古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。よろしくお願いします。

カテゴリ: 日本政治

 古村治彦です。

 

 今回は、眞子内親王の結婚を巡り、日本と欧米では受け取り方が違うのだということが分かる記事をご紹介します。まず、記事を読んでいただくと、あれ、なんだか私(たち)が持つ者と違う感覚で書いているなということが分かります。

 

この記事の内容で、著者が誤解していると思われるのは、眞子内親王が今上天皇の孫の中で最年長なので、眞子内親王が皇族の地位を続けることが出来たら、年長であるので皇位継承できると考えている点です。私たちの感覚では、今上天皇、現在の皇太子と続いたら、孫の世代では、皇室典範が改正されて女性も天皇になれるとなったら、皇太子の娘である愛子内親王、開成がなければ、秋篠宮の息子である悠仁親王が天皇になることになり、秋篠宮の娘である眞子内親王、佳子内親王はそうではないということになります。記事の著者は、眞子内親王と愛子内親王を取り違えて考えているのかもしれません。もしくは、日本では年長者が優遇されるということを知っていて、最年長の孫だから、この人も皇室典範が改正されたら天皇になれると考えたのかもしれません。

 

皇室典範の現在の規定では、男性だけが天皇になりますので、今上天皇の次は皇太子、もし存命であれば、弟の秋篠宮、そして、悠仁親王ということになります。他にも男性皇族は存命ですが、年齢などを考えるとこれが現実的な将来図だと思います。記事の著者はアメリカ人で、ヨーロッパ諸国の王位継承の歴史や王族の地位についての知識に基づいて考えていて、ヨーロッパと日本の違いを感じて記事にしているのでしょう。

 

 今回の記事は、「天皇の孫で最年長である眞子内親王が一般人である男性と結婚することで皇族としての地位を失う。彼女は天皇になれるかもしれないのに一般人との結婚を選んだ。ある意味では世紀の恋、ということになる。また、女性が天皇になれないという規定については賛成、反対両方がある」ということを書いています。

 

 皇室典範が改正されて、女性が結婚後も皇族の地位を維持できるということになると、女性皇族にも皇位継承権が与えられることになります。そうなると、もし、現在未婚の内親王が結婚する前に改正されると、皇族の数は維持され、皇位の継承についてはより安定するでしょう。欧米から見れば、女性皇族だけが結婚で皇族の地位を失うということは不平等だということになるでしょう。

 

 今回の記事は日頃、あまり考えない天皇や皇族、皇位継承について考えるきっかけになりました。「女性皇族の結婚後の地位の維持」「女性天皇の容認」はこれからも議論が続いていくでしょうが、私としては、天皇の生前退位とともに、改正していくべきだと考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

お姫様の結婚:日本の内親王が一般人と結婚(The Princess Bride: Japanese Princess to Marry a Commoner

 

エミリー・タムキン筆

2017年5月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/17/the-princess-bride-japanese-princess-to-marry-a-commoner/?utm_content=buffer907fa&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer

 

日本の今上天皇の孫である25歳の眞子内親王が一般人男性と結婚することになった。AP通信や他の全てのインターネットのニュースサイトは、一般人男性が「海を愛する、法律事務所勤務の男性で、スキーとヴァイオリン、料理を得意としている」と報じた。

 

眞子内親王が法律事務所勤務の小室圭氏と結婚すると、眞子内親王は一般人となる。日本では、女性皇族は結婚した後、皇族ではなくなる。保守派の人々は、女性皇族が結婚後も皇族の地位を保つとする法律改正を行うと、それがそのまま進んでしまい、女性が皇位を継ぐことが許容されることになるのではないかという恐怖感を持っている。日本の歴史では、女性天皇が数人存在したが、保守派の人々は、女性天皇は一時的なもので、1889年に制定された皇室典範では女性が皇位を継ぐことを許容する理由を挙げていない、と主張している。

 

しかし、日本は皇位継承についての頭痛をこれからも抱えることになる。

 

2017年1月、政府の審議会は、眞子内親王の祖父である83歳になる今上天皇が退位することを認めるように国会に答申を出した。内閣は今週金曜日、今上天皇が退位することを認める法案を認めると考えられている。今上天皇は即位以後、第二次世界大戦における日本の行為について憎しみを和らげようと努力してきた。今上天皇は激戦地や記念碑を訪問し、アジアにおける戦争の惨禍を目撃し続けてきた。今上天皇の後継者となるのは、今上天皇の息子であり、眞子内親王の伯父である皇太子(徳仁親王)である。

 

皇太子と皇太子妃は現在50代となっている。皇族の数は少なくなっていく。皇太子の弟で眞子内親王の父である秋篠宮は皇位継承権第2位であるが、内親王妃と共にこちらも50代となっている。今上天皇には弟がいるが、こちらは既に80代となっている。眞子内親王には弟がおり、皇位継承権を持っているが、まだわずか10歳だ。今上天皇にはこの男子以外に3名の孫がおり、それに眞子内親王も含まれるが、全員が女性であるので、皇位継承権を持っていない。

 

今上天皇の最年長の孫が結婚後も皇族の地位を保ち、将来、皇位を継ぐことができるようにすることで、将来も皇族を維持し、1500年続く皇位の継続性を確かなものとすることが当然の動きである。

 

しかし、日本国民は女性天皇という考えについて考慮していない。

 

水曜日、菅義偉官房長官は記者団に対して、「皇位継承が安定して続くために更なる方策を考慮していくという私たちの考えは変わっていない」と語った。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 今回は、安倍首相による憲法変更に向けた動きに関する記事をご紹介します。世論調査では、憲法9条を変更すべきという考えの人とすべきではないという考えの人の割合が拮抗しつつ、わずかに変更すべきという人の割合が多いが、安倍晋三首相の下での変更に反対の人が半数を少し超える割合でいるということをまず紹介しています。

 

 憲法9条の変更は、大袈裟ではなく、「国論を二分する」大きな問題です。安倍首相は、憲法九条の第一項と第二項に変更を加えることなく、第三項に自衛隊の存在を明記するという方向での変更を考えていることを明らかにしました。しかし、これはかなりアクロバティックな、困難な作業になると思われます。もし第三項を加えるのなら、第一項、第二項に何らかの変更を加えねば成立させることはかなり難しいと思います。それでも日本のその世代最高の頭脳と努力体質を持つ官僚たちが集まって、知恵を絞って理屈を考え出すことでしょう。

 

安倍首相は、自衛隊が違憲の存在ではない、ということを明記する、違憲の存在であるという考えが出ないようにする、という主張を行っています。はっきり言って、実態は、国民の大部分は自衛隊を違憲ではないと考えているでしょう。しかし、自衛隊の専守防衛、自衛権のための存在であるとまでは認めても、自衛隊が他国で援助目的以外の活動を行うことには反対が多いでしょう。

 

 安倍首相は2020年には変更した憲法を施行したいと述べました。そのためには残された時間は大変短いものです。この期間に、国会での熟議、国民一人ひとりの考えの醸成、国民投票を行わねばなりません。そのためには、月並みな言い方ですが、私たちが自分の問題として、この時代に国民投票に参加できる年齢になっていたことの巡り合わせを噛み締めながら、よく考えてみることが必要となります。

 

 私は、憲法の変更は必要ではないと考えますし、現状以上に自衛隊がその役割拡大することも必要ではないと考えます。

 

(貼りつけはじめ)

 

日本は平和憲法の変更に向かっているのか?(Is Japan Moving to Revise Its Pacifist Constitution?

 

エミリー・タムキン筆

2017年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2017/05/01/is-japan-moving-to-revise-its-pacifist-constitution/

 

日本の平和主義を打ち出した憲法は今週水曜日に70周年を迎えた。記念日を前に、日本国民が憲法の変更を望んでいるのかどうかを知るために郵送のアンケートが実施された。そして、日本国民の約半分がそれを望んでいるという結果が出た。

 

日本国民の半数近くが憲法変更を望んでいる。憲法9条は戦争放棄を規定している。調査対象の約49%が憲法9条を変更しなくてはならないと考えている一方で、47%は変更すべきではないと答えた。しかし、過半数は今すぐの変更を望んでいない。51%の人々は安倍晋三首相の下での憲法変更を望んでいない。安倍首相は月曜日、憲法の歴史的な変更を人々に訴えた。

 

 しかし、アンケートに答えた人々は全員、ほんの数年前とは軍事力との関係が大きく変化した国に既に暮らしている。憲法変更を行うことなしに、安倍晋三首相は、第二次世界大戦以降、日本の軍事力を縛ってきた制限を慎重に緩め、世界の安全保障に対してより大きな役割を果たそうとしてきた。

 

安倍首相は既に、憲法9条を破らない形で集団的自衛権の行使ができる諸法律を可決させた。そして武器輸出禁止を解除した。日本は、東南アジア諸国連合との更なる安全保障関係の強化を主導している。東南アジア諸国連合は中国についての懸念を募らせている。月曜日、日本政府は、日本の領海内を航行するアメリカの輸送艦一隻に同行させるために自衛隊が保有する最大級の戦艦一隻を派遣した。

 

アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリンは、「安倍首相は既に、日本を軍事と防衛を重視する“普通の国”にするという希望を叶えるために目的を達成した」と述べた。

 

カーネギー財団のジム・ショフは、しかし、安倍首相は、日本の安全保障関連のいくつかの法律の変更を憲法に成文化するために十分な支持を得るために努力を続けねばならない、と述べた。そのためには、変更された健保9条の内容がどのようなものとなるか、拘束を解かれた日本の軍隊がどのような形になるかということを人々が理解しなければならない。ショフは、これが「階段における次の大きなステップ」だと語る。

 

憲法の変更は議論の内容次第であるし、多くの国民の支持を必要とするのが現状だ。そして、日本を取り囲む変化し続ける環境を反映したものとなる。日本は一貫性のない北朝鮮、方向性を予測しがたい韓国、拡大を続ける中国に囲まれている。中国は南シナ海、そして日本により近い東シナ海で拡大を続けている。こうした状況に対処するために、日本の指導者たちはここ数年、アメリカとの関係を再検討しようとしている。彼らは、アメリカ政府への過度の依存は急激な変化についていけなくなる可能性があると懸念を持っている。

 

オースリンは、日本国民は現在も平和主義的なのだと語る。防衛力の向上は、世界へ、もしくはアジアへの介入の意欲を持っているということを意味するものではない。

 

このことを忘れて、日本の拘束を解かれた軍事力を介入主義的な政策に使おうとする指導者は、その地位を追われるという形で、人々から厳しい教えを受けることになるだろう。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22


このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 憲法記念日に日本会議が開催した集会に安倍晋三首相が自民党総裁の肩書でビデオメッセージを寄せました。この中で安倍首相は変更した日本国憲法を2020年に施行したいと述べました。

 

2019年に国民投票を行うことになるでしょう。そのためには、前段階として、国会の発議が必要となります。国会発議から国民投票までは3カ月から6カ月を必要とし、その間に賛成、反対の投票運動が行われます。国会の発議には衆議院、参議院でそれぞれ3分の2以上の賛成が必要となります。国会の発議のための真偽も必要となると、2018年の間に国会で改憲の発議の審議が始まることになるでしょう。改憲はまだ先の話という考えが頭の片隅にありましたが、いよいよ待ったなしという状況になってきました。

 

 私たちはこうした重要な状況の中で偶然にも生まれて、判断をするということになります。これは私たちの前の世代、過去の世代の先輩たち、そして未来の世代に対して、きちんと責任を果たさねばならないめぐりあわせになってしまったということになります。

 

 安倍晋三首相は憲法9条の変更を行う考えのようです。憲法9条に自衛隊の存在を書き込むことで、「自衛隊が違憲ではないか」という考えが存在できないようにするということのようです。

 

 日本国憲法第9条の1項は、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とあり、2項は「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」となっています。

 

 第2項の「前項の目的を達するために」という言葉を衆議院帝国憲法改正案委員小委員会の芦田均委員長が入れた(芦田修正)ために、個別自衛権のための防衛力、自衛戦力を保持することは可能になったという解釈がなされています。ですから、自衛隊の存在が合憲か、違憲かということは、難しい問題ですが、違憲ではないという判断を下すことができています。

 

 安倍首相は自衛隊の存在を憲法9条に書き込むと言っていますが、彼が狙っているのは、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という部分の変更だと思います。自衛隊を自衛のための戦力であり、かつこれを戦争に用いない(戦争はできないのだから)、国際問題の解決には使用しない、という現在の状況を大きく変更することは必要ありません。

 

 しかし、アメリカからの日本に対する「応分」の安全保障の負担、ということを考えると、自衛隊の海外派遣において、より積極的なアメリカに対する「貢献」を行うためには、上記の部分が邪魔になります。ですから、自衛隊の存在を書き込むというとにかこつけて、この部分の変更を行うであろうということは容易に想像できます。

 

 あと、私が気になったのは、安倍首相が2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催について、「日本人共通の大きな目標」と述べている点です。私は東京オリンピック・パラリンピックの現状での開催には反対です。ですから、開催に関して、法律を犯してまで反対することはしませんが、積極的に協力することはありません。従って、少なくとも私にとっては、東京オリンピック・パラリンピック開催は「日本人共通の大きな目標」ではありません。

 

 近代的な民主政治国家においては国家目標に反対する自由は保障されていますし、全員が一致して同じ方向に向かうことを強制されることはありません。ですから、私は近代的な民主政治体制を採用している日本に住む国民として、反対の意見を表明します。もちろん、オリンピック・パラリンピックに向けて努力している方々の努力を蔑ろにするつもりはありません、某元総理大臣をはじめとする無能な最高幹部、選手を蔑ろにしている競技団体のたち以外は、ですが。

 

 オリンピック・パラリンピックは都市開催が原則であり、過度なナショナリズムを煽るようなことに利用されるべきではありません。戦前のベルリン・オリンピックがナチスに利用されたことを考えると、「日本人共通の目標」という言葉は大変危険であると言わざるを得ません。

 

 安倍首相は、2020年を自分の政治人生のハイライト、花道にするつもりです。日本国憲法の改変と東京オリンピック・パラリンピックの開催を花道に引退するつもりでしょう。これらができれば日本の歴史に名前を残す大政治家となると考えていることでしょう。大叔父である佐藤栄作元首相のように、ノーベル平和賞までも狙えるとも思っているでしょう。

 

 安倍首相は1964年の東京オリンピックのことを念頭に置いて2020年の東京オリンピック・パラリンピックについて語っています。しかし、私は現在状況を考えると、2020年の東京オリンピック・パラリンピック前の状況は、1940年の幻となった東京オリンピックの頃の方がよく似ているのではないかと考えます。国民生活の苦しさ、ナショナリズムと排外主義、政党の堕落といった点は同じではないかと思います。ですから、2020年は安倍さん個人にとっては輝かしい未来が待っていると思えるかもしれませんが、残念ながら私にはそう思えないのです。

 

(貼りつけはじめ)

 

憲法改正「2020年に施行したい」 首相がメッセージ

 

朝日新聞デジタル 5/3() 14:17配信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170503-00000034-asahi-pol

 

 安倍晋三首相は3日、憲法改正を求める集会にビデオメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。首相は改正項目として9条を挙げて「1項、2項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」との考えを示した。

 

 18年秋の自民党総裁選での3選を前提に、自らの悲願である憲法改正の実現に意欲を示した。野党の反発は必至だ。

 

 首相がメッセージを寄せたのは、日本会議が主導する美しい日本の憲法をつくる国民の会などの改憲集会。

 

 首相はメッセージで「憲法改正は自民党の立党以来の党是」とした上で、「憲法を改正するか否かは最終的には国民投票だが、発議は国会にしかできない。私たち国会議員は大きな責任をかみしめるべきだ」と強調。20年に東京五輪・パラリンピックが開催されることについて「日本人共通の大きな目標。新しく生まれ変わった日本がしっかり動き出す年」として20年に改正憲法の施行を目指す考えを示した。

 

 憲法9条について、首相は「多くの憲法学者や政党には自衛隊を違憲とする議論が今なお存在する。あまりにも無責任だ」として、自衛隊の根拠規定を9条に追加すべきとの考えを強調。さらに「改憲勢力」と位置づける日本維新の会が改正項目に掲げる教育無償化についても「一億総活躍社会を実現する上で教育が果たすべき役割は極めて大きい」と前向きな姿勢を示した。

 

 首相のメッセージに対して、米ハワイ・ホノルルを訪問中の自民党の二階俊博幹事長は2日午後(日本時間3日午後)、「総理がそういうことを熱烈に希望しているなら、安倍内閣を支持している以上、積極的に支持、協力していくことが当然ではないか」と同行記者団に語った。(藤原慎一、ホノルル=山岸一生)

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)






このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 今回は『エコノミスト』誌に掲載された日本の右傾化に関する記事をご紹介します。今年2月の森友学園・瑞穂の國記念小學院を巡るスキャンダルから、教育勅語の学校現場への導入の擁護までを今回の記事では網羅しています。

 

 特徴的なことは、日本会議など歴史修正主義者や超国家主義者たちは今上天皇を尊崇しているが、彼らの尊崇に対して、今上天皇は期待に反した行動をしているという点を指摘しています。今上天皇は太平洋戦争の激戦地を訪問し、慰霊を行ってきました。また、歴史修正主義に反対している作家の半藤一利氏を招いて話をしているということも注目されます。記事では、「今上天皇の行動は、彼らへの叱責となっている」と書かれています。

 

 もっと言うと、歴史修正主義者や超国家主義者、右翼の中には、今上天皇はリベラルすぎると考えている人が多くいると聞きます。今上天皇の行動への批判を隠さない人々もいます。しかし、彼らが考えるような天皇中心制国家へ日本が回帰するということはないでしょう。

 

 今上天皇は国際協調主義を昭和天皇から引き継ぎ、それに加えて、池田隼人内閣みたいですが、寛容と忍耐、低姿勢を受け入れていると思います。それは、外国との摩擦は日本の国益にはならない、政治から超然としている立場の天皇として、政治の動きとは一種のバランスを取らねばならないと考えているのだろうと思われます。その点で、今上天皇はリアリストなのだろうと私は考えます。

 

(貼りつけはじめ)

 

菩提樹:日本の超国家主義者たちの天皇に対する献身は報いられない(Banyan  Japanese ultranationalists’ devotion to the emperor is unrequited

 

旗を振りまわす過激主義者たちにとっての小さくない問題

 

2017年4月12日

『エコノミスト』誌

東京発

http://www.economist.com/news/asia/21720613-bit-problem-flag-waving-extremists-japanese-ultranationalists-devotion-emperor?frsc=dg%7Ce

 

教育勅語(Imperial Rescript on Education)は明治天皇の名において1890年10月に出された。教育勅語は315字の華麗な文字で書かれている。教育勅語では臣民たちに対して、忠誠心と孝行心を涵養し、最終的には皇室の存続のために生命を捧げる準備をするように求めている。教育勅語の認証を受けた謄本は全ての学校に設置された皇室を祀る小さな神社に納められた。子供たちは教育勅語を暗唱しなければならなかった。教育勅語は「国体」の概念の基本となる文書であった。国体とは、神聖不可侵の天皇と臣民との間の国家を形成するための神秘的な紐帯を示す概念だ。従って、教育勅語は日本人が天皇の名で出された命令を実行することを教え込まれる教化の道筋の起点となった。また、この道筋は軍国主義、総力戦、そして最終的に完膚なきまでの敗戦へとつながった。国体という言葉は、現在のドイツにおける「レーベンスラウム(生存圏)」と同じくらい、不協和音を生み出す言葉になっているのは間違いないところだ。教育勅語は、敗戦から3年後の1948年に国会によって失効させられた。

 

安倍晋三内閣は4月初めに教育勅語の学校での利用を容認したことで何をしようとしたのだろうか?菅義偉官房長官は、控えめに、日本政府は教育勅語を児童教育の「唯一の基盤」とすべきだと提案しないと述べ、教育勅語容認を批判する人々は厳格すぎるという印象を与えた。また、菅官房長官は政府が教室で教育勅語を使うように促すことはないとなだめるように述べた。教育勅語の取り扱いは教師たちの判断次第であるが、日本国憲法に反する取扱いはしてはならないと菅官房長官は述べた。

 

超国家主義の学校法人で幼稚園を経営する森友学園を巡る騒動が起きた後に、教育勅語の容認という動きが出た。いくつかの映像には、幼稚園児たちが今上天皇と皇后の写真に最敬礼をしている姿、軍歌を歌っている姿、中国、韓国、ロシアと争いがある領土を守って欲しいと大人たち訴える姿、反中国、反韓国のスローガンを叫ぶ姿が残っている。日本では、森友学園のこうした教育がスキャンダルとなった。それは、安倍昭恵首相夫人が森友学園に関与していたからだ。昭恵夫人は森友学園が建設中だった小学校の名誉校長になることに同意していた。昭恵夫人は2月末に名誉校長を辞任した。2月になって、森友学園が地方政府からかなり値引きされた値段で土地を取得したということが発覚した後に彼女は辞任した。このスキャンダルは継続して調査されている。

 

歴史家の半藤一利氏は1930年代前半に生まれた。彼は今でも教育勅語を暗唱することができる。彼は、「教育勅語には良い部分もありますよ。誰が親孝行、兄弟仲良く、友人と親しくするといったことに反対しますか?」と語る。しかし、教育勅語には、「良き臣民は天皇のために死ぬ覚悟をしなければならない」とも書かれている。これは、アメリカによる占領下の1947年に制定された自由主義的な憲法と真っ向から対立する。日本国憲法は天皇の神聖を否定し、国家のシンボルであるとだけ述べている。主権は国民にあるとされた。半藤氏は教育勅語の復活に動きながら天皇が政治的権力を持つように戻すということを述べない人々を軽蔑している。

 

日本の右翼と超国家主義者たちは呉越同舟である。東京中心部の街頭で、ごろつきのような人々が旗をふりまわし、軍歌を大音量でかけながら走る「サウンドトラック」を、汗をかきながら運転している。東京の靖国神社は、日本の戦争での戦死者たちを祀っている。靖国神社では、空想に浸っている人々は特攻隊のパイロットたちの制服を着てふんぞり返って歩き回っている。色々な場所で、自分の考えに凝り固まった独学の「歴史家たち」は、日本に対する誤解と嘘を全てが真実ではないことを「証明している」紙がつまっているみすぼらしい穴の中に閉じこもっている。歴史修正主義者たちはぐらついたセットが置かれているケーブルテレビのスタジオの中で怒鳴り散らしている。

 

彼らに共通しているのは、天皇のこれまで途切れたことのない家系に対する尊崇である。しかし、天皇は太陽の女神の子孫であると信じるには柔軟な思考が必要である。超国家主義者たちが歴史修正主義に陥りやすい理由はここにあるのかもしれない。彼らは、第二次世界大戦中の日本が民間人の大量虐殺や女性に売春を強要したというような犯罪を起こしたことを否定している。

 

こうした動きの中には機会主義者もいるが、多くの人々はその通りだと確信している。半藤氏は次のように語る。「日本に住む私たちは、起きてはならないことは、実際にも起きなかったのだと考えてしまう習慣があります」。2人の過激な歴史修正主義者が安倍内閣に入る。防衛大臣の稲田朋美と総務大臣の高市早苗だ。歴史修正主義者の団体である日本会議は、平和憲法の書き換えと天皇がより中心的な役割を回復することに邁進している。日本会議は38000人の会費を払う会員を擁している。会員の中には安倍内閣の閣僚になっている人物たちもおり、安倍内閣の4分の3は日本会議の会員だ。

 

歴史修正主義者と超国家主義者に共通しているもう1つの特徴は、戦争に対する罪悪感と戦時中の近隣諸国に対する侵略への謝罪が現在の日本を去勢しているという信念を持っているという点だ。日本会議会長の田久保忠衛は、学校における「道徳教育」の推進と教科書における先の戦争に関する輝かしい解釈を掲載することの目標は、国家の強制的な斉唱にさえ反対する左翼教師たちによる70年に渡る「洗脳」の「振り子を矯正する」ことにあると述べている。

 

超国家主義者たちは目標をある程度達成している。菅官房長官自身は過激主義者ではない。菅官房長官による教育勅語の用語はご機嫌取りのようだものだ。しかし、超国家主義者たちは深刻な問題に直面している。彼らが尊崇している83歳になる今上天皇は、父親の昭和天皇が容認し、消極的だが促進した戦争の悲劇を反省してきた。今上天皇は天皇としての時間の多くを戦場となった場所の訪問と日本側だけでなく、全ての戦没者の慰霊に費やしてきた。

 

菊の花の紋章はうめき声をあげている。

 

今上天皇の行動はナショナリストたちへの叱責となっている。日本会議の指導者たちは、今上天皇が半藤氏を招いて会話をしていることを知り、慌てふためいている。彼らに今上天皇と親しく会話をする機会を与えられたことはない。現在、天皇は日本国民に対して退位を許してくれるように求めている。その理由として高齢のために責務を果たすことが困難になっていることを挙げている。この天皇の行為もまたナショナリストたちを刺激している。それは、退位が2000年にも及ぶ不可侵の伝統を壊してしまうことになると考えられるからだ。日本の著名なリベラル派の知識人船橋洋一は次のように語る。「今上天皇は大変に人気があり、尊敬を集めています。今上天皇に勝てる人はいないのです」。超国家主義者たちは自分たちが無敵ではないということを心の底では分かっている。

 

(貼りつけ終わり)

 

(終わり)





アメリカの真の支配者 コーク一族
ダニエル・シュルマン
講談社
2016-01-22




 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

 古村治彦です。

 

 今回はワシントン・ポスト紙が報じた森友学園を巡るスキャンダルの記事をご紹介します。このスキャンダルは籠池氏が宣誓証言をしたことで、彼の発言の重要性が増し、終息には向かわないであろうと書かれています。

 

 また稲田大臣の森本学園とのかかわりを巡る発言の混乱で、辞任を求める声が広がっていることが紹介されています。

 

 このスキャンダルは、今週末にどのような動きを見せるか、具体的には、日本維新の会の党内(大阪ウイングとそれ以外)と党外(対自民党、対公明党)でどのような動きを見せるかで来週に色々と動きが出ることが予想されます。そうなれば、ワシントン・ポスト紙の記事でフィールド記者が書いているように、この問題はすぐには終息しないということになります。

 

(貼り付けはじめ)

 

日本の安倍首相は極右の学校に秘密の寄付をしたと追及される(Japanese Prime Minister Abe accused of giving secret donation to far-right school

 

アンナ・フィールド筆

2017年3月23日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/japanese-nationalist-school-boss-says-prime-minister-gave-him-a-secret-donation/2017/03/23/5d8f5322-0fdc-11e7-ab07-07d9f521f6b5_story.html?utm_term=.97d7be43983d

 

東京発。日本の首相を巡る政治論争は終息の兆しを見せない。国家主義的な学校の理事長が木曜日、宣誓をした上で、安倍晋三首相が彼に対して9000ドルの寄付をしたと述べた。

 

この嫌疑について安倍首相は強く否定しているが、これまで無敵だと見られてきた首相にダメージを与えている。今回のスキャンダルによって支持率が低下し、来月に解散総選挙をするのではないかという噂話が流れている。

 

今回の論争の中心にいるのは大阪の学校法人である森友学園である。森友学園は幼稚園を運営している。この幼稚園では、園児たちに、日本の近隣諸国に対して強硬な姿勢を撮っている安倍首相を応援させ、「邪悪な」韓国人と中国人と書いた文書を送った。

 

森友学園は小学校開設を計画していた。この小学校はもともと「安倍晋三記念小学校(Shinzo Abe Memorial Elementary School)」という名前を付けられていた。そして、安倍昭恵首相夫人を名誉校長に就任してもらっていた。

 

しかし、今年初め、森友学園が学校用地の土地を大幅な値引きを受けて購入していたことが発覚した。土地の価格は評価額の14%にまで引き下げられた。

 

格安の国有地売却によって、首相のイデオロギー上の同盟者のために好待遇をしたのではないかという疑いが広がった。

 

森友学園理事長籠池泰典氏は木曜日、国会の2つの委員会に出席し、安倍昭恵夫人が夫の代理で自分に寄付をくれたという主張を繰り返した。しかし、今回は籠池氏は宣誓をして発言をした。

 

籠池氏は参議院予算委員会で「安倍夫人は私どもの幼稚園に三回お越しになりました」と述べた。2015年9月の訪問で、籠池氏は安倍夫人と延長室で会ったと述べた。

 

籠池氏は「お付の方に席を外すように言われた後、部屋には私ども2人だけになりました。そこで、夫人は、“どうぞ、これをお取りください。安倍晋三からです”と私に仰って、100万円の入った封筒を寄付として私に下さいました」と述べた。この金額は現在の為替レートでは約9000ドルに相当する。

 

籠池氏は「安倍夫人は寄付を渡したことを否定され、全く覚えがないと仰っているとお聞きしましたが、私どもにとっては大変名誉なことですから、私ははっきりと覚えております」と述べた。

 

安倍首相の最側近である菅義偉官房長官は再び、疑いを否定した。そして、木曜日、安倍夫人に付いていた2人の政府職員は両方とも夫人の側を離れたことはないと否定した。もし2人が離れていれば籠池氏は安倍夫人とだけ会うことができたがそうではないということだ。

 

この問題について安倍昭恵夫人は木曜日夜に沈黙を破り、疑いに対する否定をフェイスブックに反論を掲載した。

 

スキャンダルの渦中、来月開講予定であった小学校開設認可申請は取り下げられ、森友学園は土地の返還を強制される。

 

しかし、籠池氏の証人喚問はいくつかのテレビチャンネルで放送され、疑いが再び明確にされた。これによって今回の論争がすぐに終息するということはなくなったと言える。

 

今回のスキャンダルでは安倍昭恵首相夫人が渦中の人物となっているが、これに加えて、安倍内閣の防衛大臣で超保守派の政治家稲田朋美もスキャンダルに巻き込まれている。

 

稲田朋美大臣は、彼女が弁護士時代、森友学園の代理人であったことを否定した。しかし、先週になって、2004年になって森友学園のために働いていたことを認めさせられることになった。稲田大臣はこのことを忘れていたと述べ、謝罪した。しかし、発言の撤回によって、稲田大臣の辞任を求める声が広がっている。

 

今回のスキャンダルは、安倍政権の支持率の引き下げに重要な影響を与えた。安倍政権の支持率はここ数週間で10ポイント下がった。2012年末に首相になってから最大の下げ幅になった。しかし、保守的な読売新聞の最新の世論調査では、支持率自体は56%と依然高いままだ。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)








このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote

このページのトップヘ