古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 世界政治

 古村治彦です。

 

 アメリカの女優スーザン・サランドンがイギリス紙『ザ・ガーディアン』のインタヴューに応じ、「ヒラリーが大統領になっていたらとっくに戦争になっていた」「彼女は危険だ」と発言したという内容の記事をご紹介します。

 

 スーザン・サランドンはアカデミー賞も受賞した名優で、民主党支持です。ハリウッドの俳優の多くが民主党支持ですが、彼女の場合は民主党内のリベラル派で、反エスタブリッシュメント派です。そして、ヒラリーが危険であることを正確に見抜いていることで称賛に値する人物です。

 

 アメリカのメディアでは連日トランプの一挙一投足を取り上げ、批判していますが、サランドンは「ヒラリーが大統領になっていたとしても、物事がよりスムーズに進むことはなかっただろうし、とっくに戦争になっていただろう」と発言しています。

 

 ヒラリーが大統領になっていたらシリア内線と北朝鮮問題が現在よりもより深刻な状況になっていたでしょう。そうした状況になるということは、アメリカとロシア、中国との関係がより険悪になっていたということです。そうなれば世界はもっと不安定で、どこでその破綻がより大きな紛争につながったことか想像の域を出ませんが、ヒラリーが大統領になっていれば、最悪、アメリカ軍は今頃シリアと朝鮮半島で屍を晒していたことでしょう。

 

 北朝鮮情勢は不透明ですが、アメリカの北朝鮮攻撃が起きるのではないかという可能性が高まっているように感じられます。来年の今頃はいったいどうなっているだろうか、と考えると、もしかすると北朝鮮国内で金正恩体制が崩壊し、漸進的な民主化と国土再建が進んでいることがあるかもしれません。

 

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スーザン・サランドン:ヒラリー・クリントン大統領であっても「スムーズにはいかなっただろう」(Susan Sarandon: ‘It wouldn’t be much smoother’ with Hillary Clinton as president

 

ジュリア・マンチェスター筆

2017年11月26日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/blogs/in-the-know/in-the-know/361873-susan-sarandon-it-wouldnt-be-much-smoother-with-hillary-clinton

 

女優スーザン・サランドンは日曜日に出されたインタヴューの中で、トランプ大統領ではなく、ヒラリー・クリントン大統領であったとしても、「物事はトランプ大統領よりもスムーズに進まなかっただろう」と述べた。また、ヒラリー・クリントンについて「危険だ」と発言した

 

サランドンは『ザ・ガーディアン』紙のインタヴューの中で、「物事はスムーズではなかっただろう。私たちが認識していないのだが、オバマ政権下でどうであったをよく考えてみればわかる」と述べた。

 

サランドンは次のように語った。「私はヒラリー・クリントンが大変危険だと確信していた。彼女が大統領になっていたとしても、私たちは分裂したままであっただろうし、戦争に突入していたことだろう」。

 

サランドンは2016年の米大統領選挙期間中、ヒラリー・クリントンを厳しく批判した。

 

サランドンはリベラルである。2016年6月、サランドンは、ヒラリー・クリントンの外交政策は、トランプの政策に比べて、より大きな国家安全保障上のリスクをもたらすと確信していると述べた。

 

しかし、今回の『ザ・ガーディアン』紙のインタヴューの中で発言内容は少し後退しているように思われる。

 

インタヴューの中で、サランドンは「私の発言の趣旨は正確に伝えられていないが、私の発言が引用されることには気にしない」と述べた。

 

サランドンはバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の熱心な支持者である。また、サランドンは米大統領選挙期間中、民主党のエスタブリッシュメントに対して激しい批判を浴びせた。

 

サランドンは大統領選挙直前、民主党全国委員会を激しく批判し、民主党全国委員会は「徹底的に汚れている」と発言した。

 

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(終わり)







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 古村治彦です。

 

 今回は、5月中旬以降の世界の動きを紹介した記事をご紹介します。この記事では、大事なイランの大統領選挙(2017年5月19日)について書かれていませんが、それ以外は書かれていると思います。イランの大統領選挙では現職で穏健派のロウハニ大統領に対して、対米強硬保守派がライシ元検事総長に一本化したので、ロウハニ氏が落選する可能性が出てきています。アメリカとイランとの間で核開発に関する合意が結ばれましたが、この先行きが不透明なために、ロウハニ大統領がこの合意を成功とアピールできないという事情があります。

 

 今週はトランプ大統領がトルコのエルドアン大統領やコロンビアのサントス大統領をホワイトハウスに迎え、その後、大統領就任後初の外遊に出かけます。イスラエルとサウジアラビアと中東の同盟諸国を訪問し、その後、ヴァティカンを訪問します。現在のローマ法王はトランプに対して批判的ですが、どのような会談になるかどうか重要です。

 

 G7では、トランプ大統領がG7の枠組み自体を問題にするという可能性もあるそうです。中国とロシアが入っていない会議では意味がないということだそうで、日本にとっては、地位低下、アジア唯一のG7参加国というステータスの喪失ということになります。

 

 これからしばらくの世界情勢について考える上で参考になりますので是非お読みください。

 

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中国の道、ドイツの選挙、そして、トランプの訪問者たち(China’s Road, German Elections, and Trump’s Visitors: The Weekend Behind, the Week Ahead

 

エミリー・タムキン筆

2017年5月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/15/chinas-road-german-elections-and-trumps-visitors-the-weekend-behind-the-week-ahead/

 

北朝鮮が再びミサイル発射に忙しくしていた時、中国は、「一帯一路」フォーラムを主催していた。中国の習近平国家主席の提唱した同名の貿易イニシアティヴを中心に会議が開催された。

 

各国の指導者の中には、この中国が開いた外交上の大宴会に欠席した人々もいたが、喜んで参加した人々もいた。インドのナレンダ・モディ首相は欠席した。インドは、一帯一路イニシアティヴについて、国家主権を損なうと主張している。会議に出席したチェコ大統領のミロシュ・ゼマンはロシア大統領ウラジミール・プーティンに対して、ジャーナリストたちは全員追い出すべきだとジョークを言った。プーティンはこれに対して、いや追い出す必要はないが、数は減らすべきだと答えた。また、プーティンはピアノの弾き語りを披露した。

 

ロシアに目を移すと、ソ連時代に建設されたモスクワの高層アパート群の取り壊しに対して多くの人々が抗議のために集まった。抗議に集まった人々はこれまで政治的な活動をしたことなどない人々だ。参加者の中の例外は野党の指導者アレクセイ・ナヴァルニーだ。ナヴァルニーは抗議活動を組織した訳ではなかったが、ナヴァルニーは妻と息子と共に、警察によって抗議活動の中から排除された。

 

ロシアから少し西に目を移すと、エマニュエル・マクロンが正式にフランシス・オランドに代わってフランス大統領に就任した。マクロンは就任演説の中で、公約から後退することなく、大統領としての責務をきちんと実行すると誓った。

 

他のヨーロッパの国の政治ニュースを見てみると、ドイツ首相アンゲラ・メルケル率いる中道右派キリスト教民主同盟(CDU)は、北ライン・ウェストファリア地域での選挙で、マルティン・シュルツ率いる社会民主党(SPD)を破った。社会民主党の首相候補であるシュルツは、この秋に行われる連邦総選挙の前哨戦だと述べていた。彼の主張が正しいとすると、前哨戦の結果はシュルツにとって不吉な結果となった。キリスト教民主同盟の州レヴェルでの勝利は、メルケル時代が続くことを予期させる。さらに注目すべきは、極右政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」は16州で行われた州議会選挙のうち、13州で勝利を収めている。

 

ドナルド・トランプにとってはどうだろうか?彼はこれから外国からの賓客を迎える。アブダビのムハマンド・ビン・ザイード・アルニュハヤン皇太子、トルコ大統領レセプ・タイプ・エルドアン、コロンビア大統領ホアン・マニュエル・サントスがホワイトハウスを訪問する。

 

一連の賓客を迎えた後、トランプ大統領は大統領として初めての外国訪問に出発する。イスラエル、サウジアラビア、ヴァティカンを訪問し、シシリー島でのG7、ブリュッセルでのNATO首脳会議に出席する。

 

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(終わり)



アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22



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 古村治彦です。

 

 フランスでは大統領選挙が行われています。2017年4月23日に第1回目の投票が行われましたが、過半数を獲得する候補者がいなかったために、5月7日に上位2名による決選投票が行われます。

 

第1回目の投票では、中道の「アン・マルシェ!(前進)」のエマニュエル・マクロンが24.01%、極右の国民戦線のマリーヌ・ルペンが21.30%、保守の共和党のフランソワ・フィヨンが20.01%、左派のジャン=リュック・メランションが19.58%、中道左派の社会党のブノワ・アモンが6.36%の得票率を記録しました。マクロンとルペンが決選投票に進出しました。

 

 第3位となったフィヨンは敗北を認め、支持者たちにマクロンへの投票を呼びかけました。既成大政党である社会党の候補者でありながら、6%台の得票率しか記録できず、代惨敗となったアモンも、元は社会党の現職大統領フランソワ・オランド大統領政権下の閣僚を務めた元社会党員のマクロンへの支持を表明しました。左翼党のメランションは上位2名どちらへの支持も表明しませんでした。フィヨン、メランションを支持した人々の間で、決選投票に参加しない、棄権するという動きが広がっています。ルペンの国民戦線へのけん制と共に、マクロンも支持できないという感情が広がっているようです。

 

 以下に、『ワシントン・ポスト』紙に掲載されたフランス大統領選挙に関する記事をご紹介します。著者はアメリカの保守派コラムニストとして有名なジョージ・F・ウィルです。ウィルは保守派の論客ですから、民主党の大統領であったバラク・オバマには批判的でした。そして、今回のフランスの大統領選挙に関して、エマニュエル・マクロンをフランス版のバラク・オバマ(its own Barack Obama)だと述べています。中身のない候補者だとウィルは皮肉を込めて述べています。

 

 大統領選挙の決選投票に進出した中道と呼ばれるどっちつかずのマクロンと極右のルペンの最大の争点はEUとの関わり方であると思います。マクロンはEU残留を主張し、ルペンはEU離脱を主張しています。

 

 EU(ヨーロッパ連合)の基礎となったヨーロッパ統合の考え方は、ヨーロッパで二度と戦争を起こさない、そのためには、ドイツ問題(ドイツが蠢動するとヨーロッパが不安定化する)の解決と隣国同士であるフランスとドイツの友好を促進するというものです。フランスがEUから離脱するとなると、ヨーロッパ連合の基礎的な理念まで崩壊してしまいますし、物理的にはポルトガルとスペインのリベリア半島が他のEU加盟国と陸路ではつながらなくなるという事態も起きます。ですから、フランスのEU離脱は、EU崩壊のスタートとなることになります。

 

 フランスの社会史(アナール学派)・人工史学者であるエマニュエル・トッドの簡単に手に入るこれまでの書籍を数冊読むと、フランスがEUというシステムの中で、ドイツに従属していることの不満があることが分かります。「ドイツと喧嘩をしたい訳ではないが、ドイツと同じようなことをやらされるのは嫌だ、できない、国民性に合わない」という考えがフランスにあり、反EU、反ドイツの感情がフランス国民の中に沸き起こっているようです。

 

 こうしたフランス国民の多くが抱える不満について、日本でも良く似た事態が戦後に起きました。昭和24年度の国家予算について、その頃は日本政府はSCAP(連合国最高司令官)であるマッカーサー率いる占領当局(GHQ)の承認を必要としていました。昭和24年度の国家予算について、アメリカから派遣されていたジョセフ・ドッジは反対し、補助金を削減し、公共料金の値上げや減税公約の撤廃を求めました。激しいインフレーションに対処するために、日本国民に耐乏生活を求めました。しかし、選挙で勝利していた民主自由党の公約はほぼ通らなかったことになり、日本の政治家と国民は、占領されているからこのような屈辱を受けることになるのだ、と考え、早く独立したい、そのためには、戦争状態を終わらせる講和条約を早急に結び、独立すべきだと考えるようになりました。


 ドイツが求める均衡財政は嫌だし、それを堅持するとフランス国内で格差が拡大するが、EUにいる限りは、ドイツに従わねばならない、という状態が続くことになります。

 

 現在のフランスでも、社会党という社会主義政党が平等を追い求め、富の再配分を行う政策を放棄しなければならないほど、EU、特にドイツの意向に従う状況になっています。そうした中で、人々の中に、反EU、EUからの「独立」を求める声がでているようです。EUはひとまとまりで、アメリカに匹敵するGDPを占めることになります。世界の総GDPに占める割合は、アメリカが25%、EUが25%、中国が14%、日本が6%です。日中韓露で24%となります。EUそれぞれの国に分かれれば、割合は小さくなりますので、規模の経済を活かすにはまとまっていくしかありませんが、各国が抱える事情がそれぞれ異なるので、同床異夢、という状態になっています。

 

 しかし、現在のところ、マクロン対ルペンでは、マクロンがリードしているという世論調査の結果も出ています。マクロンという人物は中道と言っていますが、実際には親米で、親EU、ネオリベラリズム政策を行う人物です。中道というのは大変難しい言葉で、どっちつかず、無原則に何でも取り入れるということにもなりかねません。マクロン対ルペンで恐らくマクロンが勝利することになるでしょうが、フランスのEUからの「独立」を求める声がどれほど大きいものなのか、という点から、ルペンの得票率も大変気になるところです。フランス大統領選挙の結果でEUの将来の道筋が占えるのだろうと私は考えます。EUは国家のかなりの主権をEUに譲るということで成立していますが、これは行き過ぎで、関税同盟や経済連携にまで後退することもしかるべしではないかと考えます。

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フランスはフランス版のバラク・オバマを選ぶのだろうか?(Will France elect its own Barack Obama?

 

ジョージ・F・ウィル筆

2017年4月26日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/will-france-elect-its-own-barack-obama/2017/04/26/067f754e-2aa3-11e7-b605-33413c691853_story.html?tid=ss_tw&utm_term=.29a451a0583c

 

フランス人は、他の国や人々の政治的な考えを借りられないほど知的な自惚れが強すぎる。しかし、同時に他の国のスタイルを評価し、取り入れることに興味を持っている。従って、5月7日のフランスの大統領選挙の決選投票で、フランス国民は、「ドゴール的な」バラク・オバマを大統領に選び出す可能性が高い。

 

2008年、新人の連邦上院議員だったオバマは、アメリカにとってのロールシャッハテストの役割を果たした。アメリカ国民は彼らの希望をオバマに投影した。39歳のエマニュエル・マクロンはパリの投資銀行に勤務していた。彼はこれまでの選挙で嫌な思いをしたことがなく、曖昧さをうまく隠せる人物だ。マクロンの公約は、ジョナサン・ミラーが『スペクテイター』誌で書いたように、「ジャコブ通りに住む高額所得者たちから提供されるチョコレートの入ったお菓子箱であり、ソフトな中道的主張」である。中道主義者を自称するマクロンは、現職大統領、社会党のフランシス・オランドの閣僚を務めた人物だ。オランドの最新の支持率は4%となっている。先週の日曜日、社会党の大統領候補者ブノワ・アノンは6.35%の得票率であった。マクロンは自分が率いる運動体を「前進(En Marche!,on the move)」と呼ぶ。これは、オバマ大統領が掲げた「私たちは、私たちが長年待ち望んだ存在となっている」という主張と同じくらいに自己満足で役に立たないものだ。マクロンは、良い人間になることで長く続く経済不況を改善しようと提案している。これは、結局のところ、「彼女」のようにならない、ということを意味している。

 

1984年の大統領選挙で、マリーヌ・ルペンの父ジャン・マリーは反ユダヤ主義と外国嫌悪の主張を掲げ、200万以上の得票を得た。パリのある新聞は見出しに次のように掲げた。「フランスには、218万2248名のファシストがいるのか?」これは、道理にかなわない質問だ。ジャン・マリーは「権威を示す束桿(fasces)の下で国家の全ての勢力をまとめる」と主張したのだ。ジャン・マリーはローマの権力の象徴を主張したのだ。ローマにおける権力の象徴は、斧の周りに木の板を合わせた束桿であった。ここからファシズム(fascism)という言葉が出来た。彼のスローガンは狡猾だった。「私のプログラムはあなたが考えていることだ」というものだ。その意味するところは、「ユダヤ人、移民、負け組について皆さんが語りたがらないこと」というものだった。

 

すっぱりリンゴがなる木から、ジャン・マリーの娘がどれほど離れているのかは明確ではない。マリーヌの選挙運動のスローガンは、「フランスは私たちの家だ(“On est chez nous” “This is our home”)」というものだ。このスローガンは、フランスがどんどんフランスらしさを失っているという懸念の表明である。同化を拒む数百万の移民は、空想の多文化主義の徒労を意味する。空想の多文化主義は移民の急激な流入から関係ない場所で快適に暮らしている人々によって唱導されている。ルペンと血と国土を基礎にしたナショナリズムは、アイデンティティが衰退しているという感情に対する反対の叫び声なのだ。

 

フランスの図書館にはフランスの歴代の憲法がきちんと収められているというのは正しくない。1791年以降、フランス憲法は多くの書き換えが行われた。現在のフランス憲法は59年前に制定された。しかし、一般的に国家のアイデンティティは言語的な統一と強く結びつくものであり、フランスの国家アイデンティティはある意味で、比較的若いものである。政治学者のフランシス・フクヤマは次のように書いている。「1860年代、フランス国民の4分の1はフランス語を話せなかった。また別の4分の1は第二外国語としてフランス語を話した。フランス語はパリの言葉であって、教育を受けたエリートの言葉であった。フランスの地方では、農民たちはブレトン語、ピカード語、フレミッシュ語、プロヴァンス語、その他の方言を話した」。マリーヌ・ルペンは、フランス性の権化だと自称している。しかし、彼女はパリで5%以下の得票率しか記録できなかった。国家アイデンティティが認識された場所パリでルペンは最も強力な選挙運動を展開したが、それほどの得票しかなかった。

 

1977年、フランスのGDPはイギリスのGDPよりも約60%も大きかった。現在はイギリスよりも小さくなっている。この期間、イギリスにはマーガレット・。サッチャーが出現し、フランスは「ネオリベラリズム」に抵抗した。上記のように、外国からの考えを寄せ付けないということを意味する。ネオリベラリズムは、「経済統制政策(dirigisme)」として知られる、強力な国家による経済指導を廃止することを意味する。経済統制はフランスの硬直性を象徴している。フランスの失業率は10%で、若い世代に限ればこの数字が2倍になる。

 

公的部門の支出はフランスのGDPの56%以上を占めている。これは他のヨーロッパ諸国よりも高い割合だ。マクロンは国家主義の一部を少し削り取ることしかできないと約束している。マクロンは彼が追い求めないものを受け取ることはないだろう。退職年齢62歳や週35時間労働、フランスの3500ページに及ぶ労働規制に挑戦する特別な権限を手にすることはないだろう。これによって労働者を解雇することは困難になり、経営者たちは人を雇用することに躊躇することになる。マクロンは、より強力なヨーロッパ連合を求めている。強力なヨーロッパ連合は民主政治体制を損ない、傲慢な規制が幅を利かすようになる。

 

1930年代、ヨーロッパの左翼は狼狽した。それは、資本主義の危機が鼻持ちならない、不快な右翼を利することになったからだ。この時代の右翼は、人々の怒りを基礎にして、経済と文化の面での懸念を融合することで台頭してきていた。今日、グローバライゼーションは、大西洋両岸のアメリカとヨーロッパで似たような激しい動きを起こしている。ルペンの台頭は、彼女を大統領にまで押し上げる可能性が高いところまで来ている。しかし、フランスや他の国々で自己満足している人々は、アメリカで公民権運動が盛んになっていた1963年にアフリカ系アメリカ人作家ジェイムズ・ボールドウィンが警告した、アフリカ系アメリカ人に関わる霊的な言葉を覚えておくべきだ。

 

神はノアに虹のサインを示した。

 

これ以上は水はでないが、次は大規模な火事が起きる、と。

 

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(終わり)







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 古村治彦です。

 

 アメリカのネオコンの拠点の1つである、戦略国際問題研究所(CSIS)が毎年発表しているグローバル予測の最新版から、所長のジョン・ハムレとジャパン・ハンドラーズの1人マイケル・グリーンの論稿をそれぞれ紹介します。ネオコン派がどのように考えているかが分かるものとなっています。

 

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2016年グローバル予測(2016 GLOBAL FORECAST

 

クレイグ・コーエン(CRAIG COHEN)、メリッサ・G・ダルトン(MELISSA G. DALTON)編

 

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS

http://csis.org/files/publication/151116_Cohen_GlobalForecast2016_Web.pdf

 

 

アジアへの再接続(Reconnecting of Asia

 

ジョン・J・ハムレ(JOHN J. HAMRE)筆

 

400年前、人類史上初めての純粋に国際的な国家間システムが出現した。この時以前、中国の各王朝と近隣諸王国との相互交流のような地域的な地政学システムはいくつか存在した。しかし、純粋に国際菜的な国家間システムは存在しなかった。国民国家が出現した際のウェストファリア体制は極めて斬新なものを生み出した。個人の忠誠心は王に対する忠節から国民としての意識と国家への同一化へと変化した。この時期、制限責任企業のような組織に関する新しい概念が生まれた。制限責任企業は幅広く資本を集め、対象となる商業的な冒険的試みに大量の資本を投入できるようになった。

 

 これらのヨーロッパの国民国家は、大都市の発展を支えた大富豪を生み出すための世界規模の帝国を創設しようとして相争った。ヨーロッパを中心とする国際的な地政学的システムが生み出された。このシステムは、操作法則として力の均衡(balance of power)を基礎とし、商業主義的な諸原理によって動くものであった。

 

 しかし、この発展には副作用も伴った。ヨーロッパの各帝国は世界各地に商業拠点を獲得しようと躍起になった。この世界システムの経済的ダイナミズムによって、アジアとアフリカの沿岸部にヨーロッパから企業家精神に溢れた人々が押し寄せるようになった。海上輸送が世界的な商業の基礎となった。アジア各地の沿岸部と主要航路沿いに巨大な都市が次々と誕生した。それから400年間、アジアにおいて地政学的に重要であったのは沿岸部であった。

 

 それ以前、アジアにおける商業と地政学の点で重要であったのはユーラシア大陸内陸部であった。国家間の商業活動は、いわゆる「シルクルート(silk routes、シルクロード)」に沿って行われていた。

 

 400年間にわたりアジアにおいては沿岸部に地政学的な中心が置かれてきたが、その状況は変化しつつある。巨大なユーラシア大陸が内陸部で再接続されつつある。ロシアは、極東とヨーロッパを結ぶ鉄道ネットワークを構築するという野心的な計画を明らかにしている。中国は「一帯一路(One Belt, One RoadOBOR)」構想に基づいて様々なもっと野心的な計画を発表している。この計画は、中央アジアと西アジアを貫く形で輸送ネットワークを劇的に拡大するというものだ。中国はその他にもアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクルート基金のようなより衝撃的で野心的な計画を実行しようとしている。数十の社会資本建設・整備計画が既に発表され、この計画の方向性はすでに示されている。

 

 一帯一路構想は、様々な議論を引き起こした。懐疑論を唱える専門家たちは、この計画は成長が遅れている中国内陸部の開発を促進するための試みだと述べている。また、個の計画は中国国内で建設ラッシュが一段落している建設業者たちに機会を与えるための経済刺激策だと主張する人たちもいる。更には、中央アジア諸国の中国に対する忠誠心を獲得し、属国関係として固定化するための地政学的な設計図に基づいて行われていると主張する専門家たちもいる。

 

一帯一路構想はアメリカにとってどのような意味があるものなのだろうか?これからの数十年間、中国はこの計画にエネルギーを使い、結果として東南アジアに対する圧力が弱まることになるのだろうか?それとも、巨大なアジア大陸全体に中国の覇権を及ぼすという究極的な目標を反映したものなのだろうか?一帯一路構想はアメリカにとって良いものなのだろうか、それともアメリカの国益にとって脅威となるのだろうか?

 

 新しいシルクルートという話はこれまで長い間流布されてきたものだ。インターネットで、「シルクロード」というキーワードを入れて調べてみると、ヒットするものの半数以上はトルコ発のもので、トルコの商業に関するものである。一帯一路構想が地政学的な側面を持っていることは疑いようのないところだが、その根底にある商業的な大きな動きを見逃すと、分析を間違うことになる。アジアの製造業をヨーロッパの市場に結び付けるための最も効率の良い方法は、海上輸送であると思われてきた。しかし、長距離鉄道網を使えば輸送時間を2倍から3倍も短縮することはたやすい。輸送時間を劇的に短縮することで、投資する資本が何も生み出さない時間を減少させることによって、必要な資本を減らすことが出来るのだ。

 

 アメリカ政府はこの巨大な展開を評価するための能力に欠けている。官僚たちは世界を分割してそれぞれ担当しているが、それによってより明確なビジョンを掴むことが出来ないようになっている。米国務省は世界を4つの地域に分けてそれぞれに、東アジア・太平洋担当、ヨーロッパ・ユーラシア担当、近東担当、南アジア・中央アジア担当という担当部局を置いている。国防総省は太平洋司令部を置いており、中国はそこの担当になっている。しかし、その他のアジアは、中央司令部とヨーロッパ司令部の担当になっている。

 

 官僚主義的な機関は創造的な思考には不向きだ。世界を4つに分割し、それぞれの中で見ていれば、この巨大な流れを見逃すことになる。新しい大きな流れの特徴を古い歴史的なフィルターを通じてみてしまうことになる。

 

 ユーラシアの再接続の重要性を見過ごすことは大きな過ちとなる。そして、この動きをアメリカの脅威としてしまうことは危険なことでもある。この巨大な展開においてアメリカの果たすことが出来る役割は限られている。しかし、それは私たち自身がそのようにしてしまっているためなのだ。私たちはこの大きな新しい流れを客観的に評価し、判断しなくてはならず、それには時間が必要だ。一帯一路構想に対処することは次の大統領の政策課題ということになるだろう。

 

(終わり)

 

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私たちが生きる現代にとって正しい戦略を追い求めて(Seeking the Right Strategy for Our Time

 

マイケル・J・グリーン(MICHAEL J. GREEN)筆

 

 アメリカは現在世界のいたるところで守勢に回っているように見える。中国は南シナ海において侵略的な土地埋め立てと島の要塞化計画を進めている。また、アメリカの同盟諸国への影響力を強めることになる、新しいユーラシア秩序の構築を求めている。ロシアはウクライナとシリアに軍隊を派遣することでNATOを侮蔑している。イランはアメリカとの間で内容の乏しい核開発合意を締結したが、中東各地の代理となる諸勢力に武器を与え、衰えることの野心を見せ、宗教的な統一という目標のために動いている。イスラミック・ステイトは暴力的で抑圧的なカリフ制度を求めて活動している。その活動力は落ちているが、規模を縮小させるまでには至っていない。更には、気候変動に関する国際的な協力は、2015年12月にパリで開催されたCOP21の開催前に既に失敗していた。これは、オバマ政権の成立当初からの目的の達成失敗ということになる。

 

 アメリカにとっての大戦略が必要な時期はこれまでほとんどなかったが、今はまさにそのタイミングだ。しかし、現在のアメリカが大戦略を構築し、それを実行することは可能だろうか?大戦略には様々な脅威と障害についての明確な定義が必要だ。努力を向ける目的の優先順位をつけることと、目的の達成のために外交、情報、軍事、経済といった分野の力を統合することが必要である。トクヴィルが明らかにしたように、アメリカの民主政治制度は、そのような意思決定と権威を一つの政府機関に集権化することを阻害するように設計されている。

 

 民主政治体制は、様々な障害が存在するが、何とかして、重要な事業の詳細を規制し、固定化された設計を保ち、その実行を行っている。民主政治体制では秘密で様々な手段を実行することはできないし、長い時間、忍耐を持って結果を待つこともできない。

 

 それにもかかわらず、アメリカは、共和国としての歴史の中で、これまで何度も大戦略を成功させてきた。アメリカ建国の父たちはヨーロッパ型の機構と策謀に大きな疑念を持ちそれをアメリカのシステムに反映させたが、それでも大戦略が成功したことがたびたびあった。アメリカ政府は、19世紀末までに西半球において自分たちに都合の良い国境を策定することができた。19世紀から20世紀に移行する次期、アメリカは太平洋における主要な大国としての地位を獲得した。第二次世界大戦後、ヨーロッパとアジアの民主諸国家との間で同盟関係を固めることができた。そして、25年前にソヴィエト主導の共産主義体制を流血の惨事を引き起こすことなく打ち倒すことが出来た。これらの大戦略が一人の人物によって実行されたことは少ない。それでもセオドア・ルーズヴェルトとヘンリー・キッシンジャーはそれに成功した。しかし、たいていの場合、アメリカの大戦略は、「目的と手段を効率的ではなく、効果的に結びつける巨大なプロセス」から生み出されたのである。ジョン・アイケンベリーが述べているように、戦後に海外で成功したアメリカの戦略は、アメリカ国内における公開性と諸政治機関の競争性によって生み出された。それらによってアメリカ主導の国際秩序において利害関係を持つ参加者たちの力を増大させ、安心感を与えることが出来たのだ。トクヴィルが致命的な弱点だと考えたものが、実際には大きな長所となった。

 

 しかしながら、現在では、アメリカの民主政治体制の政治過程が、同盟諸国やパートナーに対して、安心感ではなく、より厳しいものとなり、警戒感を与えることになっている。また、アメリカの政治指導者たちが、「アメリカは国際的な諸問題で世界を指導できる能力を持っているのか」という疑念を起こさせている。第一次世界大戦とヴェトナム戦争の後、アメリカは大きく傷ついた。アメリカ国民はこれらの時期、世界に対してアメリカが関与していくことを基礎とする地政学を求める指導者を選んだ。イラク戦争後、アメリカの全体的なムードも同じような流れになった。アメリカの外交政策戦略の主要なテーマが「アメリカの世界的な評価を回復する」ということになった。アメリカ政府は地政学ではなく、国際的な脅威に関心を払うようになった。「戦争」か「関与」かの単純な二者択一で政策を行うようになっている。また、「バカなことはやらない」という考えに基づいて受け身的な事なかれ主義になっている。

 

 イラク戦争後のこうした流れによって、伝統的な国民国家、勢力均衡、アジア、東欧、中東に出現しつつある地域的な秩序に関する競争の重要性は減退した。中国、ロシア、イランは、アメリカの影響力を小さくし、アメリカの同盟諸国の力を小さくするための強制的な戦略を用いることで、戦争と関与との間にある「グレーゾーン」を埋めている。同じようなことは南米についても言える。しかし、南米で現在の国際システムに異議を唱えている国々の国際的な秩序に与える脅威はより小さいものと言える。アメリカとの間で相互利益がある地域における ロシア、中国、イランの関与はそれぞれの国益にかなうものであるが、この関与を「大戦略」と呼んでしまうと、オバマ政権が「これまでの国際秩序を作り変えようとする諸大国に地域的な秩序作りを任せてしまっている」という印象を世界中に与えることになってしまっている。一方、これらの大国に対して純粋に競争的な戦略を採用すべきと主張しているリアリストたちは、アメリカの同盟諸国やパートナーの置かれている複雑な立場を分かっていない。これらの国々のほとんどは、特にロシアと中国に対して、冷戦期のような立場をはっきりさせるような戦略を採れないような状況にある。アメリカの大戦略は国家間関係の根本的な理解のために地政学を復活させねばならない。しかし、同時に国際社会で指導的な立場に立つには、信頼されるに足るだけの外交的、経済的、軍事的、価値観に基づいた選択肢を提供する必要があることもアメリカは認識しなければならない。世界の国々に近隣の新興大国、既存の国際システムに異議を唱える大国関係を持たないようにさせようとしても無駄である。

 

 言うまでもないことだが、海外で指導的な役割を果たすためには、国内での経済成長を維持することは欠かせない。しかし、それがアメリカの縮小のための言い訳になってはいけない。アメリカは、これから数年の間、競争が激しい世界秩序から撤退し、世界がボロボロになった後に戻ってくる、などということをやってはいけない。実際、多くの国際協定が締結間近であるが、これらは海外におけるアメリカの影響力を強化するだろうが、アメリカの国内経済を大きく動かすことにもなる。環太平洋経済協力協定(TPP)と環大西洋貿易投資協定(TTIP)によって、アメリカの貿易を促進され、ヨーロッパと太平洋地域をアメリカとより緊密に結びつけることになる新しいルールを構築されることになる。より良い統治の促進、女性の地位向上、法の支配、市民社会が強調されることで、諸外国ではより正義に基づいた、安定した、そして繁栄した社会が生み出されることになる。消費は促進され、知的財産権はしっかり保護されることになる。違法行為を終わらせ、保障関係のパートナーシップを強化することで、各企業はよりまともな戦略を立てることが出来、同盟諸国やパートナー諸国との間で新しいシステムと技術に関してより生産的な発展を進めることが出来る。多くの国々がアメリカとの間の更なる経済的、軍事的な協力関係を望んでいるのだ。実際のところ、近現代史を通じて、現在ほどアメリカとの協力が求められている時期はないのだ。ここで大きな問題となるのは、アメリカ政府は、この新しい流れを利用して、経済、規範、軍事の関与に関するあらゆる手段に優先順位をつけ、それらを統合することが出来るのかどうか、ということである。

 

 この問題に関しては、アメリカ国民の考え方ひとつだ。この問題に関して、歴史は大きな示唆を与えてくれる。1920年代初めに行われたギャロップ社の世論調査では、アメリカ国民の大多数が、第一次世界大戦に参戦したことは間違いであったと答えた。1930年代、連邦議会は国防予算を減額し、保護主義的な関税を導入した。1930年代末、日本とドイツがヨーロッパと太平洋の既存の秩序に脅威を与えるようになった。この時期、ギャロップ社の調査で、数字が逆転し、大多数のアメリカ国民が第一次世界大戦にアメリカが参戦したことは正しかったと答えた。フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領は、互恵通商法を成立させ、海軍の再増強に乗り出した。1970年代半ば、アメリカ国民はヴェトナム戦争に反対するようになった。この時、連邦議会は防衛予算を減らし、大統領の外交政策遂行に制限を加えた。それから10年もしないうちに、ソ連が第三世界に対してそれまでにない拡張主義で臨むようになると、アメリカ国民は国防予算を増額し、ソ連の進出を阻止し、冷戦の終結につながる動きを促進する政策を支持した。

 

 最近の世論調査の結果は、アメリカ人の中に国際主義が再び復活しつつあることを示している。国家安全保障は共和党支持者たちにとって最も重要な問題となっている。一方、ピュー・リサーチセンターの世論調査では、大多数のアメリカ国民がTPPを支持している。問題解決は指導者の力量にかかっている。民主、共和両党の大統領候補者予備選挙の始まりの段階では、むちゃくちゃなポピュリズムの旋風が起きている。それでも、国際的な関与を主張する候補者が最終邸には勝利を得られるだろうと考えるだけの理由は存在するのだ。

 

(終わり)

メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31




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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12

 

 リアリストであれば、オバマ大統領に対して、「アサドは権力の座から退かねばならない」とか化学兵器使用について「レッドライン」をひく、などと言わないように助言するだろう。それはバシャール・アル・アサドが擁護されるべき存在であるからでも化学兵器が戦時における正当な武器であるからでもなく、アメリカの重要な国益に関わらないし、何よりもアサドと彼の側近たちはとにかく権力を掌握し続けたいともがいているとことは明らかであったからだ。最重要なことは、人命をできるだけ損なうことなく内戦を速やかに終結させることであり、そのために必要とあれば、暴力的な独裁者とでも取引をするということであった。数年前にオバマ大統領がリアリストの意見に耳を傾けていたら、シリア内戦は多くの人命が失われ、国土が荒廃する前に集結していた可能性は高い。これはあくまで可能性が高いとしか言えないことではある。

 

 言い換えると、リアリストが過去20年のアメリカの外交政策の舵取りをしていれば、アメリカの国力を無駄に使うことになった失敗の数々を避け、成功を収めることが出来たはずだ。こうした主張に疑問を持つ人もいるだろう。しかし、「アメリカは世界の全ての重要な問題に対処する権利、責任、知恵を持っている」と主張した人々や、現在は馬鹿げたことであったとばれてしまっている、アメリカ政府の介入を執拗に主張した人々に比べて、リアリストは外交政策でより良い、まっとうなことを主張してきたことは記録が証明している。

 

 ここで疑問が出てくる。それは「リアリズムの助言は過去25年にわたり、ライヴァルの助言よりも好成績をあげているのに、リアリストの文章は主要なメディアには登場しない。それはどうしてか?」というものだ。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ワシントン・ポスト』紙、そして『ウォールストリート・ジャーナル』紙の論説ページに定期的に寄稿しているコラムニストについて考えてみる。この3紙はアメリカにおいて最も重要な紙媒体である。この3紙の記事と論説は他のメディアの論調を決定するくらいの力を持っている。それぞれの新聞のコラムニストは、講演を行ったり、他のメディアに出たりしている。そして、政策決定において影響力を行使している。この3紙はリアリストを登場させることはなく、『ワシントン・ポスト』紙と『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、国際政治とアメリカの外交政策についてのリアリズム的な考えに対して敵意を持っている。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙の場合、外交問題に関して定期的に寄稿しているコラムニストのリストを見てみると、ネオコン1名(デイヴィッド・ブルックス)と有名なリベラル介入派(トーマス・フリードマン、ニコラス・クリストフ、ロジャー・コーエン)が存在する。ロス・ドウサットは伝統的保守派に分類される。しかし、彼が国際問題について書くことはほとんどなく、世界各地へのアメリカの介入政策を様々な理由を挙げて声高に擁護している。『ワシントン・ポスト』紙は、4名の強硬なネオコン、論説ページの編集者フレッド・ハイアット、チャールズ・クラウトハマー、ロバート・ケーガン、ジャクソン・ディールを起用している。過去にはウィリアム・クリストルを起用していたこともある。定期的に寄稿しているコラムニストには、ジョージ・W・ブッシュ前政権のスピーチライターだったマーク・ティエッセンとマイケル・ガーソン、極右のブロガーであるジェニファー・ルービン、中道のデイヴィッド・イグナティウスと論争好きのリチャード・コーエンがいる。言うまでもないことだが、この中にリアリストはいないし、彼ら全員が積極的なアメリカの外交政策を支持している。昨年に『ザ・ナショナル・インタレスト』誌に掲載されたある記事の中でジェイムズ・カーデンとジェイコブ・ハイルブランが書いているように、ハイアットは「『ワシントン・ポスト』紙を頭の凝り固まった戦う知識人たちのマイク」に変えてしまい、「アメリカ国内で最もひどい内容の論説ページ」を作っている。

 

 ここで明確にしたいのは、こうしたコラムニストたちに執筆の機会を与えることは正しいことだし、私が名前を挙げた人々の多くの書く内容は一読に値するものである、ということだ。私が間違っていると考えているのは、現在の世界政治に関してより明確なリアリス的な考えを発表する人間が起用されていないということだ。ごくたまにではあるが、3紙も不定期にリアリストに論説ページに記事を書かせている。しかし、リアリスト的なアプローチを持っている人々で定期的に論説を書いて3紙から報酬を得ている人はいない。読者の皆さんは、ほんの数名のリアリストがフォックス、CNN,MSNBCのようなテレビの他に、この『フォーリン・ポリシー』誌や『ナショナル・インタレスト』誌のような特別なメディアに出ていることはご存じだと思う。それ以外の主流のメディアには出られないのだ。

 

 これら3つの主要な大新聞がリアリスト的な観点を恐れているのはどうしてなのだろう?リアリストはいくつかの極めて重要な問題に対してほぼ正しい見方を提供してきた。一方、これらのメディアで発表の機会を得てきたコラムニストたちの意見はほぼ間違っていた。私にはこんなことがどうして起きたのかその理由は分からない。しかし、現役の外交政策専門家は、アメリカをより豊かにそしてより安全にするにはどの政策がいちばんよいのかということを必死になって考えるよりも、空疎な希望や理想を語りたがっているのではないかと私は考えている。そして、アメリカは既に強力で安全なので、アメリカは繰り返し繰り返し非現実的な目的を追求し、素晴らしい意図のためにそのために何も悪くない人々を犠牲者になって苦しむことになってしまっているのだ。

 

私は、メディア大企業を経営しているルパート・マードック、ジェフ・ベソス、サルツバーガー一族に訴えたい。リアリストを雇ってみてはどうか?国際問題について評論や提案をする人々を探しているのなら、ポール・ピラー、チャス・フリーマン・ジュニア、ロバート・ブラックウェル、スティーヴ・クレモンス、マイケル・デシュ、スティーヴ・チャップマン、ジョン・ミアシャイマー、バリー・ポーゼン、アンドリュー・バセヴィッチ、ダニエル・ラリソンを検討してみてはどうか?こうした人々に週一回のコラムを書かせてみてはどうか。そうすることで、読者の人々に対して、国際的な問題について包括的なそしてバランスのとれた意見を提供することができる。私が言いたいことは、「あんたたちはいったい何を怖がっているんだい?」ということだ。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31


 
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