安倍とプーチンのための酒爆弾はない(No Sakebombs for Abe and Putin

 

リード・スタンディッシュ(Reid Standish)筆

2014年8月15日

フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌

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 2014年3月、ロシアはクリミアを併合した。それ以降、世界はクレムリンが次に何をするのか戦々恐々としている。8月12日、ロシアは日本との間で領土争いが続く千島列島で軍事演習を行った。全世界の目は太平洋へと向けられた。これに対して、日本政府は、演習は「全く受容できない」ものと非難し、ロシア大統領ウラジミール・プーティン(Vladimir Putin)と日本の首相である安倍晋三が追求してきた日露間の親善回復の可能性が遠のいた。

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 安倍首相は、北方領土問題でロシアとの間で合意に達することを希望して、ロシアとの間で前任者たちに比べより緊密な関係を築きつつあった。ロシアは安倍首相がナショナリスティックな態度を取ったために、アジア地域で彼個人と日本が孤立する危険性が高まった時に、外交上の得点を決める機会を提供した。2012年に首相に就任して以来、安倍首相とプーチン大統領は5度も会談を持った。技術的なことを言えば、両国はまだ第二次世界大戦を戦っていることになるのだが、二人は友好親善関係を築くために会談を行った。

 

 安倍首相は、自国を軍事的に守ることができるようにするために、日本国憲法の変更を目指しているが、これが近隣諸国を動揺させている。この動きは、地域大国へと進むナショナリスティックな動きであり、既に冷え切った中国と北朝鮮との関係を更に冷却するものである。テンプル大学でアジア研究を専門としているジェフ・キングストン教授は次のように語っている。「プーチンは中国との関係をより強固なものにしていますが、それでも太平洋地域においてロシアはまだまだ脆弱だと考えています。相互パートナーシップの構築は、日本とロシア双方にとって危険を少なくするために有効な戦略なのです」

 

 しかし、ロシアが行った軍事演習は、安倍首相のロシアとの間の外交関係改善の努力を損なった。その結果、日本は、アジア地域でこれまでにないほどの孤立状態に追い込まれることになる。

 

 ワシントンに本拠を置くシンクタンクであるスティムソン・センター主任研究員の辰巳由紀は次のように語っている。「ロシアが日本との間で争いとなっている島々で軍事句連を始めた事実は象徴的に大きいことです。ロシアは日本がどう反応するのかテストしているのです。ロシアへの対応は対中国という観点からも難しいものとなります。もし安倍首相がロシアに対して弱腰の対応を行ったら、中国は東シナ海の尖閣諸島を巡る日本との争いの段階を引き上げる機会になると捉える可能性があります」

 

日本は、これまでロシアの石油、天然ガス、石炭を輸入したいと希望してきた。特に、福島での原発事故の後、日本国内すべての原発が運転を停止した後、その需要は益々高まっている。政治リスク・コンサルタント会社のユーラシアグループのエネルギー・アナリストであるエミリー・ストームクイストは、「日本は自国の国内需要について考慮しなければなりません」と語っている。彼女は続けて次のように語っている。「液化天然ガス(LNG)の輸入コストが上昇しているのをコントロールするにはロシアからの輸入が必要です」。ユーラシアグループによると、2013年、ロシアは日本の天然ガスの約10%、石油の7%を供給した。日露間で平和条約が締結されることによって、ロシア国内のエネルギー資源への日本からの大型投資が可能となる。これによって、日本はエネルギー供給源の多様化を確保できる。

 

しかし、地政学的な環境の変化によって、安倍首相の計画は後退を余儀なくされ、日本は、ロシアとアメリカとの間で外交上の綱渡りをすることになった。ロシアと領土問題を抱え、アメリカにとっての重要な同盟国である日本は、クリミアにおけるロシアの行動を非難しなければならなかった。しかし、日本政府の行動は象徴的なものでしかない。彼らはクリミワインのような数品目の輸入量の小さな物品を輸入禁止に下に過ぎない。安倍首相の戦略はうまくいくかに見えた。8月7日、ロシアは西側諸国に対する報復的な経済制裁の対象から日本を外す決定を行った、これによって北方領土問題を交渉のテーブルに残すことができた。しかし、それも8月12日にロシアが1000名を動員して北方四島のうちの二島で軍事演習を行ったことで無駄になってしまった。

 

(終わり)