

 

ある学生は、最近発表され、評判を呼んだ『フォーリン・ポリシー』誌の記事を要約しながら、「これは、テクノクラシーとエリートに対する不吉な鐘の音ということになるのでしょうか?」と質問した。

 

サリヴァンが答える前に、別の学生が次のように言った、「東海岸のエリート2.0となるか、私たちは全員終わりとなるか、ということだね」。

 

ワシントンや学界の一部に蔓延している滅亡するという予言にサリヴァンは与しない。サリヴァンは学生たちに、トランプは彼が選び出したワシントンのエリートに依存しているのだ、と語った。トランプ大統領は外交政策を実行するのに将軍たちに頼り切っているし、政権内部は大富豪たちに掌握されていると語った。サリヴァンは、「ゴールドマンサックスが我が国の経済政策を遂行している。専門性と言うのは常に求められるものだよ」。

 

サリヴァンと学生たちの集まりも終わりに近づいた。夜は深まった。彼の皿の上に置かれたピザは冷たくなっていた。

 

サリヴァンは「ワシントン郊外に家を探したいと本当に考えているんですよ」と述べた。

 

学生が「ヴァージニアですか?それともメリーランドですか?」とジョークを言った。

 

サリヴァンは「おそらくそのどちらかだね。現在私ができる最高の仕事はワシントンの外側にいることなんだ」と語った。

 

サリヴァンはドアに向かった。翌日はニューヨークでヒラリーに会って、回顧録の校正を行う予定になっていた。校正が時間通りに終わり、疲れていなければ、フランス大使と夕食を共にすることにもなっていた。その後にワシントンに戻る予定であった。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12








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 古村治彦です。

 

 今回から2回にわたり、ジェイク・サリヴァンに関する記事をご紹介します。ジェイク・サリヴァンは、拙著『アメリカ政治の秘密』でご紹介しました、民主党の若手外交政策専門家です。サリヴァンはヒラリー・クリントンが国務長官を務めていた時期に、国務省政策企画本部長を務め、その後、ジョー・バイデン副大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務め、2016年の米大統領選挙では、ヒラリー・クリントン陣営の外交政策立案責任者となりました。もしヒラリーが大統領になっていたら、史上最年少の大統領国家安全保障問題担当補佐官になっていたと言われる人物です。

 

 サリヴァンは、現在、イェール大学で週1回教えており、夫人が連邦最高裁判事の秘書官となる予定で、ワシントン周辺にこれからも居住する予定となっています。本ブログでもご紹介しましたが、ネオコンと人道的介入主義派が合同して創設した「アライアンス・フォ・セキュアリング・デモクラシー」というプログラムにも参加しています。

 

 これから2回にわたってご紹介する記事では、サリヴァンの現在について、更に2016年の大統領選挙後の心境について書かれています。記者がイェール大学まで行き、サリヴァンが法科大学院の学生たちと交流する場面を取材しつつ、そこにこれまでの彼の発言を織り込むという形で記事は構成されています。

 

 サリヴァンは、2016年の大統領選挙でヒラリー陣営に参加し、有利と言われながら敗北したことを大いに恥じ、責任を感じており、どうして敗北してしまったのかを分析しています。

 

サリヴァンは、ヒラリーが政策に偏った選挙演説ばかりで、人々の痛みを掬い上げ、語りかけるような演説をしていないことに不安を持っていた、ということです。そして、人々まとめあげることができなかった、それについて、選挙期間中にもっと強く助言すべきだったと述べています。

 

 ヒラリーはワシントンのエスタブリッシュメントが自分の華麗な経歴と頭の良さのために嵌ってしまう陥穽に落ちてしまったということになります。人々の怒りが充満していることに気付かなかった、ということになります。

 

 現在、アメリカでは深い亀裂が社会に存在しています。それはアメリカの衰退を示しています。そのような亀裂を生み出したのは、何も人種差別主義者や白人優越主義者たちだけの責任ではありません。人々の日常的な怒りや不満に気付かないで、きれいごとばかりを述べてきたエスタブリッシュメントたちにもまた責任があります。ヒラリーはその代表格です。

 

 サリヴァンは選挙期間中からそのことに気付いていたと述べていますが、彼の発言しか掲載されていないので、このことが本当なのかどうかは分かりませんが、選挙に敗北したのは、人々の不満を掬い上げ、まとめることができなかったからだ、という彼の分析は正しいし、彼自身が真剣にそのように考えているということが分かります。

 

(貼り付けはじめ)

 

大失敗から学んだこと:ヒラリー・クリントンのトップアドヴァイザーは衝撃的な敗北の意味を探す(Lessons in disaster: A top Clinton adviser searches for meaning in a shocking loss

 

グレッグ・ジャッフェ筆

2017年7月14日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/lessons-in-disaster-a-top-clinton-adviser-searches-for-meaning-in-a-shocking-loss/2017/06/30/6ca81022-5453-11e7-b38e-35fd8e0c288f_story.html?utm_term=.8f524f6b56f3

 

コネティカット州ニューヘイヴン発。すべての計画がうまくいっていたならば、ワシントンにいる人々のほとんどが期待していたように、ジェイク・サリヴァンは今頃、大統領執務室からごく近い部屋で仕事にいそしんでいたことだろう。

 

サリヴァンはワシントンのエリートの中でも屈指のエリートであった。ローズ奨学金を得てのイギリス留学、イェール大学法科大学院卒業、最高裁判事の秘書、ヒラリー・クリントンの国務長官時代の側近という華麗な経歴を誇っている。バラク・オバマ大統領時代にシチュエーションルームに入ることができる人物であった。

 

ヒラリー・クリントンが大統領になっていれば、サリヴァンが国家安全保障分野の中心人物であっただろうというのがワシントンの常識になっている。サリヴァンは現在40歳だ。クリントン政権ができていれば、サリヴァンはアメリカ史上最年少の安全保障問題担当補佐官になったはずだ。

 

現実には、クリントンではなく、ドナルド・トランプが大統領に当選した。サリヴァンは友人たちに対して、ワシントンのエスタブリッシュメントに数十年来の中で最も衝撃を与えた選挙結果を受けて、「さらし者」にされた気分であったと語った。

 

最近のある日の夜、サリヴァンはオレンジ色のドアを押し開け、絨毯が敷かれた階段を上り、落ち着いた照明のついたアパートの部屋に入った。そこには10名ほどのイェール大学法科大学院の学生たちが待っていた。学生の多くは、サリヴァンがワシントンでやってきた仕事に関心を持ち、自分たちもそうした仕事がしたいという希望を持っている。

 

しかし、サリヴァンは自分とアメリカがこれからどのようになっていくのかを確定的に言えないと感じている。 彼は自分の時間をワシントンにあるシンクタンクとイェール大学とに分けている。サリヴァンは1週間に1日、イェール大学で法と外交政策について講義を行っている。彼のキャリアはほぼすべて、移動性が高く、不確かで、落ち着かないものだった。

 

ヒラリー敗北の直後、サリヴァンは友人たちに対して、「この結果について大きな責任を感じるよ」と語った。それから数か月経っても、この責任感は拭い去れなかった。

 

ヒラリーと彼女の側近たちは、選挙戦は盗まれたのだと今でも語っている。彼らは、ロシアによる介入に怒り、投票日直前に当時のFBI長官ジェイムズ・B・コミーが情報を公開したことに不満を表明し、オバマ大統領がロシア大統領ウラジミール・プーティンに強硬な姿勢を取らなかったことを批判している。

 

ヒラリー・クリントンは最近のインタヴューで次のように述べている。「忘れていただきたくないのは、私は相手よりも300万票以上多く獲得したのです」。

 

サリヴァンはヒラリーの側近中の側近として、彼女の敗北は自分の力不足の結果で、自分に責任があると感じている。彼は自分がやった間違いを理解し、それをどのように修正できるかのを知りたいと考えている。

 

彼は口癖のように「私は敗北について恥ずかしく思っています」と語る。

 

私が訪問した夜、サリヴァンは、学生のアパートで古ぼけた椅子に座り、優秀で野心的な若者たちでいっぱいになった部屋を見渡した。膝の上に器用にピザの皿を乗せた。学生の一人がビールを手渡した。

 

2年生になる学生が出席者たちに「みんなジェイク・サリヴァンのことを知っているよね?」と語りかけ、続けて次のように言った。「サリヴァンさん、もう立ち直りましたか?」

 

ワシントンの政策立案に関与している人すべてはジェイク・サリヴァンをよく知っている。少なくとも名前は知っている。

 

長年にわたり、サリヴァンは、第二次世界大戦以降のワシントンの灰色のスーツを着た賢人たちに連なる人物であると言われてきた。高名な外交官であった故リチャード・ホルブルックは、サリヴァンは国務長官にふさわしい長所を全て備えていると述べたことがある。また、ヒラリー・クリントンは友人たちに、サリヴァンは大統領になれると語ったという。

 

サリヴァンは窓の外のヒルハウス通りを眺めた。マーク・トウェインはこの通りを「アメリカで最も美しい通り」と呼んだ。この日の夜に皆で集まったアパートからヒルハウス通りを3ブロック行った先に、サリヴァンは2000年代初めに法科大学院の学生の時に住んでいたアパートがある。学生たちはジーンズにTシャツ姿であった。サリヴァンはワシントンにいないときに好むいつもの格好をしていた。スーツのズボン、ボタンダウンのシャツでネクタイをしていなかった。髪は直毛を伸ばしている。

 

サリヴァンがワシントンでのキャリアをスタートさせる手助けをしてくれた師匠にあたる人々が数人いる。外交評議会元会長レスリー・ゲルブがまず挙げられる。サリヴァンは夏のインターンとして、外交評議会で働くことになり、その時に偶然、ゲルブのオフィスに配属された。

 

次にブルッキングス研究所所長ストローブ・タルボットが挙げられる。2000年、サリヴァンは法科大学院に入学した。タルボットは、この年に新設されたイェール大学グローバライゼーション研究センターの所長に選ばれた。サリヴァンは「当時は、グローバライゼーションは社会を前進させる力だという考えが習流の外交政策のコンセンサスになっていた」と述懐している。サリヴァンはタルボットに、自分もローズ奨学金を受けてイギリスに留学したこと、学内紙『イェール・デイリー・ニュース』の編集をしていることを伝えた。

 

ホルブルックも師匠にあたる。ホルブルックはゲルブの推薦を受けて、サリヴァンに対して、ヒラリーの1回目の大統領選挙出馬で選対に入るように提案した。最後に、ヒラリー・クリントンを挙げねばならない。ヒラリーはサリヴァンを称賛し、信頼した。そして、自分の側近の中に加えた。

 

サリヴァンは自身のキャリアとヒラリーの共に失敗に終わった2度の大統領選挙への出馬について、「機会をつかもうと思って、“はい、分かりました”と答えたんだ」と語った。そして、サリヴァンは動きを止めてしかめ面をし、次のように語った。「そのような選択をしたので、2度の選挙の失敗と悲劇を経験してしまったのだけれど」。

 

ヒラリーがサリヴァンに接触したのは2012年だった。ヒラリーはサリヴァンに、イランとの核開発プログラムに関する秘密交渉の開始を手助けしてくれるように依頼してきた。ヒラリーが国務長官を辞めた後、オバマ大統領はサリヴァンをホワイトハウスに入れ、毎朝大統領に対して行われる情報・諜報に関するブリーフィングに出席できる少人数のグループの一員となった。

 

学生たちは、イランとの核開発に関する合意についてのサリヴァンに次々と質問を浴びせた。これらの質問は学生たちが本当に聞きたい話の前奏曲でしかなかった。彼らのききたい話、それは選挙、選挙の後、そして、学生たちのようなワシントンで働きたい人々にとって長期的見通しであった。

 

3年の学生は「私たちは選挙結果に失望しました。あなたは立ち直りましたか?」と質問した。

 

サリヴァンは「通常の共和党が勝利をしたのなら、自分にとって今よりも良い気分であっただろうね」と答えた。

 

週末が休みになるのは10年ぶりのことだ。サリヴァンは教えることが好きだ。彼は新婚でもある。「それでもトランプの勝利は受け入れがたいものです。今でも眠れないことがよくあります。もっとこうしたらよかった、こうできたということを考えているのです」とサリヴァンは語った。

 

別の学生がもっと傷をえぐるような質問をした。「あなたは何が起きたかを分析する理論を持っていますか?」。

 

サリヴァンは「分からないな」と答えた。彼はその後、彼はじっとして天井を眺めた。

 

この学生はサリヴァンの態度に嫌なことを聞きすぎたと心配になって、「そんなに真剣に考えていただかなくても」と言った。サリヴァンはそれでも更にしばらく答えを出そうとして考えた。

 

「せっかくのピザがおいしくなるような会話だね」とサリヴァンは答えた。

 

この学生がした質問は、それまでの複数回のフォーラムと夕食会でも質問され、サリヴァンが取り組もうしてきたものだ。数週間前のハーヴァード大学教員クラブでの会合に、2015年の選挙で、20歳のスコットランド国民党の候補者に選挙で敗れたイギリスの元国会議員が出席した。彼は、この問題は既に自分たちが経験していると述べた。

 

この人物は「答えを持っている政治家と怒りを持っている政治家との間の戦いなのです」と語った。

 

「それを聞いて、PTSDが起きてしまいます」とサリヴァンは答えた。

 

サリヴァンがその晩に感じた心的外傷後ストレス障害によって、彼は選挙戦の移動の飛行機の中でヒラリーと交わした議論を思い出した。サリヴァンは政策に関する上級顧問で、選挙戦でヒラリーが政策に比重を置いた演説をしていることについて、選挙では有効ではないのではないかと心配していた。

 

ヴァーモント州選出連邦上院議員バーニー・サンダースと民主党予備選挙期間中、サリヴァンはヒラリーに次のように助言したと述懐している。「人々の痛みに関連する問題の診断に集中するべきなのでしょうか?」。

 

ヒラリーは次のように答えた。「いいえ。これは就職の面接試験なの。人々は私がどのように修正をするのかを知りたがっているのよ」。

 

サリヴァンはこの問題についてヒラリーにもっと強く助言すべきだったと後悔している、と述べている。本選挙では政策で結果が決まるものではないということが明らかになればなるほど、彼の後悔は深くなっている。

 

選挙戦の最終盤、サリヴァンは選挙の投票日が近付くほど、選対のほとんどの人たちよりも心配し、イライラするようになった。同僚たちはサリヴァンのイライラを彼の心配性と常に反省ばかりする性格のせいにしていた。サリヴァンの元同僚は次のように述べた。「彼はいつも悲観的で反省ばかりの人だ」。

 

サリヴァンは、ヒラリーに対して、政策の診断よりも人々の共感や怒りに重点を置くべきだと強く進言すべきだったのかどうか、今でも考えている。彼は「“壁を建設する”なんて政策的な解決でも何でもないですよ。しかし、移民とアイデンティティについて懸念を持っている人々の心に訴える言葉ではあったんです」と語った。

 

しかし、サリヴァンはそれ以上批判をしなかった。ヒラリーと自身の役割を弁護した。彼は次のように語った。「結局は人々に対して何を手にできるかということを語るということなんです。ヒラリーはそれができる人でしたし、実際にそれができて、人々を熱狂させるときもありました」。 彼は飛行機でヒラリーと交わした会話の重要性を軽視した。

 

サリヴァンは「これは選挙戦術の問題以上のことではない」と述べた。

 

サリヴァンは答えを求めて考えている。この時思い出すのは、民主党全国大会の大4日目の夜のことだ。息子をイラクで亡くしたキザル・カーンがスーツのポケットから、ポケット版のアメリカ合衆国憲法を取り出し、トランプがアメリカ最高の理想を汚していると叫んだ夜だ。

 

サリヴァンは学生たちに語り掛けた。「私たちは答えを知っているよね。国旗は私たちの国が偉大な国家、許容する国家、寛大な国家であることを示している」。

 

しかし、ヒラリー選対はこの瞬間を、人々を一つにまとめるメッセージにまで昇華させることができなかった。大統領選挙での討論会では、人種、移民、格差、中絶、性差のないお手洗い、といった分裂を誘発する問題に戻ってしまったとサリヴァンは述べた。

 

サリヴァンは次のように語った。「私はこの夜のことを、選挙運動を通じて全国に広げねばならないと考えていた。しかし、そんなことをしても現実の問題の解決にはならないのだ。なぜなら、私たちは現実に存在する、人々が苦しんでいる様々な問題に対処しなければならなかったからだ。アメリカの政策に関しては今でも様々な議論や主張がなされている」。

 

(貼り付け終わり)

 

(続く)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
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2014-05-23


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