古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: アメリカ経済

 古村治彦です。

 アメリカ国内のインフレーションの進行が深刻ということはこれまで何度もご紹介した。「耳にたこができる」くらいに聞いたよ、と言われる方もいるだろう。ブログの場合は私の肉声ではなく、読んでいただくものであるので、その表現が正しいと言いにくいのであるが、それだけ繰り返しご紹介してきた。アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve System)は2022年3月に利上げを行うことを決定しているということだ。

 利上げを行うことで、現在市場に出回っている貨幣を回収することになる。簡単に言えば、預貯金の金利が高くなって人々が預貯金にお金を回すということになる。しかし、インフレーション退治のため利上げが貧しい人々や労働者階級を苦しめることになるというのが下に紹介する論稿の内容だ。

 賃金の上昇率が物価の上昇率を上回れば、人々の生活は楽になる(もしくは楽に感じられる)。しかし、下の記事にあるように、イギリスのイングランド銀行総裁は、現在アメリカほどではないが高いインフレーション状態になっているイギリスの労働者たちに対して、「賃上げを要求しないように」と発言した。論稿の著者ダウニーは「労働者に賃上げを要求しないようにと求めるのは当然のこととして受け取られているのに、企業に製品の価格を上げないように求めるのはおかしいと受け取られていることは不自然だ、ディレンマがある」と主張している。そして、インフレーション退治のための利上げは人々の生活を苦しめることにもなる。一方で金融資産を多く持つ富裕層は利上げによって、利息収入が増える。結局のところ、中央銀行がやろうとしていることは金持ちを助け、貧乏人を苦しめることで、「階級間戦争」「階級間闘争」の状態になると結論付けている。この論稿の著者ダウニーは金融政策だけでは駄目だ、という点で、論稿に書いていないが、財政政策も合わせて実行すべきという考えであろうことは推測できる。その点ではMMTに近い考えを持っているかもしれない。

 物価を下げる、安定させることは人々の生活を安定させることであり、行き過ぎたインフレーション退治を行うことは全ての人々のためになる。それは労働者の為でもあり、インフレーション退治が階級間闘争を引き起こすということではない。しかし、問題はやり方であって、利上げだけではローンを抱える人々の負担が大きくなるだけのことだ。重要なのは賃上げも並行して行うことで、そのために各企業には利益の一部を犠牲にしてもらうべきだという考えが出てくる。

しかし、現在の資本主義体制では、各企業の利益は株主のために出されるものであり、株主の利益最大化こそが究極の目的である。そのためにプロの経営者が雇われている。利益の最大化のためには最大の固定費である人件費の削減が簡単でかつ効果的な方法である。日本でも行われているように、正社員を減らし、雇用する人数を減らす。これが手っ取り早い方法だ。現在必要だと思われる方法、賃上げを行うことは難しい。日本でもあれだけの権勢を誇った安倍晋三前首相がいくら頼んでも、経済界の反応は鈍かった。過去最高の内部留保がありながら、賃上げにつながらず、働く人々は給料が上がらない中、企業の内部留保をため込むだけのために、過労死寸前になって働く状況が続いてきた。

 今回の論稿の主張を政治の面から考えると、アメリカのバイデン政権と民主党にとっては、利上げは痛しかゆしというところだ。物価を下げたい、安定させたい、そのためには利上げだということはその通りだが、そのために自分たちの支持基盤である労働者、貧困層の生活が苦しくなっては元も子もない。何といっても今年の秋には中間選挙がある。少なくとも今年前半までには現状を何とかしたいところだ。利上げの効果が出ることを神に祈るしかない。

(貼り付けはじめ)

インフレーションに対する戦いは階級間戦争になりつつある(The Fight Against Inflation Is Becoming a Class War

-各国の中央銀行は、コイン投げゲームの表は金持ちが勝ち、裏は貧乏人が負けとなるように決めている

リー・ダウニー筆

2022年2月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/02/16/the-fight-against-inflation-is-becoming-a-class-war/?tpcc=recirc_latest062921

各国の中央銀行がインフレーションに反応し始めた。2022年2月にイングランド銀行は2ヶ月ぶりに基準金利を引き上げ、アメリカ連邦準備制度理事会も2022年3月の会合で同じことをすると予想されている。(興味深いことにロシア銀行も同様である。戦争の脅威でさえ、現代の中央銀行の支配的なコンセンサスを破ることはできない)。このような金融政策の変化と並行して、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、ベイリー自身が大変高額な年俸をもらっているにもかかわらず、賃上げを求めないよう労働者に求めている。

ベイリー自身の年収と彼の労働者たちへの要求との差は、階級間闘争(class conflict)の匂いもあって、多くの人が強調してきた不協和音(dissonance)でもある。労働者を苦しめながら、自分自身は金塊でいっぱいの城に座っている。このような階級間闘争の特殊な場での問題は、労働者階級が勝つ方法が存在しないことだ。つまり、資産を持っている人々が勝ち、労働者階級が負けるのだ。

この場合のコイン投げの表は、中央銀行が金利を引き上げてインフレーションを抑制し、低く安定した物価を実現することだ。この政策は、強力な民間金融セクターを支援するためのもので、多くの人が、2008年のような金融崩壊を誰も望んでいないため、誰にとっても良いことだと信じている。しかし、金利の上昇は、労働者階級が住宅ローンやその他のローンを組むことを困難にし、最も重要なことは、金利の上昇は民間投資と雇用の減少を招き、失業率を増加させることだ。一般に、金利の引き上げは生活環境を悪化させる可能性が高い。

コイン投げの裏となるのは、中央銀行が金利を上げない場合、インフレーションが続くということだ。これは、食料、エネルギー、住宅の価格上昇を意味し、生活水準の危機を招き、最も貧しい人々が打撃を受けることになる。しかし、物価が上昇しても生活水準を維持するのは、それに見合った賃金の上昇を確保できない場合にのみ、深刻な苦痛となることを忘れてはならない。

このことは、私たちにディレンマを残してしまう。仮に、労働者階級にとってベストなことは何でもしたいということに全員が同意したとしても、どのような行動方針を支持すべきなのだろうか。インフレーションを放置しておくわけにはいかないが、「インフレーションを何とかする」ということは、金利を上げることと同義であり、それは我々の中で最も貧しい人々に害を与えることになる。

それでは、中央銀行はどうすればいいのだろうか。従来の金利メカニズムを捨て、物価統制を導入することを提案する人もいる。これは、経済学界で攻撃的で卑屈な議論を引き起こした。しかし、なぜだろう?ベイリーが労働者に賃上げを要求しないよう求めることができるのなら、政府が企業に値上げを要求しないよう求めるのは、どうしてそんなにおかしなことなのだろうか。特に、最近の記録的な利益を考慮すると、そうなるのは当然だろう。経済学者のドミニク・ロイスダーが言うように、「価格統制は良いが、それは労働者のためになる時だけだ」というメッセージは明らかである。

現在、中央銀行の最大の関心事は、賃金価格スパイラルを回避することである。この考えは、労働者が十分な力を持っていると仮定すると、物価上昇に直面したとき、彼らは生活水準を維持するために賃金の上昇を求めるだろう、というものだ。賃金が上がれば、また物価が上がり、さらに賃金が上がるというスパイラルである。つまり、危険なインフレーションの暴走は、賃上げを要求する労働者の責任なのだ。それゆえ、ベイリーのコメントは受け入れられることになるのだ。

しかし、基本に立ち返れば、これがいかに奇妙な話であるかはすぐに理解できる。インフレーションとは一般的に物価が上昇することだと理解されている。これはただ偶然に起きるのではない。物価が上がるのは、企業が物価を上げようと決めた時である。つまり、インフレーションと企業の意思決定との関係は、インフレーションと労働者が生活費の上昇に見合う賃上げを求めることとの関係より、はるかに明確で緊密なものだ。それでは、繰り返しになるが、なぜインフレーションに対する既定の反応は、企業に記録的な利益の一部を犠牲にするよう求めるのではなく、賃金より速く上昇する物価の痛みを労働者に求めるのだろうか?

賃金価格スパイラルの強さと、価格統制の提案に対する激しい拒絶反応から分かることは、極めて簡潔なものだ。現在の限定的な金融政策の枠組みは、社会の中のあるグループ、つまり、民間の金融業界に利益をもたらしている。

現代の金融政策の主流は、安定した物価(2%のインフレーション率)を確保し、2008年以降は金融規制を通じて、民間金融システムの安定を維持することとなっている。歴史的に見れば、これは当然のことだ。それはそのように設計されているからだ。アメリカでは、1907年の金融恐慌の後、民間銀行システムの安定と成功を確保するためにFRBが設立された。イギリスでは、イングランド銀行はその歴史のほとんどを通じて、民間銀行業と戦争資金調達のために作られた、利益を追求する民間機関であった。

今日、FRBとイングランド銀行はそれぞれの国の金融政策当局であり、マネーサプライを管理するための公共政策を立案し、実施している。民主政治の尖兵として、公共政策は人民による、人民のための、人民のものであるべきだ。しかし、FRB とイングランド銀行は、公共政策の権限を得るに当たって、民間金融システムとの基盤的なつながりや、民間金融システムに奉仕するという基本的な目的を捨て去ることはなかった。

これが、現在の厄介な事態を招いている。公共政策の巨大な力を使って設計された独立した中央銀行が社会の一部門である民間金融の利益のために機能している。だからベイリーは労働者に賃上げを要求するように求めているのではなく、企業に値上げを要求しないよう求めているのだ。それはまた、現代の金融政策システムに関して言えば、「頭でっかちの金持ちが勝ち、尻尾で貧乏人が負ける」状況である理由でもある。

もし、金融政策が社会の全ての部分に等しく奉仕するとしたら、どのような政策になるのだろうか。簡単に言えば、そのような金融政策は、他の種類の公共政策と同じように、より政治的なものになるだろう。このような金融政策を実施することは、現在の高いインフレーションか高金利かという二者択一の政策から、資産保有者の利益を優先させないような政策を取り入れることができるようになることを意味する。

従来の短期金利調整以外の政策オプションがあることを想像するのは難しいという人もいる。このこと自体、金融政策の枠組みが支配的であることの証拠となる。しかし、もちろん代替案は存在する。例えば、物価統制(price controls)、信用誘導(credit guidance)、信用供与(credit provision)、様々な種類の公庫(public banking)などが挙げられる。

金融政策をより民主的に決定するためには、必ずしもこれらの具体的な政策案のいずれかを採用する必要はない。しかし、政策決定への民主的なアプローチは、結果がどうであれ、結果として生じる政策が社会のある(少数)グループの利益に資するような不正なプロセスでないことを要求するものだ。公正なコイン投げ(表:私の勝ち、裏:あなたの勝ち)が、私たち双方に自分の利益を促進する機会を与えるように、金融政策を実施するための公正で民主的 なアプローチを確立するには、現代の表:金持ちの勝ち(高い金利)、裏:貧しい者の負け (高いインフレーション)を超える選択肢を検討する必要がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 アメリカ国内のインフレーションは深刻で、年率7.5%の上昇を記録した。1982年以来の急速なインフレーションとなっている。物価上昇は国民生活全体に影響を与えるが、低所得者層にとっては死活問題になる。食料、エネルギー、住宅(家賃)の価格高騰がインフレーションの原因となっている。これらは人々の生活にダイレクトに関わっている。家がなくなればホームレスになるしかないし、電気料金やガソリン価格が上がれば、生活の質は低下するし、寒冷地であれば生死にかかわる。食料品に関しては入手できなければ命を保つことができない。

 アメリカ国内のインフレーション退治、物価の安定はアメリカの中央銀行である連邦準備制度の使命である。連邦準備制度理事会(FRB)が設定している物価上昇率は2%であるが、現在はそれを大きく上回っている。これを何とかしなければならない。政権が民主党だろうが、共和党であろうがそんなことは関係ない。連邦準備制度の設置法の目的にそう書いてあるのだ。そのために、連邦準備制度は2022年3月に利上げを行うことをほぼ正式に決定した。ゼロ金利から脱却して、市場に出回っているお金を回収するということになる。

 しかし、基準金利が上がるということは、これからお金を借りる人には負担増ということになるし、現在変動金利で住宅ローンを借りている人たちにとってもまた負担増ということになる。この負担増にどれだけの人たちが耐えられるか、雇用をどれだけ増やして、人々を職場に復帰させ、住宅ローンを払えるようにするか、ということがジョー・バイデン政権にとっての課題ということになる。単純に言えば、給料の伸びが物価の上昇よりも大きければ、人々の生活は楽になる。この単純なことを実行することはとても難しい。

 現在のインフレーションの原因はコストプッシュということになる。輸入品の価格が高騰していることと、一度錆びついたサプライチェインや物流の再開のためのコストがのしかかっているということになる。輸入品の価格を下げるためには、ドル高傾向にしなければならない。そうなると日本にとっては「強いドル、弱い円」、円安傾向となる。そうなると、日本にとっての輸入品価格が上昇することになる。現在の日本は輸入大国であり、実際に様々なものの価格が上昇している。これは多くの人々が実感していることだ。「アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひく」という言葉があったが、今の状況はこの言葉のようになっている。

 アメリカの利上げでインフレーションがどれだけ収束するか、これから注目される。その効果が薄いとなれば、増税ということも考えられるが、選挙前に増税を打ち出すということは、バイデン政権、民主党にとって厳しいだろう。バイデン政権、民主党にとっては今年前半が正念場となる。

(貼り付けはじめ)

FRB幹部たちは1月の会合でより急速な利上げを検討した(Fed officials floated faster rate hikes in January meeting

シルヴァン・レイン筆

2022年2月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/594576-fed-officials-floated-faster-rate-hikes-in-january-meeting

今週水曜日に発表された議事録によると、米連邦準備制度理事会(FRB)の理事たちは先月、インフレーション率が設定した目標を超えて上昇し続ける場合、現在の予想よりも早く利上げと保有債券の削減が必要になるだろうと述べた、ということだ。

2022年1月25日から26日に開催されたFOMCの議事録によると、FRBの金融政策を決定する連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee FOMC)の委員たちは、アメリカ経済の強さが量的緩和縮小のプロセスを加速させる可能性があるかどうかについて議論した。

米連邦準部制度理事会関係者たちは、オミクロン変種によるア感染拡大が収まり、サプライチェインへの圧力が緩和され、新型コロナウイルス感染拡大中に実施された財政刺激策が経済的に行き渡った後、年内(2022年)にインフレーションが緩和すると概ね予想していた。

それでも、FOMCメンバーの中には、企業が供給不足と労働力不足に苦しみ続けているため、インフレーション率が予想を上回って上昇し続ける可能性を示唆した。

議事録には、「ほとんどの参加者は、インフレーションが予想通り下がらなければ、委員会(FOMC)が現在予想しているよりも速いペースで政策緩和を解除することが適切であると指摘した」と書かれている。

FOMCは1月の会合後、基準金利の幅を0~0.25%に据え置いたが、大きな経済ショックがない限り3月の会合で利上げを行うと明言した。FRBはまた、新型コロナウイルス感染拡大に見舞われた経済を支援するために始まった、毎月の国債と住宅ローンの購入プログラムを2年後の来月(2022年3月)に終了する予定であり、これらの債券の一部がすぐに借り換えされることなく満期になる可能性がある。

FRBは通常0.25ポイント刻みで利上げを行うが、労働省が消費者物価を前月比0.6%上昇したと発表したことを受けて、投資家の多くは3月に0.5ポイントの利上げを実施すると予想している。

消費者物価指数で測定した1月の年間インフレ率は7.5%に達し1982年2月以来の高い上昇率となった。FRBの望ましいインフレ指標である個人消費支出(personal consumption expenditures PCE)価格指数は2021年に5.8%上昇し、FRBの平均年間目標である2%の2倍以上となった。

FRB幹部たちは、インフレーション率が2021年中に上昇し続ける中、利上げと債券購入の終了を見送り、景気回復への支援を後退させるには時期尚早であると主張した。失業率は現在4%、賃金は急上昇し、雇用主は数百万の求人を埋めるのに苦労しており、ほとんどのFOMCメンバーは、経済は最大限の新型コロナウイルス感染拡大後のポテンシャルに近いと見ている。

「参加者は、労働市場が新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気後退から回復する上で著しい進歩を遂げ、ほとんどの指標において、現在非常に堅調であることに留意した」と議事録に記されている。

議事録には、「労働市場が全般的に好調で改善していることを背景に、多くの参加者はオミクロン変種の影響は労働市場の上昇率を一時的に抑制するだけだろうとの見方を示した」と書かれている。

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年間インフレーション率が7.5%に達し、1982年2月以来の高水準に達する(Annual inflation reaches 7.5 percent, highest rate since February 1982

シルヴァン・レイン筆

2022年2月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/593652-annual-inflation-reaches-75-percent-highest-rate-since-february-1982

米国労働省が木曜日に発表した最新データによると、2022年1月末までにアメリカ国内の消費者物価は年間7.5%上昇し、1982年2月以来最も速い上昇率となった。

インフレーション率を示す労働省が発表する消費者物価指数(consumer price indexCPI)は6ヵ月連続で上昇し、経済学者やエコノミストたちのコンセンサスが予測した7.2%の上昇を上回った。

消費者物価も3ヵ月連続の下落から、1月は2021年1月と同じ0.6%の上昇となった。

食品とエネルギー価格を除いた場合、消費者物価指数は年間6%上昇し、1982年8月以来最も速いペースで上昇した。

アメリカは2021年半ばから高いインフレーション率に直面し、新型コロナウイルス感染拡大不況からの強力な経済回復も物価上昇を生み出した。アメリカ経済は昨年600万人以上の雇用を増やし、5.7%の成長を遂げ、個人消費は新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻ったが、駆け込み需要は深刻な供給不足と人手不足、輸送のボトルネック、その他の新型コロナウイルス感染拡大関連の制約とぶつかることになった。

労働統計局は木曜日、2022年1月のインフレーション率上昇をもたらしたのは、食料、電気、住居の値上げが理由だと発表した。食品価格は0.9%上昇し、12月の0.5%上昇のほぼ2倍になった。エネルギー価格も、電気料金の上昇がガソリンと天然ガス価格の下落を相殺し、0.9%の上昇となった。

ホワイトハウスや連邦準備制度理事会の幹部たちを含む多くの経済学者たちは、新型コロナウイルス感染拡大が収束し、多くのアメリカ人が仕事に復帰するにつれて、インフレーションは今年夏には低下するだろうと予想していた。しかし、高いインフレーションの持続は、バイデン政権と中央銀行の双方に大きな政治的・政策的課題を突きつけている。

最近の各種世論調査の結果は示しているのは、バイデン大統領と民主党所属の連邦議員たちが、経済への対応に不満を募らせている有権者たちに景気回復の力強さを売り込むのに苦労しているということだ。食料品、燃料、その他の消費財の価格上昇は、多くの労働者の急速な賃金上昇を、政治的利益とともに帳消しにしている。

労働省によると、2021年1月と比較して、食料価格は7%、ガソリン価格は40%、エネルギー価格全般は27%上昇している。

2021年のインフレーションは主に商品、特にサプライチェインの問題に悩まされた商品に限られていたが、2022年1月の報告書では、サーヴィス価格も上昇し続けており、多くの経済学者たちにとって憂慮すべき兆候となっている。

2022年1月の非エネルギー関連サーヴィスの価格は年率4.1%上昇し、住居の家賃は4.4%、医療価格は2.7%、輸送サーヴィスは5.6%、娯楽サーヴィスは5%上昇した。

会計事務所グラントソントンのチーフエコノミストであるダイアン・スウォンクは、インフレーション率の急上昇は「広範囲に及び、サーヴィス部門に定着する兆しを見せている」と述べた。彼女は、FRBは 「かなり遅れていて、今、沸騰した鍋に氷を入れるニーズに対応できていない」と警告を発した。

FRBは2022年1月に、インフレーション率が年平均目標である2%を大幅に上回る中、今年中に数回の利上げを行うための土台ができているとしている。2020年に世界経済を襲った新型コロナウイルス感染拡大の影響でゼロに近い水準に設定されていた金利を2022年3月に引き上げることをほぼ正式に決定した。

FRBは通常、一度に0.25%ポイント刻みの利上げ・利下げを行うが、一部のエコノミストは、来月はより急な0.5%ポイントの利上げを検討するだろうと予想している。

FRBはインフレーションを抑制することを最優先課題としている。経済分析のオックスフォード・エコノミクス社のアメリカ金融担当チーフエコノミストであるキャシー・ボスティャンシックは木曜日に発表した分析において、「こうした上昇し続ける物価データは、3月の政策会議で50ベーシスポイントの利上げを行い、引き締めサイクルを開始し、その後の会議で連続して利上げを行う可能性を高める」と書いている。

1ベーシスポイントは1%ポイントの100分の1ポイントである。

キャシー・ボスティャンシックは続けて、「FRBが引き締めサイクルのキックオフに50ベーシスポイントは強すぎると判断した場合、次の会合で50が視野に入る可能性がある」と述べた。

共和党所属の連邦議員とエコノミストの多くは昨年(2021年)、FRBに利上げを開始するよう求めていたが、FRBの幹部たちは労働力の復帰を制限するとの懸念から抵抗していた。しかしFRBは、インフレーションが引き続き急騰し、将来の雇用増を脅かす可能性があるとして、2021年12月に方針を急転回させた。

2022年1月のインフレーション率によってFRBの利上げ路線は堅持されることになるだろう。借入コストの上昇は、輸送のボトルネック、他国での新型コロナウイルス封じ込め策、労働力不足による物価上昇にはほとんど影響を与えないかもしれない。

バイデン大統領もインフレーション抑制のプレッシャーに直面することは間違いないが、バイデンは、根強い新型コロナウイルス感染拡大と不均等な景気回復が物価上昇を助長させていることをコントロールすることにも限界がある。

バラク・オバマ前大統領の下でホワイトハウス経済諮問委員会委員長(the chairman of the White House Council of Economic Advisers)を務めたジェイソン・ファーマンは次のようにツィートした。「バイデン大統領はインフレーションを下げるためにほとんど何もできないのが実情だ。大統領は供給に関してできることは何でもできるし、そうすべきだ(そして既にそのほとんどを行っている)が、大したことはできないだろう」。

ファーマンは続けて、「アメリカ連邦議会は収縮財政政策でインフレーションを下げることは可能だが、私はFRBに任せる」と述べた。バイデンが提案した1兆9000億ドルの社会福祉・気候法案、通称「ビルドバックベター法」は物価上昇を冷ますのに役立つと付け加えた。

バイデン大統領、民主党所属の連邦議員、左派の経済学者たちは、ビルドバックベター法は長期的に医療、処方薬、育児の価格を下げると主張している。法案の支持者たちは、その費用をまかなうための増税のおかげで、更なるインフレーションを引き起こすことなく、この法案を実現できると述べている。

しかし、この主張はジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)には通じず、マンチン議員は2021年12月にビルドバックベター計画への反対を表明し、木曜日に追加支出に対して警告を発した。

マンチンは木曜日に発表した声明の中で、「連邦準備制度がこの問題に正面から取り組むべき時を超えている。連邦議会とバイデン政権は、既に火だるまになっている経済に更に燃料を投入する前に、慎重に行動しなければならない」と述べた。
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イギリスのインフレーション率がほぼ30年ぶりの高水準に急上昇(Inflation in UK surges to fastest rate in almost 30 years

マイケル・シュネル筆

2022年2月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/594556-inflation-in-uk-surges-to-fastest-rate-in-nearly-30-years

イギリスのインフレーション率は先月(2022年1月)までの1年間で5.5%上昇し、過去約30年間で最も速い上昇率を記録した。

イギリス国家統計局が水曜日に最新のデータによると、インフレーション率を示す消費者物価指数(consumer price indexCPI)の上昇は、1992年3月以来最速の記録であったということだ。イギリスのインフレーション率は2022年1月に年率7.1%上昇した。

年間消費者物価指数は2021年12月から今年(2022年)1月にかけて0.1%上昇し、5.4%から5.5%になった。

イギリスの電気製造料金は先月までの1年間で28.3%上昇した。各社の電気料金は19.2%上昇した。国家統計局は、この値上げについて、「北アイルランドのエネルギー価格が変化したため」と発表している。

更に言えば、先月までの1年間で、持ち家の住宅コストは2.4%増加し、賃貸料は2.3%上昇した。

アメリカでは現在、更に高いレヴェルでのインフレーションが進行しており、2022年11月の中間選挙を控えた民主党は継続的な危機的状況に直面している。先月(2022年1月)までの1年間で、米国の消費者物価は年率7.5%上昇し、1982年以来最も速いペースで上昇している。食品、電気、住居(家賃)の価格上昇がインフレーションの最大の原動力となった。

アメリカでは、新型コロナウイルス感染拡大からの回復を図る過程で、昨年(2021年)半ばからインフレーション率が上昇し続けている。しかし、高いレヴェルの需要と低い供給力、労働力不足、輸送のボトルネックなどの新型コロナウイルス感染拡大関連の問題がぶつかり、全米レヴェルで値上げが行われた。

近い将来におけるイギリスにとっての環境はより悪くなるだろう。AP通信によると、イギリスのエネルギー規制当局が、2022年4月にガスと電気の料金が54%上昇すると発表したので、1500万世帯に影響が及ぶとみられる。AP通信によると、この値上げは、所得税が1.5%増加する予定の同じ月(2022年4月)に実施される。
(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 アメリカ国民の半数が国内経済の先行きを不安視しているという世論調査の結果が出た。『ウォールストリート・ジャーナル』紙の世論調査の結果では、約半数が来年の国内経済はより悪くなるだろうと答えたということだ。その最大の原因は、インフレの亢進、つまり物価が急激に上がっていることである。以下にアメリカのインフレ率のグラフを2つ掲載する。2016年12月から現在までの5年間のグラフと2020年12月から現在までの1年間のグラフだ。

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アメリカのインフレ率5年間のグラフ

usinflationrates2021501 

アメリカのインフレ率1年間のグラフ

 2016年から新型コロナウイルス感染拡大が始まる2020年初めまでは、インフレ率は2%を少し超える程度だった。その後、インフレ率は下降したが、2021年3月頃から急激に上昇している。新型コロナウイルス感染拡大対策としてのワクチン接種や経済活動の再開によって、アメリカ経済が活発に動き出した。しかし、急激なインフレ率の上昇に賃金上昇は追いついていない。そのために、人々は経済の先行きに不安を持っている。

 アメリカ人にとって特に重要なのはガソリン価格だ。アメリカは車社会であり、ガソリン価格の変動には特にナーバスになる。ガソリン価格が上昇するということは、飛行機など他の移動手段の価格の上昇や、暖房用の灯油などの価格の上昇も反映しているので、この点でもガソリン価格の上昇は生活を圧迫する要因が増えるということで、非常に嫌う。

特に、11月末の感謝祭から12月末のクリスマスまでは、「ホリデーシーズン」と呼ばれる。この期間は移動やプレゼント交換、豪華な食事などで支出が増えるので、この時期にガソリン価格が上がることをアメリカ国民は嫌う。そして、その怨嗟の声は政権に向かう。バイデン政権の支持率が低いことは既にお知らせしているが、これが大きな原因である。以下にアメリカのガソリン価格の変動のグラフを掲載する。

usgasprice2017to2021501 

アメリカのガソリン価格5年間のグラフ

usgasprice2021501 

アメリカのガソリン価格1年間のグラフ

ここ5年では3ドルを上回ることはなかった。新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が停滞したために、ガソリン価格は一気に下落したが、今年の3月頃から上昇を続け、新型コロナウイルス感染拡大以前よりも高くなっている。経済活動が再開してまだ間もなく、賃金上昇が追いつかない中で、この負担増は庶民を直撃する。

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円ドル5年間のグラフ

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円ドル1年間のグラフ

 一方、日本について簡単に見ていきたい。現在、日本は円安傾向に入り、輸入品の価格が上昇することによる、製品の値上げのニュースが続いている。

japaninflationrates2017to2021501 

日本のインフレ率5年間のグラフ

 japaninflationrates2021501

日本のインフレ率1年間のグラフ

日本のインフレ率はもともと低い水準で推移していたものが、新型コロナウイルス感染拡大でマイナスにまで落ち込んだ。現在でも1%台にも届かない水準であるが、円安による「コストプッシュ」型のインフレで物価上昇ということはあるだろうが、それでも日銀が定めた2%には遠く及ばないものとなるだろう。

 日本のデフレ傾向からの脱却は来年も厳しいだろう。問題は、給料が上がらない中で、デフレならばまだ何とかなるが(それも大きな問題だが)、給料が上がらない中で、物価だけは上がっていく、スタグフレーションになることだ。先進諸国はどこもこの点を懸念していると思う。政府がいくらお金を流しても、それが人々に行き渡らねばそのような状態になる。従って、今は配分と再配分を重視する政策を行う必要がある。特に日本では、新型コロナウイルス感染拡大を抑え込みつつあるので、経済回復、特にデフレ脱却をこの機会を捉えて行う(「禍を転じて福と為す」)ということを行うべきだ。

(貼り付けはじめ)

国民のほぼ半分がよく年アメリカ経済がより悪くなるだろうと考えている(Almost half in new poll expect economy to get worse in next year

レクシ・ロナス筆

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/584781-almost-half-in-new-poll-expect-economy-to-get-worse-in-next-year

『ウォールストリート・ジャーナル』紙の最新世論調査の結果によると、有権者の46%が来年のアメリカ経済はより悪くなるだろうと答えた。より良くなると答えたのは30%にとどまった。

世論調査に答えた有権者たちが最大の経済問題だと考えているのはインフレーションだ。29ポイントの差をつけてインフレが悪化するという答えの方が多かった、61%が経済は悪い方向に向かって進んでいると考えていると答えた。

民主党は、新型コロナウイルス感染拡大から経済の回復を売り込もうとしている中、インフレーションにまず対処することに苦闘している。

クリス・ブストス連邦下院議員(イリノイ州選出)は本誌の取材に対して、「多くの経済指標を見れば、良い状態になっていることを示しています」と述べた。

彼女は続けて次のように述べた。「しかし、実際の生活レヴェルのお金問題について話しますとね、違ってきます。車のガソリンを満タンにする時、ガソリン価格が上がっていて、支払いが大きくなっています。食料品店に行ってベーコンを1パウンド買う時、値段が上がっています。人々はこのような価格上昇の現状に気付いています」。

バイデン大統領は、インフレーションや世界規模の供給チェインの問題に悩まされている。結果として、世論調査における支持率の数字を下げている。

今回の世論調査では、57%がバイデンの大統領としての仕事ぶりを評価しないと答え、41%が評価すると答えた。

経済に関する不安感が高まる中、2022年の中間選挙で民主党よりも共和党を支持すると答えた有権者の数の方が多かった。

世論調査に答えた有権者のうち、今日選挙が実施されると仮定しての質問に対して、44%が共和党に投票すると答え、一方、民主党に投票すると答えたのは41%だった。

今回の世論調査は2021年11月16日から22日にかけて、1500名の成人を対象に実施された。誤差は2.5ポイントだ。

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インフレーションが進む中でも10月の収入と消費者支出が上昇(Incomes, consumer spending rose in October even as inflation spiked

シルヴァン・レイン筆

2021年11月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/finance/583021-incomes-consumer-spending-rose-in-october-even-as-inflation-spiked

アメリカ合衆国商務省が水曜日に発表したデータによると、インフレの急進があったにもかかわらず、個人所得の増加が物価上昇を抑制することができたために、2021年10月の消費者支出は増加した。

個人消費支出は先月1.3%増加した。財に対する支出の1%増、サーヴィスに対する支出の0.7%増が寄与した。サプライチェインの混乱、新型コロナウイルス感染拡大に関連する規制、新型コロナウイルス感染拡大による消費習慣の変化などにより、消費者の財に対する支出がサーヴィスに対する支出を大きく上回った。

米連邦準備制度(Federal Reserve)が推奨するインフレ率の指標である個人消費支出(personal consumption expendituresPCE)価格指数(price index)は2021年10月に著しく上昇した。それにもかかわらず、全米での買い物ブームは継続した。

水曜日に発表された分析の中で、オックスフォード大学のグレゴリー・ダコは次のように書いている。「2021年10月の消費者支出は、ウイルス懸念の軽減や温暖化、自動車のサプライチェインの制約緩和、ホリデーシーズンの早期開始などの要因により、増加した」。

ダコは続けて次のように書いている。「しかし、米国の家計にとっては、インフレ率の上昇、製品の入手可能性の現象、財政支援の減少など、全てがバラ色という訳ではない」。

個人消費支出(PCE)は、消費者物価が3ヶ月連続で0.4%上昇した後、10月に0.6%上昇した。また、10月までの1年間で5%上昇しました。年間のインフレ率は9月から0.6ポイント上昇している。

賃金の上昇と雇用の増加が個人消費を押し上げ、先月の個人所得は0.5%増加した。しかし、インフレ調整後の可処分所得は0.3%減少しました。

会計事務所RSMのアメリカ人エコノミストのトゥアン・グエンは次のように書いている。「強力な支出は今年の最後の2カ月でも価格に対して圧力をかけ続けることになるだろう。しかし、最近のデータでは、そのような圧力を和らげる役割を果たすサプライチェインのねじれが改善されてきている」。

グエンは続けて次のように書いている。「概して言うと、水曜日に発表されたデータは、今年の第四四半期の成長につながる、予想を上回るホリデーシーズンの見通しを再確認するものだ」。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 

 今年の秋にはアメリカで中間選挙が行われます。連邦下院の全議席、連邦上院の一部議席、そして複数の州の州知事選挙が行われます。

 

 拙訳『コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、講談社、2015年)でも取り上げられていましたが、コーク兄弟から政治資金を受け、保守的な政策を進めている現職のウィスコンシン州知事スコット・ウォーカーが苦戦をしている、という世論調査の結果が出ています。

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 ウォーカーは、ティーパーティー運動(コーク兄弟が資金源)で頭角を現し、その後、ウィスコンシン州知事に当選。2016年の米大統領選挙で共和党の予備選挙に出馬を表明し、一時は有力候補と見られるまでになりましたが、その後失速し、出馬をすることはありませんでした。それでもスコット・ウォーカーは共和党の若手有力株として注目されています。このウォーカーが苦戦しているというのはアメリカの政治ニュースとなっています。

 

 ウォーカーの苦戦の原因が小政党リバータリアン党の候補者が数パーセントの支持を得ているために、接戦となったら、共和党からリバータリアン党に流れる票数が死命を決するということになると予想されています。1991年の米大統領選挙で民主党のビル・クリントンが勝利をした際に、第三党のロス・ペローが善戦したために、共和党のジョージ・HW・ブッシュが敗れたという事例に似た構図となっています。

 

 ティーパーティー運動で台頭し、コーク兄弟から政治資金を受けているマイク・ポンぺオ国務長官、テッド・クルーズ連邦上院議員、スコット・ウォーカー・ウィスコンシン州知事がそれぞれ苦戦をしているのは興味深いところです。彼らはコーク兄弟が見い出して援助を与え、中央政界に進出し、または名前を売った人物たちです。


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 コーク兄弟の信奉するリバータリアニズムは、何事も市場の機能に任せれば、最も合理的に最適の結果が無駄なく得られるという市場至上主義です。アメリカ国民の中には、市場至上主義疲れが起きていると考えられます。トランプ大統領への支持が低下しないのは、彼が株高を演出し、再分配を志向する政策を実行しているからです。この点で、共和党の体制派、更にはリバータリアニズムを信奉する勢力とは対立します。

 

 スコット・ウォーカーが大苦戦しているというのは、今回の中間選挙で民主党が盛り返していること、そして、トランプ政権とは異なる姿勢を持つ共和党の体制派とリバータリアン達には逆風となっていることを示しています。

 

(貼り付けはじめ)

 

世論調査:スコット・ウォーカーはウィスコンシン州知事選挙で大接戦(Poll shows Scott Walker in dead heat in Wisconsin reelection race

 

タル・アクセルロッド筆

2018年8月22日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/campaign/403084-poll-gov-walker-in-dead-heat-for-reelection-in-wisconsin

 

マーケット大学法科大学院が実施した、ウィスコンシン州知事選挙に関する世論調査の結果が水曜日に発表された。現職のスコット・ウォーカー知事(共和党)が州立学校監督官トニー・エヴァース(民主党)と大接戦を演じているという結果が出た。

 

投票に必ず行くと答えた有権者のうち、46%がウォーカーを支持し、46%がエヴァースを支持すると答えた。2%がどちらも支持しない、分からないと答えた。誤差は4.5%であった。

 

有権者登録をしている有権者の中でも、ウォーカーは大接戦を演じている。ウォーカー46%、エヴァース44%という結果が出ている。誤差は4%であった。

 

マーケット大学の調査では、ウォーカーの支持率は3月以降、40%台後半で安定している。一方、不支持率は40%台中盤で安定している。

 

エヴァースは8月に実施された民主党の州知事選挙予備選挙で勝利を収めた。この時期、ウィスコンシン州民主党は、州議会議員選挙の複数の補選と州最高裁判所の判事の選挙で勝利を収め、上昇気流にあった。

 

ウィスコンシン州知事選挙で台風の目になりそうなのが、リバータリアン党のフィル・アンダーソンである。アンダーソンは、選挙に行くと答えた有権者の中では6%、有権者登録をしている有権者の中では7%の支持を得ている。これらの数字はエヴァースとウォーカーとの差よりも大きい数字である。

 

リアル・クリア・ポリティックスによる各種世論調査の集計によると、エヴァースとウォーカーとの一騎打ちでは、エヴァースが6.3%のリードをしている。しかし、クック・ポリティカル・レポートはウィスコンシン州知事選挙について「共和党先行」としている。

 

今回の世論調査は815日から19日にかけて、800名のウィスコンシン州民に対して電話でのインタヴューでデータを集められた。

 

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(終わり)

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 古村治彦です。

 

 本日はアメリカのマスコミで働く人の数が減少しているとする記事をご紹介いたします。アメリカのマスコミで働く人の数は全体で10万人を割り込んでいるということがまず紹介されています。もっと多いものかと思っていましたが、私の考えに反して少ないものでした。その中でも新聞は半分近くの3万9000人を占めている訳ですが、減少の速度は激しく、ここ10年で45%も減少しているということです。

 

日本はどうかといいますと、日本新聞協会のウェブサイトで調べてみると、2017年段階では約4万2000人で、2007年では約4万8000人ですから減少率はアメリカに比べて大きくありません。

 

※日本新聞協会のウェブサイトは以下の通りです。

https://www.pressnet.or.jp/data/employment/employment03.php

 

 アメリカのマスコミで雇用数を伸ばしているのはネットのニュースサイトですが、絶対数が少なく、紙の新聞社で減った分を全て吸収できないのは明らかです。ということは、新聞社を解雇された人たちは別の職種に行くしかないということになります。

 

 日本でも紙の新聞の発行部数が減少していると言われています。ニュースはインターネットで知るからいいということが原因のようです。地方紙は人口減少ということもあるでしょう。そうなると、どうしても売り上げが落ちてしまうと人件費が大きな負担ということになってしまい、給料を減らすか、雇用を減らすかということを迫られていくことになるでしょう。

 

新聞記者と言えば、社会の木鐸であり、高給ということもあって学生のあこがれの職業という時代もありました。アメリカでは既に新聞記者は斜陽の仕事ということになっているようです。日本でもそうなりつつあるのではないかと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

分析記事:メディアで働く人の数がこの10年で23%減少(Analysis: Media workforce down 23 percent in last decade

 

ジョー・コンシャ筆

2018年7月31日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/media/399641-analysis-media-workforce-down-23-percent-in-last-decade

 

メディアで働く人の数がここ10年で23%減少していることが新たに発表された分析で明らかにされた。

 

月曜日に発表されたピュー・リサーチ・センターによる分析によると、2017年の新聞、ラジオ、ケーブルテレビ、報道で働く人の数が8万8000人ということであった。2008年の数は11万4000人であったが、減少している。

 

新聞で働く人の数の減少はより激しいものとなっている。

 

分析によると、アメリカ全土の新聞で働く人の数はここ10年で45%も減少しているということだ。

 

ピュー・リサーチ・センターの報告書は、労働統計を引用しながら、2008年の段階でアメリカの新聞社で原拓人の数は7万1000人だったものが、2017年には3万9000人にまで減少していると書いている。

 

ワシントンDCにある中立の分析機関ピュー・リサーチ・センターの報告書には、「5つの分野の中でディジタルニュースだけで大きな雇用の増加が見られる」と書かれている。

 

報告書は続けて次のように述べている。「2008年以来、ディジタルニュースでは荒く人の数は79%も増加しており、その数は7400から1万3000まで増えている。増加数は約6000である。しかし、同時期に新聞社で失われた32000を相殺するには至らない」。

 

今回の報告書が出る1週間前、ピュー・リサーチ・センターが出した別の報告書では、2017年1月以来、アメリカの各大新聞社は半数以上の職員を解雇しているということであった。

 

今年4月末までの16カ月で、25万分以上の発行部数を誇る16社のうち、9社(56%)で職員の解雇が行われているということだ。

 

創立以来99年の歴史を持つタブロイド紙『ニューヨーク・デイリー・ニュース』紙は今月、編集部の4分の1を解雇し、現在40名の職員だけで発行を続けている。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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