古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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カテゴリ: 日本政治

 古村治彦です。

 『ショック・ドクトリン』の著者であるナオミ・クラインの現在の新型コロナウイルス感染拡大に関するインタヴュー記事を掲載する。まず、『ショック・ドクトリン』について以下の貼り付け部分を見て欲しい。

(翻訳貼り付けはじめ)

shockdoctrine007

ショック・ドクトリン〈上〉――惨事便乗型資本主義の正体を暴く

The Shock Doctrine の本のウェブサイト

http://www.naomiklein.org/shock-doctrine

●要約(Summary)のページ

http://www.naomiklein.org/shock-doctrine/the-book

『ショック・ドクトリン:危機・惨事利用型資本主義の出現と勃興』

著書『ショック・ドクトリン』の中で、ナオミ・クラインは、「世界を席巻する自由市場は民主的な大勝利を収めた」という神話に対して厳しい批判を加えている。クラインは、過去40年間に起こった世界を根底から変えてしまう危機や戦争の裏には、お金が動き、操り人形を操る人々が存在するという考えを出発点にしている。

そして、『ショック・ドクトリン』の中で、クラインは、アメリカが、様々な自然災害、危機や惨事を利用して世界中の人々や世界各国にショックを与えることで、「自由市場」志向政策をどのように世界に拡大させて、支配的な政策にしていったかを赤裸々に書いている。

イラクの内戦において最も混沌とし先行き不透明な時期に、イラク国内で一つの新しい法律が通った。その法律は、石油会社のシェルとBPに、イラクの豊富な石油資源にアクセスすることを認めるという内容だった。

911同時多発テロ事件の発生直後、ブッシュ政権は「テロとの戦い」の遂行をハリバートン社とブラックウォーター社に丸投げした。

2004年に東南アジアを大津波が襲った。津波が全てを流してしまった後、何もなくなったビーチは観光リゾート用に切り売りされオークションにかけられた。ニューオーリンズ市民はハリケーン・カトリーナに襲われ、散り散りになった。彼らはニューオーリンズに戻りつつあるが、ニューオーリンズでは市営住宅、公立病院、公立学校がいまだに再開されていないし、再開される見込みもなくなりつつある。

こうした事例は「ショック・ドクトリン」の具体例である。「ショック・ドクトリン」とは次のようなものだ。

多くの人々は戦争、テロリストによる攻撃、自然災害といった集団で受ける大きなショックの後に、物理的にも精神的にも方向性を失う。その状態を利用して、経済的なショック療法を用いて、人々をコントロールするというものだ。

1回や2回のショックでは完全なコントロールが達成できずに抵抗されることもある。その場合は3回目のショックを与える。刑務所で看守が持っている電気ショック棒や多くの人々が携帯しているスタンガンを想像してみたら分かりやすいだろう。

ナオミ・クラインはこれまで行われてこなかった切り口での歴史研究と災害や危機に見舞われた地域での4年間のジャーナリスト活動の成果を基にして、『ショック・ドクトリン』を書きあげた。

『ショック・ドクトリン』で明らかにしているように、危機・惨事利用型資本主義は2001年9月11日に始まったものではない。ちなみに危機・惨事利用型資本主義では、目端の利く企業は社会を自分たちに有利になるように再設計がショックな出来事を利用する。

この本では、危機・惨事利用型資本主義の起源を50年前に求めている。その時代、シカゴ大学ではミルトン・フリードマンが大きな力をふるっていた。フリードマンの影響下のシカゴ大学からは数多くのネオコン、ネオリベラルの思想家たちが巣立っていった。

彼らは現在でもアメリカ政治に大きな影響力を持っている。経済政策、「衝撃と恐怖」をもたらす戦争、1950年代にCIAが資金提供をした、電気ショックと感覚遮断に関する実験の間には、驚くべきつながりがあることがこの本で明らかになった。

ちなみにこうした実験で得られた結果を利用して拷問のマニュアルが作成された。このマニュアルは今日でもキューバのグアンタナモ基地で収容されているテロリスト容疑者たちの拷問に利用されている。

『ショック・ドクトリン』で展開されている主張は現代史を見ればその正しさは明らかだ。現代史において私たちが良く知っている事件や出来事を詳細に見ていくと、そこにはショック・ドクトリンが使われていることが明らかである。

そうした出来事や事件としては、1973年のチリで発生したピノチェト将軍によるクーデター、1982年のフォークランド紛争、1989年の天安門事件、1991年のソビエト連邦の崩壊、1997年のアジア通貨危機、1998年に発生し、ホンジュラスに大きな被害をもたらしたハリケーン・ミッチが挙げられる。

(翻訳貼り付け終わり)

 ショック・ドクトリンとは、「多くの人々は戦争、テロリストによる攻撃、自然災害といった集団で受ける大きなショックの後に、物理的にも精神的にも方向性を失う。その状態を利用して、経済的なショック療法を用いて、人々をコントロールするというものだ」というものだ。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大に関して言えば、自民党内からは憲法変更の実験台だという声が当初出ていた。

(貼り付けはじめ)

●「新型肺炎「緊急事態の一つ、改憲の実験台に」 伊吹元衆院議長」

2020131 朝刊 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202001/CK2020013102000138.html

 自民党の伊吹文明元衆院議長は三十日の二階派会合で、新型コロナウイルスの感染拡大について「緊急事態の一つの例。憲法改正の大きな実験台と考えた方がいいかもしれない」と話した。自民党がまとめた改憲四項目の一つである緊急事態条項の導入を念頭に置いた発言。同条項は、大規模災害時に内閣に権限を集中させ、国民の権利の制限を認める内容。

 政府は二十八日に新型肺炎を感染症法上の「指定感染症」とする政令を閣議決定したが、施行日の二月七日までは感染者の強制入院などの措置は行えない。

 伊吹氏はすぐ強制措置が取れることが望ましいとし「周知期間を置かなくてもいいことにするためには、憲法を変えてもらわないとできない」と語った。

 これに対し、共産党の小池晃書記局長は、政令施行後は一定の行動制限ができることを踏まえ「憲法を変えないと対策ができないというのは筋違いの暴論だ」と批判した。 

(井上峻輔)

(貼り付け終わり)

 この何か災害や戦争などにかこつけて、便乗して、エリートたちが自分たちの実現したいことを進める、人々は災害や戦争などのためにショック状態に置かれてしまって反対ができない、ということがショック・ドクトリンだ。

 『ショック・ドクトリン』の著者であるナオミ・クラインは、新自由主義的、自由市場信奉型の経済学者たちが新自由主義的政策を提言し、政治家たちがそれを実行することで、社会の格差が拡大し、固定化することを懸念している。今回の新型コロナウイルス感染拡大においても国民皆保険ということは取り上げられず、大企業の救済ということに力点が置かれていることに警鐘を鳴らしている。それでもアメリカは全国民に現金給付を行うことを決めた。

 日本では麻生副総理が「銀行口座にお金が眠っている」と述べたように、「国民が預貯金をしてお金が動かないのだからこれを機会に預貯金を使ってお金を動かせ」という考えである。人々は将来の不安のために(2000万円の預貯金がなければ老後を暮らせない)、必死で預貯金をしてきた。日本政府はそれでは経済が動かないとそれを使わせようとしてきたがうまくいかなかった。しかし、財務省からしてみれば現在の状況はそれを吐き出させる「機会」である。このように考えるのがショック・ドクトリンである。

 日本も平成の30年間で新自由主義的施策が次々と実行されてきた。そのために、今回の事態を受け、医療崩壊の危険性が叫ばれている。比較対象にされやすいドイツではそのような声は起きていない。韓国では医療崩壊が起きているなどと喧伝されたが、今や韓国はどのような対策を行っているのかということを世界が観察している状況だ。日本政府はこうした状況でも新自由主義的な「自助努力」を政策の柱に据えているようだ。それでも大企業には日本政策投資銀行を通じて4000億円規模の融資をすぐに実行するようだ。私たちは冷静に自分たちでできることを繰り返しながら、日本政府や経団連などの意向を注意深く監視し、その裏の意図を読み取って批判すべき時に批判しておかねば、今回の危機的状況が終わった後に待っているのはより厳しい現実ということになる。

(貼り付けはじめ)

コロナウイルスは「惨事便乗型資本主義」にとって完璧な災害である(Coronavirus Is the Perfect Disaster for ‘Disaster Capitalism’

―ナオミ・クラインは各国政府と世界エリートたちがパンデミックをいかにして利用するかを説明する

マリー・ソリス筆

2020年3月13日

『ヴァイス』誌

https://www.vice.com/en_ca/article/5dmqyk/naomi-klein-interview-on-coronavirus-and-disaster-capitalism-shock-doctrine

コロナウイルスは正式に世界的なパンデミック(大流行)と正式になった。SARSの時に比べて10倍の人々がこれまでに感染している。全米の学校、大学、美術館、劇場は併催されている。そして、もうすぐ各都市全体も閉鎖される可能性が高い。専門家たちは、COVID-19として知られるウイルスに感染したと疑われる人々の中には、通常の生活を行ってしまうと警告を出している。それは、民営化された医療システムのためにそうした人々は有給を得ることができないからだ。

私たちのほとんどは何をすべきか、誰の話を聞くべきかをよく分かっていない。ドナルド・トランプ大統領は疾病コントロール・防止センター(CDC)からの勧告とは矛盾する内容の発言を行っている。そして、これらの複雑なメッセージは感染力の強いウイルスからの害を和らげるための猶予時間を少なくしている。

世界各国政府と世界のエリートたちが政治的な目標を達成するためには完璧な状態というものが存在する。もし私たちが迷っていなければ強く反対するようなものでも、迷っている状態の時は反対しない。これから起きるであろう出来事は、コロナウイルスによって出現している危機的状況特有のものではない。これは、政治家たちと各国政府がこれまで数十年間従ってきた、「ショック・ドクトリン(shock doctrine)」として知られている青写真そのものである。このショック・ドクトリンという言葉は、活動家で作家であるナオミ・クラインが2007年に出した同名の著書からきている。

歴史は「ショック」の編年史である。戦争、自然災害、経済危機のショックが起き、それが終わるということの繰り返しだ。ショックが終わった後に起きるのが「惨事便乗型資本主義(disaster capitalism)」だ。既存の不平等と格差を利用し、拡大するための、計算された、危機に対する自由市場的「解決策」のことである。

クラインは、今回のコロナウイルス感染拡大の状況において、私たちは既に国レヴェルで惨事便乗型資本主義の出現を目にしていると述べている。コロナウイルスへの対応の中で、トランプ大統領は7000億ドルの経済刺激策を提案した。これは給与税の減税(これによって社会保障システムを破壊するものだ)を含み、パンデミックの結果としてビジネスの機会を失った産業部門を支援するというものだ。

クラインはこれについて次のように語っている。「エリートたちは人々を助ける政策を実行していません。なぜならばそれがパンデミックの間の苦しみを和らげる最も効果的な方法であるからです。エリートたちはこうした考えを温め続け、現在がそれを実行する機会だと考えているのです」。

本誌は、コロナウイルスの「ショック」がいかにして10年以上前の著作『ショック・ドクトリン』の中で描いた出来事の連鎖を引き起こすのかについてクラインにインタヴューを行った。

今回のインタヴューは長さと明確性のために適切に編集されている。

質問:基本から話を始めましょう。惨事便乗型資本主義(disaster capitalism)とは何でしょうか?「ショック・ドクトリン(shock doctrine)」との関係はどのようなものでしょうか?

クライン:私が惨事便乗型資本主義を定義する方法は本当に簡単なものです。次の通りです。惨事便乗型資本主義は、民間の産業が大規模危機から直接的に利益を得る、というものです。大惨事からの不当利得行為(profiteering)と戦争からの不当利得行為といったものはなにも新しい概念ではありません。しかし、911事件後のブッシュ政権の下で、こうしたことは深まっていきました。ブッシュ政権が終わりのない安全保障上の危機を宣言した際、戦争を民営化し、外注化しました。結果として、国内には民営化された安全保障国家が出現し、イラクとアフガニスタンに対する(民営化された)侵攻と占領が実施されたのです。

「ショック・ドクトリン」は大規模危機を利用して格差を拡大させる、エリートをより富裕にさせる、人々を低賃金で働かせるといったことをシステム的に行う政策を推進するという政治的戦略のことです。危機の時期において、人々はその危機がどんなものであれ、生き残るために日々の緊急事態を乗り越えることに集中してしまいます。そして、権力を持つ人々により信頼を寄せる傾向があります。危機の時期、私たちはボールから少しの間、目を離してしまうのです。

質問:そのような政治的戦略はどうして生まれるのでしょうか?アメリカ政治において、歴史的にその動きをどのように追いかけるのでしょうか?

クライン:ショック・ドクトリン戦略はフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領政権下のニューディール政策に対する反応に端を発します。(経済学者の)ミルトン・フリードマンは、ニューディール政策の下でアメリカは全てが間違ったという確信を持っていました。世界大恐慌とダストボウル(1931年から1939年にかけ、アメリカ中西部の大平原地帯で、断続的に発生した砂嵐)に対応して、より積極的な政府がアメリカに出現しました。この政府は自分たちの使命を、政府による雇用を創出し、直接救済を行うことで当時の経済危機を直接的に解決することに設定しました。

あなたが極端なまでに自由市場を信奉する経済学者ならば、市場が失敗した時には、市場は進歩主義的な変化を必要とすることを本当は理解しているのです。大企業にとって都合の良い規制緩和政策よりもより進歩主義的政策が必要となるのです。従って、ショック・ドクトリンは、進歩主義的な諸政策が出現しないようにするため作り出されたものなのです。政治エリートと経済エリートは、危機の状況とは不人気な政策のリストを実行するための機会であるということを理解しています。これらの不人気な諸政策はアメリカと世界における富の偏在を更に進めます。

質問:現在、複数の危機が同時に発生しています。パンデミック、パンデミックに対処するインフラストラクチャーの欠如、株式市場の下落です。あなたが『ショック・ドクトリン』で書いた概略にこれらがどのように当てはまりますか?

クライン:本当のショックはウイルスそのものです。そして、ウイルスへの対応は混乱を最大化し、保護を最小化する形で対応が行われています。私が述べていることは陰謀論(権力者共同謀議論)でも何でもないと思います。アメリカ政府とトランプ大統領が完全に危機への対応を誤ったのです。 トランプ大統領はウイルス感染拡大を公衆衛生上の危機として扱わず、認識上の危機、そして自身の再選にとって問題となる可能性があるものとしてしか扱わなかったのです。

それは最悪のケースのシナリオです。特にアメリカは国家が提供する医療プログラムを持たず、労働者への保護もないということが一緒になって底知れぬほど悪い状態にあるのです。この様々な要素が一緒になって最大限のショックがもたらされるのです。私たちが直面している気候変動の危機のような極度の危機的状況の中心要素である諸産業に支援金を出すために、ショックは利用されるのです。航空産業、石油産業、クルーズ船産業は全て支援を求めています。

質問:このようなことを私たちは以前もどのようにして目撃したのでしょうか?

クライン:著書『ショック・ドクトリン』の中で、私は、ハリケーン・カトリーナの直撃後に起きたことについて述べました。ワシントンにあるヘリテージ財団のような各シンクタンクは会議を開き、ハリケーン・カトリーナに対する「親自由市場」的な解決策の希望リストを作成しました。同様の会議がこれから開かれるであろうことは確かです。実際、ハリケーン・カトリーナの会議の議長を務めたのはマイク・ペンスなんですよ。2008年、銀行に対する支援策が実施される際には、各国政府は銀行に金額が書き込まれていない小切手を渡しました。そして、そこには数兆ドルという金額が書き込まれました。しかし、その真のコストは経済的緊縮(社会サーヴィスの削減)という形で現れました。従って、惨事便乗は現在目の前に起きていることだけではないのです。支払期限が来た時に私たちが支払うお金もまたそうなのです。

質問:私たちが既にコロナウイルスへの対応で目撃している惨事便乗型資本主義の害悪の影響を和らげるために人々にできることはありますか?ハリケーン・カトリーナや前回の世界的景気後退の時期に比べて私たちはより良い状態にあるのか、それとも悪い状態にあるのかどちらでしょうか?

クライン:私たちが危機に直面して試されている時、私たちは後退し、分裂します。もしくは成長し、私たちに可能ではないと考えていた強さと熱意を発見することもあります。今回の出来事はそうした試練の1つです。私たちが発展することを選ぶであろうと私は希望を持っています。その理由は、今回の場合は2008年の場合と異なり、危機に対して全く異なる反応を提案している政治的な別の選択肢が実際に存在しているからです。この選択肢は私たちの弱さの根本原因から生まれたもので、より広範な政治的運動がこの新しい選択を支援しているのです。

これはグリーン・ニューディールがやろうとしていることなのです。それは、 今回のようなことに備えるということです。 私たちは勇気を失うことはできません。私たちはこれまでよりもより激しく、国民皆保険、幼児教育 病気の時の有給休暇獲得のために戦わねばなりません。これらは密接につながっています。

質問:もし各国政府と世界エリートたちが自分たちの利益のためにこの危機を利用しようとするならば、人々はお互いに気遣い助けるために何ができるでしょうか?

 クライン:「私は私自身だけをケアします、私は最高の保険に入っています。あなたは入っていないのなら、それはあなた自身の失敗ですね」。これが勝者総取り経済が私たちの頭脳に吹き込むメッセージです。今回のような危機の時期にはっきりするのは、私たちお互いがバラバラであるということです。現在の野蛮な経済システムが私たちに信じさせている以上に、現実では私たちはよりつながっているということが認識されます。

もしアメリカに素晴らしい医療保険制度があれば安心感を得ることができるのです。しかし、私たちの食糧を生産する、食糧を運ぶ、パッケージする仕事に従事している人々が医療保険を持っておらず、ウイルスのテストを受けられない、もしくは有給休暇を得られないために家にいられないということになれば、私たちは安全だとはとても言えませんね。私たちがお互いをケアしなければ、私たちは誰もケアをされないということになるのです。私たちは網にからめとられているような状況にいるのです。

社会をまとめる様々なことなる方法は私たち自身の様々な部分に火をつけます。もしあなたが知っているシステムが人々をケアせず、公平な方法で資源を分配しないということならば、あなたの中にある買い占めをしたいという欲求に火がつけられます。ですから、これには注意しなければなりません。そして、買い占めを行うことや自分と家族をいかにケアするかを考える代わりに、いかにして隣人たちと共有するか、社会で最も弱い人々をいかにして守るかを考えるべきです。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です

 インターネット上でも話題になっているが、昨年アメリカ政府が「中国で新型インフルエンザウイルス感染拡大が発生し、アメリカではシカゴで初めて感染が確認されて以降、パンデミックに発展する」という想定で、シミュレーション、演習が行われた。その結果は、国家レヴェルで対応がなければ1億1000万人が感染し、770万人が入院、58万6000人が死亡する、というものだった。

 トランプ大統領が「全米で10万から20万の人が死亡する」と発表したが、これは国家レヴェルでの対応を行った上での予測であって、何も対応をしなければ220万人が死亡するという数字を挙げていた。昨年のアメリカ政府が行ったシミュレーションでも何も対応をしなければ58万という数字が出ており、10万から20万という数字は大雑把ではあるが、信憑性の高い数字ということになる。

参考までに書くと、シカゴ市は人口が217万人、イリノイ州は1283万人だ。2020年4月1日時点でのシカゴ市での感染者数は3123人、死亡者数は40人、イリノイ州での感染者数は6980人、死亡者数は141人となっている。全米では感染者数は18万6101人、死亡者数は3603人となっている。シカゴ市やイリノイ州で特に感染者や死者数が多いということはない。

 シミュレーションと言えば、戦争や軍隊に絡むものである。日本海軍で伝統として行われてきた「兵棋演習(へいぎえんしゅう)」もシミュレーションである。アメリカに駐在武官として赴任した秋山真之が日本海軍にもたらしたもので、英語ではWar Time Simulationという。図上演習ともいう。ある回線を想定し、あらゆる条件を決めて、戦闘を行ってみる。日本海軍の場合は、太平洋戦争では物量的にも不利ということもあり、条件に手心を加えたり、改ざんを加えたりして、無理やり勝利すると医師也を作っていた。シミュレーションは客観的に行わなければ、実態にそぐわないただの作り話になってしまう。

 アメリカ政府は昨年、パンデミックが起きた際のシミュレーションを行った。これは現在の大勢のどこに欠陥や不足があって、どのような結果になるか、最悪の結果を回避するためにはどのような準備が必要かということを客観的に明らかにするためのものだ。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大はシミュレーションで見つかった穴を塞ぐ前に発生してしまったようだ。アメリカ政府も日本政府と同様に対応が後手に回ってしまったようであるが、得意の物量作戦で何とか挽回しようとしている。トランプ大統領は今年の大統領選挙で再選を目指しているが、対応を間違えば落選の憂き目にあうことになる。今のところ、大統領の支持率は落ちてはいない。しかし、支持率が上がっている訳でもない。

 シミュレーションは日本でも自然災害に関しては行われていることはマスメディアでもよく取り上げられている。恐らく大規模疾病に関してもシミュレーションは行われていただろうし、日本政府はそこで何が足りないか、どこに穴があるかを把握していたはずだ。もし、そのようなことがなされていないとするならば、国家経営上の危機だ。是非、日本政府もシミュレーションを実施して、危機的状況に対する備えに役立てるべきだ。

(貼り付けはじめ)

Surviving The Trump Eraサム・ポトリッキオ

新型コロナを予言?米政府「的中シナリオ」が占う大統領選

20200324日(火)1600

https://www.newsweekjapan.jp/sam/2020/03/post-45_1.php

https://www.newsweekjapan.jp/sam/2020/03/post-45_2.php

<リークされた米保健当局の想定演習が現実に。混乱するアメリカ社会で国民が求めるリーダーは誰か>

米政府は201918月に、ある演習を実施した。「クリムゾン・コンテイジョン」というコードネームで呼ばれたこの演習は、中国で発生した新型呼吸器系ウイルスが航空機の乗客によって世界中に瞬時に拡散されるという、恐ろしいシナリオだった。

「アメリカではシカゴで最初に感染者が確認され、その47日後にWHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的大流行)を宣言した。だが、対応は遅過ぎた。米国内の感染者は11100万人に上ると予測され、770万人が入院し、586000人が死亡するとみられた」

米保健福祉省は、今月リークされたその演習の報告書で、治療法がないウイルスと生死を懸けて闘うには、連邦政府は資金も準備も調整も「不十分」であることが分かったとしていた。演習は学校の休校をめぐって連邦政府と地方の足並みがそろわず、ウイルスとの闘いに必要な医療設備も十分に用意できないことを露呈した。

このシナリオが今、ほぼ現実のものになっている。アメリカの街は不気味なほど静かで、学校は休校になり、バーやレストランは営業を停止した。国民は有能な政府がいかに重要であるかを痛感している。

トランプ米大統領は、多くの前任者にない「チャンス」を手にしていた。パンデミックに真正面から立ち向かえば、大きく株を上げられたはずだ。ところが彼は危機の深刻さを見くびり、国を苦境に追い込んだ。

アメリカと韓国は、いずれも国内初の新型コロナウイルス感染者を120日頃に確認した。韓国では既に感染拡大のピークが過ぎたが、アメリカは危機への備えを始めたばかり。韓国に先見の明があったというより、アメリカに能力が欠けている。

危機は人の本質をあぶり出す。いまアメリカが目の当たりにしているのは、大統領の器の小ささだ。36日に米疾病対策センター(CDC)を訪れたトランプは、選挙運動用のキャップをかぶっていた。ウイルスの犠牲者が多いワシントン州の知事を「ヘビ野郎」と呼び、ウイルス検査について「必要な人は誰でも受けられる」と嘘を言った。第2次大戦以降で最大の危機より、自分の再選を気にしていた。

1カ月ほど前のトランプは、楽に再選を果たせそうだった。民主党の対抗馬はリベラル過ぎるという懸念が党内にもあるバーニー・サンダースになりそうだったし、株式市場は好調で、失業率は50年ぶりの低水準だった。

今は違う。米経済は大不況の崖っぷちにあり、トランプの大統領就任以降3年分の株価の上昇分は吹き飛んだ。過去10年、米経済はほぼ継続して拡大してきた。だが08年前後の大不況以降で初めての重大な危機を迎えた今、もう国民は面白くて新奇な指導者を求めてはいない。テレビでドタバタ劇を見たがる時代は終わり、関心は有能な指導者が今より希望を持てる未来に人々を導けるかどうかに移った。

大統領選は、候補者が時代の求める人物かどうかを測る場だ。その意味で今の危機的な状況は、民主党の大統領候補指名争いでトップを走るジョー・バイデン前副大統領にほぼ完璧な条件をもたらしている。

バイデンは50年にわたって公職を務め、息子を病で失った悲しい経験から他人に共感する能力も高い。オバマ前政権で副大統領を務めたことから学んだ安定感もある。バイデンは忘れっぽく失言も多い。だが態度を決めかねている有権者のほぼ全員が同意できるのは、彼が自分より他人の事情を考えられるということ。すなわち、トランプとは真逆の人間だということだ。

そしてアメリカ人は大統領選で、現職とは真逆の候補者を選ぶ傾向にある。時代はバイデンに味方している。

<本誌2020331日号掲載>

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1

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「“クリムゾン・コンテイジョン・2019”シミュレーションはアメリカ国内でのパンデミックの」 ‘Crimson Contagion 2019’ Simulation Warned of Pandemic Implications in US

―2019年のパンデミックに関する演習は州政府と連邦政府の役人たちに対して懸念のある分野を指摘した

キャロル・マリン、ドン・モーズリー筆

2020年3月24日

NBCシカゴ』

https://www.nbcchicago.com/news/local/crimson-contagion-2019-simulation-warned-of-pandemic-implications-in-us/2243832/

2019年8月、シカゴにおいて、連邦政府の諸機関が集まり、アメリカがいかにしてある疾病の爆発的感染拡大(パンデミック、pandemic)に対処するかについて把握するための演習(シミュレーション)を実施した。この疾病は世界的な観戦爆発を起こしながら、治療法がまだ見つかっていないという設定で演習は実施された。この演習によってパンデミックに対するアメリカの全国規模での欠点や欠如している点が数多く見つかった。その中には医療物資が十分に準備されていないということも含まれていた。

この演習は「真紅の伝染病感染2019年版機能実験(Crimson Contagion 2019 Functional Exercise、クリムゾン・コンテイジョン・2019・ファンクショナル・エクササイズ」」と呼ばれ、結果が一般に公開されているものではない。『ニューヨーク・タイムズ』紙がこの演習についていち早く報じた。

この演習はインフルエンザについてのもので、コロナウイルスについてのものではなかった。しかし、中国で始まり、シカゴに上陸するという架空の感染流行を想定すると、いくつも問題を抱える分野が見つかったと関係文書では指摘されている。

2019年8月13日、イリノイ州とアリゾナ州やコネチカット州といった11の州、連邦政府、州政府、地方政府の役人たちが集まり、4日間の演習を実施した。

シナリオは以下の通りだ。

新型インフルエンザの大規模感染が中国で始まり、急速に感染拡大が起き、アメリカではシカゴで最初に検出され、人と人との接触によってパンデミックにまで拡大するという想定がなされた。

演習では現在のワクチンの貯蔵量ではウイルスを封じ込めることはできないとされた。

この国家規模の演習には次の機関が参加した。

・19の連邦政府の諸機関(19 federal agencies

・12の州(12 states

・74の地方の医療衛生部局(74 local health departments

・87の病院(87 hospitals

報道によると、ホワイトハウスの国家安全保障会議の幹部たちは演習中に簡潔な報告を受け取っていた、ということだ。

主張な発見は以下の通りだ。

インフルエンザのパンデミックに対して連邦政府は十分な予算を持っていない。

国防生産法をどのように適用するかについての混乱がある。

現在の医療資材供給チェインと生産能力は需要を満たすことはできないだろう。

世界規模の製造業の能力では、アメリカ国内の個人の防御装置や付随の装置の需要を満たすことはできないだろう。

アリソン・アーワディは演習に参加し、演習の結果を受けてシカゴ市の対応能力を引き上げてきた。アーワディ博士はシカゴ市が取った行動と同じ行動を連邦政府の諸機関が取るかどうかについてはコメントしなかった。

シカゴ市長ローリ・ライトフットは記者たちとの電話を通じた会見で雄弁に語った。

市長は「私にとって明白なことは、連邦政府は私たちを助けてはくれないということです。あの人たちは、最後の最後でさっそうと現れる騎兵隊(cavalry)ではないのですよ」と述べた。

シカゴ市公衆衛生局、緊急事態対応・コミュニケーション室、イリノイ州健康衛生部、緊急事態対応庁も演習に参加した。

ニューヨーク・タイムズ紙の報道とアーワディ博士は連邦政府の諸機関が協力し、対応戦略を構築していることを称賛しているが、パンデミックを想定した演習では、恐ろしい結果を予想している。国家レヴェルでの協力した対応がなければ、アメリカ国内で1億1000万人の感染、770万人の入院治療、58万6000人の死亡が出るという予想である。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。
carlosghosncaroleghosn001
 今回は、カルロス・ゴーンについての記事をご紹介する。カルロス・ゴーンは日本で訴追され、現在保釈中であるが、2019年12月30日に関西国際空港からプライベートジェットで出発、イスタンブールを経て、レバノンの首都ベイルートに到着した。ゴーンはその後、ベイルートで記者会見を開き、日本の司法制度を批判し、日産自動車のクーデターに日本政府まで関与していると述べた。
下に紹介する記事に出てくる「big in Japan」という言葉は、欧米で使われる言葉で、「アメリカなどでは全く売れていないのに、日本では売れている」バンドや小説を馬鹿にした言葉である。どのバンドだったかは失念したが、中には日本で人気になって、日本のファンが支え、そこからアメリカなどで大人気になるというパターンがあったと記憶している。
レバノンといえば、アーレント・レイプハルト(Arend Lijphart、1936年―)の提唱した「多極共存型民主政治体制(Consociational Democracy)」を思い出す。レイプハルトの著書The Politics of Accommodation: Pluralism and Democracy in the Netherlands (1968)は、オランダの政治を論じたものであるが、この中で、一国内に様々な分裂線、たとえば言語や文化、民族の違いがある場合に(多言語、多文化、多民族国家である場合に)、民主政治体制が維持しづらいと言われている中で、それぞれのグループを代表するエリートたちがうまく調整して民主政治体制を安定させてきた、ということをレイプハルトはオランダの事例から主張した。これを多極共存型民主政治体制と呼ぶ。これに当てはまるのがレバノンだ。
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レバノンは多くの宗教が共存する国で大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンニ派、国会議長はイスラム教シーア派から選出されるのが慣例となっている。国会議員数も各宗派の人口に応じて定められており、マロン派34名、スンニ派とシーア派はそれぞれ27名となっている。レバノン内戦(1975―1990年)以降はそのようにして国家を安定させてきた。
元々は「同じ日に海水浴とスキーができる」と言われ、首都ベイルートは「中東のパリ」とも呼ばれるなど豊富な観光資源を持つ美しい国であるが、現在は経済状態が厳しいようだ。そうした中で、現在の成否や政治エリート層に対する抗議活動も盛んにおこなわれているようだ。
 レバノンに帰国したゴーンであるが、レバノン国内では歓迎する人々と批判する人々がいるようだ。歓迎する人たちは、ゴーンが世界有数の国際企業である日産自動車のCEOとして会社を立て直した成功者、立志伝中の人物と捉え、彼の経験をレバノン経済立て直しに活かして欲しいと考えているようだ。一方、批判する人々は、レバノンのエリート層は腐敗を極めているのに、そこあらたにお金のことで容疑をかけられている人が入ってくる、それをエリート層が暖かく迎えるのはおかしい、と批判しているようだ。
 ゴーンの逃亡劇によって、日本の司法制度について考えてみるという動きも起きている。そもそも日本では警察が逮捕した時点で容疑者とは呼ばれるが、実際には犯人として処罰されるような状態になる。長期間の拘留、人権に配慮のない取り扱いが問題になっている。そもそも推定無罪(裁判所の判決が出るまでは無罪)の原則が守られていると考えられない。私たち国民の側も「お上がお縄にした悪い奴」という前近代的な考え方を改めねばならない。そして、国家が行うことに対して厳格さを求め、制限をかけるということを考えるべきだ。
 ゴーンの逃亡は議論を始める奇貨とすることが重要だと思う。
(貼り付けはじめ)
日本では有名な「コストカッター」が帰国(Big in Japan, ‘Le Cost Killer’ Comes Home)
―カルロス・ゴーンのベイルートへの奇怪な帰還は抗議と危険の状態にある国からの複雑な反応を引き起こした
レベッカ・コラード筆
2019年1月10日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2020/01/10/carlos-ghosn-escape-lebanon-protests-nissan/
ベイルート発。水曜日に実施された2時間にわたった記者会見の中で、元日産自動車CEOカルロス・ゴーンは自身の無実を繰り返し訴えた。そして、自身の元の雇用者と日本の司法による共同謀議についての概要を説明した。
ゴーンは日本での自宅軟禁状態から脱した。しかし、100名以上のジャーナリストたちが記者会見に詰めかけた。ジャーナリストたちは、伝説のマジシャンであるフーディーニのマジックのように日本からトルコを経てレバノンに入国した詳細について聞きたがった。しかし、ジャーナリストたちの希望は失望に終わった。
その代わり、ゴーンは、自身の無実を証明すると主張する文書と2018年11月に東京の空港で突然逮捕された時の状況の説明を含む、熱心な説明を行った。2018年11月の突然の逮捕について、ゴーンは1941年の日本によるアメリカへの奇襲攻撃になぞらえた。1941年12月に日本軍はハワイのパールハーバーの海軍基地を奇襲攻撃した。
ゴーンは次のように述べた。「私に質問する人たちがいますが、私の突然の逮捕について疑いを持っているんでしょうか?パールハーバーで何が起きましたか?」。
ゴーンはレバノンの政治エリート層から快く受け入れられている。2019年12月30日にベイルートに突然入国した直後に、レバノン大統領ミシェル・アウンと会談を持ったと報じられている。しかし、一般のレバノン国民からは全面的に受け入れられてはいない。そうした人々は、既存の政治エリート層に対する抗議活動が激しくなっている国であるレバノンに数百万ドル規模の資金を盗んだ容疑で告訴されている人物を受け入れる必要があるのかという疑問を呈している。
ゴーンは最初に所得の過少申告と日産自動車からの資金の引き出しの容疑で逮捕された。その後、ベイルートには彼の顔とスローガンが掲載された大きな宣伝広告版が設置された。それには「私たちはみんなカルロス・ゴーンだ」と書かれていた。ゴーンが子供時代の大部分を過ごした国レバノンの国民の多くは、ゴーンは成功物語の主人公と見なしていた。ゴーンは世界的大企業のCEOになり、倒産の危機から利益を生み出すまでに引き上げた。
記者会見「今日、私はレバノン人であることを誇りに思っています。この人生の厳しい時期に私の傍らに寄り添ってくれる国はただ一つ、レバノンです」と述べた。ゴーンはブラジルとフランスの国籍も持っている。フランス国籍については、日本の自宅軟禁状態からレバノンへ逃れるにあたり、フランスのパスポートを使用したと考えられている。フランスのパスポート以外のパスポートは全部取り上げられており、フランスのパスポート1冊だけが鍵付きのケースに入れられて渡されていた。
ゴーンはレバノンに入国した。レバノンは経済的、エネルギー的危機に直面している。レバノン国民の中には、レバノンの状態を改善するために彼に役割を果たして欲しいと望む声が出ている。巨額な負債を抱え、通貨価値は不安定で、日常的に停電が頻発する中で、レバノンは経済破綻に向かっていると考えられている。レバノン国民の多くは。「コストカッター」と呼ばれているゴーンについてレバノン経済を立て直せる人物だと考えている。レバノン経済は非効率な官僚制と全てのレヴェルでうまく機能させられていない政府によってこのような悲惨な状態に陥っている。また、腐敗も深刻な状況になっている。
レバノンのドゥールーズ教徒の指導者ワリード・ジャンブラットはツイッターに投稿し、ゴーンを救国の手助けをしてもらおうと主張した。
ジャンブラットは次のように書いた。「私はゴーンをエネルギー担当大臣に任命すべきだと提案したい。エネルギー省はマフィアにコントロールされ、改革を拒絶し、そのために巨額の赤字を出すようになっている。カルロス・ゴーンは帝国を築いた。おそらく彼の経験から利益を得ることができるだろう」。
ゴーンのベイルートの邸宅の近くの通りで文房具店の店主ジコ・コウリーは「彼が選挙に出るなら投票しますよ。彼は素晴らしいビジネスマンです。レバノンの愛をしている。大臣になるべきです」と語った。
水曜日の記者会見の席上、レバノンが抱える諸問題を解決するために役割を果たすことができるかと質問され、ゴーンは用意周到に準備された内容を答えた。
ゴーンは「私は政治家ではありませんし、これまで政治的野心を持ったこともありません。しかし、もし私の経験をこの国のために使って欲しいと頼まれるならば、私は準備ができていると申し上げたいと思います」と述べた。
文房具店店主コウリーのようなレバノン国民の一部はゴーンに対する容疑はでっち上げだと考えている。コウリーは店に立ちながら、日常で起きている電力供給制限のために発電機をスタートさせながら、次のように語った。「大きな話については分かりません。みんなが税金についてごまかしているもんですよ。だからと言って牢獄にぶち込まれることはありません」。
レバノン内戦終結後にレバノンを支配してきた腐敗した政治的エリート層の退陣を求める反政府抗議活動が数カ月続いた。ゴーンの事件についてはインターネット上で詳細に調査された。彼が留置された際にはそのようなことは起きなかった。
あるツイッター利用者はジャンブラットのツイートに対して次のように反応した。「レバノンには腐敗した人間、国賊が既に多く存在している。そんな人間たちを更にまた外国から輸入したいと望むのか?」。
今週の初めの抗議活動で、参加者たちはゴーンについてのスローガンを使うようになった。そのスローガンはレバノンの政治家たちと中央銀行総裁に対して使われるものであった。そのスローガンとは、「泥棒、泥棒、カルロス・ゴーン、彼は泥棒だ」である。
税金だけがゴーンの問題ではない。2008年にゴーンはイスラエルを訪問した。ゴーンは同国においてイスラエル大統領で当時の首相だったエフード・オルメットと会談を持った。オルメットは2006年にイスラエルを率いてヒズボラと戦争を行った。戦争の結果、レバノン国内で約1200名の死者が出た。イスラエル訪問はレバノン国民にとっては違法行為である。首相と会談を持つこともまた然りである。複数のレバノンの弁護士たちは、ゴーンのイスラエル訪問について告訴を行った。しかし、レバノンの最高指導者たちは楽観的のように見える。ヒズボラでさえもゴーンの敵性国家イスラエルへの訪問を問題視していない。
ゴーンはレバノンへの帰還によって司法的にいくらかの安心を得ることができると考えている。木曜日、ゴーンはレバノンの検事総長に召喚され、記者会見よりも少し長い時間尋問を受けた。レバノン政府は日本政府に対してゴーンに対する告訴に関連する書類を提供するように求めている。しかし、インターポールが逮捕を模索している中でレバノン政府はゴーンを日本に引き渡す計画を持っていないことは明白だ。
レバノンは、ゴーンがフランスのパスポートを使って合法的に同国に入国したと発表した。木曜日、レバノンはゴーンに対して出国禁止を申し渡した。レバノン国内では、ゴーンに対する出国禁止措置は制限というよりも彼の安全の確証のようなものだというジョークが話されている。
ゴーンは、日本の司法ではなく、迫害から逃れてきたと述べている。独房での監禁、弁護士の同席なしの長時間にわたる取り調べ、妻キャロル・ゴーンとの会話の禁止といったことをなされていたと発言した。ベイルートでの記者会見中、ゴーンは妻キャロルを常にそばに置いていた。キャロルには日本で逮捕状が出されている。
ゴーンは自身に対して公平な聴取がなされる場所ならばどこでも裁判を受ける準備があると述べた。ゴーンは繰り返し日本の高い有罪率について言及した。「99.4%!」と。ゴーンはレバノンの司法当局への協力を約束した。
今週、レバノン・ブロードキャスティング・コーポレイション・インターナショナルとのインタヴューの中で、ゴーンは「私は、日本の司法システムとよりもレバノンの司法システムとの方がより快適に感じる」と述べた。
多くのレバノン国民は腐敗したエリートに嫌気がさしていることは問題である。司法の独立の欠如は抗議運動にとっての重要な批判点となっている。法的諸権利擁護グループは、レバノンの司法システムは政治エリート、ビジネスエリートから深刻な影響を受けている。こうした人々はゴーンを擁護する立場に立つと見られている。
レバノンの別のツイッター利用者は「もちろん、レバノンであなたはより快適でいられることだろうね、エリートたちはあなたが楽に過ごせるようにしてくれるだろうよ」とツイートした。
(貼り付け終わり)
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 古村治彦です。

 日本の安倍晋三政権とアメリカのドナルド・トランプ政権との間で貿易交渉が行われ、アメリカ側に得るところが多く、日本側に得るところがほとんどない内容で合意がなされた。日本側はアメリカ側の農産品に対する関税を段階的に引き下げる一方、アメリカの自動車輸出に関して関税引き上げをしないというアメリカ政府からの確固とした言質を取ることに失敗した。
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アメリカはTPPから脱退したが、TPPに入っていた場合と同等の日本への悪説のしやすさ(関税の引き下げ)を手にすることができた。日本の完敗ということになる。安倍晋三首相が何とかしようとアメリカのドナルド・トランプ大統領から何とか妥協を引き出そうと媚態を駆使していたことは外側から見るとよく分かるようだ。
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 下の記事は、日米交渉について網羅されている。貿易交渉と共に日本駐留の米軍に対する日本政府からの「思いやり予算」の4倍増(20億ドルから80億ドル)の話も絡めて書かれている。簡単に言えば、日本側はアメリカら押されっぱなしということである。アメリカ政府は韓国政府に対しても、駐留経費負担の増額を求めたが、韓国政府は明確に拒絶した。

 日本にとっての生命線は自動車輸出だ。アメリカへの輸出の20%を占めているし、自動車会社が支えている人々の数を考えると、まさに日本経済を支える柱だ。トランプ政権は、日本からの自動車輸出を「国家安全保障上の脅威」と言い出し、だから関税を引き上げることもありうると日本側に脅しをかけている。その脅しに屈した形だ。貿易合意の中で、確固とした文書で関税引き上げを行わない、という一札を入れさせることができなかった。と言うことは、これからも貿易交渉があれば、自動車への関税引き上げを脅しとして使われることだろう。

 また、日本側からの思いやり予算の4倍増もアメリカから脅されて無理やりにでも飲まされることになるだろう。6000億円の増額ということになる。日本周辺の脅威を過剰に煽り立ててアピールすることで、日本側から金を引き出すという、チンピラまがいのやり方をアメリカ側はしている。アメリカも昔ほど余裕はなくなり、背に腹は代えられないとばかりにこうした脅しをしてくる。

 こうした脅しに対しては、粘り強く交渉を長引かせるということが大事だ。そうしたことが1980年代まではできていたが、今では日本側の交渉担当者が一体どちらの味方なのか分からないという状況になっている。脅しに対しては「柳に風」「気に入らぬ風もあろうに柳かな」という態度で接するべきだろう。しかし、今の日本の状況ではそういうことができる人材もいないし、最高指導者層もとうに諦めているし、こうした上級国民がアメリカの手先となっている。年末に来年のことを話してももう鬼が笑うこともないだろうが、日本の将来はますます暗くなるということだけは確かだ。

(貼り付けはじめ)

日本は貿易に関してトランプ大統領を信頼して後悔している(Japan Regrets Trusting Trump on Trade

―貿易交渉によって日本政府はより多くを与え、より少なく手に入れた

ウィリアム・スポサト筆

2019年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2019/12/05/tokyo-abe-japan-regrets-trusting-trump-on-trade/

日本は、アメリカ大統領ドナルド・トランプと交渉をしようとする際のリスクを人々に改めて思いをいたさせる。日本側はアメリカのドナルド・トランプ大統領との交渉を使用とする場合のリスクについて気づくことができなかった。しかし、日本は交渉を行い、合意に達した。日本はアメリカとの貿易交渉で何も獲得しないままで合意に達したように見えたが、日本政府は今になって更に駐留アメリカ軍基地の特権に対する支払いについて交渉を行うように求められている。

貿易と駐留米軍基地に関して、日本は切り札が少ない中でできるだけ努力をしなければならないという難しい仕事をこなさねばならなかった。貿易に関する合意の中で、日本はアメリカからの農産物輸入に門戸を開放した。これによって門戸が閉ざされてきた市場(訳者註:日本)にアクセスできることでアメリカの農業従事者たちにとって利益となる。この市場(訳者註:日本)では消費者たちは平均よりも高い値段を払っていた。一方、日本は何も持ち帰ることがなかった。アメリカ政府が日本からの自動車の輸入を国家安全保障上の脅威とはとらえないと明言して欲しいと日本側は望んでいたが、曖昧な約束がなされただけだった。アメリカ政府は日本の自動車輸出を国家安全保障上の脅威と捉え、懲罰的に25%の関税をかけることを検討している。

一方でアメリカは満足して交渉の場を後にした。テーマとなった多くの物品において、アメリカ国内の製造業者たちは12か国による環太平洋経済協力協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)内と同様のアクセスを確保できることになった。トランプ大統領は就任直後にTPPからの離脱を決定した。今回の貿易合意は牧場経営者たちにとって恩恵となった。彼らは中国との貿易戦争に苦しんだが、日本の国内産牛肉よりもより低いコストを武器にすることができる。アメリカ側は低い関税率は年に70億ドル分の農産物にかかることになると述べている。しかしながら、利益はすぐに出る訳ではない。牛肉にかかる関税はこれからの15年間で現在の38.5%から段階的に9%にまで引き下げられることになる。ブドウ園にとっては、ワインに対しての関税率が2025年までに現在の15%が撤廃されることで牛肉農家よりもより大きな利益を得ることになる。

他方、日本にとっての利益はアメリカに比べてかなり不透明だ。蒸気タービン、楽器、自転車のようないくつかの特定の製品の関税引き下げは別にして、日本の安倍晋三首相が日本国内に示すことができるものは多くはない。

日本側からの主要な要求は、トランプ大統領が日本からの自動車輸出に対して関税を引き上げるという脅迫を実行しないという保証を得るというものだった。今年5月にトランプ政権は日本とヨーロッパからの自動車輸入はアメリカにとって国家安全保障上の脅威となるという決定を下した。従って、関税引き上げの可能性は消え去っていない。日本側にはトランプ政権に対する疑念が存在する。しかし、長年にわたり日米安全保障関係は最強のものだということは考えられてきた。

日本からアメリカへの自動車輸出は1986年の段階に比べて半分程度になっている。1986年の段階では日本の自動車各社は北米で巨大な生産設備を備えていなかった。日本からアメリカへの自動車輸出は、日本からアメリカへの輸出の20%を占めている。トランプ大統領が引き上げると脅している関税率のレヴェルになってしまうと、日本からアメリカへの輸出には大きなダメージとなる。

日本側はこの微妙なテーマについて確固とした内容の文書を得ることができなかった。ただ、「日米両国はこれらの合意の精神に反する手段を取ることはしない」というあいまいな文が書かれているだけだった。日本の茂木敏光外務大臣が交渉を監督していた。茂木外相は記者団に対して、トランプ大統領は安倍首相に対して「合意内容が真摯に実行される限りにおいて」関税引き上げを行うことはしないという口頭での約束を与えたと述べた。

トランプ大統領やアメリカ側への信頼感が低下していく中で、多くの疑問が出てきている。日本のマスコミは、安倍首相がトランプ大統領の歓心を買うために配慮を行ったがそれで日本側に利益がもたらされたのかどうかという疑問を呈している。安倍首相はトランプ大統領をいち早く支持し、少なくとも表面上は忠実な支持者であり続けてきた。トランプ大統領の予想外の選挙での勝利の後、安倍首相は外国の指導者の中で最も早く面会した。それから少なくとも10回は2人で会談を持った。今年5月、日本の徳仁天皇が即位して最初に会談を持った外国の指導者という名誉をトランプ大統領は与えられた。

このことは日本国内で議論を巻き起こした。日本のリベラル派はポピュリスト的でナショナリスティックな政策を強く主張している。日本の保守派はトランプ政権の反移民、反中国政策により共感を持っている可能性はあるが、しかし同時に、こうした人々は日本の指導者が公の場で媚びへつらう姿を見せることを目撃することを嫌う。

トランプ大統領は安倍首相のごますりを額面通りには受け取っていないようだ。2018年、トランプ大統領は次のように警告を発した。「私は日本の安倍首相やそのほかの人々と会談を持つ。安倍首相は素晴らしい人で、私の友人だ。彼らの顔には笑いはほとんど出てこないだろう。そして、彼らが笑う時は“アメリカを長い間利用して自分たちの利益を得ることはできないと確信した、そんな日々はこれで終わりだ”と感じる時だ」。

そして予想された通り、トランプ政権はギアをすぐに入れ替え、貿易問題から、アメリカ軍将兵と基地への日本側の支払いという微妙なテーマに重点を移した。アメリカ軍は5万4000名の将兵を日本に駐留させている。その約半分は沖縄に駐留している。沖縄本島の18%を使用している。沖縄の住民たちから長年にわたり怨嗟の声が上がっているのは当然のことだ。

アメリカ軍の大型駐留は日米軍事同盟の大きな部分である。日米軍事同盟は1960年に公的に成立し、定期的に更新され、範囲が拡大している。日米同盟によって、日本側にはアメリカによる防護が与えられる約束が与えられている。それには核の傘が含まれている。これは日本の平和主義憲法を保ち、核武装の意図を放棄するための重要な要素である。

アメリカにとって、日米軍事同盟の意義は、ロシア、中国、北朝鮮といった核武装している近隣諸国の中で裏切る可能性のない同盟国を獲得したということになる。加えて、日本側は米軍基地の土地を提供したが、これらの基地は朝鮮戦争やヴェトナム戦争にとって便利な場所になった。そして現在、アメリカが中国を次の軍事上のライヴァルと捉えている中で戦略上の恩恵となっている。しかしながら、トランプ大統領にとっては、韓国国内同様、日本国内の米軍基地はコストであり、これをアメリカのバランスシート上の利益に変えたいと望む存在である。

『フォーリン・ポリシー』誌で既に報じられているように、アメリカ政府は日本側からの貢献額を20億ドルから8億ドルへと4倍増するように求めている。これに加えて、日本は間接的なコストの支払いをしているが、その額は推定で12億ドルだ。それは基地建設のコストも入っている。日米両国政府はコストの詳細な内容を発表していないが、日本がこれ間に支出したのは推定で全コストの75%に上ると推定されている。これが意味するところは、貢献額の4倍増はアメリカ側にとっては素晴らしい利益となるということだ。米軍関係者が日本からの利益からのボーナスを受け取ることが出来るかどうかという問題は置いていても、より明確になったのは、アメリカ外交は取引でいかようにも変わる性質を持っているということだ。

ドル(もしくは日本円)によって動かす外交は日本側にとって新奇な概念ではない。日本側は外交を経済的な利益を拡大するために長年にわたり利用してきた。貿易交渉の中で、媚びへつらう態度を取ることが日本の自動車会社を守るための低コストの方法であることを示している。安倍首相はアイゼンハワー政権のチャールズ・E・ウィルソン国防長官の国家と資本主義を結合させることについての有名な(しかし誤って引用されている)発言を引用し、トヨタにとって良いことは日本にとって良いことだと結論付けた。この文脈の中で、自分をゴルフ友達だと卑下することに終始した不快な時間はどんな意味を持つだろうか?

貿易交渉において、日本側は「吠えなかった犬(訳者註:あって当然のものがないことを重要視する)」について重点を置くことが可能だった。トランプ大統領にアメリカの農業従事者の利益について自慢させながら、日本側は日本円の価値について何も言及していないという事実について沈黙を守った。

2012年に安倍首相が就任して以来、日本銀行は貨幣量の拡大を通じて経済を再膨張させるという前代未聞の施策を実行してきた。これによって日本円の価値は極めて低くなった。安倍首相が就任当時には1ドルが86円だったものが現在では109円になっている。

日本政府はこれについて様々な形で正当化をしている。日本銀行の施策は25年も続く経済におけるデフレーションと戦っていると主張している。同時に、円の価値低下は輸出業者にとっては追い風となっている。これによってトヨタをはじめとするその他の輸出企業がアメリカの輸出する際に価格を24%引き下げることができるようになった。

日本側は将来の自動車輸出への関税についての明確な約束を得ることに失敗したが、関税引き上げが行われる可能性をとにかく低くすることはできた。ここ3年間でトランプ大統領について1つ明確になっていることは、その瞬間の状況に合わせることに躊躇しないということだ。最終的に、交渉力は政策の公平性よりも重要だということになる。

日本にとってより不気味なことは、日米両国は交渉を継続することに合意していることだ。そこで日本政府は自分たちが良く知っているゲームを再び行うことになるだろう。それは交渉の相手側がうんざりするか、交渉のテーマとなった問題が亡くなるまで交渉を長引かせるという日本側得意の戦略を再び持ち出すことだ。モトローラ社の携帯電話を日本で販売できるかという問題は1980年代を通じて長く続いた問題となった。これは長年続いた交渉の後に、歴史的な補足となって日本側に残った。日本の経済産業省の官僚たちは、どんな合意も最終的なものではなく、長くゆっくりと続く交渉買い手の準備をするという考えを持っていた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 2019年7月21日に参議院選挙の投開票が行われました。開票は22日になっても続けられましたが、大勢は21日の段階で判明しました。

 

 今回は、自民党と公明党の与党は選挙の対象となった124議席のうち71議席を獲得し、過半数を超えましたが、改選議席からは6議席を減らしました。公明党は改選議席数を維持しましたので、自民党が減らしたということになります。新潟、山形、秋田、岩手、宮城といった本州北部の各県で野党勢力が勝利しました。これらの地域は米どころですから、私はツイッター上で、これは「rice rebellion(お米反乱・反抗)」と書きました。吉本興業の社長さんと同じで全く受けませんでしたが。

 

 ヨーロッパでは労働者と農業従事者が連帯する「レッド・グリーン同盟(Red Green Alliance)」という考え方があり、政治の場面で実現することもありました。日本では、戦後の一時期、戦前の農民運動の流れから農民組合が左傾化していた時期もありましたが、農協(農業協同組合)は自民党の大きな支持基盤でした。労働組合は、官公庁の労組自治労や日教組を中心とする総評が日本社会党、民間企業の労組を中心とする同盟が民社党を支持していました。

 

 戦後すぐの人口や就労者数を考えると、農業地帯に基盤を置くというのは当然のことでした。戦後すぐの日本の就労者数に占める農業従事者の割合は50%程度でした。その後、重工業を中心とする輸出型企業の成長による高度経済成長時代に、地方から多くの若者が都市部で就労するようになり、農業従事者の割合は低下していきました。

 

 それでもいわゆる一票の格差問題ということがあるように、地方からの議員選出数が人口に比べて多い、という状態も続き、自民党は地方を基盤としてきました。自民党は、食糧管理制度を維持しての米価の高値維持や公共事業を通じて、高度経済成長の果実を地方に行きわたらせる政策を実施ました。これを補償型政治(Compensation Politics)と言います。その見返りとして、自民党は地方で勝利し、安定した基盤を築くことが出来ました。

 

 しかし、平成に入り、経済が停滞する中で、農業や公共事業、補償型政治は衰退していきます。そうした中で、補償型政治を代表する「田中派・竹下派」の流れをぶち壊す、小泉政治が出てきて、地方は息の根を止められました。旧民主党に参加した小沢一郎代議士が、農家の個別補償制度を主張し、民主党政権時代に実施しましたが、これは小沢代議士が田中角栄元首相の流れにある人であることを示しています。

 

 それでも地方ではいまだに自民党支持が強固な訳ですが、今回地方で自民党に対して異議申し立てが起きたことは注目されます。それでも自民党は小泉・安倍・麻生路線のアメリカ型システムによる改革(破壊)政策を実施し、都市部に住む、中間層(安定した雇用と比較的高い給与が保障されている)の支持を得ることに成功しています。

 

 立憲民主党、国民民主党では、立民が議席を増やし、国民民主は微減ということになりました。複数区での候補者調整がもう少しできていれば、当選できたかもしれないという惜敗した候補者たちが出たのは残念なことでした。これは他の野党でもあったことで、次の選挙での野党共闘の際の教訓にすべきことです。たとえば、東京都選挙区、立民2名、国民民主1名が立候補しました。立民の山岸一生氏が惜敗しました。大阪府選挙区では、立民、共産、国民民主の候補者が共に落選ということになりました。ここで何とかならなかったのかという思いに駆られます。

 

 立民の枝野幸男代表は立民の野党第一党の地位を確固、不動のものとすることに終始し、野党共闘に後ろ向きだったという批判も起きています。国民民主とは感情的な行き違いもある、共産党とも相容れないということも言われました。全てある部分では本当のことなんでしょう。しかし、それでも全国の一人区のうち、10で野党側が勝利を収めることが出来たというところを考え、次はもっとうまくやってください、と希望するばかりです。立民をあしざまに攻撃することは簡単ですが、それではもっと大きな敵を見逃すことになります。

 

 共産党は微減でしたが、野党共闘にもより前向きで、今回自民党の議席減に貢献したと言えると思います。社民党は政党要件を喪失するのではないかという危機感の中、得票率2%を超え、吉田忠智前党首が国政復帰を果たしました。低投票率の中、前回よりも少しですが、比例での得票数を伸ばしたというのは、改憲に反対する人たちが投票したということなのだろうと思います。愚直さというものに時に神様は微笑むものなのでしょう。

 

 れいわ新選組とNHKから国民を守る党がそれぞれ2議席、1議席を獲得し、政党要件を満たしました。これが今回の選挙のハイライトで、自民党の勝ち負けということすら、どっかに追いやられてしまうほどでした。

 

 れいわ新選組は4月に旗揚げされました。この時、私は「大丈夫かな、山本太郎議員は東京都選挙区から出馬したほうがいいんじゃないか」と考えていました。先を見る目がないことは、2016年のアメリカ大統領選挙の結果を外したことでも知られていますので、今更驚く人はいないと思いますが、れいわ新選組に対する支持の盛り上がりは予想を超えるものでした。消費税廃止、財源については原題貨幣理論(MMTModern Monetary Theory)という新鮮な訴えで、現在、生活苦に陥っている若者層(20代から40代まで)の支持を得ました。

 

 れいわ新選組の台頭は、欧米で起きている流れに連なるものです。イギリス労働党では、ジェレミー・コービンが党首となり躍進、アメリカ民主党では、2016年大統領選挙でヒラリー・クリントンを追い詰めたバーニー・サンダースの高い人気、突如すい星のように登場したアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員の活躍といったことに連なるものです。

 

 冷戦終結、ソ連崩壊以降、リベラルや進歩主義派といった人々の旗色は悪く、市場原理を基盤とする新自由主義が世界を席巻しました。しかし、新自由主義(むき出しの資本主義)による矛盾もまた同時に世界を覆いました。日本も例外ではありません。格差(inequality)が拡大する中で、新自由主義への疑問と異議申し立てが起きました。

 

 その時に、ずっとぶれずに進歩主義的考えを堅持していたコービンやサンダースを人々が「発見」しました。そして、欧米で大きな流れとなっています。既存のリベラルはまたエスタブッシュメントなのだという考えが広がり、人々の怒りが燃え上がりました。これが現在のポピュリズムの正体です。ポピュリズムは右と左に同時に出現しました。アメリカでは、ドナルド・トランプ大統領の出現とAOCの出現は右と左で全く違うように見えますが、同根の現象なのです。ポピュリズムは間欠泉のようなものだと思います。あちこちからお湯が吹きあがりますが、同じお湯です。怒りのお湯です。今回、N国党が議席を獲得しました。こちらもポピュリズムの右側の吹き上がりということになります。

 

 エスタブリッシュメント批判、エリート批判という点でとらえるならば、こうした動きは立民に対する批判ということも言えます。興味深かったのは、立民のブレーンとされる大学教授や知識人たちが、選挙戦中盤以降、れいわ新選組の批判を始めたことです。ポピュリズムは危険だ、山本太郎は危険だ、という言葉が飛び交いました。この構図は現在のアメリカ民主党内で起きているエスタブリッシュメント・主流派(ヒラリー派)と進歩主義派(サンダースやAOC)の内部対立と同じだと私は考えます。

 

 立民の東京都選挙区に立候補した山岸一生氏の最初の選挙ポスターが象徴的だと思います。そこには「元朝日新聞記者」「筑駒中、高、東大法学部卒」としか書かれていませんでした。このポスターは選挙戦が進むにつれて印刷し直され、貼り直されたそうですが、これで「ほー、素晴らしい、是非投票しよう」となると考え、それを「お前はアホか」と止める人がいなかった、結局時間と資源の無駄遣いをした、ということは象徴的です。

 

 生活者の目線はそこにありません。そして、「なんだよ、お前も結局はエリートで、俺たちを抑圧する側出身の奴じゃないか」ということになります。「山岸さんは自分から握手を求めに行くような気さくな人ですよ」ということでしたが、そんなことは当たり前じゃないでしょうか。選挙運動中に有権者が握手をしに来てくれるのを待っている候補者がどこにいるでしょうか。人気アイドルの握手会じゃあるまいし。

 

 立民は「令和デモクラシー」という大正デモクラシーになぞらえたスローガンを掲げましたが、どれほどの人たちの記憶に残っているでしょうか。立憲主義を透明に入れていることは素晴らしいし、これからも党勢を拡大していって欲しいと思いますが、「上から目線」という点は改善されるべきだと思います。

 

 自公維新で3分の2以下になりましたが、野党側の動き次第で、改憲が進んでしまう可能性が高い、微妙な議席配分となっています。是非野党勢力には小異を捨てて大同につく、「国民の生活が第一」で進んでいっていただきたいと思います。

 

(貼り付けはじめ)

 

参院選当選者確定…与党、改選議席から6減らす

 

読売新聞 2019年7月22日

https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190722-OYT1T50215/

 

 21日に投票が行われた第25回参院選は22日午前、当選者が全て確定した。

 

 自民、公明の与党は改選定数124の過半数(63)を超える計71議席を獲得したが、改選議席(77)からは6減らした。自民党が確保した57議席は、2016年参院選の56議席(追加公認含む)を上回ったものの、圧勝した13年の65議席には及ばなかった。宮城、滋賀、大分など8選挙区では、現職が落選した。公明党は選挙区選に擁立した7人全員が当選し、比例選の7議席を合わせると、党としての過去最多に並ぶ14議席を獲得した。

 

 立憲民主党は比例選で自民党に次ぐ8議席を獲得し、改選9議席から17議席に伸ばした。改選8議席の国民民主党は2減の6議席にとどまった。旧民進党を源とする立民、国民両党の議席を合わせると計23議席で、16年に民進党が獲得した32議席を下回った。両党が1人区で支援した無所属の野党統一候補は8人が当選した。

 

 共産党は改選8議席から1減らした。日本維新の会は関東でも議席を獲得し、10議席に伸長した。社民党は改選1議席を死守した。諸派のれいわ新選組は2議席、NHKから国民を守る党は1議席をそれぞれ比例選で獲得した。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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