古村治彦です。
2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。米中関係についても書いておりますので、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
米中貿易戦争はドナルド・トランプ前政権から始まった。制裁的な関税をかける競争を行ったが、こうした状況はジョー・バイデン政権でも変更がない。バイデン政権は対中強硬姿勢という点ではトランプ前政権を踏襲しているということになる。
アメリカ連邦議会は、米中経済安全保障評価委員会という委員会を設置し、中国の経済や貿易に関する評価を依頼したそうだ。そして、委員会は勧告書を発表し、更なる制裁的な対応を行うように勧告している。アメリカ経済は中国経済に依存し、結果として中国をここまで大きくした。そして今頃になって、中国経済や貿易の慣習はおかしいとして、制裁を加えようとしている。
一方、中国はアメリカ依存からの脱却を目指している。中国は基本的に、アメリカにとっての「工場」として機能してきたが、重要な部品は中国国内で開発できず、「組み立て工場」の地位に甘んじてきた。それでは先はないということを分かっていた。そこで、重要な部品の研究開発を2010年代から始め、その成果が出つつある。そのことを最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で書いた。是非お読みいただきたい。
アメリカは逆に国内での工業生産を復活させようとしているが、それはうまくいっていない。アウトソーシングしつくしたアメリカ国内に工業生産を復活させる力は残っていない。ウクライナ戦争において、アメリカは大量の武器や装備をウクライナに支援してきたが、そのために、アメリカ軍自体が武器や装備不足に落ちっているが、その回復の見込みは立っていない。厳しい状況だ。
アメリカは中国に依存すべきではなかった、「アメリカと経済的に接近すれば中国は変化する」という理由付けは間違っていたということになるが、それは今更の話である。それではアメリカはどうすべきなのかということで、アメリカは解決策を見いだせないでいる。中国が一枚上手だったのである。
(貼り付けはじめ)
米中貿易戦争はヒートアップする可能性が高い(U.S.-China Trade War Could
Heat Up)
-米連邦議会委員会はバイデンに対して中国との貿易関係を再考するように望んでいる。
ジャック・ディッチ筆
2022年11月15日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2022/11/15/u-s-china-trade-war-wto-sanctions-xi-jinping-biden-trump/?tpcc=recirc_latest062921
米連邦議会が委任した委員会は、バイデン政権に対し、中国が略奪的な貿易慣行に従事しているかどうかを評価するよう求めており、この評価が、最終的に、アメリカが中国との通常貿易関係を永久に停止させることにつながる可能性がある。
もしこの勧告の内容が採用されれば、米中経済安全保障評価委員会(U.S.-China
Economic and Security Review Commission)が火曜日に発表した連邦議会への年次報告書は、20年にわたる貿易関係をひっくり返し、2つの超大国の間の既に乱れた力学をさらに揺るがすことになるだろう。中国が世界貿易機関(World Trade Organization、WTO)への加盟を推進する中、2000年に連邦議会が承認したいわゆる恒久的な通常貿易関係を撤回することで、アメリカは中国の輸入品に対する関税を更に引き上げるための舞台を整えることができる。トランプ政権は2019年、様々な中国製品に25%の関税をかけた。
超党派の委員会は、基本的にトランプ時代の中国との経済対決をさらに推奨しており、ワシントンの多くの人々は、ここ数十年のアメリカ国内の製造業の雇用喪失と、アメリカの経済競争力の浸食の原因を中国に求めているのだ。
米中経済安全保障評価委員会委員長で、トランプ政権時代の国務省元高官であるアレックス・ウォンは次のように語った。「これはバイデン政権にも連邦議会にも権限を与え、連邦議会にも、うまくいかない、アメリカの利益に役立たない貿易関係を再調整するためのものだ。この委員会は、米中関係に影響を与えるだろうか?
もちろんそうなるだろう。しかし、そこが重要だ。私たちは、対中貿易関係を評価し、適切に再均衡するために、連邦議会とバイデン政権がこの仕組みを検討することを推奨している」。
アメリカはWTOの最恵国待遇貿易規則(WTO’s
most-favored-nation trade rules)を広く適用しており、この規則は加盟諸国に対し、他のすべての加盟国に同じ条件を適用するよう求めている。ヨーロッパ連合(EU)やアメリカ・メキシコ・カナダ協定など、自由貿易協定には例外もあるが、アメリカはキューバと北朝鮮を除くほとんどの国に自由な地位を与えている。WTOの規則によれば、アメリカは国家安全保障の例外として、中国の最恵国待遇を取り消すことができる。これはまた、中国が20年来の貿易関係において、その取り決めを守っていないことを認めることにもなる。具体的には、委員会は中国がWTOの誓約に違反し、産業補助金(industrial subsidies)を制定し、知的財産を盗み、保護主義的な政策を実施し、アメリカ企業に損害を与えていることを指摘した。
特恵貿易ステータスの取り消しが決定されれば、連邦議会は貿易関係の再評価を迫られることになる。これまでのところ、バイデン政権はドナルド・トランプ前大統領が最初に導入し、中国政府からの数十億ドルの報復関税につながった一連の関税をほぼ維持している。中国の略奪的な貿易慣行を見直す動きは、この問題への対応が遅れているアメリカの官僚機構を混乱させる可能性もある。『フォーリン・ポリシー』誌は9月、キャサリン・タイ米通商代表部が中国からの輸入品に関する4年間にわたる見直しを来年まとめる予定だと報じた。
しかし、たとえバイデン政権と連邦議会が、ホワイトハウス部局の設置からアメリカのサプライチェーンの強化、対中エネルギー封鎖の実現可能性まで、すべてを網羅する報告書の、39点の広範な勧告の実施を決定しなかったとしても、この報告書は、ワシントンが政治的通路の両側で中国に対してよりタカ派的なスタンスを採用することに拍車をかけている。
2022年10月、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、バイデン政権の国家安全保障戦略を発表したジョージタウン大学でのスピーチで、冷戦後の時代は「最終的に終わった(definitively over)」と宣言した。中国のWTO加盟後、議会法に基づいて設置された委員会は、北京の貿易慣行に対して、より厳しい姿勢を取り、中国が組織的に自国通貨を過小評価し、不公正な貿易慣行に関与することでアメリカの貿易赤字を膨らませてきたという主張を20年近く続けてきた。
一方、中国もアメリカへの経済依存(economic dependence)からの脱却に向けた動きを見せている。
2022年9月の第20回中国共産党大会で歴史的な3期目の任期を与えられた中国の指導者である習近平は、アメリカおよび西側諸国からの輸入、特に重要技術に対する中国の依存度を減らすことを目的とした「二重循環(dual circulation)」戦略を推し進めてきた。バイデン政権は、ウクライナへの本格的な侵攻に対抗して、ロシア国内のコンピューターチップを減少させようとしており、半導体生産をアメリカに戻すことを目指すCHIPS法など、最近のアメリカの法律は中国のハイテク分野を脅かしている。報告書はまた、台湾に対する中国の軍事行動に対抗するための制裁やその他の経済措置を検討する常設のアメリカ政府委員会の設置を議会に求めている。
WTOが中国の貿易慣行を取り締まることができない中で、トランプ政権がWTOを意地でも中途半端にしていることもあり、米中経済安全保障評価委員会はワシントンの政策立案者たちに立ち上がるよう働きかけている。
ウォンは、「1999年の投票にさかのぼれば、それは本質的に、このステータスを付与することが私たちの貿易関係を繁栄させるだけでなく、中国との関係全般の改善につながり、中国を国際システムに引き入れ、より大きな安定を生み出すという、アメリカ側の情報に基づいた賭けだった。そして20年後、私たちの賭けがうまくいったのか、それともそれによって私たちが傷ついたのかが強く問われている」と述べている。
※ジャック・ディッチ:『』誌米国防総省・安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch
(貼り付け終わり)
(終わり)
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