古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: アメリカ政治

 古村治彦です。

 

 今年も残り2カ月半というところになってきました。今年6月にシンガポールで、初の米朝首脳会談が開催され、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が握手をし、直接話をするという歴史的な出来事がありました。その後、共同宣言が発表され、朝鮮半島の非核化が進むかと思われましたが、その後、米朝交渉は停滞気味のようです。

 

 先月、アメリカ政府は、スティーヴン・ビーガンという人物を国務省の対北朝鮮特別代表に任命しました。米朝交渉を実質的に取り仕切ることになりました。ビーガンについては、本ブログでいち早くご紹介しました。ビーガンについては、共和党系の外交政策分野の人材であり、ヨーロッパとロシアを専門としている人物であることをご紹介し、ビーガンの説く米代表就任は、北朝鮮問題に関して、アメリカがロシアを巻き込むことを意図しているとブログの記事で私は書きました。

stephenbiegun001
スティーヴン・ビーガン


 実際、ビーガンは2018年10月16日にロシアの首都モスクワを訪問し、ロシア政府関係者と北朝鮮問題について協議しています。以下に記事を貼り付けます。

 

(貼り付けはじめ)

 

米の特別代表がロシア訪問 北朝鮮への働きかけ協議か

20181016 2057

 

2回目の米朝首脳会談に向けてアメリカ政府で実務レベルの協議を担うビーガン特別代表がロシアのモスクワを訪れ、16日、モルグロフ外務次官と協議しました。北朝鮮の非核化をめぐって働きかけを強めるようロシアに求めたとみられます。

 

アメリカ政府で北朝鮮問題を担当するビーガン特別代表は16日、モスクワを訪れて、ロシア外務省のモルグロフ次官と協議し、ロシア外務省は協議のあと、「核を含めた問題の政治的、外交的な解決に向けて努力していくことで一致した」と発表しました。

 

ビーガン特別代表は、今月、アメリカのポンペイオ国務長官とともに北朝鮮を訪問し、2回目の米朝首脳会談の早期開催に向けて実務レベルの協議を進めることでキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長との間で合意しました。

 

ただ、朝鮮戦争の終戦宣言を要求する北朝鮮と、非核化に向けた北朝鮮の具体的な措置が先だとするアメリカとの立場の隔たりは埋まっておらず、実務レベルの協議を担うビーガン特別代表としてはモルグロフ次官に対し、非核化をめぐって北朝鮮への働きかけを強めるよう求めたとみられます。

 

ビーガン特別代表は、このあとフランスのパリ、ベルギーのブリュッセルを訪れ北朝鮮問題について関係者と協議する見通しです。

 

(貼り付け終わり)

 

※2018年9月4日付記事「米朝交渉は停滞気味のようだ」でご紹介しております。↓

http://suinikki.blog.jp/archives/76831743.htmlからどうぞ。


 米朝直接交渉はあまり進展が見られません。北朝鮮はこれまでもアメリカとの交渉ではあの手この手で中身を骨抜きにしたり、思い切って合意を破ったりで、アメリカ側を翻弄してきました。そのために経済制裁を科されることにもなりましたが、中国とロシアという後ろ盾があり、これまである意味ではうまく生き残ってきました。そのために、国民に大きな被害が出ていることをかんがえると、うまくという言葉は適切ではありませんが。

 

 そうした中で、北朝鮮に一定程度影響力を持つロシアを巻き込んでの問題解決ということになり、ビーガンに白羽の矢が立ったということになるのでしょう。以下に紹介する記事は、ビーガンの特別代表就任について書かれたものです。その中で、ビーガンはヴェテランで、特別代表に適任だが、北朝鮮との交渉の経験がないこと、そして、トランプ大統領が移り気で首尾一貫していないので、トランプ大統領に振り回されるであろうことを不安材料に挙げています。

 

 今後、北朝鮮問題がどのように動いていくか、注目されます。

 

(貼り付けはじめ)

 

ポンぺオの新しい対北朝鮮特別代表は外交上の地雷原に勇躍攻撃を仕掛ける(Pompeo’s New North Korea Envoy Wades Into Diplomatic Minefield

―スティーヴン・ビーガンは対北朝鮮特別代表に適任だと多くの人が考えている。しかし、Stephen Biegun is widely considered a great pick for the job. But it may be an impossible task in the first place.

 

ロビー・グラマー筆

2018年9月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/09/25/north-korea-mike-pompeo-stephen-steve-biegun-state-department-trump-kim-jong-un-diplomacy-nuclear-negotiations-united-nations-general-assembly/

 

就任してから1カ月、トランプ政権における対北朝鮮政策におけるキーマンであるスティーヴン・ビーガンは、北朝鮮の指導者金正恩委員長とアメリカのドナルド・トランプ大統領との間の2度目の首脳会談実現に向けた、彼にとっての最初の試練に直面している。

 

マイク・ポンぺオ国務長官は今週の国連総会において、トランプ大統領と金委員長との間の2度目の首脳会談の地ならしを行っていると明言した。

 

ビーガンは国務省の北朝鮮に対する特別代表に新たに就任した。第2回目の米朝首脳会談が実現する場合、ビーガンはこの動きの中心的役割を果たすことになるだろう。ビーガンは、ジョージ・W・ブッシュ政権で働いた経験を持つ。この時に世界で最も手ごわい、経験と知識を持つ交渉者を相手に交渉をしていた。北朝鮮はこれまで数十年間にわたり、アメリカの平和と核を巡る交渉の邪魔をしてきた。そうした北朝鮮の現体制を維持することを至上命題にしている高官たちに対してはビーガンの対北朝鮮特別代表就任は大きな負担となるだろう。

 

同時に、ビーガンは、北朝鮮問題に取り組みたいと考えているトランプ大統領の矛盾したメッセージやころころと変更される目標をうまく誘導しなければならない。今週ニューヨークで開催された国連総会において、トランプは金委員長の「勇気」に感謝し、米朝両首脳が近々再び会談を行うと示唆しつつ、北朝鮮は非核化に向けて「大きな進歩」を遂げていると発言した。しかし、多くの専門家たちは、金委員長はこれまでに重要なことは何も放棄していないということに同意している。

 

これら2つの挑戦はビーガンの任命が抱えるパラドックスを浮き彫りにしている。ビーガンは適格だと多くの人々は評価しているが、ビーガンの任務の遂行は不可能ではないかという懸念も出ている。

 

ポンぺオは、先月、ビーガンをフォード社から引き抜いた。そして、アメリカの外交政策において最も厳しい挑戦に対する責任を与えることになった。この挑戦は大統領が個人的に重視しているものだ。ビーガンは、フォード社に入社する前に、連邦議会のスタッフとして15年間、外交政策に関して専門性を涵養していた。ビーガンの任命に対して、共和党の外交政策専門家たちの間からは、適任だという好意的評価が出ている。

 

しかし、ビーガンを称賛している専門家や元政権幹部たちは、ビーガンの任務は最初からつまずくだろうとも述べている。トランプは6月にシンガポールで行われた金委員長との首脳会談において、何も具体的なことは決まっていない段階においてツイッター上で勝利宣言をしてしまった。この後では特別代表の任務は難しいものになると専門家たちは述べている。「北朝鮮からの核の脅威はもはや存在しない」とトランプはツイッター上で明言した。

 

ジョージタウン大学所属のアジア専門家ヴィクター・チャは、次のように語っている。ちなみにチャはトランプ政権の駐韓米国大使になると目された人物だ。「トランプ政権において北朝鮮との交渉者になることは困難なことである。交渉者はトランプ大統領が既に獲得したと宣言したものを獲得するために交渉を行わねばならない立場に追い込まれる。このような立場に追い込まれるのは喜ばしいことではない」。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)に勤務したピーター・フィーヴァーは次のように述べた。「北朝鮮に対しては民主党も共和党も25年にわたって失敗を重ねてきた。従って、誰がやっても北朝鮮との交渉を妥結させることはできないのではないかと考えている。しかし、私は同時に、ビーガンは少なくとも北朝鮮に騙されることはないと断言できる」。

 

今回の記事を書くにあたり、ビーガンへのインタヴューを国務省に申請したが、却下された。報道担当官はまた、今秋国連において、ポンぺオとビーガンが北朝鮮の担当者と面会するのかどうかについてコメントを拒否した。「国務省には発表すべき新たな会談の予定はない」とだけ発表した。

 

本紙では10名を超える現職、元職の外交政策に関係する政権関係者に取材を行った。彼らは、ビーガンについて、複雑な外交政策の様々な問題に対処してきた経験を持つと称賛している。1990年代、ビーガンはジェシー・ヘルムズ連邦上院議員の上級顧問を務めた。当時、ヘルムズ議員は連邦上院外交委員会委員長を務めていた。この時、ビーガンは裏方として、冷戦期にワルシャワ条約機構に加盟し、西側と敵対していた東欧諸国をNATOに加盟させてNATOの規模を拡大させるという計画を立案し、成功させた。この作業には、保守的なタカ派の人々をクリントン政権に協力させることが必要不可欠であった。また、NATOの加盟国増大に関してはアメリカ連邦上院の承認が必要であった。

 

ブッシュ政権において国防総省に勤務し、連邦上院に属するビーガンと一緒に仕事をした経験を持つイアン・ブレジンスキーは「ビーガンがNATOの拡大において極めて重要な役割を果たした」と語っている。ブレジンスキーは更に、ビーガンは当時の連邦議会のタカ派的な考えを、具体的な、実現可能な法律にするために役割を果たしたと述べた。この法律によって、NATOの地図は書き換えられることになった。

 

それから数年後、ビーガンは、国家安全保障会議(NSC)の上級秘書としてホワイトハウスに勤務し、2002年にブッシュ政権が発表した「国家安全保障戦略(NSS)」の策定において中心的な役割を担った。国家安全保障戦略の策定は数カ月にも及ぶ苦行であった。それぞれ異なった目的を持つ官僚や政府機関を説得し、最終的に、大統領の考えを反映させた一つの文書に落とし込み、それに同意させるということは困難な任務であった。

 

ブッシュ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたスティーヴン・ハドリーは、ビーガンはこれまでの経験を対北朝鮮特別代表という新たな任務に活かすことが出来ると述べた。

 

ハドリーは本紙の電話取材に対して次のように述べた。「ビーガンのこれまでの経験と知識は対北朝鮮特別代表という任務にとって適したものだと考えている。アジア地域の政治、核拡散問題、北朝鮮問題についても理解している。ビーガンはポンぺオ国務長官とトランプ大統領を助けて、対北朝鮮政策全体をうまく構築することが出来るだろう」。

 

それでも、ビーガンはヨーロッパとロシアの専門家であって、北朝鮮との交渉では経験したことのない言葉遣いや複雑さにぶつかることだろう。北朝鮮との交渉では進展や成果は幻のように消え去ってしまう可能性もある。北朝鮮の交渉者たち、特にヴェテランの交渉者たちは、交渉の文書の中の一つの単語、一つの文を動かして、妥協を台無しにしてきた。

 

CIAに勤務した経験を持ち、現在はブルッキングス研究所上級研究員を務めるジュン・パクは、ビーガンの北朝鮮に関する知識や経験不足は「諸刃の剣」となると指摘する。パクは、次のように指摘する。「北朝鮮問題にかかわってこなかった人々は、北朝鮮問題解決のための“斬新な”考えを持つことができる。彼らは歴史を振り返ることで苦境に陥るというようなこともないだろう。また、北朝鮮との交渉で苦渋を飲まされてきたという経験に束縛されることもないだろう」。

 

パクは続けて、「しかし、こうした長所に、彼らの短所も潜んでいる。深い歴史的な背景が必要な場面が出てくるが、経験がない人々にはそれがない」とも述べている。

 

ビーガンは外交上の二正面作戦を行わなければならないだろう。一方は対北朝鮮、一方は対ワシントン(トランプ政権)である。

 

トランプ大統領は米朝首脳会談直後に北朝鮮が核兵器放棄を約束したと喧伝したが、北朝鮮政府は核兵器保有にこだわり、交渉を長引かせようとしている。ジーナ・ハスペルCIA長官は月曜日、珍しく公の場で発言し、その中で、北朝鮮が核兵器を放棄するのかどうか疑念を持っていると述べた。しかし同時に、米朝関係は、トランプ大統領による金委員長に対する働きかけによって、1年前に比べて格段に改善していると持述べた。

 

ポンぺオ自身は、今年6月に訪朝して、北朝鮮の高官たちがどれほど掴みどころもなく、予測不可能な動きをするのかを実感したはずだ。この時の訪朝では、金正恩はポンぺオと会談を持つことを拒絶することで、ポンぺオを鼻であしらった。そして、その直後に発表した声明では、ポンぺオが行った様々な要求は「ギャングが行うような」内容であったと批判したのだ。

 

ここでビーガンの経験と才能が必要となる。ビーガンはワシントンにおいては尊敬を集めているが、大統領から権限を与えられた特別代表として北朝鮮がきちんと対応するのか、アメリカ側からのこれまでは別の邪魔が出てくるのかということは明確になっていない。こうした障害のために、北朝鮮側はトランプ自身と意思を確認するために苦闘することになる。

 

CIA朝鮮半島担当部門の次長を務め、ワシントンに本部を置くシンクタンクであるヘリテージ財団に在籍するブルース・クリングナーは次のように述べている。「ポンぺオが金正恩と会談を持つことや交渉の進展をもたらすことに苦労しているのなら、それよりも低い地位の官僚たちが大統領の意向を受けて交渉に行って、何か成果を上げることが出来るのだろうか?」

 

北朝鮮の指導者として初めてアメリカ大統領と一対一の首脳会談を行った金正恩は、トランプとだけしか話したくないのだ。北朝鮮政府は巧妙にトランプを批判することを避けている。ワシントンの国家安全保障問題の専門家たちを攻撃しながら、トランプ大統領を称賛するような発表を行っている。

 

ビーガンはトランプ大統領の気まぐれな政策と格闘しなければならなくなるだろう。トランプは北朝鮮政府を戦争で脅迫していたが、それが金正恩を称賛するようになり、それからも戦争と称賛の間の複雑なメッセージを次々と発してきた。

 

シンガポールでの首脳会談の後、トランプ大統領は一方的に、米軍の韓国軍との共同軍事演習を延期すると発表し、共同宣言を発表したが、専門家たちは中身が曖昧過ぎて本当の進展を明確にすることはできないと評価する内容であった。ビーガンが特別代表に任命された後の今年8月、トランプ大統領は突然、ポンぺオとビーガンによる包丁を中止すると発表した。その理由として、交渉での進展がなかったことが挙げられた。

 

一方、ポンぺオ国務長官は先週、北朝鮮と韓国との対話を取り上げながら、非核化に向けた交渉はトランプ政権の第一期目の任期が終わるまでには終了することになるだろうと述べた。しかし、ポンぺオは月曜日には、自身の発言内容から後退する発言を行った。ニューヨークで開催された国連総会の記者会見で、交渉に期限を区切るというのは「馬鹿げた」ことだと発言した。

 

ブルッキングス研究所のパクは、「トランプ政権からは複雑で事実が歪曲されたメッセージが多数発信されている」と述べている。

 

このような批判に対して、国務省の報道担当官はEメールで次のように発言している。「私たちは完全に証明される非核化を望んでいる。大統領は北朝鮮が最終的に完全に非核化され、核兵器が再び問題にならないようにしたいと望んでいる」。

 

トランプと金正恩が再び会談を持ち、別の合意に達することがある場合、トランプ大統領は合意内容を具体化できる有能な高官を必要とし、ビーガンはその任務にふさわしいと複数の専門家たちが口を揃えている。しかし、トランプと側近たちが最終的なものだと発表する合意内容は多くの北朝鮮専門家たちを苛立たせるものとなるだろう。

 

ジョージタウン大学のヴィクター・チャは次のように述べている。「トランプと金正恩は合意に達することはできると思う。しかし、問題は、その合意が素晴らしい合意か、悪い合意か、嘘の合意か、ということだ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカの中間選挙(Midterm Elections)まで残り約1カ月となりました。現在のところ、連邦上院では、共和党の改選議員が少ないこともあり、共和党が過半数(共和党:51議席、民主党:49議席)、連邦下院では、民主党が過半数(218)を超える勢いです。

 

 アメリカ政界に大きな影響力を持つコーク・インダストリーズ会長チャールズ・コークが率いる政治運動ネットワークが今年の中間選挙に向けて動きを活発化させています。チャールズは弟デイヴィッドと共にコーク兄弟として、共和党の大口献金者として活動していましたが、今年6月にデイヴィッドが健康上の理由で会社経営や政治活動からの引退を発表しましたので、「コーク兄弟」という枠組みは解消となりました。

 

 今回、コーク・ネットワークは無条件で共和党の候補者を応援しないと決めています。トランプ大統領の推進した財政支出や関税政策について賛成した現職議員は応援しない場合があるとしているようです。また、刑法改革や移民政策で、子供の頃に親に連れられてアメリカにやってきて不法移民となった人々に対する市民権付与を主張する民主党議員でも応援を検討しているということです。

 

 チャールズ・コークが信奉しているリバータリアニズムは政府による規制、経済や社会への介入を嫌うので、外国からの輸入品へ関税をかけることには反対です。この点で、政府が財政出動することにも反対となります。また、人々の自由権利を最大限擁護するので、親に連れられて不法移民状態になった人々への市民権付与にも賛成です。

 

 こうして見ると、チャールズ・コークは共和党というよりは、ドナルド・トランプ大統領と相容れず、かえって民主党の一部の政策と近いということになります。

 

 2016年の米大統領選挙では、オバマ政権の副大統領であったジョー・バイデンに対する待望論がありました。ヒラリー・クリントンが大統領になれば、積極的に外国への介入を行って、アメリカが泥沼にはまってしまうという危機感がありました。そうした中で、リベラル派とリバータリアン派が協力して、リベラル・リバータリアン連合を形成して、バイデンを推して、ヒラリーを追い落とすべきだという主張もありました。

 

 今回の中間選挙では、チャールズ・コーク率いるコーク・ネットワークは反トランプの姿勢を打ち出しています。コークにしてみれば自分たちは長年共和党員であったが、トランプなんてついこの間まで長く民主党員をやってヒラリーと親密だったではないかという気持ちもあるのでしょう。そして、共和党の議員でトランプ寄りの姿勢を取る議員を応援せずに、民主党の議員を応援する場合もある、検討するとまで打ち出しています。トランプの高関税政策などは民主党が本来主張してきた政策ですから、民主党にしてみても、トランプ政権に対しては是々非々ということになるでしょう。

 

 トランプ大統領がこれまでにない動きを見せているために、アメリカ政治もしばらく奇妙な連合と分裂が起こることになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

コーク・ネットワークが中間選挙に向けてスーパーPACを発足させる(Koch network launches super PAC ahead of midterm elections

 

ジョナサン・イースリー筆

2018年9月10日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/405820-koch-network-launches-super-pac-ahead-of-midterm-elections

 

大富豪の活動家チャールズ・コークの支援を受けている政治運動ネットワークは月曜日、新たなスーパーPAC(政治活動委員会)を発足させた。設立の目的は、ネットワークの保守的なそしてリバータリアニズムの価値観を共有する候補者を当選させることだ。

 

コーク・ネットワークの政治部門である運動組織「アメリカンズ・フォ・プロスペリティ(Americans for ProsperityAFP)」は、「AFPアクション」という組織を新たに創設した。AFPアクションは、ヒスパニック系の創設したスーパーPACである「リブレ・アクション」、「コンサーンド・ヴェテランズ・フォ・アメリカ(アメリカの現状を憂うる退役軍人たち)」と協力して、「人々の秘めている可能性の実現を妨げる国内、対外関係の両方における障壁を壊すという私たちの目標を共有する候補者たちを支援する」ことを目的としている。

 

新たなスーパーPACであるAFPアクションは、保守的、もしくはリバータリアン的考えを持つ大富豪たちから巨額の資金を集めることが出来るだろう。しかし、スーパーPACの役員たちは、2018年の中間選挙でどれくらいの資金を投入するのかという質問に対して、回答を拒否した。

 

今回の中間選挙で、コーク・ネットワークは総額で4億ドル(約440億円)以上を投入すると見られている。

 

AFPアクションの広報担当ビル・リッグスは次のように語った。「AFPはこれまで、接戦となる選挙において、私たちの支持する政策の実現に協力する候補者を応援することで、政治に新たな力を送り込んできた。AFPアクションは、こうした私たちの努力の幅を広げるための新しい道具となり、より大きな影響力を与えることになる」。

 

コーク・ネットワークは、トランプ大統領と共和党が過半数を占める連邦議会に対する不満を高め、戦略を練り直している。そうした中でスーパーPACであるAFPアクションが創設された。

 

コーク・ネットワークはトランプの関税政策に反対を表明し、コーク・ネットワークの幹部たちはトランプ大統領の言動を批判し続けている。彼らは、今年の3月に連邦議会が1兆3000億ドル(約140兆円)の公的支出計画を承認し、トランプ大統領が署名して法制化したことにも怒りを募らせている。

 

今年初めに開催された大口献金者たちの集まりにおいて、コーク・ネットワークは支援する候補者をより厳しく選択していくと発表した。共和党が連邦上院で何とか51議席(全100議席)を確保し、連邦下院では民主党が過半数を獲得するという厳しい見通しではあるが、共和党所属でも支援しない候補者も出てくると発表したことになる。

 

AFPはノースダコタ州の連邦上院議員選挙で、現職のハイディ・ハイトカンプ連邦上院議員(ノースダコタ州選出、民主党)に挑戦する共和党のケヴィン・クラマー連邦下院議員(ノースダコタ州選出、共和党)を支援しないと決定した。ノースダコタ州は2016年の大統領選挙でトランプが圧勝した州である。AFPは、財政支出法案、農業関連法案、輸出入銀行創設に賛成したクラマーを支援しないと発表した。

 

コーク・ネットワークは今回の中間選挙で財政支出に賛成した共和党議員を懲らしめ、刑法改革と実験的な麻薬解禁法など重要な分野で自分たちの考えに沿った投票を行った民主党議員を支援するために、広告や手紙などに多額の資金を投入している。

 

コーク・ネットワークはまた、「ドリーマーズ(訳者註:子供時代に親に連れられてアメリカにやってきて成長した不法移民)」への市民権付与を進めるために民主党の候補者への支援も検討している。

 

現在でも、コーク・ネットワークの資金のほとんどは、共和党の候補者や保守的な主張に提供されている。ネットワークは、トランプ大統領によって指名されたアメリカ連邦最高裁判所判事候補ブレット・カヴァナウの承認を訴えるテレビ広告に数百万ドルを投じている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 アメリカで創業された、インターネット通販最大手のアマゾン社に対しては、アメリカ国内でも様々な批判がなされています。税金を不当に逃れている、従業員の待遇が劣悪だ、というのが批判の内容です。インターネット通販は私たちの生活に浸透し、いまやなくてはならないものとなりました。より正確に言えば、物流・宅配サーヴィスが充実し、それに私たち消費者とアマゾンをはじめとする業者側が依存しており、物流・宅配サーヴィスが滞れば、私たちの生活もまた停滞を起こすということになります。

 

 アマゾン社は書籍だけではなく、様々な商品を販売しています。書籍を安売りはできませんが(その代わりにポイントを付けて販売しています)、その他の商品は店頭小売よりも安く販売し、シェアを拡大しています。生鮮食料品はまださすがに近くの商店やスーパーで買っている方がほとんどだと思いますが、そのうちに、アマゾン社が私たちの生活に必要な物資の流通を「支配」するまでに大きくなることも考えられます。自由市場、競争経済ということであれば、安く物品を提供できるとなれば消費者から選ばれることになります。その結果、他の競争相手を淘汰して巨大な怪獣のように1つだけ残ってしまう、独占が生まれてしまうということも可能性として考えられます。

 

 アメリカ国内でアマゾン社を批判しているのは、ドナルド・トランプ大統領とバーニー・サンダース連邦上院議員です。共に2016年の米大統領選挙に出馬しました。バーニー・サンダースはヒラリー・クリントンを苦しめ、トランプは共和党体制派を破り、最後にはヒラリーに勝利し大統領になりました。どちらも民主、共和両党の体制派を攻撃し、指示を集めました。その2人がアマゾン社を攻撃しているということが重要なポイントとなります。

 

 トランプとトランプ政権を攻撃している『ワシントン・ポスト』紙のオーナーがアマゾン社の創業者でCEOのジェフ・ベソスです。ジェフ・ベソスはバラク・オバマ前大統領を支持していたこともあり、トランプはベソスとアマゾン社を攻撃しています。バーニー・サンダースは、アマゾン社の労働条件が悪いこと(儲かっているのに従業員を最低賃金で酷使している)や租税回避ということで攻撃しています。また、格差社会という点からもベソスを批判しています。日本でも税務当局がアマゾン社が租税を回避していると指摘しています。

 

 私たちが便利に使っている存在がやがて巨大になり、私たちをコントロールする、などということがあり得ます。市場至上主義(市場がなんでも最適に配分できるとする考え)を基盤とする資本主義において、競争の中から巨大な企業が生まれ、それが独占企業にまで成長するということは、アメリカにおいても19世紀後半から20世紀にかけて、石油業界で実際に発生しました。ジョン・D・ロックフェラー一世が創設したスタンダード石油が石油の採掘、精製から輸送までを独占するという事態が起きました。アマゾン社が流通の分野において、21世紀版のスタンダード石油になるかもしれないと私は危惧しています。

 

(貼り付けはじめ)

 

バーニー・サンダースはアマゾン社に対して、「ジョージ・オーウェルの作品に出てくる言語」を使っていると批判するヴィデオをシェアすることで新たな攻撃を行った(Bernie Sanders renews attacks on Amazon, shares video accusing company of 'Orwellian language'

 

マイケル・バーク筆

2018年9月10日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/405894-sanders-renews-attacks-on-amazon-shares-video-accusing-company

 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)は今週月曜日、新たに「アマゾン」社に対して攻撃を行った。サンダースは、自身のツイッター上に、アマゾン社に対して「ジョージ・オーウェルの作品に出てくる言語」を使っていると批判するヴィデオをシェアした。

 

サンダースはヴィデオの1つをシェアする際に次のようにツイートした。「億万長者のアマゾン社CEOジェフ・ベソスと最低賃金で雇われている平均的なアマゾン社の従業員との違いをぼやかすために符牒を使っている。このことをジャーナリストのジェイムズ・ブラッドワースのヴィデオで見てみよう」。

 

ヴィデオの中の1つで、アマゾン社の労働環境についての著書を持つジェイムズ・ブラッドワースは次のように語っている。「アマゾン社が使っている符牒は、ジョージ・オーウェルの作品に出てくる言語のようなものだ。そして、符牒を使って、みているあなたのような普通の労働者と経営陣の違いをぼやかしているのだ」。

 

ブラッドワースは次のように語った。「アマゾン社では倉庫を倉庫と呼ぶことは許されない。フルフィルメント・センターと呼ばなければならない。アマゾン社では働いている人間を労働者や上司と呼ぶことは許されない。同僚と呼ばなければならない。こうしたことが行われるのは、年間数億ポンドを稼ぐジェフ・ベソスと最低賃金しか稼げないパッケージ要員の大きな違いをぼやかすためだ」。

 

サンダースは先週、巨大企業に対して、低賃金の労働者に対する連邦政府の福祉プログラムへの課税を行うための法案を提案した。サンダースはこの法案とは別にベソスについてのツイートを行った。

 

サンダースは、先週「補助金を停止することで悪い雇用者を止める」法案を提案した。この際、発表した声明の中で次のように述べた。「アメリカ国民は大富豪たちに補助金を出していることに飽き飽きしている」。

 

サンダースは次のように述べている。「収入と財産の格差が増大している。アメリカで最も富裕な人物3名の財産の合計はアメリカ国民の下半分の財産の合計よりも多い。アメリカ国民の収入の合計の52%を上位1%が取っている。こうした状況の中、アメリカ国民は、アメリカ国内の巨大なそして大きな利益を出している各企業を所有している億万長者たちに補助金を出していることに呆れ返っている」。

 

今年8月、アマゾン社はサンダースからの「従業員を不当に扱っている」という攻撃に対して、反論を行った。

 

アマゾン社は声明の中で、「他の企業と競争しても負けない賃金、コントロール下にある労働環境、安全な職場に加え、アマゾン社は従業員に対して、健康保険、障害保険、退職貯蓄制度、自社株持ち株制度を含む包括的な福祉制度を完備している」と述べている。

 

=====

 

ベソスは幼稚園・保育園のネットワークを創設:「子供たちは消費者ということになる」(Bezos to launch network of preschools: 'The child will be the customer'

 

ハーパー・ニーディグ筆

2018年9月13日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/technology/406514-bezos-to-launch-network-of-preschools-the-child-will-be-the-customer

 

アマゾン社のCEOジェフ・ベソスは今週水曜日、20億円を投じて慈善事業基金を設立すると発表した。この基金の目的は、幼稚園・保育園の新たなネットワークに資金を出し、ホームレスの家族を支援している非営利団体を支援することである。

 

ベソスはツイッターを通じて、行政サーヴィスが十分に提供されない地域に幼稚園・保育園に設置され、新たに創設される「ベソス・デイ・ワン基金」によって運営されると述べた。

 

ベソスは声明の中で次のように述べている。「私たちはアマゾン社を躍進させているものと同じ諸原理を使う。その中で最も重要な原理は、本物の激しい消費者の欲望ということである。子供たちは消費者、なのだ」

 

『フォーブス』誌の推定では、ジェフ・ベソスの資産は1630億ドル(約18兆円)に達し、近代史上最も富裕な人物となる。アマゾン社の創業者ベソスは、木曜日に「エコノミック・クラブ・オブ・ワシントン」で講演を行う予定でワシントンに滞在中であり、その中で今回の発表がなされた。

 

ジェフ・ベソスと妻マッキンジーは最近になって初めて大きな政治献金を行った。2人は1000万ドル(約11億円)を提供してスーパーPACを創設した。このスーパーPACの目的は、民主、共和両党の連邦議会議員選挙候補者で、退役軍人たちを支援する人たちを当選させることである。

 

木曜日の声明の中で、ベソスは新しい基金は、ホームレスとなった家族を支援する民間団体を毎年表彰するリーダーシップ表彰を行うことも併せて発表した。

 

アマゾン社の報道担当者は新しいプロジェクトについての更なる詳細については何も述べなかった。

 

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(終わり)

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ大統領はやはり厳しいところを手練手管で生き延びてきたビジネスマンだなと思わせる記事をご紹介したいと思います。

 

 『ワシントン・ポスト』紙時代にウォーターゲート事件をスクープし、そのことが映画にまでなった、ボブ・ウッドワード記者トランプ大統領とトランプ政権についての最新作が刊行されました。その本にはトランプ政権の悪口、ネガティヴな内容が満載のようです。

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 刊行前からマスコミにはその内容の一部がリークされて、報道されてきました。その中には、金正恩暗殺計画という話も出ていました。今年6月には米朝首脳会談を行い、トランプと金正恩はマスコミの前で、笑顔で握手を交わしましたが、一度は殺そうと思った人物と笑顔で握手をするというのは何とも凄まじい世界です。

 

 ウッドワードの本の中身のリークで、トランプ大統領らしいエピソードだと私が思ったのは以下の記事で紹介された、アメリカ国債をもっと発行せよ、という発言です。共和党の政治家や政策立案者たち、更にはリバータリアニズムの信奉者たちにとって、健全な財政、国を無借金状態で運営するということは無誤謬の原理ということになります。そのためには行政の効率化(行政改革)を行うべし、そうすれば減税にもつながるということになります。

 

 しかし、トランプ大統領は当時の経済アドヴァイザーであったゲイリー・コーンに対して、借金を返さずに、もっと国債を発行しなくてはと発言し、コーンを驚愕させた、というエピソードがリークされました。「トランプ大統領は経済オンチ」「国債について何もわかっていない」という批判の材料にしようという反対派の意図が見えます。トランプ大統領に対しては、民主党は反対党だから当然として、共和党の体制派、主流派も攻撃を行っていると考えられます。トランプ大統領は一般庶民のアメリカ国民にとっては良い大統領ということになります。しかし、エリート層や知識人層にとっては理解できない人物ということになります。

 

 アメリカ国債については、発行残高は約20兆ドル(約2200兆円)で、アメリカ以外での保有額は約6兆ドル(約660兆円)です。日本は中国とほぼ同額で1兆ドル(110兆円)を保有しています。

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ソース:https://toukeidata.com/kinyu/beikokusai_hoyuukoku.html

 

 本来であれば、このアメリカ国債保有を武器として、アメリカと交渉が出来るはずですが、なかなかそうはいきません。アメリカとの貿易で黒字を得ながら、それをアメリカ国債とアメリカからの武器購入に充てる、これが日本の置かれている状況です。

 

 トランプ大統領はそのことが分かっていないのか、分かっていながら完全に無視をして、日本を敵視しています。もっとアメリカから輸出を増やせ、アメリカから武器を買え、貿易黒字を減らせ、という要求をしています。対米貿易黒字が減少すれば、アメリカを支えることも難しくなっていきます。しかし、このような理屈をアメリカ国内に宣伝する訳にはいきません。ですから、黒字を減らせ、アメリカから何でも買えということを言うしかない、そしてそれを二国間交渉で強圧的にやらせようとしています。

 

 トランプ政権になって、プラスとマイナスがあります。どのようなことにもプラスとマイナス、光と影はつきものです。日本から見てのトランプ大統領はプラスよりもマイナスが多い、ということになれば、対米関係、対トランプ政権との付き合い方ももう一度よく考えて行かねばならないでしょう。

 

 

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連邦政府の借金を消し去るためのトランプの計画は紙幣を刷ることである:ウッドワードの本から(Trump's plan to help eliminate the federal debt was to print money: Woodward book

 

アリス・フォーリー筆

2018年9月11日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/406085-trumps-plan-to-help-eliminate-federal-debt-was-to-print-money

 

トランプ大統領は昨年、経済問題首席補佐官に対して、政府は借金を消し去るためにより多くの紙幣を刷るべきだと提案したと報じられた。これはボブ・ウッドワードの最新刊からの引用で明らかにされた。

 

ウォーターゲート事件でスクープを連発したヴェテラン、ウッドワードは新しい本『恐怖:ホワイトハウスのトランプ』の中で、アメリカ合衆国国家経済会議の当時の委員長ゲイリー・コーンはトランプ大統領に対して、大統領任期の第一期期間中に連邦準備制度理事会が金利の引き上げを行いたいと考えていると述べた、と書いている。この引用部分を『ビジネス・インサイダー』が最初に報じた。

 

トランプはコーンの発言に対して次のように答えた。「私たちは多額の借金をし、それを返さないで、国債を更に売ってお金を作るようにしなければ」。

 

コーンはトランプ大統領の返事に「驚愕」した。トランプの返事はアメリカ国債がどのようなものかについて「基本的な理解」がトランプには欠如していることを示しているということになる。

 

このやり取りが行われた当時、トランプは大統領選挙に当選したばかりでまだ正式に大統領に就任した訳ではなかった。そして、選挙戦期間中に自分の大統領在任期間8年でアメリカ政府の負債を消滅させると公約していた。トランプは国の借金の返済方法を提示したと報じられている。その方法とは「印刷機を動かす、紙幣を刷る」というものだった。

 

ウッドワードは本の中で、コーンはこのやり取りの後、より多くの紙幣を刷ることはインフレーションを引き起こすと考えられること、アメリカの財政健全性にとって悲劇的な結果をもたらす可能性があることを説明した、と書いている。

 

ウッドワードは「トランプが、アメリカ政府の国債がどのように機能しているのかを理解していないことは明確になった」と書いている。

 

今週火曜日、コーンは声明を発表し、ウッドワードの本の中で描かれている自分の姿は不正確であると述べた。彼はどの部分が不正確かということを特定しなかった。

 

コーンは『アクシオス』誌に寄せた声明の中で次のように述べている。「本書は私のホワイトハウスでの体験を不正確に描写している。私はトランプ政権での私の行った仕事に就いて誇りを持っている。私は大統領と経済政策はこれからも支持し続ける」。

 

ウッドワードの本の引用が報道されるようになってから、トランプはウッドワードを口汚く罵るようになっていると報じられている。

 

今週月曜日、ホワイトハウスはウッドワードの著作について「浅はかな」内容であり、法的手段も視野に入っていると発表した。トランプ大統領はウッドワードを「嘘つき」と呼んでいる。

 

=====

 

●「極秘の金正恩氏暗殺訓練も トランプ政権の内幕本発売   ホワイトハウスの混乱描く」

 

2018/9/12  日経新聞 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35255240S8A910C1000000/

 

 【ワシントン=永沢毅】著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏がトランプ米政権の内幕を描いた「恐怖 ホワイトハウスのトランプ」が11日、全米で発売された。事前に伝わった内容でホワイトハウスの混乱ぶりを描いているとして出版前から話題を呼んでいるが、トランプ大統領は自身への「攻撃だ」と反発を強めている。

 

 トランプ米政権の内幕を描いた本が11日、全米で発売された。トランプ氏の奔放な言動と制御しようと苦心する周辺の動きなどを描き、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長暗殺訓練を極秘に実施していたことも明かした。

 

 内容はトランプ氏の奔放な言動と、それを何とか制御しようと苦心する周辺の動きが軸だ。例えば、2017年8月にトランプ氏は北米自由貿易協定(NAFTA)や世界貿易機関(WTO)、米韓FTAからの離脱を画策。マティス国防長官やコーン前国家経済会議(NEC)委員長ら政権幹部が大統領執務室に駆け込み、その悪影響を説明して必死で引き留めたという。

 

 側近同士の抗争の記述も多い。あるときバノン前首席戦略官が、イバンカ大統領補佐官に対しトランプ氏の長女という立場を利用して大きな態度をとっていると非難。「おまえは単なる職員に過ぎないだろう!」と罵声を浴びせると、イバンカ氏は「私はスタッフじゃない。大統領の娘よ!」と応酬したとされる。

 

 トランプ氏の看板政策である貿易赤字の是正を巡っては、通商政策を担う強硬派のナバロ大統領補佐官と現実主義派のコーン委員長が対立。赤字を問題視しないコーン氏が「99.9999%のエコノミストは私と同じ考えだ」と主張すると、ナバロ氏は「ウォール街エリートの愚か者め」と反発した。

 

 政権が北朝鮮の核問題への対処に苦心している様子もうかがえる。北朝鮮の指導層への限定攻撃のオプションが取り沙汰されるなかで、1710月には米空軍が中西部ミズーリ州で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長を暗殺する訓練を極秘に実施していたことを明かした。北朝鮮と地形の特徴が類似しているとの理由で、ミズーリ州の高原が選ばれたという。ただ、この訓練では爆撃機などからの交信が周辺の住民に漏れる事態がおきたとされる。

 

 本の著者は1970年代にニクソン政権を辞任に追い込んだ「ウォーターゲート事件」をスクープしたことで知られるボブ・ウッドワード氏。トランプ氏は不満を強めており、10日にはツイッターで「匿名の情報源による私への攻撃だ。ホワイトハウスは円滑に運営されている」と改めて批判した。

 

 ただ、ウッドワード氏は11日、米紙ニューヨーク・タイムズに「枢要な政権高官から私に連絡があった。『書かれている内容が真実だということを私たちはみな分かっている。1000%正しい』ということだった」と自信を示した。

 

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 古村治彦です。

 

 日本でもそうですが、アメリカでもマスコミや大学、研究所(シンクタンク)などが様々な世論調査を行っています。今回は最近の世論調査の結果について報じた記事をご紹介します。

 

 今年秋の中間選挙(連邦下院全議席、連邦上院一部議席、州知事の一部)のテーマとなりそうなのが、「メディケア・フォ・オール(Medicare for All)」の導入、公立大学の無償化、そして、アメリカ合衆国入国税関管理局(ICE)廃止です。

 

「メディケア・フォ・オール」とは単一支払者健康保険システム(single payer health care system)の別名で、政府が保険料を徴収し、国民の医療にかかるお金を全て支払うというものです。アメリカでは健康保険は常に論争のテーマとなっています。ヨーロッパや日本といった先進諸国では国民皆保険制度(各国で違いはありますが)ですが、アメリカはそうではありませんでした。オバマケアの導入で国民の大部分が健康保険に入れるということになりましたが、増税などで大きな批判があります。

 

 アメリカでは長きにわたり、国民皆保険制度は共産主義と同じだ、という主張がなされ、国民皆保険制度を評価する人間に対して批判が寄せられることが続きました。

 

 現在、民主党急進派は、「メディケア・フォ・オール」という制度の導入を主張しています。これは、政府もしくは公的機関が保険料を徴収し、そこが医療費コストを支払うという制度です。アメリカで長年にわたり批判されてきた共産主義的なシステムです。

 

 この制度について、民主党支持者の85%が賛成しているというのは分かりますが、共和党支持者の52%が賛成しているのは注目されます。今回の世論調査の結果は、アメリカ国民の多くが国民皆保険を支持しているということを示す一つの数字となります。

 

アメリカ合衆国入国税関管理局(ICE)は、国土安全保障省(Department of Homeland Security)に所属し、不法移民の取り締まりなどを行っています。最近、不法移民の親子を別々に収容して、「親子を引き離すとは何事だ」という批判に晒され、ドナルド・トランプ第登用が親子を別々に収容しないようにせよという命令を出しました。

 

 ICEについて、共和党支持者の7割は廃止に反対(存続に賛成)で、民主党支持者では44%が廃止に賛成、44%が廃止に反対という世論調査の結果が出たということです。アメリカ国民の過半数はICEの廃止に反対しているということになります。

 

 興味深いのはリベラルであろう民主党支持者たちの間でICEの廃止について意見が割れている点です。民主党支持者でもICEの存続を求める声が多いのは、不法移民に対する否定的な感情がアメリカ国民に多くあるということであろうと思います。こうした不法移民が低賃金の重労働を担っているという現状がありますが、一方で、移民たちが自分たちの仕事を奪っている、更には外国の安い労働力がアメリカの仕事を奪っているという不満が人々の間で高まっています。

 

 これはアメリカ国民の多くが不法移民を拒絶しているということになります。不法移民でやってくる人々がいなければ、低賃金の肉体労働は成り立たないほどになっていますが、不法移民流入に伴うマイナス、麻薬の流入や社会保障の負担増大などについて、リベラルな民主党支持者も辟易しているということになります。

 

 アメリカ国民は富の再分配を求め、同時に、これ以上の不法移民の流入は阻止したいという考えを持っているということになります。自分たちに対してはリベラルな政策を求め、自分たち以外の存在には厳しい政策を求めているということになります。人々のこのような考えを実行しているのがトランプ大統領です。トランプ大統領のやることは、ワシントンやニューヨークにいるエリートたちには訳の分からないものだと思いますが、人々の気持ちに合っているので、支持率が下がっていないということになります。

 

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最新の世論調査によると、アメリカ国民の70%が「メディケア・フォ・オール」を支持している(Seventy percent of Americans support 'Medicare for all' in new poll

 

ミーガン・ケラー筆

2018年8月23日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/healthcare/403248-poll-seventy-percent-of-americans-support-medicare-for-all

 

多数のアメリカ国民、7割のアメリカ国民が「メディケア・フォ・オール」を支持しているということが最新の世論調査で分かった。「メディケア・フォ・オール」は、単一支払者健康保険システム(訳者註:政府、もしくは公的機関が保険料を徴収し、政府が医療費を全て支払う)である。

 

ロイター通信・イプソス実施の世論調査によると、民主党支持者の85%が「メディケア・フォ・オール」を支持し、共和党支持者の52%が支持している。

 

リバータリアニズム系のシンクタンクであるジョージメイソン大学メルカトス研究所が、「メディケア・フォ・オール」を導入すると10年間で連邦政府の支出が32兆6000億ドルを増加させるだろうという研究結果を発表した。この後、「メディケア・フォ・オール」は連日報道されるようになった。

 

研究結果を発表したチャールズ・ブラハウスは、2018年8月初旬に『ウォールストリート・ジャーナル』紙に寄稿し、その中で、税率を2倍にしても単一支払者健康保険システムの予算を賄うことはできないと主張した。

 

一方、「メディケア・フォ・オール」導入を主張する人々は、「メディケア・フォ・オール」を法律として成立させれば、2031年までに健康保険にかかる予算を2兆ドル削減できると述べている。

 

バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)は、メルカトス研究所の研究結果は「人々を間違った方向に誘導し、バイアスがかかったものだ」と述べた。

 

ロイター通信社の最新の世論調査によると、アメリカ国民の過半数は大学学費の無料化を支持している、ということだ。共和党支持者の41%、民主党支持者の79%が支持している。

 

アメリカ合衆国入国税関管理局(ICE)廃止の動きに対しては、世論調査の対象者の過半数が反対している。共和党支持者の70%が、創設15年の政府機関ICEの廃止に反対し、民主党支持者の中は半々に割れている。約44%が廃止に賛成し、44%がICEは存続させるべきだと答えた。

 

ロイター通信の世論調査はアメリカ国内の成人に対して今年6月と7月を通じて行われた。ロイター通信は2989名に対して「メディケア・フォ・オール」について、5339名に対して大学無償化について、7737名に対してアメリカ合衆国入国税関管理局(ICE)廃止について質問した 「メディケア・フォ・オール」と大学無償化に関しての誤差は2ポイント、ICE廃止に関しての誤差は1ポイントの誤差だった。

 

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