古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: アメリカ政治

 古村治彦です。

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 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の情勢は大きく変化なしだ。ジョー・バイデンが30%の支持を集めトップということは変わらない。2位のバーニー・サンダースが20%くらいの支持を集めている。エリザベス・ウォーレンは10%台中盤の支持率で3位に後退、4位のピート・ブティジェッジは10%の壁を超えられずに4位に甘んじている。
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サンダース、バイデン、ウォーレン、 ブティジェッジ
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ブルームバーグ
 マイケル・ブルームバーグが支持を伸ばしている。これはブティジェッジの支持率を食っているということであろう。こうして見ると、中道派が40%台後半、左派が30%中盤の支持を集めているということになる。来月からは予備選挙の実際の投票が始まる全米で最初に選挙が実施されるアイオワ州で誰が1位を獲得するかが注目される。

 アイオワ州での現在の情勢では、ブティジェッジ、サンダース、バイデン、ウォーレンの順番となっているが、僅差の大接戦となっている。バイデンは慌てることなく、現在の選挙戦を続けていけばよい状況ではあるが、アイオワ州であまりに惨敗だと印象が良くない。やはり接戦で2位以上を取りたいところだろう。ブティジェッジは中西部(インディアナ州出身)の地の利を活かして1位を取って弾みをつけたいが、サウスカロライナ州やネヴァダ州では支持が伸び悩んでいるのが課題だ。全国的に見ればなかなか難しい。

 選挙戦はいよいよ本格化していく。これからどのように進んでいくか注目される。

(貼り付けはじめ)

世論調査:12月の討論会の後、バイデンは全国規模の世論調査で支持率トップを保つ(Biden maintains national lead after December debate: poll

ジャスティン・コールマン筆

2019年12月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/475792-biden-maintains-national-lead-after-december-debate-poll

月曜日に発表された最新の世論調査の結果、ジョー・バイデン前副大統領は12月の討論会の後も全国規模の各種世論調査でリードを保っている。

今週の「モーニング・コンサルト」社の世論調査の結果、バイデンは2週連続で支持率31%を記録した。2019年12月のはじめに比べて2ポイント上昇した。バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)は21%の支持率で2位に入った。

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジはそれぞれ支持率15%と9%で第3位と第4位になった。

上位4名に続くのは、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグで支持率6%、実業家アンドリュー・ヤンで支持率5%、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、エイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)、慈善事業家トム・ステイヤーがそれぞれ支持率3%を記録した。

ヤン、クロウブシャー、ステイヤーは討論会の後に好感度を上げた。しかし、トップ集団を形成している候補者たちは支持を確立している。サンダースとバイデンはそれぞれ好感度74%と71%を記録して最も高い好感度を記録した。

今回の世論調査は2019年12月20日から22日にかけて実施された。調査対象は民主党予備選挙に参加する予定の7178名の登録済有権者だった。誤差は1ポイントだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 遅くなって恐縮だが、昨年12月に実施されたアメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会の様子をまとめた記事をご紹介する。
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 12月の討論会に参加できたのは7名だった。昨年4月の討論会では24名が参加して2晩に分けて実施されたが、参加条件がどんどん厳しくなって今や3分の1となった。また、候補者の選挙戦からの撤退も続いている。最近になって出馬した元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグは政治献金を受けないことを表明しているので、討論会に参加する資格がない。

 12月の討論会ではジョー・バイデンが元気だった。主なテーマは大口献金者が与える影響や医療制度であった。左派のエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)が中道派のジョー・バイデン前副大統領とインディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジとやり合うという構図になった。そこにエイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)が強引に入ってくるという展開だった。
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 写真を見てもらうと分かるが、マイノリティの政党であるはずの民主党だが、白人ではない候補者で討論会に参加できたのは、アジア系のアンドリュー・ヤンだけだった。有力候補だったカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)(アフリカ系アメリカ人)は既に選挙戦から撤退し、コーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)(アフリカ系アメリカ人)とフリアン・カストロ前住宅・都市開発長官(ラティーノ)は討論会参加条件をクリアできなかった。マイノリティの支持を集めているのはジョー・バイデンだ。

 民主党の討論会は左派と中道派の論争となり、最後には「現職ドナルド・トランプ大統領に勝てるかどうか(electability、当選可能性)」の話になる。左派のウォーレンとサンダースの政策は実現可能性が低いという批判が出る一方で、中道派のバイデンには高齢、ブティジェッジには経験不足という批判が付きまとう。バイデンは高齢なので、仮に大統領選挙に当選しても、二期目を目指せるかどうか分からない(現在で78歳なので、次の選挙となると82歳となる)、そうなると、最初から人気が限られているということで、レイムダック化するということになる。ブティジェッジは年齢がまだ若い(38歳)ということもあり、経験がないというのは仕方がないことだ。こうしてみると、どの候補者を取ってみても「帯に短し襷に長し」ということになる。

 こうして見ると、ドナルド・トランプの再選可能性は高いということになる。しかし、最近になっての中東情勢の悪化というトランプ自身が招いた状況がどう作用するかは不透明な状況だ。

(貼り付けはじめ)

12月の討論会の5つの重要点(Five takeaways from the Democratic debate

ナイオール・スタンジ筆

2019年12月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/475439-five-takeaways-from-the-democratic-debate

アイオワ州での党員集会まで2カ月を切り、2019年最後のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙の候補者討論会が木曜日、ロサンゼルスで開催された。

今回の討論会での特筆すべき重要点は何であろうか?

(1)ブティジェッジ対ウォーレンは注目を集めた瞬間だった(Buttigieg vs. Warren was the big moment

今回の討論会で本当に熱の入ったやり取りになったのは1つの瞬間だけであった。

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジとエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は大口献金者たちの影響について応酬を続けた。

討論会は静かに始まったが、ブティジェッジとウォーレンはお互いの選挙戦につい発言する機会を狙っていた。木曜日の夜、一対一の戦いに発展した。

議論のテーマとなったのは、ウォーレンが大口献金者からの献金を謝絶しているのに対して、ブティジェッジが大口献金者からの献金を受け入れていることだった。

討論会で、ウォーレンは話題となった選挙集会に参加した人々と何時間でも一緒に写真を撮ることについて言及し、「こうした写真撮影に対して誰もコストを支払うことはない。5000ドルの献金で写真撮影ができる人にはこのような優遇はないのだ」と述べた。

ブティジェッジは即座に反撃し、「まるで私のことを指して語られているようにしか思えないが、私はそれには該当しない」と述べた。

ブティジェッジは、トランプ大統領は既に莫大な選挙資金を集めており、民主党側が「自分の片手を背中に縛り付けた状態にして戦う」ようなことをしてはいけないと述べ、自分自身の採用しているアプローチを擁護した。

やりとりはここからより個人的な話になり、ブティジェッジは、ウォーレンが彼よりもだいぶ豊かであると述べた。一方、ウォーレンはブティジェッジがカリフォルニア州のナパヴァレーの「ワイン・ケイヴ」で高額な資金集めパーティーを行ったと応酬した。

2人のやり取りで、どちらが勝者となったかは明確ではない。ウォーレンは攻撃をし、ブティジェッジは堅固に守った。ブティジェッジは昨年の連邦上院議員選挙でウォーレンが大口献金者向けのパーティーを開催したことを指摘し、自分に対するうおーれんからの批判に押収した。

2人の争いはアイオワ州でお互いが相手よりも上に行こうと躍起になっていることを示している。

ブティジェッジは最近になってアイオワ州での支持率を伸ばしている。世論調査の結果から、ブティジェッジは高い教育を受けた白人層から支持を受けていることが分かっている。こうした人々は以前にはウォーレンを熱心に支持していた。

他の候補者たちは、自分たちはブティジェッジとウォーレンの言い争いとは関係なく、政策を語るチャンスを得ることができた。

ジョー・バイデン前副大統領とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)との間のやり取りはより軽い、冗談交じりのものであった。

エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)は、民主党の同僚たちと争うよりも団結をもたらすことにより興味がある人々を代表していると述べた。これは、これから11カ月の後にトランプ大統領を倒すことを第一に考えている民主党員たちへのアピールとなるだろう。

(2)バイデンは新たに鋭さを見せた(Biden brings a new sharpness

バイデンはこれまでの討論会よりもより良いパフォーマンスを見せた。

これまでの選挙集会やイヴェントなどで、元副大統領バイデンは取りとめもない話や失言を繰り返してきた。こうしたことから77歳になるバイデンが大統領選挙運動の厳しさに耐えられるのかどうかということに疑問が呈されてきた。

ロサンゼルスではそのような姿は一切見せなかった。

バイデンは今回の討論会で失敗しなかった。自身の立候補について基本的な主張を行った。自分は中流階級の懸念について理解できる本能を持っているので、トランプを倒せる最善の候補者だと述べた。

バイデンはワシントンで共和党にあまりにも譲歩し過ぎだったという批判に応酬するために、バイデンは共和党に対して怒りを持っている人々の大部分よりも、自分はより怒りを表明する権利を持っていると述べた。それは「共和党側による私、私の家族に対する攻撃方法」についてだとも述べた。バイデンは、ウクライナのエネルギー企業の取締役を務めた息子ハンター・バイデンについてこのようにして言及した。

バイデンは全国規模の世論調査で支持率トップを保っている。木曜日の討論会でのパフォーマンスでバイデンの支持率は維持されることだろう。

(3)クロウブッシャーが輝く(Klobuchar shines

クロウブッシャーは現在アイオワ州での支持率を上昇させている。彼女は木曜日の討論会でも強烈な印象を残した。

クロウブッシャーはアメリカ・メキシコ・カナダ貿易協定(USMCA)についてサンダースとは違う立場を明確にした。彼女は協定に賛成、サンダースは反対だ。

クロウブッシャーは気候変動と有権者保護についての回答で強い印象を残した。

討論会の後半、クロウブッシャーは、ウォーレンとサンダースが主張している「メディケア・フォ・オール」政策よりもより実行可能な医療制度改革を主張した。クロウブッシャーは、「進歩主義的であることと実践的であることを同時に実現すること」は可能だと主張し、彼女の選挙運動は討論会当時までこの考えに基づいて進めてきたと述べた。

民主党支持の有権者たちが今の段階でクロウブッシャーが堅持している確固とした中道主義を本当に望んでいるのかは大きな疑問である。しかし、クロウブッシャーは木曜日の夜の討論会において放映時間の多くの中で主導権を握り、主張を行った。その結果、人々は、彼女を主要な候補者として考えねばならなくなった。

(4)参加人数が少ないことでより良い討論に(Smaller stage makes for better debate

今回の討論会は、今年の民主党予備選挙の候補者討論会の中で最も登壇者が少ない討論会となった。そして、このことは登壇者全てにとって良いことであったと思われる。

今回の討論会で登壇者は7名だけだった。これまでの討論会では登壇者は10名以上であった。登壇者が少ないことで、医療や貿易といった主要問題からアフリカ系アメリカ人への賠償、ジェンダー、イスラエル・パレスチナ紛争まで様々な問題について、うわべだけではない回答を候補者たちが示すための十分な時間が取れた。

登壇者が少ないことで、クロウブッシャーとIT実業家アンドリュー・ヤンといった候補者たちの主張を聞くことが出来た。

今回、PBSのヤミシェ・アルシンダー、アンナ・ナワズ、ジュディ・ウッドローフ、『ポリティコ』誌のティム・アルバータが司会を務めたが、討論が脱線しないようにうまくリードした。今回の形式による敗者は討論会に参加しなかった、できなかった候補者たちということになる。その中にはコーリー・ブッカー連邦上院議員(ニュージャージー州選出、民主党)、元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグ、トゥルシー・ギャバード連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)がいる。

(5)失言のないゾーン(A gaffe-free zone

討論会で人々の記憶に残る瞬間というのは、候補者がとんでもない間違いをしでかした瞬間だ。

木曜日の討論会では明らかに失言という発言は出なかった。候補者の中には他の候補者たちよりもうまくできなかった人々もいた。ウォーレンは討論会以外の場所ではよりうまくやっている。しかし、本当に失敗したとか絶望の陥ったというような人はいなかった。

候補者たちは今回の討論会での出来不出来を受け入れ、ホリデーシーズン後にアイオワ州とニューハンプシャー州に突入するための準備を行うことになる。

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第6回アメリカ大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会における8つの重要点(8 takeaways from the sixth Democratic presidential debate

エリック・ブランダー、ダン・メリカ(CNN)筆

2019年12月20日

CNN

https://edition.cnn.com/2019/12/20/politics/pbs-politico-debate-highlights/index.html

ロサンゼルス発CNN。2019年最後の大統領選挙民主党予備選挙候補者討論会はカリフォルニアで開催されるのだろうが、話題の中心はアイオワ州だった。

ピート・ブティジェッジ、エイミー・クロウブシャー、そしてエリザベス・ウォーレンは党の指名に向けて力強いパフォーマンスを行った。この人たちは予備選挙が最初に実施される州に住む有権者たちに対するアピールのために衝突し続けた。

その他の有力候補者2人ジョー・バイデンとバーニー・サンダースは全国規模で選挙運動を展開している。両者はアイオワ州で勝利を収める可能性が高い。バイデンは非白人の有権者たちからの支持が多く、サンダースは全国どもでも人気は高い。バイデンとサンダース以外の候補者がアイオワ州で勝てなければ、この両者が民主党指名候補になる可能性が高くなる。

医療制度とイラクに関してこれまでの論争を別にして、2人は論争から距離を置いていた。バイデンは最も自信たっぷりにパフォーマンスを行った。サンダース(とアンドリュー・ヤン)はいささかユーモアを交えてパフォーマンスを行った。サンダースはクロウブシャーについて、「私の名前をみだりに間違い、私の気持ちは傷つけられました。私は圧し潰されました。私が反論して良いですか?」とジョークを飛ばした。

ここから6回目の民主党予備選挙候補者討論会における8つの重要点を挙げていく。

(1)「ワイン・ケイヴ」モーメント(The 'wine cave' moment

ブティジェッジはアイオワ州での世論調査で支持率を上昇させている中で、避けてきた批判に直面した。

ウォーレン連邦上院議員とインディアナ州サウスベンド市長ブティジェッジはここ数週間お互いに攻撃し合っていた。しかし、木曜日夜の討論会で起きたことは、ウォーレンとブティジェッジが

Warren and the South Bend, Indiana, mayor have been circling each other for weeks, but what played out on Thursday night showed how the two candidates -- both of whom have strong operations in Iowa -- see their paths to the Democratic nomination as running through the other.

ウォーレンとブティジェッジとの間の激しい衝突はマサチューセッツ州選出の連邦上院議員ウォーレンから始まった。ウォーレンは私的な資金集めパーティーを開催せず、インターネットでの献金に依存している。ウォーレンは他の候補者たちについて大口資金集めパーティーを開いていることを批判し、富豪たちの声を「全員の声の中から抜き出す」ことを許していると述べた。

ウォーレンはブティジェッジを怒らせたのは明らかだった。ブティジェッジは次のように反論した。「今回がドナルド・トランプを倒す唯一の機会なのです。私たちは自分の片腕を背中に括りつけて戦うようなことをすべきではないのです」。

ウォーレンはすぐに、ブティジェッジがナパヴァレーの「ワイン・ケイヴ」で開催した政治資金集めパーティーについて言及した。ナパヴァレー市の市長は挨拶をしたが、その部屋には1500個のスワロフスキーのクリスタルで飾られたシャンデリアが吊られていた。

ウォーレンは「ワイン・ケイヴに集まった大富豪たちが次期アメリカ大統領を選ぶようなことをすべきではない」と述べた。

ブティジェッジはウォーレン自身も昨年(2018年)の連邦上院議員選挙で大口献金者向けの資金集めパーティーを実施したではないか、また大口献金者から資金を受け取らないという決定は何も彼女が始めたものでもないと反論した。

ブティジェッジは次のように述べた。「雑誌のフォーブスによると、いいですか、この舞台上で私だけが富豪もしくは大富豪ではない人物ということになります。これはとても重要なことです。あなた自身が合格することが出来ない純粋性を試すテストをやろうとすること自体が問題ですね」。

ウォーレンとブティジェッジとのやり取りで木曜日の討論会は始まった。ブティジェッジは他の候補者たちからの攻撃を受けたが、それでも彼は話す時間を考えるとやはり全国へのアピールができたということになる。

(2)クロウブシャーがブティジェッジの経験を攻撃(Klobuchar attacks Buttigieg's experience

討論会の夜における候補者間のやり取りで記憶に残っているのは、クロウブシャーはブティジェッジが11月の討論会の壇上で行った発言について攻撃した。この時、ブティジェッジは「他の後方者たちは合わせたら100年以上のワシントンの経験」を持っていると発言し、他の候補者たちをイライラさせた。

ミネソタ州選出の連邦上院議員クロウブシャーはブティジェッジに対して、「あなたは私たちの経験を尊重しなければなりません」と述べ、他の候補者たちの経験と業績を称賛し始めた。

クロウブシャーは、消費者財政保護局を創設する際にウォーレンが果たした役割、バイデンが推進したガン対策、帰還兵や退役兵の医療制度についてのサンダースの戦い、農業法制に関する交渉におけるクロウブシャーの役割を指摘した。

そしてクロウブシャーはブティジェッジに罠を仕掛けた。

クロウブシャーは次のように述べた。「重要なことは、党の指名候補となる人物は、あなたが述べているように、穏健派の共和党員と無党派層からの支持を実際に勝ち取ってきた人たちであるべきだということです」。

ブティジェッジは反撃した。彼は次のように述べた。「勝利するための能力について話したいとお望みなんですか。同性愛者である人物を80%の有権者の投票で再選させることができるように広範な人々の連合を作ろうとして成功しましたよ。マイク・ペンスの地元のインディアナ州でね」。

しかし、サウスベンド市は民主党が圧倒的に優位な土地柄で、ブティジェッジがラクラクと再選するであろうことは問題にもならなかった。

ブティジェッジの政治的な経歴書に書かれていないことが多いのだが、ブティジェッジは2010年にインディアナ州財務長官に立候補して落選した。これが彼にとって初めての公職を目指す選挙となった。クロウブシャーはこの時のことを取り上げた。

クロウブシャーは「もしあなたがインディアナ州で勝利を収めることができていたら、素晴らしいことだったでしょうね。あなたは選挙に勝とうとして、20ポイント差をつけられて負けましたね」と述べた。

彼女は少し間違ってしまった。彼は25ポイント差をつけられて落選した。

(3)自信を持つバイデン(A confident Biden

話題があちこちに飛んだいくつかの討論の後、バイデンは今回の討論会で最も自信があるように見せることに成功した。彼は全国規模の世論調査でトップを維持していることについて自信を深めたようだ。彼には参加人数が少ない討論会の方がやりやすいのだ。

前副大統領バイデンは医療制度についてサンダースと論争を行っている間、とても力強かった。彼は自身の年齢についての質問をうまくいなした。バイデンはトランプが大統領を退任した後、共和党は「悟る」ようになるだろうと発言したことについて批判された。他の候補者たちはこの考えを嘲笑した。バイデンはこうした批判を払いのけた。バイデンは、息子のハンター・バイデンに対して数か月も攻撃が続いたが、共和党を嫌いにもならないし、信頼もできないということにはならないと述べた。

バイデンはもし大統領に当選したら、二期目に出馬するのかどうかという質問からうまく逃げた。彼は2020年に大統領選挙で当選しですぐに自分の「進む方向を決めることはしない」と発言した。

「私たちの現在の状況を考えましょう。現状についてまず考えましょう。しかし、私が二期目に出るのかどうかということを考えるのはまずいことではないでしょうね」とバイデンは述べた。

78歳になるバイデンは当選すれば史上最年長の大統領ということになる。二期目についての質問をかわしたのはうまかった。彼の立場は一期目にも当選しない前から二期目の選挙について語るという思い上がりを拒絶したということになる。しかし、最初から一期だけ務めるということを表明して大統領就任直後からレイムダック化することも避けようとした。

これはトランプが採用したアプローチとは異なるものだ。トランプ大統領は再選のための選挙運動を2017年に大統領に就任してからすぐに始めた。

(4)医療制度についてのサンダース対バイデンの戦い(Sanders vs. Biden on health care

医療制度についてはこれまでの民主党候補者討論会では最初に取り上げられるテーマだった。木曜日夜の討論会では、3時間過ぎた頃になって取り上げられた。しかもサンダースとバイデンとの間でこれまでよりも短いやり取りしか行われなかった。ヴァ-モント州選出の連邦上院議員サンダースは単一支払者による「メディケア・フォ・オール」提案(訳者註:政府による国民皆保険的健康保険)の署名について強調し、バイデンはオバマケアの基礎となった計画を支持し、民間の保険提供業者の役割を維持すべきと主張した。

医療制度に関するやり取りは、サンダースに対する問いかけから始まった。それは、連邦上院で過半数を握っている共和党が彼の計画に反対しているという現実を踏まえて、それではとりあえず、完全に彼の計画通りではないものを実現することに努力するのか、というものだった。彼はそれに同意せず、「私は単一支払者メディケア・フォ・オールを可決できると考えています」と述べた。

そしてバイデンは自分自身の計画について述べた。それはオバマケアに対して公的な選択肢を付け加え、アメリカ国民が保険のために保険料を支払うにあたり、その収入制限が低くなると述べた。

バイデンは「ワシントンが国民を支配するようなことをすべきではないんです。だからあなたの計画は実現できないのです」と述べた。

サンダースはバイデンの計画は「基本的に現状維持に過ぎない」と述べた。バイデンはサンダースの計画は10年で30兆ドルの新たなコストが必要となり、その結果として増税が起きるだろうと反撃した。

サンダースは医療制度のために税金を支払うことになるが、アメリカ国民はそれ以上自己負担金、保険料、控除を支払う必要はなくなり、処方箋薬の支払いについて年間200ドルを上限とすることができると述べた。

ある時点で、バイデンは論争を止め、激しく腕を動かしながら発言するサンダースに対して、「ちょっとの間腕を下げたらどうだい、バーニー」と述べた。

サンダースは「君に手を振っているだけだよ、ジョー」と返した。

(5)クロウブシャーは状況を動かしたい(Klobuchar wants to make a move

現在のところ、ミネソタ州選出連邦上院議員クロウブシャーはアイオワ州で少しずつかつ確実に支持を伸ばしている。彼女はアイオワ州での逆転に望みをかけている。

しかし、クロウブシャーは予備選挙においてトップ集団から離されているままだ。そして、討論会の壇上こそはその差を縮めるための最後の機会となったことは明らかだ。

クロウブシャーは目立つ瞬間やテーマを逃さないようにするために不意に入ってきたので、最も熱心な参加者となった。

包装されていない時間帯に大学無償化について会話がなされていた時に「私が答えてよろしいですか?」と述べた。

障害を持つ人々に地域にどのように参加してもらうかについての会話中、彼女は「私がその質問に答えてよろしいですか?」と述べた。

討論会において注目される存在になろうとしたクロウブシャーの努力は結実した。最初の1時間でクロウブシャーはどの候補者よりも話す時間を確保することができた。その間、クロウブシャーは会話をリードした。そして、全体として彼女は2番目に多く話す時間を確保できた。

バイデンとサンダースが医療制度について論争を繰り広げる中、クロウブシャーは「私はこの議論を拝聴するためだけにここに来たのではありません。私は物事を前に進めるためにここにやってきました」と発言した。

(6)アンドリュー・ヤンは重要な候補者であることを証明した(Andrew Yang shows he belongs

1年前、ヤンは無名の実業家で、自身の立候補について真剣だということを人々に誓うことだけをやっていた。

木曜日の夜、ヤンは討論会会場にいるべき候補者であることを証明した。彼は政治と政策を分かりやすい言葉で人々に語ることができることを示すことで候補者としての力を証明した。

このことが最も明確に示されたのは、討論会の檀上にいる白人ではない候補者はヤンだけだということについて質問された時だった。ニュージャージー州選出連邦上院議員コーリー・ブッカーと元住宅都市開発長官フリアン・カストロは討論会参加条件をクリアできず、カリフォルニア州選出連邦上院議員カマラ・ハリスは選挙戦から撤退してしまった。

アジア系であるヤンは「今夜のこの檀上に唯一の非白人候補者として立っていることは光栄ですが、同時に失望を禁じ得ません」と述べた。

ヤンは微笑みをたたえながら、「カマラがいなくて残念です。コーリーがいないのも残念です。もっともコーリーは戻ってくると思いますけれどもね」と述べた。

この発言に対してホールいっぱいの大きな拍手が起きた。ヤンは若い時に人種差別的な言葉をかけられる対象となったと述べ、「アフリカ系アメリカ人とラティーノは言葉よりもより激しい差別を受けてきた」と語った。

ヤンは政策についての質問を個人に引き付けることで時間を使った。香港での騒動について質問された際、ヤンは自分の家族が香港にいると述べた。また、移民法制の改善について質問された時、「もちろん私はそうしますよ。私自身も移民の息子ですし、私は子供の頃に親に連れられてアメリカにやってきた人々(ドリーマーズ)が全ての点でアメリカ人であると認識しています。しかし、現在の移民法制では不法移民となってしまうのです」と述べた。

ヤンは討論会の最後もトーンを変えることはなかった。そして、ヤンは自身の立候補はそもそも実現するはずのものではなかったと述べた。

ヤンは笑顔をたたえながら次のように述べた。「アメリカ国民の皆さん、私は皆さんが考えていることが分かります。どのようにして私はアメリカ国民の方々と共に今でも討論会に参加しているか分かりますか?」。

(7)大富豪の地位チェック(Billionaire status check

投資家で民主党の大口献金者トム・ステイヤーは今回の討論会に登壇した。彼はいつも通りのタータンチェックのネクタイをしていた。

元ニューヨーク市長マイケル・ブルームバーグは登壇しなかった。

大富豪2人は巨額の資金を投じてテレビCMを放映している。これによって2人は各種世論調査で一桁の支持率を記録するようになっている。2人は討論会で重要な役割を全く果たすことはなかった。

(8)贈り物か許しか?(Gifts or forgiveness?

今回の討論会もこれまでの討論会でも問われた質問が最後に出された。それは「あなたは競争相手に対して長所を提示するか、それとも何か謝罪したいことがありますか?」というものだ。

ステージ上の7名の候補者のうち、2人だけが許しを乞い、謝罪をおこなった。このようにしたのはステージ上の2名の女性、ウォーレンとクロウブシャーだった。

ウォーレンは自分自身が「興奮してしまう」ことがあるとして謝罪した。

彼女は「私は意図的にやっているのではないのですが」と述べた。

クロウブシャーは「私の発言などに怒りを覚えた人たち」に許しを乞うた。

クロウブシャーは「私はぶっきらぼうで攻撃的かもしれません。しかし、しかるべき候補者が党の指名候補となることが何よりも重要だと私は考えるのでそのように行動しています」と述べた。

男性の候補者たちはクロウブシャーとは違う方向に向かい、競争者たちに長所をアピールした。特に彼らが書いた本についてアピールした。

ヤンはちょっとためらいつつ次のように述べた。「私はデータについて本を書きました。もしデータに興味があるなら最適の本だと思いますよ。データと本が好きな人にとっても良い本だと思います」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 イランのイスラム革命防衛隊少将でエリート部隊であるコッズ部隊の司令官だったカシーム・スレイマニが2020年1月3日に殺害された。同時にイラクのシーア派民兵組織カタイブ・ヒズボラの最高指導者アブ・マフディ・アル・ムハンディスも殺害された。この殺害はイラク国内、バグダッド国際空港近くで実行された。
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スレイマニ

 イラク国内でアメリカ関連施設に対しての攻撃が実行され、アメリカ人の犠牲者が出て、それに対してアメリカは報復措置としてカタイブ・ヒズボラの施設を空爆し死傷者が出た。この攻撃に対してバグダッドにあるアメリカ大使館に対して激しい抗議活動が行われたが、2019年年末で一応収束していた。カタイブ・ヒズボラが抗議活動を止めるように命じた。これで一応の安定が図られたが、2020年1月3日にスレイマニが殺害された。
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スレイマニ葬儀の様子
 これによって事態は一気に緊迫感を増した。これまでアメリカもイランも事態を緊迫化させないようにしてきた。しかし、アメリカのドナルド・トランプ大統領は事態を大きく変化させ、中東情勢を一気に緊迫化させた。下の記事のタイトルは「トランプ大統領は中東で危険な火遊びをしている」だ。
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ドナルド・トランプ
 トランプ政権はイランが大規模かつ深刻な反撃をしてこないという前提で、スレイマニ殺害を行った。それどころか、「戦争を止める」ためにスレイマニ殺害を行ったとしている。これに対してイランが同等の報復ということになると、アメリカ政府の最高幹部の暗殺か、アメリカ人を多数殺害することであるが、これだと全面戦争になってしまう。これはアメリカもイランも望んでいない。そうなれば、イランは屈辱を受け入れて忍従するということになる。しかし、これではイラン国内の不満を抑えることは難しい。だから、どうしてもある程度の報復を行うことになる。
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ポンぺオ
 そもそも外国の戦争や政権転覆にアメリカは関わらない、米軍は撤退するという主張でトランプ大統領は当選した。今回、イラク国内でこのような事件を起こしておいて、イラクにいづらくなることは確実だ。米軍のイラクからの撤退ということになると、イラクはイランの勢力圏にはいるということになる。そうなればイランのシリア支援も更に高度に続くことになる。イランからのシリア支援はますます実行しやすくなる。イランにイラクを与える(米軍の撤退)代わりにスレイマニを殺害したということは考え過ぎだろうか。

そのような事態まで想定しての今回のスレイマニ殺害ということだとすると、トランプ政権の深謀遠慮ということになるが、下の記事では慎重に検討せずにやってしまったという評価である。

 国防総省、アメリカ軍は慎重な姿勢であったことを考えると、スレイマニ殺害は諜報機関、CIAが実行した可能性が高い。マイク・ポンぺオ国務長官は連邦下院議員から2017年1月にトランプ政権のCIA長官に就任した(2018年4月まで)。その後、政権内の横滑り(地位としては上昇)して国務長官に就任し、現在に至っている。無人機による攻撃が可能になってから、CIAとアメリカ軍(特殊部隊)は暗殺などの特殊作戦をめぐって争っている。今回はCIA主導、ポンぺオ主導で攻撃が行われたと考えられる。

 アメリカとイランが共に全面戦争に突入したくないと考えているのは救いだ。しかし、状況をコントロールできるかは不透明だ。不測の事態によって人間のコントロールなど簡単に無力化してしまう。ショックから少し落ち着きが出てきているが、楽観は禁物だ。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領は中東で危険な火遊びをしているTrump Is Playing With Fire in the Middle East

―アメリカ大統領トランプはイランのスレイマニに対する攻撃は「戦争を止める」ためだったと主張するかもしれないが、攻撃は彼の意図通りにはいかないだろう

コリン・カール筆

2019年1月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/01/04/trump-is-playing-with-fire-in-the-middle-east/

2011年6月、アメリカ軍がイラクから撤退しつつある中、イランが支援している民兵組織がアメリカ軍の各基地に一連の強烈なロケット弾攻撃を行った。10名以上のアメリカ軍将兵が死亡した。これは1か月で亡くなった米軍将兵の数で最大数となった。当時のオバマ政権の前には報復のための2つの選択肢が存在した。1つはイラン国内を攻撃し、イランの工作員たちを殺害することで、もう1つはイラクの民兵組織のロケット弾部隊に対して、イラク国内で攻撃するがその際にはアメリカ軍の特殊部隊だけを使用することだった。イランとのより大規模な戦争状態に進むことを思いとどまらせるために、オバマ政権は後者を選択した。

2019年12月27日にキルクーク近郊の基地に対してロケット弾攻撃が行われ、アメリカ人の建設請負業者1名が死亡し、アメリカとイラクの複数の作業員が負傷した。これに対する報復として、先週、トランプ政権はカタリブ・ヒズボラに対して空爆を実行した。カタリブ・ヒズボラはイラクの民兵組織で、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)と緊密な関係を持っている。しかし、イラク時間の先週金曜日午前(アメリカでは木曜日夕方)、ドナルド・トランプ米大統領は後先を考えることなく、無人機による攻撃を許可した。そして、バグダッド空港の近くでイスラム革命防衛隊のコッズ部隊の司令官であり、イランの最重要の指導者の一人であるカシーム・スレイマニ少将とイラク民兵組織の指導者たちが殺害された。

スレイマニの死によって、アメリカ政府とイランとの間の圧力と挑発の綱引きのサイクルは1カ月間も続き、更に極めて危険な段階に進んでいる。地域全域に火の手が広がるリスクはこれまでよりも高まっている。攻撃の直前、米国防長官マーク・エスパーはアメリカ軍を防衛するために予防的行動をとると警告を発した。エスパーは「ゲームは変化した」と述べた。しかし、これはゲームではない。アメリカとイラン両方の掛け金は高くはない。

アメリカ人でスレイマニのために涙を流す人はいないだろう。イランのエリート準軍事的組織であるコッズ部隊司令官として、スレイマニは、アメリカのイラク占領期間中、イラク国内のシーア派民兵組織を糾合してアメリカ軍を攻撃させ、数百名のアメリカ軍将兵の命を奪った。彼はまたレバノンのヒズボラ、ガザ地区の聖戦主義者たち、イエメンのフーシ派民兵組織、シリアの残忍なバシャール・アル・アサド政権への支援というイランの政策の方向性を決定づけた。彼はイラン国外でのイランによるテロ攻撃と国内での反体制派に対する残忍な弾圧に責任を持つ人物であった。

トランプ政権は2015年のイランとの間の核開発に関する合意を放棄し、イランに対する経済制裁の更なる強化のための圧力を強めている。こうした動きに対抗するために、イラン政府は最近になって、スレイマニの関与を示唆するような一連の挑発を行った。その中にはイラクに駐留するアメリカ軍への脅迫も含まれていた。米軍統合参謀本部議長マーク・ミレイは、2019年10月以降頻発しているイラク国内へのアメリカ関連施設へのロケット弾攻撃についてはイランが支援している複数の組織が関与していると発言している。しかし、2019年12月27日の時点ではアメリカ人の血が流れるということはなかった。しかし、2019年12月27日にアメリカ人の死亡者が出ると、アメリカ政府はすぐに報復を実行した。イラクとシリアにある民兵組織カタイブ・ヒズボラの複数の拠点などを攻撃した。この報復攻撃に対して、シーア派民兵組織の幹部たちは人々を扇動してバグダッドにあるアメリカ大使館への抗議を行わせた。これはベンガジ事件を想起させるものとなった。これがトランプ大統領のスレイマニ殺害の決定までの事情である

テロリストの親玉が一人死亡したことはアメリカ人の基底にある正義の感覚にとにもかくにもかなうものではあるが、彼の暗殺によってこれから起きることが統御不能のスパイラルに陥り、アメリカ国民とアメリカの国益をより危険に晒すことになるという現実的な見方を曖昧にするべきではない。

ブッシュ(息子)政権とオバマ政権は統御不能になる懸念からスレイマニに対して直接攻撃を行わないという決断を下した。これには国防総省と諜報関係部門が共有していた。攻撃をすれば事態が一気に悪化するということに同意していた。2019年春、国防総省はホワイトハウスに対してイスラム革命防衛隊を外国のテロリスト組織と指定することに対して懸念を表明した。国防総省はそうすることでイラクやその他の場所にいるアメリカ政府関係者の声明を重大な危険に晒すと主張した(トランプは結局そのようにしたのだが)。2019年6月、当時の米軍統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォードはイランによるアメリカの無人機撃墜の報復のためにイラン本土を攻撃しないようにと訴えた。これまで続いてきた慎重な姿勢は覆された。

トランプ大統領とマイク・ポンぺオ国務長官は、スレイマニの攻撃についてアメリカ軍へのこれ以上の攻撃を防ぐために必要な措置であったと正当化している。トランプ大統領に言わせれば「戦争を止めるため」ということであった。トランプ政権が重要な情報を発表していない中でこれらの主張を評価することは難しい。一方、国防総省が発表した声明では今回の攻撃について抑制的であり、イランからの差し迫った攻撃については言及しなかった。更に言えば、いくつかの報道によれば、トランプ大統領がスレイマニを標的とすることを許可したのは2019年12月27日のロケット弾攻撃の後であった。また、アメリカ軍特殊部隊はそれ以降攻撃の機会のために待機していた。こうしたことから、スレイマニに対する攻撃がバグダッドにあるアメリカ大使館への抗議が終わり、イラクでの状況が深刻化していない中で起きた理由を説明できることになる。

それにもかかわらず、トランプ大統領と彼の最側近たちはスレイマニ殺害のための理論を持っていることは明らかだった。彼らは、イランは張子の虎であり、鼻面をこっぴどく殴りつければ、穴の中に引っ込んでしまうと確信していた。過去においてイランのイスラム政権はより強力な敵意に直面すると慎重さを示したというのは事実だ。また事態の深刻化に対処するために、イランの指導者たちは歴史的に見て自分たちの否定されるべき行為を隠すために非公然の攻撃を行う、もしくは外国にいるイランの代理勢力や味方勢力がアメリカ、イスラエルの攻撃対象となっている場合には別の方法を模索してきたということもあった。

しかし、スレイマニに対する攻撃はこれまでの状況とな大きく異なっている。今回の攻撃はイラン国内で二番目に重要な最高幹部と想定される人物に対する公然の攻撃であった。イラン側から見れば、今回の暗殺はアメリカで言えばCIA長官、国防長官、陰の国務長官の役割を一手に引き受けていたような最重要人物が殺害されたに等しいということになる。アメリカ側が認めるにしても認めないにしても、イラン側はこれを戦争行為だと見なす。イランの政権は自分たちの選ぶタイミング、場所、方法で対応することになるだろう。なぜならば、イランの政権がアメリカとの衝突よりも恐れているのは、政権に対するこのような直接的な挑戦に対して引いてしまうことだからだ。

スレイマニの殺害に対して、イランの最高指導者アル・ハメネイ師は「昨晩のスレイマニと他の殉教者たちの流血を手につけている罪人たちに対しては強力な復讐」を行うと警告を発した。復讐は様々な形を取ることになるだろう。イランはシーア派民兵組織に対してイラク国内のアメリカ政府関係者に対するロケット弾とロードサイド爆弾による攻撃を激化する、またバグダッドにあるアメリカ大使館に対する更なる抗議と攻撃を組織化する許可を与える可能性がある。イランの代理勢力は、シリア東部の油田を防衛している数百名単位のアメリカ軍将兵を標的とする、もしくはアフガニスタンに駐留する米軍への直接攻撃を行う可能性がある。イランはイラク国内もしくはペルシア湾岸地域にあるアメリカ関連施設に対して弾道ミサイルを発射する可能性も高い。また、ホルムズ海峡での国際海運を妨害の度合いを高めるかもしれない。中東地域の重要なエネルギー関連施設に対してミサイルもしくは無人機を使った攻撃を仕掛けるかもしれない。レバノンのヒズボラやパレスチナの民兵組織を焚きつけてイスラエルを攻撃させるかもしれない。イラン政府は中東地域のアメリカ人やアメリカの利益に対してのテロ攻撃を組織化する可能性がある。1980年代のベイルートや1996年にサウジアラビアのコーバー・タワーでの出来事が再現されるかもしれない。もしくはアメリカ国内での攻撃を計画するかもしれない。これは2011年にワシントンで駐米サウジアラビア大使に対しての攻撃が計画されたことを想起させる。イランは現在急速に発展させているサイバー攻撃能力を使ってアメリカ本土を攻撃する可能性もある。

もしイランによる報復によってアメリカ国民の血が更に流されることになると、アメリカは報復攻撃を行うことになる。それは国防総省の最新の声明から言葉を借りるならば、「将来のイランによる攻撃計画を抑止する」ことを目的とするものとなる。そして、イランの指導者たちは、アメリカによる更なるイランの軍事組織や利益に対する攻撃が行われる可能性に直面する中で、アメリカ政府と同様の計算を行うことになるだろう。アメリカもイランも全面戦争は望まないだろう。しかし、どちらかが事態を深刻化させ、それに対して相手も深刻化に付き合うとなり、双方は独自の論理で「自分たちは自衛をしているだけだ」と主張することになる。そして、この激しいスパイラルから完全に抜け出すことは難しくなる。

アメリカとイランが地域戦争を避けることになっても、双方はスレイマニの殺害によって引き起こされる副次的結果は避けられないだろう。スレイマニ対する攻撃に対してイラク国民は憤激している。この結果、イラク国内におけるアメリカの立場は脆弱なものとなる可能性が高い。イラクの暫定首相アディル・アブドゥル・マウディは今回の攻撃はイラクの主権に対する侵害であり、イラク国民に対する侵略行為であると非難している。また、イラク国民議会が短期間でのアメリカ軍のイラクからの完全撤退を求めるようなことになっても驚きはないとも発言している。トランプ大統領は「アメリカに対して感謝のない」同盟諸国を支援することに対して長年疑義を呈してきたので、その機会を利用して米軍を撤退させる可能性もある。米軍の撤退はトランプの支持者たちには評価されるだろう。しかし、そうなればイラク国内におけるイランの影響力がさらに高まることになり、イスラム国の再建をチェックし阻止することは更に難しくなる。

核開発についても、イランは更に長髪の度合いを高める可能性が高い。2019年、トランプ大統領による核開発をめぐる合意の放棄に対して、イラン政府は各開発プログラムの一部を徐々にではあるが再開させている。アメリカとの緊張関係を高める中で、更に劇的なことが起きる可能性が高い。その中にはさらに高いレヴェルでのウラニウム濃縮も含まれている。そして、イランが核兵器のための燃料を製造する能力獲得に近づけば近づくほど、これはつまり外交的解決がどんどん遠ざかることを意味するが、アメリカもしくはイスラエルと軍事的対峙状態が出現するようになるだろう。

これらの危険の中で、トランプ政権は戦略と計画をアメリカ国民に示して、アメリカ国民の動揺を抑えねばならない。アメリカ政府は攻撃を正当化し、攻撃によって起きる可能性のある様々なリスクを軽減するためにも情報を国民に与える必要がある。もしトランプ以外の人物が政権を率いていたら、中東地域にいるアメリカ軍将兵や外交官の安全を確保するために首尾一貫した国家安全保障プロセスを維持しただろうし、民間人脱出計画も準備しただろうし、中東地域とアメリカ国内の重要な社会資本へのイランが支援するテロ攻撃やサイバー攻撃に対する防御を強化しただろうし、アメリカ軍がイランとの関係を深刻化させることを防ぐ、もしくは統御できるようにするために公のメッセージを発せるように準備させていたことだろう。現在まで、トランプ大統領は上記のような慎重さを示すようなことは何もしていない。トランプ政権は上記のようなことを実行するための能力があることを示してもいない。現在、トランプ大統領が行った極めて重要な決定のために、トランプ政権は重大な試練に直面している。アメリカが真っ暗な海に頭から飛び込む時、政権が先を全く見通せない状態でかじ取りを任せることになる、これが本当の危険なのだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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 古村治彦です。

 2020年1月3日、イラクのバグダッドの空港においてカシーム・スレイマニ(Qasem Soleimani、1957-2020年、62歳で殺害)イスラム革命防衛隊少将がアメリカ軍の空爆によって殺害された。アメリカのドナルド・トランプ大統領の命令で作戦は実行された。2019年末にイラクのバグダッドにあるアメリカ大使館に対して、カタイブ・ヒズボラ(シーア派の武装勢力)の人員殺害に抗議するデモが激化していた。
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スレイマニ
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スレイマニらの殺害現場

1月3日の空爆ではカタイブ・ヒズボラの宗教指導者アブ・マフディ・アル・ムハンディスも殺害されており、中東情勢は不安定化していくだろう。

 2020年はアメリカにとっては大統領選挙の年である。トランプ大統領は再選を目指し、民主党側はホワイトハウスの奪還を目指す。現在、予備選挙の選挙運動の真っただ中であり、1か月後にはアイオワ州から予備選挙の投票が始まる。

 トランプ大統領に対する支持は経済状況が良いこと、具体的には株価が高く、失業率が低いことが理由となっている。選挙のある2020年も何とか株高と低失業率を維持したい。しかし、米中貿易戦争の影響は大きく、2019年のGDPの伸び率は2%台前半にとどまるだろうし、2020年も経済成長は見込み薄だ。そうした中で、株価を高い水準のままこれから10カ月間も維持することは不可能だ。何度か下げて、そこから上げてを繰り返すことになる。

 年初はまだまだ株価を下げても良い時期だ。米中貿易戦争に加えて、中東情勢の不透明化による石油価格の高騰となれば株価は下がるだろう。しかし、トランプ大統領にとってはこの時期の株価下落はまだまだ大丈夫ということになる。そのためにこの時期にスレイマニの殺害ということになったのだろう。

 それではスレイマニとはどういう人物であったのか。そこで下の記事を読んで欲しいということになる。下の記事の執筆者はアメリカ軍の特殊部隊の司令官をしていたスタンリー・マクリスタル米陸軍大将(退役)だ。この記事が書かれた当時、スレイマニはまだ存命中だった。特殊部隊の経験が長く、アフガニスタン駐留軍の司令官を務めていたが、2010年に当時のバラク・オバマ政権を批判したために、オバマ大統領によって司令官職を解任され退役となった。スレイマニとはカウンターパートの位置にあった。
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マクリスタル
 スレイマニについてマクリスタルはスレイマニを「姿の見えない操り人形使い」、コッズ部隊を「アメリカで言えばCIAと特殊部隊を一緒にしたような組織」と呼んでいる。スレイマニはイラクやシリアでイランの代理勢力を使いながら、イランの影響力維持を図った、イランの同盟者であるシリアのアサド大統領を守ったとマクリスタルは評価している。スレイマニは優秀な軍人、軍司令官というだけではなく、諜報や政治活動もできる人物だったようだ。そのような人物はアメリカにとっては脅威ということになる。イランにとっては、イラン・イラク戦争で英雄となった優秀な軍人であり、政治的な動きもできる人物を失ったということで大きな痛手ということになる。
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コッズ部隊
 アメリカとイランの角逐がどの程度まで深刻化するかは不透明だ。しかし、アメリカが直接イランを攻撃すれば、大規模な戦闘状態ということになり、下手をすればイランのミサイルがイスラエルやサウジアラビアまで飛ぶということになりかねない。あくまで限定的ということになるだろうが、それでかわいそうなのはイラクだ。イラク国内でアメリカとイランが戦う、しかも代理を立ててとなれば、傷つくのはイラクということになる。そんなことをすれば、イラク国内での反米感情はますます高まり、イラク国内の情勢も一気に不安定化する。アメリカの中東介入には良いことはない。

 日本に引き付けて考えれば、これは他人事ではない。今年は東京でオリンピック・パラリンピックが開催される。この時期まで中東情勢が不安定化していれば、東京オリンピックを平穏な状態で開催することは難しい。特に開会式や閉会式にトランプ大統領が訪日するとでもなったら、警備は史上最大、最高のレヴェルにしなければならない。イランが日本を敵視していないということは救いだが、大変な負担になることは間違いない。

 戦争状態にならねば良いが、アメリカがルビコン川を渡ってしまった以上、事態がどのように転ぶかを注視するしかない。

(貼り付けはじめ)

イランの危険な操り人形使い(Iran’s Deadly Puppet Master

―スタンリー・マクリスタル将軍によるカシーム・スレイマニがどうしてそこまで危険な存在なのかについての正確な説明

スタンリー・マクリスタル筆

『フォーリン・ポリシー』誌2019年冬季版

https://foreignpolicy.com/gt-essay/irans-deadly-puppet-master-qassem-suleimani/

何も行動しないという決断は行うことが最も難しいもので、常に正しいということにはならない。2007年、私はイランからイラク北部に入る車列を目撃した。その当時、私はアメリカ軍統合特殊作戦コマンド(JSOC)司令官を務めて4年目だった。そして、地域を破壊しているテロリズムを根絶するために働いていた。私は厳しい選択を行うことに慣れてしまっていた。しかし、2007年1月のある夜、私が行う選択は複雑なものとなった。その選択とは、カシーム・スレイマニがいる車列を攻撃するかどうかであった。スレイマニはイランのエリート部隊であるコッズ部隊の司令官だった。コッズ部隊とは大雑把な言い方になるが、アメリカのCIAJSOCを合わせたような組織ということになる。

スレイマニを排除するための理由はあった。その当時、スレイマニが制作し、ばら撒き設置したイラン製の道路沿い用爆弾によってイラク国内全体に展開していたアメリカ軍将兵の生命を脅かした。しかし、銃撃戦とその後に起きるであろうと考えられた政治状況を避けるために、車列に対して即座に攻撃するのではなく、監視を継続すべきだと私は決断した。車列がイラク北部の都市アルビールに到着するまで、スレイマニは暗黒に陥る可能性があったのだがそれをうまく脱したのだ。

最近になっても、スレイマニは裏舞台で活動を続けていた。スレイマニは軍司令官から姿の見えない傀儡子(操り人形使い、a ghostly puppet master)へと成長した。イランの国際的な影響力を強めるために狡猾さと気概をもって活動を行っている。彼の優秀さ、能力の高さ、母国イランへの献身は味方からは尊敬を受け、敵方からは非難されてきた。その程度はどちらとも同程度だ。 しかしながら、全ての人々が同意するだろうと考えられるのは、謙虚な指導者スレイマニの安定した指導によってここ数十年のイランの外交政策は動いてきたということ、そして彼の戦場における成功は誰も否定できないということだ。スレイマニは現在の中東地域において最も有力でかつ最も行動において制限をしない人物だと言われている。アメリカ国防総省の幹部たちは、スレイマニが独力でシリア内線をイランの代理勢力を使って戦っていると報告している。

柔らかな話し方をするスレイマニの優秀さは若い時から明らかになっていた。イラン東部の山岳地帯の貧しい家庭に生まれたスレイマニは幼いころから圧倒的な記憶力の良さと頑健さを示した。彼の父親が負債を返済できなくなると、13歳だったスレイマニは父親に代わって労働をして借金を返済した。余暇の時間には重量挙げにいそしみ、現在のイランの最高指導者アリ・ハメネイ師の弟子による宗教講義に出席するのが常だった。若者のスレイマニはイラン革命に魅了された。1979年、弱冠22歳のスレイマニはイランの軍事組織を通じて優秀さを示し始めた。彼はイランの西部アゼルバイジャン県での初陣の前にただ6週間の戦術訓練を受けただけだった。しかし、スレイマニの本領が発揮されたのは翌年に始まったイラン・イラク戦争の時期だった。スレイマニはイラク国境への侵入作戦での戦闘で血まみれの英雄となった。そして、更に重要なことは自信に満ちた、能力のある指導者として登場した。

スレイマニはただの戦士ではなくなった。彼は戦略などの計算ができ、実行力のある戦略家となった。スレイマニは非常にかつ全てを犠牲にして、中東地域におけるイランの地位を高めるために長期に継続する関係を構築した。スレイマニ以上に、レヴァント地方におけるシーア派の同盟者を提携させ、力を強めることに成功した人物はいない。スレイマニはシリアのバシャール・アル=アサド大統領を堅固に防衛している。イスラム国やシリアの反政府勢力を前進させないようにしている。スレイマニが実行しているのはアサド大統領を権力の座にとどめ、イランとの堅固な同盟を維持させることだ。重要な点は、スレイマニの指導の下、コッズ部隊は能力を拡大させていることだ。スレイマニの洞察力に満ちた実行主義によって、コッズ部隊はイラン国外での諜報、財政、政治各分野において大きな影響力を持つようになった。

しかし、スレイマニの成功をより広範な地政学的な文脈に位置づけることなしに研究することは賢いことではない。スレイマニは独特のイランの指導者である。1979年のイラン革命に続くイランの原理の産物だ。イランの利益と諸権利についてのスレイマニの拡大解釈はイランのエリート層に共通するものである。中東地域に対するアメリカの関与に対してイランは抵抗している。アメリカの中東への関与に対するイランの抵抗はイラン・イラク戦争に対するアメリカの関与の直接的な結果である。イラン・イラク戦争の時期にスレイマンの世界観は形成された。結局のところ、スレイマニは、イランの国民と指導者層の活力となっている熱烈なナショナリズムによって動かされている。

スレイマニの業績はその大部分がイランの外交政策に対する長期的なアプローチのために実行されたものだ。アメリカは国際的な諸問題に対して発作的な対応をする傾向にあるが、イランはその目的と行動が一貫している。スレイマニがコッズ部隊の司令官になって長い年月が経っている。彼が司令官に就任したのは1998年のことだった。この長期にわたる司令官在職ということももう一つの重要な要素である。イランの複雑な政治状況の副産物として、スレイマニは長期にわたり行動の自由を享受してきた。これにはアメリカ軍関係者や諜報関係者の多くが羨望の念を持つほどだった。指導者の力は究極的には指導される人々の目に映るものであり、将来の力の可能性によって増大するものである。そのために長期にわたって司令官を務めるスレイマニは短期の司令官であるよりも高い信頼を勝ち得て行動することができるのだ。

この観点からすると、スレイマニの成功は彼自身の才能と彼の権力の座にいる期間によってもたらされたものである。このタイプの指導者は現在のアメリカでは存在することはできない。アメリカ国民は軍事分野やその他の分野において、最も高い地位に数十年単位で同じ人が座り続けることを許すことはない。その理由は政治的なものでありまた経験上のものだ。J・エドガー・フーヴァーは長期にわたり公職に就き、そのために非公式の影響力を強めたことがあったが現在ではそのようなことは認められない。

スレイマニの物事をすぐに実行できる自由に対して私は羨望の念を持っていた。しかし、すぐに実行ができない、制限があるというのはアメリカの政治システムの強さであると私は確信している。チェックされない熱心な行動を重視する考えは善を促進する力となる可能性はある。しかし、間違った利益や価値観にとらわれてしまえば、その結果は酷いものとなるだろう。スレイマニは非常に危険な存在だ。彼はまた中東の将来を形作るための重要な立場に立っている。

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 古村治彦です。

 アメリカ大統領選挙民主党予備選挙の状況は大きな変化はない。ジョー・バイデン前副大統領がトップ、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)とバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)が2位争い、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジが4位を固めている、という状況だ。来年2月から予備選挙が始まるが、早期に始まるアイオワ州やニューハンプシャー州ではブティジェッジがトップという状況になっている。
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 大きな変化はないが、先日、予備選挙出馬を発表したマイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長が数字を伸ばしている。ニューヨーク関連では、カーステン・ギリブランド連邦上院議員(ニューヨーク州選出、民主党)とニューヨーク市長ビル・デブラシオが立候補したが、既に選挙戦から撤退している。2人に関しては地元のニューヨーク州での世論調査では数字が伸びず、人気がなかった。不支持率が支持率よりも高かった。

 マイケル・ブルームバーグの支持率の伸びと反比例してピート・ブティジェッジの支持率が下がっている。ジョー・バイデンとピート・ブティジェッジは共に中道派に分類されている。ライヴァルのエリザベス・ウォーレンとバーニー・サンダースはリベラル派に分類されている。ここに中道右派のマイケル・ブルームバーグが割って入る形になった。その割を食ったのはブティジェッジという形になっている。

 ブルームバーグの伸びがどれくらいか、だ。ブルームバーグがブティジェッジを追い抜いて4位となれば選挙の状況は変化することになる。しかし、「トランプ大統領よりも大富豪の民主党員(民主党→共和党→無所属→民主党)」ブルームバーグは、選挙資金は自弁(数兆円の資産を持つ彼からすれば数百億円は大きな金額ではない、献金を受けると献金者の影響を受ける)と決めており、討論会に出席することは最初から放棄している。しかし、既に多額の資金を投入してTV広告放映枠を買い取っている。こうした動きを民主党員や民主党支持の有権者がどのように捉えるか、で今後の動きは変化が起きる。

(貼り付けはじめ)

世論調査:バイデンは民主党予備選挙をリードし、ウォーレンとサンダースは2位を争う(Poll: Biden leads Democratic field, Warren and Sanders jockey for second

マックス・グリーンウッド筆

2019年12月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/474780-poll-biden-leads-democratic-field-warren-and-sanders-knotted-in-second

キュニピアックだいがくは月曜日に最新の世論調査の結果を発表した。ジョー・バイデン前副大統領はアメリカ大統領民主党予備選挙の候補者たちをリードしているが、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)とエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)は第2位の座をめぐり大接戦を演じている。

全国の民主党員である、もしくは民主党支持の有権者たちの中でバイデンは30%の支持を獲得した。この数字は8月以降では最も高い数字だ。8月の時点でのバイデンの支持率の最高は32%だった。

ウォーレンとサンダースの支持率は統計上では同率と言えるそれぞれ17%と16%だった。2人の支持率の差は今回の世論調査の誤差4.1ポイントの範囲内だ。

インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジは、アイオワ州とニューハンプシャー州という早期に予備選挙と党員集会が実施される各州でトップとなるべく、これら2州に力を注いでおり、今回のキュニピアック大学の世論調査の結果では支持率9%で第4位となった。

今回の世論調査の結果が示唆するのは、バイデンの支持率は選挙運動中の様々な失敗がありながらも回復傾向を保っているが、サンダースとウォーレンは民主党内の最もリベラルな有権者層の支持を獲得しようと奮闘している、ということだ。ブティジェッジはアイオワ州で支持率トップとなっているが、この世論調査ではブティジエッジが直面している問題を浮き彫りにしている。ブティジェッジは重要な人口学上の分類されたグループのいくつかにおける支持率でライヴァルたちに遠く置いていかれている。その中にはアフリカ系アメリカ人も含まれている。ブティジェッジのアフリカ系アメリカ人内における支持率(今回の世論調査で予備選挙ではブティジェッジに投票すると答えた)は2%しかない。

世論調査対象者の過半数の61%は、予備選挙で投票する候補者を変える可能性がると答えている。38%は支持する候補者を決めて変更はないと答えている。

バイデン支持者、サンダース支持者はそれぞれ支持している候補者を最も熱烈に支持している。予備選挙でバイデンに投票すると答えた有権者のうち48%は自分の選択に自身を持っているとし、サンダース支持者の49%もそう答えた。ウォーレンを支持するつもりだと答えた有権者のうち23%だけが決定を変えないと答えた。ブティジエッジ支持者では17%だけがそのように答えた。

ウォーレンは「2番目に支持する候補者」でトップとなっている。世論調査の回答者のうち21%がそのように答えた。バイデン支持者の26%が、バイデンがいないと仮定するならばウォーレンを支持すると答えた、ブティジェッジ支持者の28%がウォーレンを2番目に支持する候補者として名前を挙げた。サンダース支持者の50%がウォーレンを2番目に支持する候補者に挙げている。

キュニピアック大学による今回の世論調査は1390名の登録済有権者を対象に実施された。567名の民主党員、民主党支持の無党派の有権者が含まれている。世論調査は2019年12月11日から15日にかけて行われた。誤差は2.6ポイントだ。民主党員もしくは民主党支持の有権者だけに限ると誤差は4.1ポイントだ。

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