古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 東アジア政治

 古村治彦です。

 2023年9月13日、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領と、北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党総書記・国務委員会委員長が、ロシア極東のボストチヌイ宇宙基地で首脳会談を行った。両国は西側世界では特に評判が悪い「ならず者国家(rouge state)」である。プーティンと金正恩は独裁者として忌み嫌われている存在だ。その2人が首脳会談を行って、西側メディアが悪口ばかりになるのは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が2年目を迎え、戦況は膠着状態に陥っている。ロシアは、戦争の初期段階で、西側諸国からの経済制裁を受けたが、それを持ちこたえ、石油の輸出によって外貨を稼ぐことができている。それでも戦争の長期で、武器の減少が取り沙汰されている。そうした中で、金委員長をプーティンが直接出迎えて厚遇したということは、北朝鮮からの武器供与を求めてのことだろうというのが多くの人の見方だ。北朝鮮からすれば、ロシアからの技術供与や食糧支援を求めているということのようだ。

 北朝鮮とロシアの二国関係は、互恵的な関係ということが言える。お互いがお互いの望むものを持っており、それを与え合うことで、お互いが利益を得るということになる。北朝鮮とロシアの接近によって、ロシアが北朝鮮にミサイル技術や宇宙技術を供与することになれば、北朝鮮のミサイル、核兵器がより高度になり、東アジア地域における、危険が増すという考えも出てくるだろう。

 しかし、ロシアも中国もそこまで甘くはない。北朝鮮の位置を考えれば(両国と国境を接している)、北朝鮮に高度のミサイルを持たせることは、中露両国の安全保障にとっても脅威となる。特に中国の場合、黄海を超えれば、すぐに北京である。北朝鮮のミサイルがアメリカや日本を向いているうちは良いが、それがいつ北側(ロシア)や西側(中国)に向かうかは分からない。従って、致命的に重要な技術を北朝鮮に供与することはない。中露は全面的に北朝鮮を信頼してはいない。あくまで自分たちがコントロールできる範囲に置いておかねばならない。

 アメリカからすれば、北朝鮮を中露両国から引き離すということが重要だ。ドナルド・トランプ前米大統領は、前代未聞の米朝首脳会談を成功させた(2018年のシンガポール、2019年のヴェトナムの首都ハノイ)。ここで、北朝鮮の非核化の見返りとしてのアメリカからの経済支援による経済開発といった話も出ていた。しかし、ジョー・バイデン政権になってからは米朝関係には何の進展もない。トランプのような政界のアウトサイダーだからこそなしえた成果であったのだろう。北朝鮮からすれば、トランプがいなくなれば、アメリカは約束を反故にする、もしくは北朝鮮の体制転換のために北朝鮮に浸透してくるということは分かっていることであり、アメリカとの交渉にはおいそれとは乗れないということになる。

 北朝鮮は、この機会にロシアとの関係を良好なものとしておくことは、対中関係にも影響を与えるという計算もあるだろう。中露両国を両天秤にかけるということだ。北朝鮮はいつも実にしたたかだ。

(貼り付けはじめ)

プーティンと金がお互いから欲しいもの(What Putin and Kim Want From Each Other

-最近の両者による首脳会談は、ロシアと北朝鮮の関係がいかに取引的なものになっているかを示した。

アンキット・パンダ筆

2023年9月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/15/russia-north-korea-putin-kim-summit-diplomacy-weapons-missiles-space-cooperation-sanctions/

新型コロナウイルスの感染拡大のさなか、3年以上にわたって自主的に課した、厳しい孤立主義(isolationism)を経て、北朝鮮の指導者金正恩は今週、思い切って国境の外に飛び出した。金委員長はロシアのウラジーミル・プーティン大統領に会うため、かつて父親が好んだのと同じ装甲列車(armored train)に乗って、ロシア極東に向かった。金委員長が外国指導者と会談するのは2019年以降では初めてのこととなった。プーティン露大統領は、ホスト役を務めることで、最近のG20BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会談への欠席が象徴する、プーティン自身の外交的孤立の中で、外交分野における自身の正常なイメージを示すことができた。

プーティン大統領は、2019年に初めて会った北朝鮮の指導者である金正恩に対する親近感を示し、ロシア語で非公式に挨拶した。金委員長は、ウクライナに対するモスクワの「聖なる闘争(sacred struggle)」に対する北朝鮮の献身を告白した。両者とも西側諸国が支配する世界秩序に対して団結を示すことを目的としていたが、その戦略的一致は実際には両指導者にとって困難な状況によって引き起こされた、より取引的な論理から生じている。簡単に言えば、それぞれが相手に提供できるものがたくさんあるということだ。

金正恩とプーティンは、お互いに正確に何を求めてきたのかを胸に秘めている。典型的な首脳同士による首脳会談とは異なり、両者は協議や合意内容を示唆するいかなる種類の共同声明も発表しないことを選択した。しかし、両国間で行われている、最近の他のハイレヴェルの外交行為と同様に、両者の会談の様子は、より明白なものであった。

金委員長の訪問に先立って、ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は、兵器調達に携わる他の国防高官らに囲まれ、北朝鮮の兵器が豊富に展示されている平壌の展示場を視察した。北朝鮮が、ロシアが長年支持してきた国連安全保障理事会の支持による包括的な武器禁輸下にあるという事実は、大きな障害ではないようだ。

金・プーティン首脳会談の開催地の選定も同様に微妙だった。まず、両首脳はロシアの比較的新しいボストチヌイ宇宙基地での会談を選んだ。これは、モスクワがカザフスタンのバイコヌール宇宙基地への依存を減らすために設計されたロシア東部の宇宙基地である。ロシア国営メディアは、プーティンが、そこで会談することを決めたのは、金正恩が「ロケット技術に大きな関心を持っている」ことを認めたからだと述べ、北朝鮮の指導者は「宇宙開発を進めようとしている。だから私たちはボストチヌイ宇宙基地に来たのだ」と述べたと報じた。実際、北朝鮮は成熟した宇宙開発プログラムを開発しようとしているが、今年2度の衛星打ち上げ失敗が示すように、成長の余地がある。ロシアの宇宙打ち上げ技術の援助は、軍事偵察衛星(military reconnaissance satellites)の開発を含む平壌の軍事的近代化の野望(military modernization ambitions)の実現に大いに貢献するだろう。

しかし、北朝鮮がロシアの利益を全力で支援することで得られる恩恵は他にもある。プーティン大統領との会談後、金委員長の列車はコムソモリスク・ナ・アムーレに向けて進み、そこで金委員長はSu-35戦闘機とSu-57戦闘機を生産する工場を訪れた。これらの戦闘機は現在朝鮮人民軍空軍が利用できる旧式の機体よりもはるかに先進的なシステムだ。新しい戦闘機を調達できなくても、北朝鮮は、既存のソ連製軍用機を強化し、耐空性と信頼性を大幅に向上させるためのスペアパーツやコンポーネントの安定供給から恩恵を受ける可能性がある。

金正恩はまた、自国のミサイル計画を強化するために、ロシアのサプライヤーから調達した原材料や複合材へのアクセスも求めるだろう。北朝鮮は、ケブラーやアラミド繊維のような素材をロシアから調達し、高度なミサイルに使用するために、組織的な犯罪ネットワークに長い間依存してきた。ロシアがこのような移転を積極的に促進することは、国連制裁違反ではあるが、平壌の軍事的野望の実現を支援することになる。北朝鮮はまた、秘密裏に技術支援を求める可能性もある。国際的なルールや規範を蔑ろにするプーティン大統領によって、これまで両国間で考えられなかったような技術協力が実現可能になるかもしれない。

ミサイルや戦闘機といったハード面以外で、金正恩は、新型コロナウイルス感染拡大を通じて、北朝鮮で深刻化している栄養面の問題に対処できる食糧援助の可能性についてもプーティンに打診したようだ。このような援助は制裁に違反するものではないが、それにもかかわらず、金正恩が近年、核の近代化に巨額の資金をつぎ込みながらも公然と認めている食糧不足に対処する一助となるだろう。北朝鮮とロシアは国境と領海を接しているので、大規模輸送も容易だ。

ロシアは北朝鮮の目的に対して外交的支援を提供することもできる。北朝鮮は既に、国連安全保障理事会におけるロシアと中国の庇護からかなりの恩恵を受けている。 2019年の米朝外交の最終段階の崩壊以来、中国政府とロシア政府はいずれも新たな制裁や国連での正式な非難さえも明確に拒否している。2016年と2017年の、例外的に広範な分野別の措置に対する黙認とは全く異なり、北朝鮮を積極的に支援していることになる。昨年は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル実験を非難する米大統領声明を両国とも支持しなかった。

一方、今回の会談に対するロシア政府の関心は、ロシア軍が使用しているソ連時代の発射装置と逆互換性のある、北朝鮮が大量に保有している砲弾やロケット弾の弾薬にあると考えられる。昨年9月に『ニューヨーク・タイムズ』紙が取材したあるアメリカ政府の情報筋は、そのような移送はすでに行われていたと示唆したが、これはおそらく時期尚早であったと思われる。むしろ、最近相次いでいる北朝鮮とロシアの二国間外交は、こうした移転を促進することを目的としていたとみられ、ホワイトハウス報道官はショイグ防衛相の訪問後、それが「積極的に進められている(actively advancing)」と述べた。

プーティン大統領と金委員長の首脳会談で、イデオロギーを共有する姿勢を見せようとしたにもかかわらず、プーティンと金正恩は相手の要求に完全に応じるつもりはないかもしれない。例えば、北朝鮮はロシア海軍の核推進技術へのアクセスを求めるかもしれない。同様に、ロシアはウクライナで使用される可能性のある、より高度な北朝鮮ミサイルの入手を求めるかもしれないが、金正恩は自国の国防と抑止力のためにミサイルを保有することを好むかもしれない。

両国の会談は、北東アジアにおける新たな権威主義的枢軸(a new authoritarian axis)の話を促すだろうが、この関係の最近の高まりが、各国の目先の戦略的利益よりも、深い基盤を持っていることを示唆するものはほとんどない。モスクワは自国に有利なように世界秩序を修正しようとしているかもしれないが、その努力のパートナーとして北朝鮮を参加させても使い道は限られる。

一方、北朝鮮にとって、ロシアとより深い関係を築きたいという願望は、新型コロナウイルス感染拡大とロシアのウクライナ侵攻の両方に先行している。金正恩が2019年にロシアの極東でプーティンと初めて会ったのは、前回失敗した米朝首脳会談の直後だった。その年の暮れ、金正恩は自国の戦略的アプローチについて「新しい方法」に従うことを示唆した。ロシアとのより良い関係は、この新しい方法の一部であると思われる。ロシアが孤立し、世界的な規範に背くことを厭わなくなるなど、現在の地政学的ダイナミクスは、平壌に絶好の機会を与えている。

金正恩の訪問は人々を驚かせた。特に注目すべきは、2019年以来の海外訪問に中国ではなくロシアを選んだことだ。2018年、金委員長は最終的に韓国やアメリカとの首脳外交に向かう前に、中国の習近平国家主席との会談を選んだ。中国側の声明によれば、両者の最初の会談で、習主席は何よりもまず、両国間の「ハイレヴェルの交流」の重要性を強調し、「同志委員長(Comrade Chairman)と頻繁に連絡を取り合いたい」と述べたということだ。

しかし、金委員長の選択は、北京と平壌の間に大きな溝があることを示すものではない。金委員長と習近平は新型コロナウイルス感染拡大の最中に書簡を交換し、ある中国高官は最近、平壌の軍事パレードに出席した。しかし、少なくとも短期的には、金正恩は習近平よりも、ますます絶望的になっているプーティンを、より積極的な後援者となるだろうと評価している可能性が高い。北京と平壌はともにプーティンの戦争努力を支持しているが、大規模な軍需物資の提供を望んでいるのは北朝鮮だけだ。

ロシアの対ウクライナ作戦に対する北朝鮮の支援は、戦場での変革にはつながらないだろう。通常弾薬の不足は、ロシアと迅速な勝利の間に立ちはだかる要因とは言い難い。平壌による弾薬供給に対して、期待される最も重要な短期的効果は、ロシアが将来NATOと衝突する場合、自国の備蓄を補充し、維持できるようになることであろう。

アメリカにとって、金委員長とプーティンの関係が緊密になるという見通しは悪いニューズだが、終末をもたらすようなものではない。仮にプーティンと金正恩が互いにほとんど関心を持たなかったとしても、両首脳は単独でアメリカの利益に対する深刻な挑戦を続けるだろう。

おそらく、この関係がもたらす結果として、北朝鮮の継続的な核兵器保有に対する現状維持の外交アプローチへの影響ほど重要なものはないであろう。既存の国連制裁体制に直面して、ロシアが公然と北朝鮮を露骨に支援すれば、空想的な短期目標である非核化(denuclearization)が不可能になるだろう。

このことは、ここ数十年でアメリカの対北朝鮮アプローチを見直すための最も重大なきっかけとなる可能性が高い。現在、外交の展望は漠然としているように見えるが、ワシントンは、かつて金正恩がドナルド・トランプ前米大統領に会うためにハノイ行きの列車に乗るように仕向けたのも、大国との関係を進めるための、ほぼ同じ取引的アプローチだったことを思い起こすべきだ。

金委員長にモスクワから目を背けるよう促すのは難しいだろう。しかし、アメリカは北朝鮮に少なくとも外交の可能性をもう一度考えるきっかけを与えるために、外交部門が持つ、あらゆるツールを活用する用意を行っているはずだ。金委員長は昨年、アメリカは無制限の交渉を求め、北朝鮮に対して敵意がないことを公言しているにもかかわらず、「ジョー・バイデン政権の行動、特に韓国を安心させるために取った措置の多くが北朝鮮に悪影響を与えている。無制限の交渉や敵は存在しない、などの言葉を信じるに足る理由は存在しない」と不満を述べた。

ワシントンはまた、金正恩がハノイに行った際に求めていたのは、限定的な核の譲歩と引き換えに、自国の経済に対する分野別の制裁を緩和するという取引であったことを思い起こすべきだ。制裁緩和の見通しを利用することは、北朝鮮の不遵守を防ぐためのスナップバック(訳者註:元の状態に素早く戻すという意味)条項付きで、誘惑としての価値を持ち続けるかもしれない。しかし、ワシントンがすぐに行動を起こさなければ、金正恩がかつて交渉の場で制裁緩和を求めていた意義はかなり薄れてしまうかもしれない。ロシアが北朝鮮との取引の意欲を示している現在ではなおさらである。

最後に、アメリカとその同盟諸国は、より高性能化する北朝鮮の核兵器が危機や紛争で使用されるリスクを軽減することに引き続き関心を持っている。今後の交渉の前提が核リスクの軽減や抑制に焦点を当てることができると金委員長に示唆すれば、北朝鮮が外交的により苦境に陥る理由を生み出すことになるだろう。

※アンキット・パンダ:ワシントンに本拠を置くカーネギー国際平和財団各政策プログラムスタントン記念上級研究員。著書に『金正恩と彼の爆弾:北朝鮮における生存と抑止(Kim Jong Un and the Bomb: Survival and Deterrence in North Korea)』がある。ツイッターアカウント:@nktpnd

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 先週のヴェトナム・ハノイでの2回目の米朝首脳会談については既にこのブログでも書きました。ワーキングランチが取り止めになり、共同宣言発表もなくなり、何の成果もないままで終了ということになりました。金正恩委員長は不機嫌な態度で会場を後にし、その後、ヴェトナム政府が主催の公式行事には出席しましたが、その他の経済視察などは行いませんでした。前回は、夜のシンガポールに出て、トランプ大統領の支持者である、シェルドン・アデルソンが経営するマリーナベイ・サンズを訪問しましたが、今回そのようなことはありませんでした。

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 こうした中、北朝鮮政府の神経を逆なでする出来事がいくつか起きました。まず、2019年2月22日に、スペインの首都マドリードにある北朝鮮大使館に賊が侵入し、館員を一時監禁し、コンピューターなど情報機器が盗まれるという事件が起きました。

 

 諜報やスパイといった世界での暗闘の一部なのだろうと思いますが、大使館に賊が侵入するというのはよほどのことです。コンピューターなど情報機器が盗まれたということですが、これでは北朝鮮が在外公館で構築している情報ネットワークや使用している暗号などが流出したということになります。

 

 スペインは第二次世界大戦では中立国となり、マドリードでは各国の大使館が情報戦を戦っていた場所です。日本も須磨弥吉郎公使を中心とする東機関(とうきかん)を設立し、アメリカの情報を日本に送っていました。アンヘル・べラスコというスペイン人が日本のスパイとなっていました。マドリードという場所は今でもスパイ戦、諜報戦の第一線なのかもしれません。

 

 更に、1919年の三一運動から100年の今年3月1日、金正恩委員長の兄で、金委員長の移行で殺害されたとされる金正男(故金正日国防委員長の長男)の息子である金漢率(キム・ハンソル)氏を保護していると主張しているグループ「千里馬民間防衛(CCD)」が名前を「自由朝鮮」に変え、朝鮮臨時政府の設立を宣言しました。金漢率氏が首班にはなっていないようですが、外国に北朝鮮の亡命政府というか、臨時政府を設立すると宣言しました。


 

 2回目の米朝首脳会談の直後のタイミングというのが気になるところです。この自由朝鮮というグループの実態ははっきりしていません。しかし、故金日成国家主席の曾孫、故金正日国防委員長の孫であり、長男の長男である金漢率を擁しているということは重要なことです。血筋で見れば、金漢率氏の方が故金日成主席に近いということになります。




 この自由朝鮮の動きの裏に、アメリカ、特にアメリカのネオコン派がいるとするならば、この動きは北朝鮮政府にとっては神経を逆なでするものであり、金正恩委員長が外出を控えるようになったというのも、暗殺の危険を避けるためということになるのだろうと思います。

 

 米朝首脳会談の不調と朝鮮臨時政府の発足ということを結び付けて考えると、この先、米朝交渉が決裂せずに、だらだらとでも続いていくことは重要である、成果を急いで出そうとすると交渉が決裂し、最悪の場合にはアメリカによる北朝鮮攻撃という可能性が息を吹き返してくるということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

スペインの北朝鮮大使館、襲撃受ける=職員一時監禁

 

201902280941

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019022800368&g=int

 

 【ソウル時事】28日付の韓国紙・朝鮮日報などは、スペインのマドリードにある北朝鮮大使館が22日、何者かの襲撃を受け、職員が数時間、監禁されたと報じた。職員3人が軽いけがをしたほか、コンピューターなど情報機器が盗まれたという。地元メディアなどを引用して伝えた。AFP通信によると、スペイン内務省スポークスマンは27日、「(事件を)捜査中だ」と述べた。

 

 朝鮮日報は、脱北者支援団体とみられる「チョルリマ・シビル・ディフェンス(千里馬民防衛)」が事件に関与したかどうかが注目されると指摘。同団体は金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄で、2017年2月にマレーシアで殺害された金正男氏の息子ハンソル氏の安全確保のために活動しているといわれる。(2019/02/28-09:41

 

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正恩氏一転、不機嫌に去る=トランプ氏「関係継続」

 

2/28() 17:08配信 時事通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190228-00000082-jij-kr

 

 【ハノイ時事】第2回米朝首脳会談は合意に達することができないまま幕を下ろし、わずか数時間で両首脳は劇的に表情を変えた。

 

日本「悪夢のような状況懸念」=米朝再会談で韓国TV

 

 会談2日目の28日午前、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は「私の直感では良い結果が出ると信じている」とトランプ米大統領に語り掛け、余裕すらうかがわせた。しかし、午後に会場のホテルを後にする際は一転、不機嫌そうな様子を隠さなかった。一方のトランプ氏は、会談後の記者会見で「正恩氏との関係を継続したい」と未練をのぞかせた。

 

 28日午後、会談が行われたホテルを出発し、走り去る専用車では、後部座席に座る正恩氏の「仏頂面」が確認された。午前中、トランプ氏とホテルの中庭を散策しながら見せた柔和な表情とリラックスした雰囲気は消え、両国に依然大きな隔たりがあることを無言のまま世界に知らせた。

 

 中国を経由し専用列車でベトナム入りした26日、正恩氏は対中国境の越北部ドンダン駅前で、歓迎する地元の人々に専用車から手を振る気配りを見せていた。しかし、会場を後にした際の表情は、事実上物別れに終わった会談の雰囲気を反映して厳しかった。ベトナムで高まっていた正恩氏への好印象を吹き飛ばすように去って行った。 

 

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記事入力 : 2019/03/02 09:09

 

金正男氏息子救援団体「自由朝鮮」、臨時政府発足を宣言

 

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/03/02/2019030280008.html

 

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の腹違いの兄である故・金正男(キム・ジョンナム)氏の息子キム・ハンソル氏を支援する団体「千里馬民防衛」が1日「自由朝鮮の建立を宣言する」とした上で「この政府が北朝鮮人民を代表する単一かつ正当な組織だ」と主張した。団体名も「自由朝鮮」に変更し、自分たちを「臨時政府」と名乗った。この団体について一部では「北朝鮮の元政府高官だった脱北者を中心に組織されたのでは」との見方も出ている。

 

 「千里馬民防衛」はこの日ホームページを通じ「光復(植民地支配からの解放)という明るい光が平壌に届くまで、人民を苦しめる者たちに対抗してたたかう」などとする「自由朝鮮のための宣言文」を韓国語と英語で公表した。ソウル市内のタプコル公園とみられる場所で、白の韓服に黒いチマを着た女性がこの宣言文を読み上げる735秒の動画も公開された。この日が三・一節から100周年だったことを意識したようだ。団体は「過去数十年間、人道主義に反する莫大な犯罪を行ってきた北の権力に対抗するため立ち上がった」とも主張し、北朝鮮住民や国際社会などに賛同と連帯を呼びかけた。

 

 この団体は先月25日「今週中に重大発表を行う」と予告していた。時期的に考えると、この重大発表とは今回の宣言を意味するものと思われる。亡命政府の設立には北朝鮮住民と国際社会の後押しが必要となるため、団体は今後キム・ハンソル氏ら北朝鮮出身者を前面に出すとの見方もある。

 

 団体はこの日ソウル市内で撮影された動画を公開することで、関係者の一部が韓国国内にいることを暗に示した。元北朝鮮政府高官の脱北者は「金正恩体制に反旗を翻した元工作員たちの団体のようだ」との見方を示し「彼らは情報力も資金力もあるので、海外の情報機関と連携した反体制活動も可能だ」と指摘した。この脱北者はさらに「北朝鮮が工作機関を偵察総局に統廃合した2009年と、張成沢(チャン・ソンテク)氏が処刑された13年を前後した頃、複数の元北朝鮮工作員が亡命したと聞いている」とも伝えた。

 

 一方で韓国の中道系野党・正しい未来党の李彦周(イ・オンジュ)議員は1日「北朝鮮内の反独裁運動に関する特別法(仮称)」を国会に提出する方針を明らかにした。李議員は「北朝鮮の臨時政府や亡命政府を名乗る団体への支援策について議論すべき時だ」とコメントした。

 

キム・ミョンソン記者 , ユン・ヒョンジュン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 

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North Korea’s ‘government in exile’: who is the group dedicated to ‘restoring light to Pyongyang’?

 

    Little is known about CCD and it is unclear who is behind the organisation – although some have speculated it has links to South Korea’s spy agency

    The group emerged in 2017 when it said it had guaranteed the safety of Kim Han-sol, the son of Kim Jong-nam, who was murdered

 

 

Agence France-Presse 

Updated: Friday, 1 Mar, 2019 1:09pm

https://www.scmp.com/news/asia/east-asia/article/2188191/north-koreas-government-exile-who-group-dedicated-restoring

 

A shadowy group believed to be protecting the son of North Korean leader Kim Jong-un’s assassinated brother declared the formation of a government-in-exile on Friday, dedicating itself to the abolition of the “great evil”.

 

The Cheollima Civil Defence (CCD) organisation – which offers to assist people attempting to defect from North Korea emerged in 2017 when it posted an online video of Kim Han-sol, saying it had guaranteed his safety after his father was killed

by two women who smeared him with nerve agent.

 

In a lengthy statement posted on its website in both Korean and English on Friday – the 100th anniversary of a Korean movement against Japanese colonial rule – the group announced itself as a provisional government for the North called “Free Joseon”. Joseon is an old name for Korea.

South Korea’s Moon Jae-in may be the biggest loser of the Trump-Kim summit flop

 

We dedicate ourselves completely to the abolition of this great evil, a stain on the very soul of humanity,” it said in a statement, saying it will continue its campaign until “the day that light is truly restored to Pyongyang”.

 

It claimed to be “the sole legitimate representative of the Korean people of the north”, adding: “Joseon must and shall be free. Arise! Arise, ye who refuse to be slaves!”

 

The group posted a video of a woman – dressed in an old-fashioned black and white hanbok and her face blurred or only showing her back – reading out the statement in front of a traditional Korean pavilion in a field.

 

Little is known about CCD and it is unclear who is behind the organisation – although some have speculated it has links to South Korea’s

spy agency. It is named after a mythical winged horse.

 

CCD uses South Korean transliteration for its name, while some of the Korean text on its website reads as if it could have been a translation from English.

 

In the past the group has said it responded to urgent requests for protection from “compatriots” and has thanked countries including the Netherlands, China and the United States for their help.

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 2019年2月27日から28日にかけてヴェトナムの首都ハノイでアメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員会員長の首脳会談が開催されました。昨年6月12日のシンガポールでの首脳会談に続く第2回目の会談でした。


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 今回の首脳会談では共同宣言に署名されることもなく、成果のないままに終了ということになりました。トランプ大統領は記者会見に応じ、これからも交渉を続けていくと述べました。それでもマスコミでは「物別れ」「決裂」という言葉が躍っています。

 

 前回の一回目の首脳会談では、共同宣言が出されました。その中には「トランプ大統領は朝鮮民主主義人民共和国に安全の保証を与えると約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた断固とした揺るぎない決意を確認した」という一節があり、これでアメリカは北朝鮮を攻撃しないとし、北朝鮮は非核化に向かって進むということになりました。

 

 アメリカとしては、攻撃しないという保証を与えたのだから、アメリカの意向通りの非核化を行うべきだと考えている一方で、北朝鮮は安全の保証だけではなく、経済発展に向けた動きもついでに確保しよう、非核化をできるだけ高く売りつけようという考えのようです。中国とロシアの後ろ盾もあり、経済制裁も効果を上げていない(密輸などで)中で、北朝鮮は焦る必要はない状況です。そうした中で、アメリカの意向通りには物事は進まなかったということでしょう。

 

 それでも交渉は続けるということですし、交渉が続いている状況で、一回目の共同宣言の効力があるうちは、アメリカにとってはミサイルが飛んでこないということであり、北朝鮮にとってはアメリカから攻撃されないということで、この宙ぶらりんの状態はお互いに望ましいということになります。

 

 金正恩委員長が不機嫌なままで会場を去ったという報道が少しに気になります。笑顔がなくて外見上が不機嫌に見えたという印象論の報道ならまだ良いのですが、会談の席上でのトランプ大統領の発言のために不機嫌になったということなら問題です。私が懸念しているのは、現在の外交、安全保障を司っているアメリカの政府高官がそろいもそろってネオコン派であるという点です。

 

 そうした中で、トランプ大統領がアメリカによる北朝鮮攻撃、体制転換、政権交代などについて口を滑らせてぽろっとでも発言すれば、北朝鮮にしてみれば到底受け入れがたいことになります。

 

 日本政府について考えてみると、今回紹介している記事の内容から考えると、何も合意が出来なくてホッとしているということになるでしょう。日本が置き去りにされて、米朝が何か氏からの合意や進展をしてしまうということは、日本にとっては困ってしまう事態です。日本はアメリカとの関係に依存し過ぎているのに、アメリカは気まぐれで日本の利益を考えない行動をするということになったら、日本は損ばかりをしてしまうということになります。


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 また、日本が過度にアメリカ依存をしているということで、対中、対露、対北朝鮮についてはフリーハンドで動くことはできません。一方でアメリカはいざとなれば日本のことなど考慮しないということは可能です。日本は東アジア地域の大国ではありますが、北朝鮮をめぐる問題に関してはサイドラインに立たされたまま、ということになっています。

 

 北朝鮮も日本に関しては重視していないので、日本からの働き掛けもうまくいっていないのが現状です。

 

 こうして見ると、下に紹介した記事にあるように、日本政府にとっては今回の会談で何も成果が出なかったということは、「日本にとって何も悪いことが起きなかった」ということになり、胸をなでおろしているということになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

ハノイでの首脳会談で日本政府ははじき出されたと感じている(Hanoi Summit Has Tokyo Feeling Left Out

―日本はアメリカと北朝鮮が合意に至る中で、日本の利益が無視されるのではないかと懸念を持っている

 

ロビー・グラマー筆

2019年2月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/02/26/hanoi-summit-has-tokyo-feeling-left-out-japan-north-korea-shinzo-abe-kim-jong-un-nuclear-deal-trump-asia-security-denuclearization/

 

2018年9月、国連総会の席上、日本の安倍晋三首相は、北朝鮮との「相互不信の硬い殻を打ち破る」用意があり、北朝鮮の最高指導者金正恩国務委員会委員長との首脳会談を行う用意があると宣言した。

 

しかしそれ以降、アメリカと北朝鮮、韓国と北朝鮮、中国と北朝鮮といくつもの首脳会談が次々と開催される中で、日本はサイドラインから眺めることしかできず、ドナルド・トランプ米大統領が日本政府に相談することなく、北朝鮮と合意を結ぶのではないかという懸念を持ち続けている。

 

長年にわたり北朝鮮に対して強硬姿勢を保持してきた当の安倍首相は北朝鮮の金委員長との首脳会談を開くことができないままでいる。これはトランプ大統領が今週金委員長との2度目の会談を準備している中で、日本が不安定な立場に立っており、日本政府もそのことを認識していると専門家や日本政府高官たちは述べている。

 

ある日本政府高官は匿名で取材に応じ、「日本では、何か良いことが起きることを希望するよりも、何も悪いことが起きないことを人々は望んでいる」と発言した。

 

ヴェトナムでの首脳会談において、トランプ大統領と金委員長は非核化について北朝鮮による譲歩の可能性について議論することになるだろう。アメリカの同盟諸国は、金委員長がうまく立ち回り、トランプ大統領を出し抜き、政治上のまたPR上の勝利を勝ち取るのではないかという懸念を持っている。アメリカのマイク・ポンぺオ国務長官もまたこうした懸念を持っていると報じられている。大きな懸念としては、北朝鮮政府が非核化のための真のステップから外れるために自分たちの主張に固執するのではないかというものだ。アメリカの各情報機関のトップたちは、北朝鮮が核兵器プログラムを放棄したくないと考え、昨年シンガポールで開催されたトランプ・金会談以降の複数回の実務者協議は中断し、停滞しているのが現状だと発言している。

 

韓国では文在寅大統領は、南北関係を修復するために、金委員長の関係をこれまでになく強めている。文大統領と金委員長との間の一対一の会談は複数回開かれ、多くの場合、最後は両者が抱き合い、笑い合う様子を写真撮影することで終了している。

 

一方、北朝鮮政府は日本政府からの外交的な接触に対して反応をしていない状況下で、日本は韓国政府かアメリカ政府を通じて、トップレヴェルの関与を確保しなければならない。そのために、安倍首相は気まぐれな北朝鮮の最高指導者と向こう見ずで自由気ままなアメリカ大統領の間に挟まれ、身動きが出来ないようになっている。現在のアメリカ大統領は原稿通りに発言しないことと補佐官たちの助言を無視することを好む。

 

専門家の中には、北朝鮮は安倍首相と関与することを拒絶しているが、安倍首相がトランプ大統領と個人的な関係を持っているので、日本は外交上、強い立場にあると主張している人々もいる。しかし、安倍首相はハノイの首脳会談をサイドラインから眺めることを強いられている。

 

ヘリテージ財団研究員でCIA韓国部の副部長を務めたブルース・クリングナーは、「日本政府の高官たちと話をすると、彼らは懸念を感じ、孤立感を持っていることが分かる」と述べた。クリングナーは更に、トランプ大統領について、「日本政府高官たちは良くないサプライズが起きることを憂慮している」とも述べた。

 

トランプ大統領に対して日本政府高官が懸念を持つのはそれだけの理由があるからだ。

 

2018年の第一回目の米朝首脳会談の後、トランプ大統領は一方的に韓国との共同軍事演習の一部を修了すると発表した。これは同盟諸国と国防省内部に大きな衝撃を与えた。

 

2018年12月、トランプ大統領は、アメリカ軍のシリアからの完全撤退とアフガニスタンからの大幅な撤退を決断したと発表して、アメリカの同盟諸国を再び驚かせた。シリアからアメリカ軍を全員引き揚げさせるという決断(これは現在再考中ではある)によって、国防長官だったジェイムズ・マティスと対イスラム国特使だったブレット・マガークは辞任した。

 

ブルッキングス研究所の朝鮮半島研究部門の責任者ジュン・パクは、シリアとアフガニスタンに関する予想外の発表は東アジア全域を駆け巡り、アメリカの同盟諸国の神経を逆なでした、と述べている。パクは、東アジア地域のアメリカの同盟諸国に残されたものは、「不安定と不信感、不平不満の複雑に絡んだ状態である。これらはトランプ大統領の予測不可能性が原因の一部であると思う」と述べている。

 

中国の軍事的脅威が高まり、北朝鮮が核兵器とミサイル開発を放棄しない状況下で、それらに対処するために、日本はアメリカとの同盟関係に大きくい依存し続けている。日本の平和主義憲法は第二次世界大戦後に制定されたが、これは、純粋な防衛行動のみに軍事力を使用すると制限している。安倍政権は憲法の改定と日本の自衛隊を完全な軍隊にすることを推進中だ。

 

アメリカとの同盟に大きく依存しているということは、日本はアメリカ大統領の気まぐれの影響を受けてしまうということになる。現在のトランプ大統領は伝統的な同盟諸国との関係性の構造をはねつけ、これまでのアメリカの国際問題へのかかわりに疑問を呈している。

 

トランプ大統領が金委員長と合意に達することで、アメリカに対する脅威をなくす一方で、東アジア地位の同盟諸国を見捨てるのではないかというのが日本政府内に広がっている恐怖感だ、と日経新聞コメンテイターの秋田浩之と述べている。考えられる合意内容として、北朝鮮の長距離大陸間弾頭ミサイル開発に制限を加えながら、完全な非核化を行わず、アメリカ本土には脅威ではないが日本にとっては脅威となる短距離、中距離ミサイル開発も阻止しないというものがある。秋田は「これは日本にとって悪夢のようなシナリオだ」と述べている。

 

ランド研究所の研究員ナオト・アオキはハノイでの合意内容によって、日本の置かれている不安定な立場はより厳しいものとなるだろう、と述べている。トランプ・金会談の結果の一つの可能性として考えられる内容は、アメリカの交渉担当者たちが外交関係正常化に向けたステップの中で北朝鮮に、完全な大使館機能を備えてはいない連絡事務所を設置することを提案するということだ。東アジア地域の他の主要なプレイヤーであるロシアと中国は平壌に大使館を置いている。韓国は昨年9月に北朝鮮に連絡事務所を設置している。

 

青木は「アメリカが連絡事務所を設置するとなると、日本は東アジア地域で北朝鮮との間に、二国間で利用される存在もしくは外交チャンネルを持たない唯一の主要国となる」と発言している。

 

日本政府高官や専門家たちによれば、日本は複数回にわたり北朝鮮に接触を図った。2018年の国連総会の非公式な場面での接触や、2018年8月の東南アジア諸国連合の会合での日本の河野太郎外相と北朝鮮の李容浩外相との会談が 行われた。また、両国の情報機関の間で交渉が行われたとも報じられている。

 

青木は、これらの交渉や会談では「何も実質的な」ことには結びつかなかったようだ、と述べている。

 

外交評議会(CFR)のシーラ・スミスをはじめとする一部の専門家たちは、ハノイでのトランプ・金会談に至る過程で日本は孤立しているという考えに反論している。スミスは、トランプとポンぺオが東京を訪問したこと、北朝鮮との交渉について調整を行うために両者が安倍首相や河野外相と電話会談を行っていることを指摘している。

 

別の日本政府高官は匿名で、「非核化問題について私たちはアメリカと全面的に協調している」と述べている。

 

スミスは、2017年に北朝鮮が日本を飛び越えるミサイル実験を行った後、安倍政権は国連を含む、国際的な反応を引き出すために効果的に活動した、と述べている。スミスは「日本は国際的な舞台で活発な活動を続けている」と述べている。

 

しかし、トランプ大統領と安倍首相との個人的な友情がハノイでトランプが行う交渉に影響を及ぼすかどうかは不明確だ。秋田は、「(安倍首相の)個人的な関係が、日本にとって好ましくない妥協をトランプ氏が行わないようにするだけの効力を持つのかどうかは分からない」と述べている。

 

安倍首相は金委員長との直接の会談の際には、1970年代から1980年代にかけて拉致された日本国民について話をしなければならないと一貫して主張している。北朝鮮は17名の日本国民を拉致したことを正式に認めた。しかし、実際の数は不明確だ。日本人拉致問題は日本の外交問題の中で政治的に最も重要でかつ感情的に緊張をはらんでいるものだ。この問題に対する最後の大きな進展は2002年に起きた。この時、北朝鮮は拉致を認め、5名の拉致被害者を解放した。残る12名の運命については不明確なままであった。この人々が生存しているのかどうかも含めて不明確なままであった。しかし、拉致問題解決に向けて進展することは、北朝鮮国内で唯一求められている経済発展への道を開くことでもあるのだ。

 

安倍首相は日本史上4番目に長い在任期間を誇る首相である。彼は自身の政治キャリアを通じて拉致問題を主眼にしてきた。安倍首相は自身の外交政策上の成果を確固としたものにするために拉致問題を一気に全面解決したいと表明している。しかし、複数の日本政府高官たちは、アメリカ政府か韓国政府の仲介があっても問題解決は難しいと諦めている。

 

戦略国際問題研究所(CSIS)の北東アジア担当研究員のスー・ミー・テリーは、北朝鮮から見れば、拉致問題は、韓国やアメリカとの関係改善と比べて、取るに足らないものであると述べている。彼女は「関係改善に向かっている中で、拉致問題は現在のところ、金委員長にとって重要度の高い問題ではない」と述べている。

 

CFRのスミスは、安倍首相と金委員長との会談が行われる場合には、これらの実質的な諸問題についても話し合われなければならない、と述べた。

 

スミスは「そうでなければ首脳会談とは言えない。また、単なる写真撮影の機会でもいけない」と述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)




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 古村治彦です。

 

 2018年9月18日から韓国の文在寅大統領が北朝鮮を訪問し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談を行っています。本日、平壌共同宣言に両首脳が署名しました。南北の間で武力を使用しないこと、北朝鮮北部のミサイル施設を廃棄すること、寧辺の各施設も米国の出方次第で廃棄すること、年内に金正恩委員長が韓国・ソウルを訪問することが南北間で合意されました。今回の共同宣言によって、「朝鮮戦争は実質的に終結した」と韓国政府高官は強調しています。

 

 今回の共同宣言と南北の軍事分野での合意によって朝鮮戦争は「実質的に」終結した、という点は重要です。朝鮮戦争の休戦協定に署名したのは、中国人民志願軍司令員の彭徳懐と朝鮮人民軍司令官の金日成、国連軍総司令官のマーク・W・クラーク米陸軍大将です。韓国は署名の当事者ではありません。ですから、休戦協定と今回の共同宣言は全く別のものと考えるべきです。中国と国連軍(実質はアメリカ軍)が関係していないのですから。

 

 韓国が北朝鮮に対して武力を使用しない、北朝鮮も韓国には武力を使用しないということが今回合意された訳ですから、アメリカがもし北朝鮮に武力攻撃を行う際には、韓国は米軍と共同歩調を取らないということになります。そうなると、米韓両軍で行われる共同軍事演習も行われるのかどうか微妙ということになります。ですから、今回の共同宣言は韓国がアメリカ離れを進めていることの証左となります。

 

 アメリカが韓国内にある米軍基地を使って北朝鮮を攻撃することが出来るのか、ということも議論となってくるでしょう。韓国の最大の敵は北朝鮮ということでこれまでやってきたわけですが、お互いで武力行使をしないと決めた以上、米軍が韓国内にいる必要はありません。

 

 6月には米朝首脳会談が行われ、その際に米朝共同宣言が発表されました。その内容は曖昧でした。そのために、その後、米朝間の交渉はうまくいかないということになりました。アメリカは北朝鮮に安全の保証を与え、それで北朝鮮は核兵器とミサイルを放棄するということが大筋の合意内容ですが、米朝はその後、交渉を行っていますが、うまくいっていません。これは、アメリカが北朝鮮に騙された、出し抜かれた、ということになります。

 

 また、北朝鮮北西部にあるミサイル施設を廃棄するというのは、中国に対する配慮ということになります北朝鮮がアメリカを攻撃するならば、北朝鮮北東部にミサイル発射施設を建設するはずです。北西部ということは、その標的は中国ということになります。このミサイル施設が廃棄されるということは中国にとっては喜ばしいことです。

 

 こうして見てくると、北朝鮮と韓国、中国がひと塊となって、朝鮮半島での戦争が出来ない状況を作り出しています。今この状況でアメリカが北朝鮮に対して軍事力を行使するならば、アメリカは国際的に厳しい立場に置かれてしまいます。中朝韓が一緒になって、アメリカを封じ込めることに成功しました。トランプ政権は本質的に外国のことに関わりたくない、アメリカ・ファースト(アメリカ国内の問題を優先する、最初に解決する)ですから、そこを見切られての動きでしょう。

 

 アメリカのアジアからの撤退ということも視野に入ってきました。こうなってくると、日本の立場はどうなるかということになります。トランプ政権は日本に対して敵対的な姿勢を見せるようになっています。日本もアメリカ一辺倒に依存する状態から脱する方策を考える必要があるようです。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「北朝鮮、核施設廃棄の用意=南北が実質「終戦」宣言―正恩氏、ソウル訪問へ」

 

9/19() 16:41配信 時事通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180919-00000076-jij-kr

 

 【ソウル時事】韓国の文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は19日、平壌の百花園迎賓館で2日目の会談を行い、合意文書「平壌共同宣言」に署名した。

 

 宣言は「朝鮮半島での戦争の危険除去や敵対関係解消」をうたい、北朝鮮が北西部・東倉里のミサイル施設を廃棄することを明記、米国の対応次第では、寧辺の核施設も廃棄する用意を表明した。正恩氏が近く、ソウルを訪問することも盛り込まれた。また、韓国の宋永武国防相と北朝鮮の努光鉄人民武力相は、宣言の付属文書となる軍事分野の合意書に署名した。

 

 正恩氏は共同記者会見で「朝鮮半島を核兵器、核脅威のない平和の地にするため積極的に努力することを確約した」と明言。文氏は正恩氏のソウル訪問について「特別な事情がなければ、年内という意味だ」と語った。北朝鮮最高指導者のソウル訪問が実現すれば分断後初めてで、南北関係や北東アジア情勢の重大な転機となる。

 

 韓国大統領府の尹永燦国民疎通首席秘書官は、宣言署名で「実質的に(朝鮮戦争の)終戦を宣言した」と強調。北朝鮮が核施設の廃棄の用意を表明した点には「核の無能力化の実践的段階に入った」という見方を示した。

 

 尹氏によると、文氏は23日から国連総会出席のため米国を訪問し、現地時間の24日にトランプ大統領と会談する予定。尹氏は「(南北首脳会談での)公開されていない話も(トランプ氏に)伝達するだろう」と語り、正恩氏の対米メッセージを伝えるという見通しを明らかにした。

 

 宣言はこのほか、条件が整えば、北朝鮮南東部・金剛山の観光や南西部・開城の工業団地を正常化させることも盛り込み、離散家族問題の解決のための協力強化も確認。さらに、2020年東京五輪などでの共同出場を積極的に進め、32年五輪の南北共催に向けた誘致活動も検討することを定めた。

 

 文氏は20日、正恩氏とともに北朝鮮北部の白頭山を訪れた後、ソウルに戻る予定。文氏はかねて、白頭山訪問に意欲を見せており、正恩氏が提案したという。 

 

=====

 

●「正恩氏、年内ソウルへ 寧辺核施設の廃棄用意 南北会談」

 

9/19() 12:19配信 朝日新聞デジタル

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180919-00000036-asahi-int

 

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は19日、平壌で前日に続いて首脳会談を行い、米国の対応次第で、北朝鮮が寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄などの追加措置を取ることなどを盛り込んだ「9月平壌共同宣言合意書」に署名した。正恩氏が年内にソウルを訪れることでも合意した。

 

 合意書は、北朝鮮が東倉里の弾道ミサイル発射台とエンジン実験場を、関係国の専門家の立ち会いのもとで永久廃棄するとした。北朝鮮は、米国が「米朝共同声明の精神に従った相応の措置」を取った場合、寧辺核施設の永久廃棄などの追加措置を引き続き取る用意があるとした。

 

 南北関係筋によれば、文氏は18日の会談で、「未来の核だけではなく、過去に生産した核を廃棄しなければ米朝対話は進まない」と指摘。米国の求める非核化対象リストや行程表の提出と検証に応じるよう、正恩氏の説得を続けたようだ。正恩氏は、豊渓里(プンゲリ)核実験場の爆破などを評価しない米政府の姿勢に不満を表明したという。

 

 トランプ米大統領は19日未明、「金正恩氏が核査察や、専門家同席のもとでの核実験施設やミサイル発射場の永久廃棄に合意した。とても素晴らしい」とツイートした。ただ米側は、リストの提出などを引き続き求めており、北朝鮮の非核化が直ちに進展するかは予断を許さない。

 

 合意書は、正恩氏が近い時期にソウルを訪れるとした。文氏は会見で、「特別な事情がない限り、年内という意味が込められている」と述べた。北朝鮮の最高指導者がソウルを訪れるのは初めてとなる。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 北朝鮮に関して、韓国の三星証券が報告書を出し、「北朝鮮は将来、自動車とITの生産拠点となり、かつ北東アジア地域の物流センターとなる」と結論付けているそうです。確かに地理的条件を考えると、韓国、日本、中国、ロシアとG20を構成する世界でも経済力の高い国々に囲まれており、それだけでも可能性を秘めているということが分かります。

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 韓国とは言葉の障壁はほぼない(方言や同じ物事を違う単語で言い表すなどで多少違うとは思いますが)ので、韓国にしてみれば、識字率が高く安い労働力や安い土地を利用して生産工場を数十キロ先(日本で言えば隣の町や県くらいの感覚)で確保できるという点で魅力的だと思います。三星証券の報告書の表紙には、朝鮮半島を虎に見立てたデザインがありますが、政治体制ではなく、経済体制で「南北合同」が実現すれば、中国、日本、何する者ぞ、という期待と気概が込められているように感じられます。

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 北朝鮮経済が「離陸」するためには外国資本による投資が必要不可欠です。特に韓国や中国からの投資は不可欠です。韓国や中国の企業は生産拠点として北朝鮮を見ているでしょうし、韓国からすれば、中国と陸路でつながるということも想定しているでしょう。しかし、北朝鮮のバラ色の未来は、今はまだ「絵に描いた餅」にすぎません。

 

 下の記事では、イランの事例が取り上げられています。イランではアメリカと核開発の合意を結んだ後に、経済制裁が緩和されて外国からの投資が増大するという期待が高まっていたそうですが、実際は期待以下で失望が広がっているのだそうです。イランに対する不安から外国企業が及び腰になったということです。

 

 石油輸出国であるイランですらこうなのですから、北朝鮮はもっと厳しいと考えねばなりません。外国からの投資を得るには、それこそ、アメリカがずっと求めている「完全な、検証可能な、後戻りできない非核化」を行い、その証明を得ることが必要です。

 

北朝鮮の非核化の証明はアメリカ政府にとってはアメリカ国民に対して「仕事をしています」という証明書になりますが、北朝鮮政府にとっては「核兵器に関して世界中にご迷惑とご心配をおかけしましたが今は一切持っていません」という証明書になって、この証明書が出て初めて外国企業も投資を検討できる、検討することを公表できるということになります。簡単に言ってしまえば予防注射を受けましたという証明書のようなものです。

 

 鄧小平が主導した中国の改革開放も外資導入が積極的に進められました。外資優遇と制度の明確化と厳格化が進められた訳ですが、北朝鮮もこれが必要となります。そのためには現在の体制ではまだ不安があります。少しずつでも変わりました、西洋諸国とまではいきませんがビジネスがしやすい環境になっています、ということを実現し、アピールしなければなりません。

 しかし、これが一番難しいことになります。北朝鮮の奇妙なスターリン主義的共産主義体制で、果たしてこんなことが出来るのか疑問に思います。外国からの投資や人の流入によって、北朝鮮人民に対して良い影響、悪い影響が浸透していくでしょう。金王朝とも呼ばれる個人崇拝の体制が継続できるのでしょうか。中東や中央アジアにも世襲制個人独裁体制の国々もありますが、現在のような個人崇拝と強制収容所、国民の貧困が共存している国はほぼないと言っていいでしょう。金一族が王族であるならば、個人崇拝も良いと思いますが、曲がりなりにも共産主義を標榜するということになると、そこに建前と本音のギャップが出て来て、そこから北朝鮮の変化が始まるということも考えられます。経済面においてのみ人々の自由な活動を最大限に守るということになれば、人々の生活が豊かになっていき、金正恩体制への支持が揺るがないということも考えられますが、経済活動の自由を得た人々がそれで満足し、それ以上を求めないということも考えにくいのです。

 

 朝鮮半島が統一して「虎」となるという理想が実現すればどんなに良いだろうとは思います。しかしその虎が、北朝鮮の持つ核兵器と韓国の持つ経済力が合同してできたものとなってしまってはいただけません。あくまで核兵器がない状態で、経済発展が出来るような状態になること、北朝鮮でも経済改革が進み、スターリン主義的な個人崇拝が緩和されることでの南北合同による経済発展であればどんなに良いだろうと思います。しかし、現在の状況では「虎」ではなく、「捕らぬ狸の皮算用」の狸になってしまっていると言わざるを得ません。

 

(貼り付けはじめ)

 

北朝鮮がいかにして隠者の王国から工場地帯に変化する可能性があるか(How North Korea Could Go From Hermit Kingdom to Factory Hub

―新たに発表された報告書で、経済制裁が解除された北朝鮮がいかにして豊かになるかについて詳細な見通しが示されている

 

エリアス・グロール筆

2018年6月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2018/06/28/how-north-korea-could-go-from-hermit-kingdom-to-factory-hub/

 

今月、シンガポールにおいて、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の指導者である金正恩委員長との間で首脳会談が行われた。トランプと金正恩がこれまで数十年行き詰っていた問題を解決し、世界で最も閉じられた経済を開放することができるという希望が大きくなっている。

 

このような考えは頼りない蜃気楼のような夢ではない、と北朝鮮の専門家たちが英語で発表した新しい報告書の中で述べている。韓国の三星証券による研究は、「米朝首脳会談と国際的な対北朝鮮経済制裁の終了によって、外国からの膨大な資本が北朝鮮に流入することで北朝鮮は隠者の王国から経済大国に変化する可能性がある」と結論付けている。

 

報告書で専門家たちは「韓国が国富と工業化のノウハウを北朝鮮の人的、物的資源と混合することで、南北両国の経済は長期間にわたり飛躍的進歩(quantum leap)を遂げることが可能となる」と書いている。

 

報告書は約200ページで、海外資本がいかにして北朝鮮の疲弊したインフラを復活させるか、鉱山業を強化するか、自給自足経済である北朝鮮が製造業と流通運輸の中心となるかについての青写真を提示している。北朝鮮は世界でも有数の経済力を持つ国々に囲まれているという地理的利点を持っている。三星証券の報告書のタイトルは、アメリカの北朝鮮の核兵器開発プログラムに対する「完全な、検証可能な、後戻りできない破壊(complete, verifiable, and irreversible dismantlement)」から借用し、「完全な、目に見える、後戻りできない繁栄(complete, visible, irreversible prosperity)」となっている。

 

報告書で検討された北朝鮮の可能性の実現にはいくつもの障害を乗り越えることが必要となる。まずは北朝鮮に対する多国間での経済制裁、不正なことが行われる経済に対して企業が参入することをためらってしまうこと、経済のほぼすべての面に対する国家の過剰な介入といったものが障害として挙げられる。

 

ワシントンにあるタカ派のシンクタンク「ディフェンス・フォ・デモクラシーズ」の経済制裁専門家ジョナサン・シャンザーは次のように語っている。「2016年にイランはアメリカとの間で核開発をめぐる合意を結び、その一環で経済制裁が緩和された。しかし、それでも海外からの投資は増えず、イランは失望している。イランの例は北朝鮮にも当てはまる」。

 

イランは、サイバー攻撃、人権侵害、中東における代理戦争のような様々な不正な活動を続けていた。そのためにイラン政府と合意内容の立案者たちが考えたようなレヴェルの海外投資を受けることはできていない。北朝鮮経済はイラン経済に比べてはるかに世界経済とのつながりを欠いており、海外からの投資を期待することはイランよりも難しいものとなるであろう。

 

シャンザーは「ならず者国家とビジネスを行う上での評判、法律、経済制裁などのリスクを何とかクリアできると外国企業が考えると想像するのは空想に過ぎる」と語った。

 

米朝首脳会談によって、長年閉じられた北朝鮮経済が再び復活する用意が出来るという希望が出て来ている。トランプ大統領は、アメリカとの緊張緩和によって、北朝鮮は「豊かに」なるだろうと約束した。また、北朝鮮の海岸線の不動産開発の可能性について金委員長に熱弁した。

 

トランプ大統領は金正恩委員長との首脳会談の後の記者会見で次のように語った。「北朝鮮には素晴らしいビーチがたくさんある。北朝鮮がミサイルを打ち上げるたびに素晴らしいビーチが映像に映るのをみんな見ているだろう。私は言ったんだ、“若者よ、君の国の海岸線の眺望に目を向けたまえ。最高級のコンドミニアムを建設したら素晴らしいじゃないか”と」。

 

金委員長自身も自分の政権では現在よりも少し開かれた経済というアイディアを受容する可能性があることを示す姿勢を示している。今年4月、金委員長は朝鮮労働党中央委員会で演説し、その中で「新しい戦略ライン」について示唆した。新しい戦略ラインは、核兵器を最重要視する姿勢から経済発展を最重要視する姿勢に変化するというものだ。

 

金委員長がシンガポールから帰国した直後、朝鮮中央テレビは45分間の驚くべきドキュメンタリー番組を放送した。このドキュメンタリー番組は金正恩委員長の経済改革を宣伝するものとなった。金委員長はシンガポール中心部のきらびやかな場所を歩き、代表団を引き連れてシンガポールのにぎやかな港をまわる姿が放映された。

 

三星証券の報告書は、北朝鮮が経済開放を進めれば持つであろう有利な点を強調している。北朝鮮は経済力を持つ国々に囲まれている。天然資源、特に地下資源が豊富にあり、識字率と技能の高い労働力が存在する。

 

最初に、海外からの資本はいわゆる経済特別区に流れ込んでくるだろう。金正恩政権はこの地区で実験的に限定的な経済自由化を行っている。経済特別区には金一族の故郷である元山も含まれている。金正恩は元山に観光客向けの施設を建設するように命じた。第一段階では、海外投資は北朝鮮国内の疲弊した社会資本(インフラ)の再建に集中せざるを得ない。発電所、鉄道、港湾の修繕が行われることになる。

 

報告書は、開城工業地域といくつかの観光地はすぐに再開されることになるだろうとしている。開城工業地域は南北の国境地帯に広がった韓国との合弁の工業団地である。

 

しかし、このような第一段階では十分ではない。CIAの東アジア分析官を務めたウィリアム・ブラウンによる分析には「北朝鮮を製造業の中心地に変えるためには、根本的な経済的改革が必要となる」と書かれている。経済改革リストの上位に位置づけられる項目は、信頼される貨幣と財政金融システム、所有権、「物価、賃金、利率、交換レートなどの国家が決めた数字と市場が決めた数字の大きな乖離を埋める、それぞれの単一の数字」である。

 

ブラウンは、このような経済改革への努力を続けることで、北朝鮮は世界貿易機関(WTO)に加盟するための道筋を進むことが出来ると主張している。そうなると世界との間での交易が拡大し、三星証券の報告書にある見通しが実現する可能性もある。三星証券の報告書には、「北朝鮮は自動車とITの工場と北東アジア地域の流通センターとなる」と書かれている。

 

しかし、こうした見通しはアメリカ政府と北朝鮮政府が現在行われている交渉を進展させるということに依存している。このような希望は以前に出たこともあったが、消えていった。これまでの数十年間、北朝鮮とアメリカは、北朝鮮の武器開発プログラムに対する国際社会の懸念を解決する寸前まで進んだこともあったが、結局、北朝鮮政府が尻込みし、悪い行いを続けることになって終わってしまった。

 

マイク・ポンぺオ米国務長官は来週ピョンヤンを訪問する予定だ。アメリカの外交官たちはシンガポールで署名された共同宣言の曖昧な内容を具体化させようとしている。トランプ大統領は北朝鮮の核兵器廃棄について急速な進展を公言しているが、ポンぺオ国務長官は期待値を下げようとしている。ポンぺオはCNNに対して、交渉のスケジュールの進展について何も言及しなかった。

 

ポンぺオは日曜日にCNNに対して、「私たちは物事を進展させるためにプロセスを進めることを希望している」と述べた。“

 

トランプ政権高官は、北朝鮮に対する経済制裁は続けられるが、シンガポールで開催された米朝首脳会談から続く良い雰囲気によって外交関係が開かれることになると強調している。史上稀に見る孤立の期間を経て、金正恩はこれからロシアのウラジミール・プーティン大統領をはじめとする世界の指導者たちとの首脳会談を行うことが期待されている。

 

ロシア政府はロシア東部と北朝鮮をつなぐ天然ガスパイプライン建設計画を検討することになるだろう。このプロジェクトの実現可能性については三星証券の報告書の中で詳細にわたって検討されている。

 

ロシアからのパイプラインのような諸計画は、外交関係の樹立と経済の自由化が同時に起きるであろうという希望を促進している。しかし、実現するには長い期間が必要となる。

 

前出のシャンザーは「長期的に考えればこうした希望が実現する可能性はあるが、中期、短期では厳しいと考えている」と述べている。

 

シャンザーは続けて次のように述べている。「健全な思考力を持った財政金融の専門家がこうした希望が実現するなどと楽観視しているとは想像しがたい」。

 

(貼り付け終わり)

 

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迫りくる大暴落と戦争〝刺激〟経済
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