古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 中国政治


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 古村治彦です。

 今回から2回に分けて、中国政治の最新論文をご紹介します。

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新しい高位グループが党と政府との間の区別に脅威を与える(
New High-Level Groups Threaten Line Between Party and Government

 

Publication: China Brief Volume: 14 Issue: 7

2014年4月9日 

ウィリー・ラム(Willy Lam)筆

 

http://www.jamestown.org/programs/chinabrief/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=42208&tx_ttnews%5BbackPid%5D=25&cHash=9c04fb8086372aa9cd6deb00e61e01e7#.U1PR4X-KD4g

 

 

 習近平(Xi Jinping、しゅうきんぺい、1953年~)は、複数の情報が非公開の指導的なグループや委員会に実権を集中させている。中国共産党(Chinese Communist Party)の最高指導者である習近平に、これらの機関は直属している。これらのトップレベルの意思決定・調整機関は、習近平の側近たちは、最高指導者(supremo)である習近平に直属し、報告を行っている。それらの機関とは、中央国家安全委員会(the Central National Security CommissionCNSC)、中央全面深化改革領導小組(the Central Leading Group on Comprehensively Deepening Reforms)、中央互聯網(インターネット)安全情報化改革領導小組(the Central Leading Group on Internet Security and Informatization)である。このような機関に関しては、透明性とチェック&バランス機能の欠如に関する疑問が拭えない。李克強(Li Keqiang、りこっきょう、1955年~)国務院総理は全国人民代表者会議(National People’s CongressNPC)で国務院は「自己革命(self-revolution)を行う決意である」と表明している。この意味は、中央政府の各部(日本で言うと各官庁)は合理化を行い、それぞれが持つ力を縮小し、市場と社会がより大きな役割を果たせるようにするというものである。(チャイナ・ニュース・サーヴィス、2014年3月5日;人民日報、2014年3月5日)

 

 昨年(2013年)11月に開催された中国共産党中央委員会三中全会(the Third Central Committee Plenum)において、中央国家安全委員会と中央全面深化改革領導小組の設置が決定されたが、既に重要な役割を果たすようになっている。しかし、これらの機関に関する情報はほとんど公表されていない。そのスタッフの陣容、中央国家安全委員会の構成と目標は明らかにされていない。ただ、その規約として、党、政府、軍の各機関の連携を図り、国内の安定と「敵意を持った外国勢力」が起因する脅威に対処するというものがある。トップの3名の名前と役職だけが明らかにされている。それぞれ委員長の習近平、副委員長の李克強、そして全人代常務委員会委員長の張徳江(Zhang Dejiang、ちょうとくこう、1946年~)である。この3名のメンバーは、中国最高指導部で強大な力を持つ中国共産党中央政治局常務員会(Politburo Standing CommitteePBSC)に所属している。いくつかのメディアは、中央国家安全委員会を構成することになるであろう諸機関のリストを発表した。しかし、この情報の真偽はまだ確定していない。諸機関には、中国人民解放軍(People’s Liberation Army)、中国人民武装警察部隊(People’s Armed Police)、外交部(Ministry of Foreign Affairs)、公安部(Ministry of Public Security)、国家安全部(Ministry of State Security)、中国共産党中央対外連絡部(CCP’s International Liaison Department)、中国共産党中央宣伝部(Propaganda department)の名前が挙げられている。(文匯報[香港]、2013年3月7日;グローバル・タイムズ・フォーラム、2013年1月25日)

 

公的メディアと香港のマスコミは、複数の全人代の高級幹部たちの「習近平の腹心の一人である栗戦書(Li Zhanshu、りつせんしょ、1950年~)が中央国家安全委員会の総書記となり、あらゆるトラブルに対処している」という発言を引用している。栗戦書は、第18期中国共産党中央政治局委員であり、現在は中国共産党中央弁公庁(Central Committee General OfficeCCGO)主任を務めている。中国共産党中央弁公庁は党全体の神経集中センターのようなものであり、中央政治局常務委員会から中央、地方のあらゆる党機関に対して指示を出す機関である。また、定期的に中国全土に対して発表される主要政策の文書を作成する機関でもある。中央弁公庁は、中央国家安全委員会のために総局と情報センターの規模を倍に拡大した。(チャイナ・ビジネス・ニュース[上海]、2014年3月10日;民報[香港]、2014年3月10日)

 

 栗戦書は、西安市党委書記を務めた経験を持ち、習近平率いる陝西ギャングの中心メンバーである。栗戦書には外交政策の面での経験がない。このことから、中央国家安全委員会が主に国内の治安維持に特化した機関であるという主張には信憑性があることが分かる。栗戦書と彼の親分である習近平は深いつながりを持っている。このことから、最高指導者である習近平が、中央国家安全委員会の名の下で警察国家機能を利用することは難しいことではない。彼は中央国家安全委員会を利用して、反体制活動家たちを厳しく取り締まることから、急速に勢力を拡大しつつある習近平派に敵対する政敵たちを攻撃することまでできるのだ。(大公報[香港]、2014年3月7日;サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2014年3月7日)習近平は中央国家安全委員会を支配している。その結果、習近平は、中国の国内治安に関して幅広く独立した力を持ち、コントロールができるようになるだろう。そして、鄧小平(Deng Xiaoping、とうしょうへい、1904~1997年)によって確立された集団指導体制に対して脅威を与えることになるだろう。

 

中央国家安全委員会の顔ぶれを見ると、この改革志向の委員会により大きな権力が集中することが容易に予想される。中央国家安全委員会の主席は習近平であり、副主席は、李克強国務院総理、イデオロギーと宣伝を担当する劉雲山(Liu Yunshan、りゅううんざん、1947年~)中国共産党中央精神文明建設指導委員会主任、張高麗(Zhang Gaoli、ちょうこうれい、1946年~)国務院常務副総理の3名が副主席となっている。彼らは全て党中央政治局常務委員である。彼らの下には、10名の政治局委員が配置されている。その中には、劉延東(Liu Yandong、りゅうえんとう、1945年~)国務院副総理、汪洋(Wang Yang、おうよう、1955年~)国務院副総理、馬凱(Ma Kai、ばがい、1946年~)国務院副総理といった国務院の閣僚級の人々や中国共産党中央各部の責任者たちが含まれている。党の中央各部の責任者で言えば、党中央弁公庁主任の栗戦書、党中央政策研究室(Central Policy Research OfficeCPRO)主任の王滬寧(Wang Huning、おうこねい、1955年~)、党中央宣伝部長の劉奇葆(Liu Qibao、りゅうきほう、1953年~)、党中央組織部長の趙楽際(Zhao Leji、ちょうらくさい、1957年~)が配置されている。更には、全国人民代表者大会常務委員会副委員長の李建国(Li Jianguo、りけんこく、1946年~)、中央軍事委員会(Central Military Commission)副主席の許其亮(Xu Qiliang、きょぎりょう、1950年~)人民解放軍空軍上将、中国共産党中央政法委員会(Central Political-Legal Commission)書記の孟建柱(Meng Jianzhu、もうけんちゅう、1947年~)といった人々も含まれている。(中国青年報、2014年3月13日;民報、2014年1月23日)

 

 王滬寧は上海にある復旦大学の教授を務めた人物であり、国家主席時代の江沢民と胡錦濤の政治アドヴァイザーであった。そして、習近平によって、中央国家安全委員会の総書記に任命された。王滬寧は現在、党中央政策研究室(Central Policy Research OfficeCPRO)主任を務めている。党中央政策研究室は目立たない部署で、公式メディアでその活動が伝えられることはほとんどない。しかし、党中央政策研究室は中国で最高レベルの、国内政策、外交政策に関するシンクタンクなのである。党中央政策研究室はシンクタンク機能の他に、中央国家安全委員会の事務局と情報集積センターの役割を果たしている。中央国家安全委員会には、党中央政策研究室副主任の潘盛洲(Pan Shengzhou、はんせいしゅう)と国務院国家発展和改革委員会(National Development and Reform CommissionNDRC)副主任の穆虹(Mu Hong、むこう)の2人の副総書記がいる。潘盛洲は農業の専門家だ。穆虹の国家発展和改革委員会での仕事は、資産投資管理と主要なプロジェクトの監督である。(Finance.12cn.com、2014年3月10日;香港エコノミック・タイムズ、2014年3月10日)





 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 習近平は上海市党委書記をわずか6カ月しか経験しなかったが、上海時代の部下たちを北京に呼び寄せている。2007年に習近平が中国共産党中央政治局常務委員に昇進する際に、彼の昇進に関わった人物として上海閥の2名の名前が挙げられる。1人は元国家主席の江沢民、もう一人は元国家副主席の曽慶紅(
Zeng Qinghong、1939年~、そうけいこう)である。指導者第5世代の「中核」と見なされる人々が上海閥の人々を習近平派に送り込んだことは驚くには値しない。上海閥であり習近平派に参加した人物と言えば、丁薛祥(Ding Xuexiang、1962年~)は昨年、中国共産党中央弁公庁(CCP General Office)副主任と中国共産党総書記弁公室(personal office of the President)主任に任命された。51歳の丁薛祥は、習近平が上海市党委書記を務めていた時期、上海市党委員会中央弁公室主任を務めていた。この時、習近平は、丁薛祥の政治的洞察力と組織的手腕に深い印象を受けた。(文匯報[香港]、2013年7月24日;BBC中国語放送、2013年5月17日)もう一人の上海を基盤として昇進してきた人物として、習近平が上海市党委書記をしていた時期の上海市副市長だった楊暁渡(Yang Xiaodu、1953年~)である。2014年1月、上海出身の楊暁渡(61歳)は、中国共産党中央規律検査委員会(CCP Central Commission for Disciplinary InspectionCCDI)副書記に任命された。中国共産党中央規律検査委員会は、中国における反汚職の最高機関である。(人民日報、2014年1月15日;大公報、2014年1月15日)

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曽慶紅       丁薛祥                 楊暁渡

 

 習近平派の中で重要な要素となっているのは、陝西省出身、もしくはキャリアにおいて陝西省で勤務をした経験を持つ人々である。陝西省は習近平と彼の尊敬を集めている父親、習仲勲の出身地である。緩やかな組織体である陝西省組(Shaanxi Gang)には、3名の中国共産党中央政治局常務委員と4名の中央政治局委員が含まれている。中国共産党中央政治局委員の趙楽際(Zhao Leji、1957年~、ちょうらくさい)と栗戦書(Li Zhanshu、1950年~、りつせんしょ)は、彼ら2名が出身地である陝西省で習一族の利益をうまく守った。そのことで習近平と深いつながりを持つことになった。中国共産党中央組織部長の趙楽際(56歳)は、2007年から2012年まで陝西省党委書記を務めていた。栗戦書(63歳)は、興味深いキャリアを積んできている。栗戦書は、陝西省で指導的な地位を歴任したが、1998年から2003年まで西安市党委書記を務めた。習近平が栗戦書と知り合ったのは1980年代初めであった。両者は河北省にある近隣の県の党委書記をそれぞれ務めていた。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2013年11月23日;陝西日報[西安]、2013年3月17日)

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趙楽際                    栗戦書

 

 習近平は政権内部に彼の高校時代と大学時代の同級生たちを招き入れている。中国共産党中央組織部副部長の陳希(Chen Xi、1953年~)と中国共産党中央財経領導小組(CCP’s Leading Group on Finance and Economics)弁公室主任の劉鶴(Liu He、1952年~)がその代表的人物たちである。陳希(60歳)と習近平は、1970年代に、名門清華大学で共に化学工学を専攻し、ルームメイトであった。(大公報、2013年4月18日;Asia Times Online、2013年2月19日)劉鶴(61歳)と習近平は、北京市海淀区で同じ学区の別々の高校に通っている時に親友となった。劉鶴はハーヴァード大学ケネディスクールで修士号を取得した経済学者である。そして、金融と経済に関する諸改革における習近平のアドヴァイザーとなっている。現在は国務院国家開発改革委員会副主席も兼任している。劉鶴は、昨年11月の第18期中国共産党中央委員会三中全会で承認された経済改革案の起草において重要な役割を果たした。(フェニックステレビ[香港]、2013年10月11日;文匯報、2013年10月11日)

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陳希                        劉鶴

 

 習近平は自身の権力基盤を固める一方で、胡錦濤前国家主席が率いた団派の人々をわきに追いやるために様々な努力を行った。現在の中国共産党中央政治局常務委員で団派は国務院総理の李克強だけである。李克強の団派時代からの同僚たちは、第18期中国共産党大会において中央政治局委員にまで放ってはいるがそれ以上は昇進しなかった。長年の伝統に従えば、国務院総理というのは中央政治局常務委員会において中国経済を担当するメンバーが就任するということになっていた。しかし、李克強は中央全面深化改革領導小組の3名いる副主席の1人に過ぎないのである。残り2人の副主席は、イデオロギーと宣伝の専門家である劉雲山(Liu Yunshan、1947年~、りゅううんざん)と国務院常務副総理の張高麗(Zhao Gaoli、1946年~、ちょうこうれい)である。彼らもまた中国共産党中央政治局常務委員である。そして、この2人は、李克強よりも習近平により近いと考えられている。李克強国務院総理は、第18期中国共産党中央委員会三中全会で採択された経済と社会の改革に関する文書作りに携わった最高レベルのチームから外されていた。このことが意味するのは、李克強は経済に関わる各部をこれからも運営するであろうが、重要な政策決定に関しては、習近平に従わねばならないということだ。(サウスチャイナ・モーニング・ポスト、2014年1月24日;民報、2013年11月17日)


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劉雲山                    張高麗
 

 中央政治局委員で、団派に対して忠誠心を持つ人々は、重要な地位に就けられているようには見えない。中国国家副主席の李源潮(Li Yuanchao、1950年~、りげんちょう)と中国共産党中央宣伝部長の劉奇葆(Liu Qibao、1953年~、りゅうきほう)といった人々がそうである。国家副主席の李源潮は、胡錦濤政権下で台頭するスターであった。彼の重要な仕事の一部は、公的な労働組合、中国共産主義青年団、中華全国婦女聯合会(All-China Women’s Federation)のような「大衆組織」を監督することである。劉奇葆は、党のメディアや広報を担当しているが、中央宣伝部長というのは、通常、メディア全般について大きな権限を持っているものなのである。第18次中国共産党大会以降、劉奇葆は、彼の上司である劉雲山の統制を過度に受けているように見える。(Chinanews.com、2013年4月1日;文匯報、2013年11月20日)

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李源潮     劉奇葆

(続く)



 

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