古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 映画

 古村治彦です。

 

 今回は映画『ダイナマイトどんどん』をご紹介したいと思います。

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 『ダイナマイトどんどん』は1978年に制作された映画です。監督は岡本喜八、主演は菅原文太です。舞台は昭和25年ごろの北九州小倉で、伝統的な任侠道を追求する岡源組と新興勢力の橋伝組が激しく抗争を繰り返しています。この映画ではユーモラスに流血の場面は描かれていませんが、実際には相当激しい抗争があったのだろうと思います。現在でも、小倉を拠点にしている工藤会は武闘派として、手榴弾を使うなど荒っぽいことでも知られています。


 

 抗争に業を煮やした警察署長は小倉の親分衆を警察署に集め、脅したり宥めたりしながら抗争の鎮静化を要請します。そして、抗争は暴力ではなく、野球の試合で決着をつけろ、とういうことになります。どの組も組員内の野球経験者を探したり、新たに身を持ち崩した元野球選手たちをスカウトしたりしますが、橋伝組は特に札ビラ攻勢で、有力選手を次々と獲得します。一時期のプロ野球のようです。プロ野球のスカウト合戦については、『あなた買います』という映画(同名小説が原作)があります。南海ホークスに外野手と入団し、後に監督となった穴吹義雄(高松高―中大)のスカウト合戦の実話が小説化され、映画化されています。

 

 菅原文太演じる主人公の加助は、岡源組の組員で野球経験もありますが、野球の試合をやることなどに気が進まずに、ティームに参加しませんし、野球なんかできるかと毒づきますが、最後には参加することになります。橋伝組には、北小路欣也演じるハンサムな元中学野球(現在の高校野球)のエース(身を持ち崩している)・橘銀次が参加し、加助とは恋のライヴァルということになり、勝負は白熱します。最後はやっぱりドタバタの暴力沙汰となります。タイトルは、岡源組のティーム岡源ダイナマイツの掛け声「ダイナマイトー、どんどん」から来ています。

 

 「ヤクザ(暴力団)が野球ティームを作り、何かを賭けて試合をする」というプロットで思い出したのは、漫画の『じゃりン子チエ』に出てくるエピソードです。主人公チエの住宅兼店舗(ホルモン焼きと酒の店)をヤクザが取り上げようとして、野球の試合をするというもので、ヤクザのティームに昔甲子園で活躍した名投手がおり、最後に打たれ、店は守られるという内容でした。

 

『じゃりン子チエ』の作者はるき悦巳は、映画のプロットをそのまま使ってしまう癖があるようで、『じゃりン子チエ』に出てくる猫・小鉄が主人公の外伝『どらン猫小鉄』では、映画『用心棒』(黒澤明監督)そのままのエピソードがあり、これは現在は絶版になっています。この外伝は、舞台は九州北部で、猫たちがダイナマイトを投げ合うという内容になっていて、これは、『ダイナマイトどんどん』から着想を得ているのではないかと思います。『用心棒』と『ダイナマイトどんどん』を混ぜてオマージュしたというところでしょう。


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 『ダイナマイトどんどん』は野球がメインなのでどうしても野球のシーンが長くなって、ちょっと冗長かなと思いますが、大変面白く見ることが出来る映画です。「民主主義の世の中になったのだから抗争(出入り)も民主的に」「それなら、アメリカから教えてもらった民主主義、最も民主的な野球だろう」「市民に愛されるヤクザになろう」という馬鹿馬鹿しい発想から野球大会となる、というのはぶっ飛んでいる感じがして面白い。

 

日本人は本当に野球が好きだった(今はだいぶ人気が落ちている)のだなと思わされます。そして、ヤクザという世界も怖いもの見たさもあって興味がある、好きなのだということです。『ダイナマイトどんどん』それらが一緒になって痛快な映画となっています。

 

そして、うわべだけの民主化を皮肉たっぷりに馬鹿にしている、形だけ真似をして本質を理解しない日本人の姿を描いているようにも思います。結局最後は暴力に戻ってしまうところも日本らしいところです。

 

監督役の元プロ野球の有名選手で、徴兵され戦争で負傷して(左手と足に重傷を負った)野球を続けられなくなった人物・五味徳右衛門(フランキー堺が演じています)が出てきます。この人は平安高校(現在は龍谷大学付属平安高校)を率いて全国制覇を果たした西村進一氏がモデルになっていると思われます。西村氏は旧制平安中学から立命館大学に進み、その後、名古屋軍でプロ野球選手として活躍します。


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西村進一 

その後、徴兵され、フィリピンで戦い、右手首を失うという重傷を負い、野球選手としては再起不能となります。復員後は、指導者として平安中学野球部を率い、右手の義手にボールを乗せ、左手でバットを操りノックを行うなど熱血指導で、平安高校を全国制覇に導きました。元名選手が不遇な状態になり、指導者となるというのは漫画『タッチ』でもこのようなプロットがあったように記憶しています。

 

 ヤクザを使って世の中を風刺するという意味では、小林信彦の『唐獅子株式会社』という小説と通底するところがあります。この小説も後に映画化されます。小林信彦の『オヨヨ大統領』シリーズと『唐獅子株式会社』を読むと、1970年代の日本の雰囲気を味わうことが出来ます。真面目に茶化すという点で、岡本喜八監督とは表現方法は違いますが、共通しているとことがあると思います。

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小林信彦

 
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岡本喜八

 この『ダイナマイトどんどん』は、以前にご紹介した『ブルークリスマス』と同じ1978年に公開されています。同一監督が同じ年に2回も映画を公開するというのは、映画全盛期だと珍しくないのでしょうが、現在では聞いたことがないように思います。岡本監督の気力や体力が充実していたのだろうと思いますが、方向性の違う2つの作品を共にうまく仕上げるというのは凄いことだと思います。

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 


 舞台は1980年の東北地方の寂れた廃村。この村は満洲引揚者が戦後に入植してできただ。無償提供された土地は農耕に適していなかったために、入植後約30年が経ち、村に残ったのは、主人公のユミエ(大竹しのぶ)と娘のエミコ(伊藤歩)だけだった。夫は東京に出稼ぎに行き、そのまま蒸発してしまった。他の家族は、村を捨てて出て行ったり、一家心中をしたりした。

 

 2人は誰からも見捨てられ、生活は困窮し、餓死寸前にまで追い込まれる。そこで、二人は身なりを整え、「客」を取ることにした。それから次々と男たちがやってくる。最初は山の向こうのダム建設現場で働く、東京からの出稼ぎ者(木場勝己)であった。彼は2万円払い、ユミエと寝る。そのアフターサービスに出されたのが、猛毒入りの焼酎。一気飲みした彼はそのまま泡を吹いて死亡する。母娘は死体を一輪車に乗せて外に運び出す。喜納昌吉&チャンプルーズが1980年に発表した『花〜すべての人の心に花を〜』を歌いながら。

 

 2人目は、電気代を支払ったので、電気再開のためにやってきた技師(六平直政)。電気を復活させた後、ユミエの客となる。3人目はこちらも代金を払ったために確認にやってきた水道職員(田口トモロヲ)。4人目は1人目の客となったダム工事の現場監督の助手(柄本明)。彼は行方不明になった男を探しにやってきた。5人目は、電気技師の上司(魁三太郎)、6人目は、ダム工事の監督(原田大二郎)。前半部は「語り→セックス→死(殺害)」の繰り返しであった。それをずっと見ていたのは、森に棲むふくろうであった。

 

後半部になると、とたんにシリアスな話になっていく。前半部は「語り→セックス→死(殺害)」の繰り返しであったが、警察官、県の職員である引揚者援護課の男、エミコの幼馴染が出てきてからは、大変シリアスな話になる。彼らもまた死を迎える。ユミエとエミコは全てを片付けて、朗らかに村を出る。

 

 私がまず思ったのは、1980年の日本でこのような困窮者が存在するんだろうか、警察が月に1度巡回して、その生活の困窮ぶりを見ている訳だから、生活保護なり、他の手段なり、行政が何らかの手段を講じるのではないか、という点が疑問に残った。野暮なことは言いっこなし、あくまで芸術だからと言われてしまえばそうなのだが。電気を止められ、水道まで止められてしまって、木の根を食べるというのはどうかと思うが、この村が戦後の入植地であり、本村から七曲りの峠を登ってこなければならないということになると、親戚はいないだろうし、地元の人たちからすればヨソモノであって、心配をしてやる必要なんかあるものかということもあったかもしれない。

 

 映画の中で「リストラ」という言葉を使っていたが、この言葉が1980年に人口に膾炙し、寂れた寒村に住むような主婦や少女に理解できたとは思えない。1980年と言えば、私は6歳であったが、そのような言葉が「会社からの解雇」の意味で使われていたという記憶はない。「レイオフ」とか「解雇」という言葉ならあったように思う。

 

 前半部の登場人物たちは、ほとんどがセックスをして、その余韻の中で死んでいくのだが、それぞれのスケッチでは、登場人物たちの人生と日本の戦後史が語られていく。この点が重要なのではないかと思う。

 

 後半部は、停滞した物語を終わりに向かわせるために、急に動きが早くなる。それは物語を終わりまで運ぶために取ってつけたような感じになりかけるが、最後にユミエとエミコが朗らかに村を出る決心をするところで、それもまたよしだなぁと思わされた。主人公のユミエ役の大竹しのぶは怪演と言ってよいくらいに様々な表現をしていた。その他のキャストも十分に素晴らしい演技であった。監督の要求に応えているのだろうと思う。

 

 私は映画をほとんど見ない。詳しくない。だから、映像がどうとか、俳優がどうとかということは分からない。難しいことは分からない。しかし、この映画は面白かった。こんな話はあり得ないよ、だって連続殺人で出てくる主要な男性キャストはほとんど殺害されるんだよ、しかも、殺害した母娘が捕まらないんだし、と思った。しかし、そんな無粋なつっこみを跳ね飛ばすだけの力があった。

 

 この映画が公開されてヒットしなかっただろうし、興行収入も低かったんじゃないかと思う。舞台はほぼ家の中だけだし、俳優陣は豪華だったけど、そんなにお金がかかっていなかったことは素人でも分かるから、赤字になることはなかっただろう。

 

 このような不思議な映画が出てくるところに、日本映画全体が持っている力があるのではないかと思う。日本映画はつまらない、面白くないと言われていて、映画に疎いので、「そんなものなのかな」と思っていた。しかし、面白い作品があるではないかという気持ちにさせられた。こうした映画を生み出せるのだから、全体として日本映画は調子は悪いのかもしれないが、死んでいる訳ではないと思う。

 


(終わり)





 
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 古村治彦です。

 

 今回は、『衝撃の「実録映画」大全』(洋泉社、映画秘宝COLLECTION、2016年7月9日)を皆様にご紹介いたします。「実録映画」と言うと、「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」のような、深作欣二の「実録もの」を思い出しますが、ここでいう「実録映画」は、現実に起きた事件や歴史上の出来事を基にした映画です。

 


私は、第1章の「カトリック教会の束縛と偽善 スポットライト 世紀のスクープ」(12-27ページ)を担当しました。今年公開の映画『スポットライト 世紀のスクープ』を評論しました。この映画は日本では今年公開され、今年のアカデミー賞の作品賞と脚本賞を受賞した秀作です。

 


 この映画は、2002年にアメリカで発覚し、国際的大事件となったカトリック教会の聖職者たちの虐待をスクープした『ボストン・グローブ』紙の特別取材ティームの物語です。

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 私は映画に詳しいと言うほどたくさんの映画を見ていませんが、今回の論稿では、映像がどうとか、俳優の演技がどうとか、そういうことではなくて、映画のテーマであるカトリック教会の聖職者による虐待事件やカトリック教会について書きました。

 

 この映画はボストンという土地柄、事件の舞台を十分に描き出した映画です。論稿でもそのことには触れましたが、この点は強調してもしすぎることはないと思います。映画の中で、「バンビーノの呪い」という本が出てきたときには、なるほど、とちょっと苦笑いをしました。

 

 バンビーノというのは、大リーグの伝説的大選手ベーブ・ルースのニックネームです。ベーブ・ルースはもともとボストンを本拠地とするボストン・レッドソックスに所属する若手の成長株でした。しかし、1920年に球団側と衝突して、宿敵ニューヨーク・ヤンキースに金銭トレードとなりました。レッドソックスはルース在籍中の1918年にワールドシリーズを制廃しましたが、それ以降、名選手を輩出するものの、ワールドシリーズ制覇は出来ませんでした。この状態を指して、ベーブ・ルースに呪われているとして、「バンビーノの呪い」という言葉が作られました。この呪いも2004年に解かれました。日本人の松坂大輔投手と岡島秀樹投手が活躍したことは記憶に残っています。

 

 字幕だけではこうしたことを知ることはできません。落語では「くすぐり」といいますが、観客を笑わせたり、驚かせたりするちょっとした表現は、背景を分かっていなければ理解できず、それが理解できなければ、映画の面白さも減ってしまいます。

 

 是非、手に取ってお読みいただき、その後に映画『スポットライト 世紀のスクープ』もご覧いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 


(終わり)










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